KちゃんとTちゃんとランチに行って会社に戻ると、T書店の本田くん(仮名)からメールが入っていた。
営業とも話をしたので、会って話がしたいとのこと。
翌日、会う約束をする。
本田くんのオススメだという池袋の西口にある和食系のダイニング・バーで、ビールを飲みながら、本田くんが言いにくそうに本題に入る。
こういうときに、きっと本人は自覚していないだろうけど、彼は独特の表情をする。
たとえば何回かHをしてすっかりその気になっている女の子に対して、実は本気じゃないんだよとか、奥さんとか彼女から、ずーっと私だけでしょ?と迫られて、そんな確約なんてなどと切り出す前にするであろう(←あ、ごめん。喩え悪すぎ?)、照れ隠しの笑みが混じったような困った顔。
そういうような顔を目の前の本田くんはしている。
ただこの人は本気じゃない相手に「愛してるよ」と言ってみたり、「ずっと私だけ」と言われて、「もちろんだよ」という適当なことブッこいでんじゃねえよ!(←あらっ、失礼!)という腐れ外道(←これまた失礼!)ではない。
「営業がね、主人公に感情移入できないって言うんですよ」
本田くんが切り出してくる。
私個人としては、小説の登場人物にいちいち感情移入する必要があるのかと常々思っているので(←きっとこの点に関して、ある種の文学論争も成り立つであろう!)、主人公に感情移入できないって言われても、「はあ、それで?」というふうに思ってしまう。
「女性の営業なんですけどね、なんかバブルの匂いがするって」
そりゃあ、私は花のバブル世代ですよ!(キッパリ)
しかし発展途上国の男と恋に落ちる話(←簡単に言えばね)のどこがバブルなのか?
あと売れないバンドマンの彼氏とか。むしろ貧乏くさいのでは?
きっと不倫相手(小説上のね!)とあれこれ飲み食いした話なんかからそういうイメージを持たれてしまったのかもしれないけど、そんなんでバブルくさくなるのか?
思わずどんな匂いがするのか自分の腋の下の匂いを嗅いでみる(←バカ?)。
しかし、しかしである。出版社の営業というのは、無名の著者の本なんて興味がないのが当たり前田のクラッカー(←古っ!)な世界で、ましてや小説となれば、三重苦も四重苦ものハンディを背負わされているのは、とっくにわかってたんじゃないの?
ちょっとそのあたりはどうなのよ。本田くん!
「タイトルとか、結末とか変える気はないですか?」
唐突に内容に関して話が流れていく。
うーん、漠然とそう聞かれてもなあ~。
いち営業が気に入らないからとその度に内容を変えているのじゃ、なんのこっちゃである。
タイトルとか内容とか変えるのであれば、とことん詰めた話をして納得したうえでないとむつかしいのが人情だろう。
具体的な話じゃないとねえ~。
そう思う私は書く手としてのやりとりには素人なのかしら?
「フリーのね、編集者ですごく信頼している人がいるんですよ。できる人だから忙しい人なんですけど、その人に見せてみますか? T書店ではやっぱりむつかしそうだし、他でいいところがあるかもしれないし」
そうねえ。そのできる人とやらもどういう反応をするのやら。
あてにしないで待ってみることにしますか。
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