2011年5月22日日曜日

悪魔の囁き

 「ねえねえ、Lくん(←息子)、私立は受けないの?」
 のっけから恐ろしいことを言ってのけるのは、近所のママ友・泰子(仮名)だ。
 うちの子どもたちは泰子からピアノを習っているので、毎週レッスン日が終わった後に迎えに行っているのだが、そこでうだうだと井戸端会議をするのが習慣になっている。
 娘をO女大附属に行かせているためか、泰子はお受験話が大好きで、無知な私にあれこれレクチャーするのが何よりも楽しいらしい。

 「私立なんて受けないよ。そもそも授業料が高いから行かせられないし」
 「でもさ、国立の場合、いざ抽選に通ったときに模擬以外でも試験の雰囲気に慣れておかないといけないから、練習のつもりでも受けたほうがいいんじゃない?運試しの国立志望の以外の人は私立も受けるもんだよ。1校でもいいから受けてみるべきじゃない?」
 「受験料ってどれぐらいなの?」
と聞いた時点で、私立なんて受けないもんね~という意思が揺らいでる私。

 「だいたい2万5千円から3万円が相場だね」
 「高っ!」
 「国立が破格なんだよっ」

 そう。国立の場合、受験料は1次抽選が1000円、2次試験で2000円というのが相場なので、それと比べると私立は10倍以上の受験料がかかる計算になる。
 それを何校も受ける人がいるんだから、受験するだけで10万円ほどの出費になってしまう。

 「う~ん。単なる練習でその値段か・・・」
 「やっぱり場慣れは必要だからね。Lくんの場合はあくまでも練習なんだし、せっかくだからいいところ受けなよ。第一志望はT大附属T小でしょ?  だったらペーパーが難しいところがいいよ。傾向が似ているところじゃないと練習の意味ないしね」

 そう。このところの第一志望はT大附属T小である。前年に娘が2次試験を受けてさんざん期待を持たされて見事落とされた因縁の小学校である。
 小学校お受験塾Wの国立コースはほぼT大附属T小に照準を合わせて作られているし、何よりもスパルタちっくなところが娘には厳しいと思ったけど、いつまでも赤ちゃん気分が抜けない息子にはピッタリだ。体育学校ちっくなところも実はスポーツが得意な息子にはいいかもしれない。
 Wで毎週洗脳されていることもあって、ほぼT大附属T小の父兄の気分でいる私である。

 「ペーパーが難しいところねえ~(ため息)」
 「Lくん、かなり頭いいよ。ピアノの楽譜だって覚えるの早いし、リズムの計算とか速いし、才能あるよ。ピアノはバカだと弾けないから、美央さんさえちゃんと勉強させればいけるって!  問題は態度が悪いところだよ。態度さえちゃんとしてればね。まあ、こっちはしつけの問題だけどね」
 う~ん。要は私次第なのね。なんというプレッシャー。

 あとは国立志望の場合、最大のネックは抽選である。特にくじ運が誰よりも悪い私の場合、これは致命傷だ。抽選に通らなければ試験さえ受けられないのである。最悪な場合、受験予定の国立4校とも抽選で全滅してしまう可能性だってある。その場合、実力を試すこともなくお受験が強制終了されてしまう。なんのための毎週の塾通いなのか?  その点、私立は抽選がないのでとりあえず試験を受ける
ことができる。
 うーん、そう考えるとやっぱり受けておくべきなのか? でもどこを受ける?

 

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