2009年9月12日土曜日

泰子(仮名)のレクチャー②

 「模擬って何よ?」
 「本番前に模擬受けておいて、場慣れさせるんだってば」

 すごいよなあ~。そんな子ども向けの模擬まであるなんて。私はなんて世間知らずだったんでしょう~。

 ところがすっとこどい。小学校受験業界はそんな甘いものではなかった。
 もうあれもいかが、これもいかが、と受験に翻弄される親から毟り取れるだけ毟り取ってやれということか、まるで蜘蛛の巣を張り巡らせたかの如き、仕掛けがいたるところに仕組まれているのだと、その後も思い知らされ続けることになるのだ。

 無知な私を教育する喜びを覚えてしまったのか、泰子は惜しみなく、私に情報の雨あられを降らせてくる。

 「あとね、夏季合宿もあるんだからね」
 「合宿って何するの?」
 「そんなの勉強に決まってるじゃん。これはだいたい20万ぐらい取るところが多いよね」
 「そんなのにお金払う親なんているの?」
 「(私の質問には無視)あと基本的なところで、月々の塾代ね。国立に限らずこのへんだったら、SG会、S会、R会、N学が大手で、だいたい週1回で7万ぐらいね。プラスいろいろオプションをつけて10万ぐらいはみておいたほうがいいね。あとは個人の塾とか小さいところで、個人だったら、ある程度有名な大学を出ているお母さんが自分の子どもの受験を成功させてそのノウハウを教えるっていうところもあるし、ペーパー専門だったり、あと受験用の体操教室もあるよ」
 
 もうこの時点でアップアップな私。学校に入ってからがお金がかかるというのに、入る前にそんなにかけていったいどうなっちゃうのだ?

 「受験用の体操教室って何よ?」
 「うちの子も行ってたんだけどね、ほら、デングリ返りをさせるところとか、集団でちゃんと動けるかということを見られたりするから、そういうのを軍隊みたいに徹底的にやらせる教室がちゃんとあるんだよ。料金はちなみにうちが行っていたところは、月々2万7千円だったよ」

 ああ、頭がどんどん真っ白になっていく。誰か私を現実に引き戻して~!!

 「まあT小だっていうんだったら、ペーパーはないから、ペーパー対策はしなくていいと思うけど、何度か模擬ぐらいは受けておいたほうがいいと思うよ」
 「でもそのT小の倍率って吐き気がするぐらいの高倍率じゃん。T小に限らないけど、どこもほとんど宝くじ並なんだから、どう考えても子どもがふたりとも揃っていくなんて天文学的な確率しかないと思うんだけど」
 「でもね、兄弟がいれば優先されるんだよ」
 「なぬ? そうなの?」
 「もちろん、くじは平等だからくじだけは通らないといけないけど、2次以降はね、よっぽどひどい子じゃなければ、上に兄弟がいればそっち優先だよ。Aちゃん(娘)は結構くじさえ通ればT小ならだいじょうぶそうな感じがするし、Lくん(息子)もそれでぐっと有利になるよ」

 なるほどねえ~。どう考えても自由人の息子に受験させるというのは、日光サル軍団のサルにナイフとフォークを使ってフレンチのフルコースを食べさせる調教をするみたいなもんだ。いや、むしろ後者のほうが簡単だったりして。

0 件のコメント:

コメントを投稿