初めてT大附属T小学校内の中に足を踏み入れる私たち。なんとも重厚な感じというか古めかしい作りである。
抽選会場になっている講堂に足を進めると、例の「国民としての自覚を持つ子」から始まるご大層な教育目標が掲げられている。
ハハァ~、すみませんという感じだ。
気合の入りまくったお父様、お母様でびっしりと埋め尽くされた抽選会場。この回だけでもこんなにたくさん人がいるのに、あと5グループも控えているなんて空恐ろしい。
すっかり気合負けして、自分の場違さ加減にいたたまれない気分になる。
抽選方法の説明があり、保護者の中から2名立会人が無作為に選ばれる。壇上に上がる立会人の保護者たち。
どうせならこんな立会人として当たるんじゃなくて、抽選合格者として当たりたいよな。
Bグループ女子の一次抽選通過率は54%。下二桁の数字を抽選によって54抽出していく。
私の数字は180番。80番という数字が来れば一次通過だということになる。
この数字、なんとなくキリのいいこともあってラッキーな番号のような気がするのは、単なる気のせいか?
厳かな雰囲気の中で粛々と番号が選ばれていく。私の番号も由美子さん(仮名)の番号もなかなか選ばれない。
前もってアナウンスされていたこともあり、当選した保護者たちは小さくガッツポーズを決めるのみ。
確かに仮に当選してもこのピリピリした雰囲気の中では、気を使うよな。
番号がはずれる度に小さな悲鳴をあげる由美子さん。どうせクジ運ないしとハナからあきらめている私ですら胃が痛くなってくる。
半分ぐらい進んだところで由美子さんの番号が出た!
喜びは懸命に抑えているがさっきまでの青白い顔が嘘のように、歓喜で紅潮している。
う~ん、わかりやすい人だなあ~。
「だいじょうぶ。美央さんのところもすぐ番号来るわよ」と小声でささやく由美子さん。ようやく他人のことにも気が回るようになったようだ。
しかしなかなか番号が来ない。やっぱりクジ運ないからしょうがないよなあ~。こうなったら奇跡の一発逆転でO女付属小に決まりか!?などとかなり能天気なことを考えてみる。
そうこうしているうちに残りの番号も少なくなってきた。あと10番ほど残すのみというところで、
きったぁ~!!!!!! 来ましたよ。80番!
隣でうんうんと頷く由美子さん。さすがに先日のG大附属小O小のときはひとりだけ抽選に通って彼女なりに気まずかったのかもしれない。
いっしょに通ってうれしいというよりも、もう一度気まずい思いをしなくてもいいという安堵の気持ちの表われか。
しかし通ってしまうとあとの番号を聞くのはもう余裕のよっちゃんだ。
すべての抽選結果が出揃うとはずれた46%の保護者たちは、直ちにこの場所から退場しなければならない。
そして一次通過者たちは二次試験の手続きのため体育館に向かう。
その体育館でなんと幼児教室でいっしょの澪ちゃん(仮名)のパパを発見! そういえば抽選用の番号をもらいに行ったときにママのほうとすれ違ったりしたもんね。
そしてG大附属小O小の抽選のときにも出くわした果歩ちゃん(仮名)ママこと宮本さん(仮名)も得意げに気取った会釈を送ってくる。
そういえば男子Bグループで受けているはずの恵一くん(仮名)ママこと奈美子さん(仮名)は午後抽選があるはずだ。
受験票の一次試験の欄の上に「合」のハンコを押してもらう。二次の手続きに必要な書類を受け取ると、あとは壁に「志望理由記述用紙」というのもが貼り出されていて用紙のサイズが添えられていた。
なんのことやら意味不明だがとりあえず書き写す。
一通りの手順を経て外に出ると雨はまだまだ降り続いている。
外に出てようやく私と由美子さんは「やったね!」と声を掛け合う。
「私ったら公務員だけあってお国関係のことには強いのかしら」
と由美子さんは変な納得の仕方をしている。頼みますよ。厚生労働省。
駅に向かうために歩き出すと、なんと業者がずら~と並んで「T大附属T小学校一次抽選合格おめでとうごさいます!!!」と大声を張り上げて、私たちが出てくるのを待ち構えている!
もうその業者の数はその他の国立小の比ではない。駅までずら~と続く業者の数は圧巻ですらある。
「過去問の××社でごさいます!」
「国立小ならWにお任せ!」
「やっぱり信頼のSG会」
「きめ細かい指導します。自宅教室○○」
「K会、直前講座開講中」
などなど。うっかりチラシをもらってしまったらなんと厚さ30センチほどになってしまった。
すごい。すごすぎるぜ。小学校お受験業界。
しかし私たち親子の修羅場が始まるのはこれからなのであった。
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