4月1日からは毎朝今まで通いなれていた保育園ではなく、娘は学童に通うことになった。
ちなみに保育園から学童までの距離はわずか100メートルほど。これから娘は学童で夕方6時まで過ごすことになるのだが、私はその時間までお迎えに行くことができない。
その後の時間についていろいろな角度から検討し、結果保育園の園長先生の好意に甘えることにして、夕方6時過ぎたらお迎えに行ける時間まで保育園で過ごさせてもらうことになった。
娘だけでなく他にも卒園生たちが何名か、学童後に保育園で過ごしている。双方の実家が遠方のため当てにできない私たちのような家族には本当にありがたい措置だ。
保育園のときは当たり前のように毎日給食が出ていたが、小学校になるとそれが当たり前ではなくなる。
4月1日の時点ではまだ小学校に入学していないので、1日中学童で過ごすことになるのだが、こういう場合はお弁当持参なのである。
入学して給食が始まるまで、お弁当作りの日々を過ごさなければいけない。ちなみに私は昨今雑誌なんかでよく取り上げられている「キャラ弁」とか「デコ弁」といわれるものが、だいっきらいだ。
こっちとら、働いてるんだよぉ。そんなチマチマと細かい作業してる時間なんてないっ!ちゅうの。たかがお弁当でそんなに子どもを甘やかすなっ!
「可愛すぎて食べるのがもったいない~♪」
アホか。お弁当は食べるためにあるんだろが。そういう「私っていいママ♪」みたいな偽善が大嫌いだ。
まあ基本的に細かい作業が嫌いだという個人の資質の問題が私にはあるわけだが。
さて毎朝のお弁当作りも慣れてきた4月6日に、入学式が行われた。
娘が入学したのは我が家から歩いて20秒の区立M小学校である。銀座の先生から国立受験を勧められその気になってしゃかりきにお受験をやったのだが、結局どの学校からもご縁をいただけず、まあ予定通りといえば予定通りなのだが、とにかく激近のM小学校だ。
この小学校、なんと我が家の窓から正門が見えるので家にいながら娘がちゃんと校門をくぐったかどうか確認できるのだ。
この日、私も夫も有給をとり入学式に出た。家から近いのでギリギリの時間に家を出たって十分間に合うのが大きなメリットだ。
モノトーンのチェックのワンピースを着て、その上に紺色のカーディガンを羽織り、髪の毛はアップにまとめて、赤いシャーリーテンプルのランドセルを背負えば、誰がどう見てもピカピカの1年生である。
子どもが小学校にあがるというのは子育てのひとつの区切りでもある。娘が生まれてから今までのことが走馬灯のようにグルグルと頭の中を駆け巡る。
赤ちゃんだったこの子がもう小学生かぁ~、大きくなったなあと思わず目頭も熱くなるが、夫も同じ気持ちらしく目がウルウルしている。
小学校の体育館で行われた入学式では、その前の保護者会などでもわかっていたことではあるが、同じ学年の半数の保護者は知り合いなので、あっちこっちで見慣れた顔を見た。
娘はなんと憧れの亮太くん(仮名)と手をつないで、行進している。
私はといえば、この日のためにちょっと前にReflectというブランドの黒と紺色の中間ぐらいの色のジャケットと揃いのワンピースを買っておいた。これだけだと地味というか、これってお受験スーツっぽいじゃんっというもの(←だから買った。息子のお受験ではバリバリ着るよ~)なので、大ぶりのパールのネックレスやコサージュを合わせて、我ながらいかにも入学式のお母さんっていう感じ。
娘は2組で担任の先生はなんと私と名前が同じで美緒先生(仮名)という。まだ20歳代半ばの華奢で可愛らしい先生だ。保護者席からボソボソと「おお~、先生、可愛いじゃんっ」と不謹慎な声があっちこっちから聞こえてくる。
頼みますよっ。お父さん方!
どっさりと教科書やらお道具箱などを受け取り、すべてのものに名前を書いてくるようにと言い渡される。
ちなみに国語の教科書を見てみると、新6年生の甥っ子が1年生だったときの国語の教科書を見せてもらったことがあるのだが、採択されている教科書会社の違いがあるとはいえ内容がまるで違う。
甥っ子のときは最初のページから何ページかは教科書にも関わらず文字が1文字も書かれていなくて絵だけだったので、ひどくビックリした思い出がある。
それに引き換え娘の教科書は、私たちが子どものときの教科書のように1ページ目からちゃんと文字が書かれている。
今から思えば甥っ子のときは悪名高き「ゆとり教育」の真っ只中だったんだなあ~。
2011年から新学習指導要領が施行され、現在は移行措置の時期だ。ギリギリでうちの子どもたちは「ゆとり教育」を受けずにすむことになる。
本来の「ゆとり教育」の精神はすばらしいものだったとは思うが、実際の運用には無理があったのだと思う。
教科書ひとつとっても、今が公立の学校教育の変換期であることがヒシヒシと伝わってくる。
その日の夜はこれから6年も続く娘の小学校生活に幸あれと、私たちは家族で記念写真を撮りに行き、夜は東京の夜景が見渡せるラブリーなシーフードレストランで入学祝のディナーを食べたのであった。
2010年11月22日月曜日
2010年10月26日火曜日
息子とバレエ②
そのころ我が家ではタイマーが大活躍だった。
まだ娘のT大附属T小学校のお受験が目前に控えていたので、ちぎりや図形の練習のスピードアップを図るためにタイマーを使っていたし、息子の花を渡す練習のためにもタイマーを使っていた。
見学日に出て、どうして息子が花を渡すだけなのにそんなに時間をかけていた謎が解けた。
練習用の造花は1本1本違っていて、息子は女の子ひとりひとりにその子に合うと思った花を吟味して渡していたからだ。
なんてスウィートなんだっ! 可愛すぎるぞっ!
しかしそれではあかんということで、造花は全部同じものに揃えられることになった。
家での練習は家族総出でおこなった。年が明けたころには10秒で12人分花も渡せるようになった。
娘のお受験が終わってしまえば、息子のバレエの練習(←花を渡すだけね)に集中もできた。
でも出番はそれだけなのかい?
むなしい。むなしすぎるぞ。
年が明けてからは小学生と合同でレッスンを受けることになったので、レッスン時間は2時間になった。
1月は見学日もなく、照明あわせのときまで仕上がりを見ることができなかったが、先生からは、
「Lくん。なんとかなりそうです。せっかくなんで出番も増やします」
と言われ、ほっと胸をなでおろす。
それまで衣装合わせだとかいろいろあったけど、全部すっ飛ばして、本番行きます!
発表会当日。白いブラウスに青のスパッツ、白いバレエシューズの衣装を着た息子。保育園児のくせにいっちょまえに前がモッコリしているのが可愛い。
女の子たちもそれぞれの衣装に着替え、今年、私は楽屋当番に任命されていたので、女の子たちの体に水おしろいをガンガン塗っていくミッションが課せられていた。
しかし見も蓋もないことを言ってしまえば、日本人が全身白塗りにしてなんちゃって白人みたいになってバレエをやるのって、本家本元のヨーロッパ人から見たら“なんだかなあ~”感ってないのかな。
そんなことをぼんやり考えていると、息子のギャーギャー泣き喚く声が聞こえてきた。
どうやらメイクするよっていう段取りになったときに、「ぼくは男の子だからお化粧はしないっ!」とぐずりだしたのだ。
困り果てた先生たち。結局先生が3人がかりで1時間半もかけ、息子を説得。
手間のかかるやっちゃなあ~。
しかしメイクを施された顔を見ると、あら~、可愛い♪
もう楽屋中、騒然で他のお母様方も「あら、素敵♪ 本当の王子さまみたい」と息子に大注目だ。
女の子たちは体中にも水おしろいを塗られて大変な思いをしているのに、ちょこっとメイクしただけの息子のほうにみんなの視線が向かう。
世の中って不条理よねえ~。
でも私の狙いはここにあったのだ。今の子どもたちはずっと過酷な競争に晒されなくてはいけない。
それはうちの子どもたちも例外ではない。
だからこそ長い人生の中で1回でもいいから競争率が異様に低い世界で(←そう、それがまさに子どものバレエにおける男の子の立ち位置!)、ちやほやされる醍醐味を味わってほしかったのだ。
どうやらその狙いはドンピシャだったようだ。
そして幕が開く。場所は芝公園のメルパルクホール。子どもたちのバレエクラスは百貨店内のカルチャーセンターに属しているので(←私のフラメンコも同様)、発表会はカルチャーセンターのほぼすべてのダンス系教室と合同でおこなう。
そういう事情もあり客席は超満員。数千人は下らない観客だろう。
果たして息子は無事に役目を果たすことができるのか?
いやあ~。ドキドキですわぁ~(←関西弁風)。
まだ娘のT大附属T小学校のお受験が目前に控えていたので、ちぎりや図形の練習のスピードアップを図るためにタイマーを使っていたし、息子の花を渡す練習のためにもタイマーを使っていた。
見学日に出て、どうして息子が花を渡すだけなのにそんなに時間をかけていた謎が解けた。
練習用の造花は1本1本違っていて、息子は女の子ひとりひとりにその子に合うと思った花を吟味して渡していたからだ。
なんてスウィートなんだっ! 可愛すぎるぞっ!
しかしそれではあかんということで、造花は全部同じものに揃えられることになった。
家での練習は家族総出でおこなった。年が明けたころには10秒で12人分花も渡せるようになった。
娘のお受験が終わってしまえば、息子のバレエの練習(←花を渡すだけね)に集中もできた。
でも出番はそれだけなのかい?
むなしい。むなしすぎるぞ。
年が明けてからは小学生と合同でレッスンを受けることになったので、レッスン時間は2時間になった。
1月は見学日もなく、照明あわせのときまで仕上がりを見ることができなかったが、先生からは、
「Lくん。なんとかなりそうです。せっかくなんで出番も増やします」
と言われ、ほっと胸をなでおろす。
それまで衣装合わせだとかいろいろあったけど、全部すっ飛ばして、本番行きます!
発表会当日。白いブラウスに青のスパッツ、白いバレエシューズの衣装を着た息子。保育園児のくせにいっちょまえに前がモッコリしているのが可愛い。
女の子たちもそれぞれの衣装に着替え、今年、私は楽屋当番に任命されていたので、女の子たちの体に水おしろいをガンガン塗っていくミッションが課せられていた。
しかし見も蓋もないことを言ってしまえば、日本人が全身白塗りにしてなんちゃって白人みたいになってバレエをやるのって、本家本元のヨーロッパ人から見たら“なんだかなあ~”感ってないのかな。
そんなことをぼんやり考えていると、息子のギャーギャー泣き喚く声が聞こえてきた。
どうやらメイクするよっていう段取りになったときに、「ぼくは男の子だからお化粧はしないっ!」とぐずりだしたのだ。
困り果てた先生たち。結局先生が3人がかりで1時間半もかけ、息子を説得。
手間のかかるやっちゃなあ~。
しかしメイクを施された顔を見ると、あら~、可愛い♪
もう楽屋中、騒然で他のお母様方も「あら、素敵♪ 本当の王子さまみたい」と息子に大注目だ。
女の子たちは体中にも水おしろいを塗られて大変な思いをしているのに、ちょこっとメイクしただけの息子のほうにみんなの視線が向かう。
世の中って不条理よねえ~。
でも私の狙いはここにあったのだ。今の子どもたちはずっと過酷な競争に晒されなくてはいけない。
それはうちの子どもたちも例外ではない。
だからこそ長い人生の中で1回でもいいから競争率が異様に低い世界で(←そう、それがまさに子どものバレエにおける男の子の立ち位置!)、ちやほやされる醍醐味を味わってほしかったのだ。
どうやらその狙いはドンピシャだったようだ。
そして幕が開く。場所は芝公園のメルパルクホール。子どもたちのバレエクラスは百貨店内のカルチャーセンターに属しているので(←私のフラメンコも同様)、発表会はカルチャーセンターのほぼすべてのダンス系教室と合同でおこなう。
そういう事情もあり客席は超満員。数千人は下らない観客だろう。
果たして息子は無事に役目を果たすことができるのか?
いやあ~。ドキドキですわぁ~(←関西弁風)。
2010年10月14日木曜日
お受験の余波
T大附属T小への合格を見事に勝ち取った雪美ちゃん&由美子さん(仮名)親子と、同校を第一志望にしていたが本人の強い希望で私立の超難関校G小学校に進学が決まった陽太&みっちゃん(仮名)親子。
由緒正しい人気お嬢様学校S女学院に決まった詩音ちゃん&里美さん(仮名)。S女学園に決まった泰子のお友だち。
こうして結果が出揃ってみると、順当にというか、やはり努力した親子に勝利の女神は微笑んでいる。
少なくても私の周りではまぐれだとか、たまたまなんてことは起こらなかったわけで、やっぱりちゃんとやらないと小学校受験は成功しないんだなというサルにもわかるごく当たり前の真実を今さらながら実感したのであった。
「おうぅ。受験終わったかい? いつからロンドンに行くんだったっけか?」
お昼を食べてゆっくりしているところに早紀ちゃん(仮名)から電話がかかってきた。
早紀ちゃんは前の会社の先輩で、一緒に何かエンターテインメントと教育を絡めたおもしろいことはできないかと常にコンタクトを取っている。早紀ちゃんの娘さんがG大附属O小学校に通っていることもあり、意外と国立小受験にはくわしかったりする。
「あかんかったよ。ちょっと聞いてくれる? T大附属T小のときにさあ」
と2次試験のときの話をする。「誰か始めのあいさつをできる子はいませんか?」と言われた話に及ぶと、
「おいおいおい。まさかお前の娘、そこでのこのこ手なんて挙げてないよなぁ?」
と話の腰を折る早紀ちゃん。
「えっ? 挙げたよ」
「あちゃぁ~! それ絶対にダメだぜぇ。で、どうしたんだよぉ」
「“皆さん、今日はいいお天気ですね。この晴れやかなお天気に負けないように晴れやかな気持ちでクイズ大会をがんばりましょう”って言って、先生からほめられてみんなから拍手してもらったって」
「おいおいおいおい。そりゃあ落ちるぜぇ」
「な、なんでよっ!?」
「あのなあ。国立ってのは子どもたちは実験台なんだよ。同じぐらいのレベルの子どもたちを揃えたいんだよ。だからできないヤツもダメだし、できすぎるヤツもダメなんだよ。話を聞いてりゃあ、お前の娘は突出しすぎてるんだよ。そんな子は実験台に使えないだろ。私立だったらいいけどよぉ、そこんとこ考えないとな」
「終わりのあいさつをした子もいたよ」
「そいつもダメだったろ?」
「うん」
そうなのだ。白の23番さんも落ちていた。なんだよっ! できすぎるとダメってそんなことあるのかよっ!
ブー垂れる私に、
「まあ、中学受験でリベンジだな。でもダメで落ちるよりできすぎて落ちるほうがいいだろぉがよぉ」
となだめにかかる早紀ちゃん。
できすぎたから落ちたかどうかは本当のところはわからない。実はペーパーも本人はできたつもりでも答えが違っていた可能性もあるので、事実は定かではない。
けどそう思うことで自分の気持ちが楽になるのなら、そう思わせてもらおうかな。
早紀ちゃんよ。ありがとよっ!である。
そしてこの日は黒百合姉妹のライブであった。いそいそと準備をしているところにまたもや電話が鳴る。電話の相手はみっちゃんだ。
「雪美ちゃんのところはおめでとうだったけど、Aちゃん、本当に残念だったね。もしよかったら山ちゃん(←名古屋の激安居酒屋・世界の山ちゃん。うちとみっちゃんちの間になんと2店舗もある)にでも行って飲んじゃう?」
ときた。
みっちゃんと山ちゃんで痛飲かあ~。それもいいなあ。しかしこれから私たちはライブに行くのである。
また今度ねということで、ライブ会場にゴーっ!
4年ぶりぐらいに見た黒百合姉妹のライブはやっぱり素敵だった。
会場には姉妹のママ・ゆうさんもいて、なんとこの人、娘のライブそっちのけでひたすらマイケル・ジャクソンのドキュメンタリー「This is it.」がよかったという話をしている。もうマイケルの話をしているか、うちの娘と遊んでいるかのどちらかで、ゆうさんパワー全開である。
「そや、JURIからAちゃん、お受験してるって話聞いたけど、どうなったん?」
「あきませんでしたよっ!!!」
「まあ、しゃあないな。ええやん。どこでも学校なんて。うちなんかはまあピアノでもやらせばええやんって気楽に考えとったよ」
・・・そうか、そうなると娘たちは黒百合姉妹になるのだな。
ライブ後にはJURIがやってきて、
「そうそう、結局お受験どうだった?」
と聞くので、ダメだったことを伝えると、
「ふう~ん。まあねえ、確かにダメそうなオーラは見えてたけどね」
ときた。それならそんときにそう言ったってくれよっ! プンプン!
そしてライブの帰り道。娘が私にぽそりと呟いた。
「私、知ってるんだ。本当は私、クイズ大会に負けたんだよね」
そう言われて胸がギューッッと締め付けられた。なんてせつないことを言うんだ。
「いいんだよ。そんなことは。負けてなんていないよ。だってその証拠にM小学校からお手紙が来て、ぜひ4月から来てくださいだって」
私は握っていた手にグッと力を入れる。
M小学校とはうちから徒歩30秒以下のところにある近所の公立小学校である。必然的にM小学校に行くしかない。
「わーい。よかった~。お友だちはみんなM小学校なんだよね?」
「そうだよ。カリンちゃん(←洋子とタケルの娘。一番の仲良し)も亮太くん(←娘の片思いの相手。実は近所の地主のひ孫。クラスの女の子たちは全員亮太ラブ。けど神童・朔美ちゃんと両想いという噂)もM小学校だよ」
「よかった~。朔美ちゃんはMG小学校(←隣接する公立小学校。超高級住宅街にあり中学受験率100%の区内ナンバーワン人気校)に行っちゃうから、亮太に近づけるビッグ・チャ~ンス♪」
そう娘は無邪気に喜んでいる。
娘は心の優しい子だ。めいっぱい気を遣ってくれているのだろう。私は目頭を熱くしながら、娘をぎゅっと抱きしめる。
「そうだよ。小学校に行ったら楽しいことがいっぱいあるよ」
「わーい。私、M小学校に行くの、とっても楽しみ♪」
「そうだね。マミィも楽しみにしているよ。イギリスから帰ってきたら可愛いランドセル買いに行こうよ」
「本当? だったら私、赤いのがいいかな」
こうして私のお受験は終わりを告げた。もはやこんな経験をさせてもらうことは二度とないだろう。
息子もM小学校で決まりだっ! 文句あるかっ!
由緒正しい人気お嬢様学校S女学院に決まった詩音ちゃん&里美さん(仮名)。S女学園に決まった泰子のお友だち。
こうして結果が出揃ってみると、順当にというか、やはり努力した親子に勝利の女神は微笑んでいる。
少なくても私の周りではまぐれだとか、たまたまなんてことは起こらなかったわけで、やっぱりちゃんとやらないと小学校受験は成功しないんだなというサルにもわかるごく当たり前の真実を今さらながら実感したのであった。
「おうぅ。受験終わったかい? いつからロンドンに行くんだったっけか?」
お昼を食べてゆっくりしているところに早紀ちゃん(仮名)から電話がかかってきた。
早紀ちゃんは前の会社の先輩で、一緒に何かエンターテインメントと教育を絡めたおもしろいことはできないかと常にコンタクトを取っている。早紀ちゃんの娘さんがG大附属O小学校に通っていることもあり、意外と国立小受験にはくわしかったりする。
「あかんかったよ。ちょっと聞いてくれる? T大附属T小のときにさあ」
と2次試験のときの話をする。「誰か始めのあいさつをできる子はいませんか?」と言われた話に及ぶと、
「おいおいおい。まさかお前の娘、そこでのこのこ手なんて挙げてないよなぁ?」
と話の腰を折る早紀ちゃん。
「えっ? 挙げたよ」
「あちゃぁ~! それ絶対にダメだぜぇ。で、どうしたんだよぉ」
「“皆さん、今日はいいお天気ですね。この晴れやかなお天気に負けないように晴れやかな気持ちでクイズ大会をがんばりましょう”って言って、先生からほめられてみんなから拍手してもらったって」
「おいおいおいおい。そりゃあ落ちるぜぇ」
「な、なんでよっ!?」
「あのなあ。国立ってのは子どもたちは実験台なんだよ。同じぐらいのレベルの子どもたちを揃えたいんだよ。だからできないヤツもダメだし、できすぎるヤツもダメなんだよ。話を聞いてりゃあ、お前の娘は突出しすぎてるんだよ。そんな子は実験台に使えないだろ。私立だったらいいけどよぉ、そこんとこ考えないとな」
「終わりのあいさつをした子もいたよ」
「そいつもダメだったろ?」
「うん」
そうなのだ。白の23番さんも落ちていた。なんだよっ! できすぎるとダメってそんなことあるのかよっ!
ブー垂れる私に、
「まあ、中学受験でリベンジだな。でもダメで落ちるよりできすぎて落ちるほうがいいだろぉがよぉ」
となだめにかかる早紀ちゃん。
できすぎたから落ちたかどうかは本当のところはわからない。実はペーパーも本人はできたつもりでも答えが違っていた可能性もあるので、事実は定かではない。
けどそう思うことで自分の気持ちが楽になるのなら、そう思わせてもらおうかな。
早紀ちゃんよ。ありがとよっ!である。
そしてこの日は黒百合姉妹のライブであった。いそいそと準備をしているところにまたもや電話が鳴る。電話の相手はみっちゃんだ。
「雪美ちゃんのところはおめでとうだったけど、Aちゃん、本当に残念だったね。もしよかったら山ちゃん(←名古屋の激安居酒屋・世界の山ちゃん。うちとみっちゃんちの間になんと2店舗もある)にでも行って飲んじゃう?」
ときた。
みっちゃんと山ちゃんで痛飲かあ~。それもいいなあ。しかしこれから私たちはライブに行くのである。
また今度ねということで、ライブ会場にゴーっ!
4年ぶりぐらいに見た黒百合姉妹のライブはやっぱり素敵だった。
会場には姉妹のママ・ゆうさんもいて、なんとこの人、娘のライブそっちのけでひたすらマイケル・ジャクソンのドキュメンタリー「This is it.」がよかったという話をしている。もうマイケルの話をしているか、うちの娘と遊んでいるかのどちらかで、ゆうさんパワー全開である。
「そや、JURIからAちゃん、お受験してるって話聞いたけど、どうなったん?」
「あきませんでしたよっ!!!」
「まあ、しゃあないな。ええやん。どこでも学校なんて。うちなんかはまあピアノでもやらせばええやんって気楽に考えとったよ」
・・・そうか、そうなると娘たちは黒百合姉妹になるのだな。
ライブ後にはJURIがやってきて、
「そうそう、結局お受験どうだった?」
と聞くので、ダメだったことを伝えると、
「ふう~ん。まあねえ、確かにダメそうなオーラは見えてたけどね」
ときた。それならそんときにそう言ったってくれよっ! プンプン!
そしてライブの帰り道。娘が私にぽそりと呟いた。
「私、知ってるんだ。本当は私、クイズ大会に負けたんだよね」
そう言われて胸がギューッッと締め付けられた。なんてせつないことを言うんだ。
「いいんだよ。そんなことは。負けてなんていないよ。だってその証拠にM小学校からお手紙が来て、ぜひ4月から来てくださいだって」
私は握っていた手にグッと力を入れる。
M小学校とはうちから徒歩30秒以下のところにある近所の公立小学校である。必然的にM小学校に行くしかない。
「わーい。よかった~。お友だちはみんなM小学校なんだよね?」
「そうだよ。カリンちゃん(←洋子とタケルの娘。一番の仲良し)も亮太くん(←娘の片思いの相手。実は近所の地主のひ孫。クラスの女の子たちは全員亮太ラブ。けど神童・朔美ちゃんと両想いという噂)もM小学校だよ」
「よかった~。朔美ちゃんはMG小学校(←隣接する公立小学校。超高級住宅街にあり中学受験率100%の区内ナンバーワン人気校)に行っちゃうから、亮太に近づけるビッグ・チャ~ンス♪」
そう娘は無邪気に喜んでいる。
娘は心の優しい子だ。めいっぱい気を遣ってくれているのだろう。私は目頭を熱くしながら、娘をぎゅっと抱きしめる。
「そうだよ。小学校に行ったら楽しいことがいっぱいあるよ」
「わーい。私、M小学校に行くの、とっても楽しみ♪」
「そうだね。マミィも楽しみにしているよ。イギリスから帰ってきたら可愛いランドセル買いに行こうよ」
「本当? だったら私、赤いのがいいかな」
こうして私のお受験は終わりを告げた。もはやこんな経験をさせてもらうことは二度とないだろう。
息子もM小学校で決まりだっ! 文句あるかっ!
2010年10月7日木曜日
銀座の先生に電話してみた②
ドキドキしながら電話をかけると女性アシスタントが、即座に銀座の先生につないでくれる。
「お久しぶりですね。お元気でしたか?」
相手を包み込むような柔らかな口調は電話を通しても、相変わらずだ。
「実は娘の小学校受験の件なんですけど」
時間ももったいないので単刀直入に切り出す私。
「ああ、G大附属T小でしたよね。いかがでしたか?」
おおっ! 前回訪れてから10ヶ月ほど経っているのに内容を覚えているぞ、先生。
「実は落ちたんです。本当は一次抽選に落ちた日に電話しようと思ってたんですけど、国立小は全部受けるようにということだったので、結果が全部出る今日まで待ってたんです。G大附属T小とO小、O女附属小学校は一次抽選で落ちて、唯一抽選が通ったのがT大附属T小で・・」
「あっ、たぶん前にも言ったと思うんですけど、T大附属T小はダメです」
みなまで言い終わらないうちに私の言葉を遮る先生。
「けどそこしか抽選が通らなかったんです」
「G大附属T小がダメでしたか? 信じられない。ものすごくショックです」
ええ??? ショックを受けてるのはこっちやっちゅうねんっ!
「ああ~、全部逆に出てしまったんですねぇ。T大附属T小というのは娘さんには合わないんです。娘さんのいいところを発揮できないというか、ここじゃあもったいないんですよねぇ。けどいいセンまでいってたと思います。選考過程で揉めてますね。どうやら保守的な先生が多くて落とされてしまったみたいですけど、進歩的な先生の力が強ければ通ってましたよ」
と、あんた、その場におって見たんかっ!?と突っ込みたくなるようなことを言い始める先生。
「娘さんの場合はものすご~くハッキリとG大附属T小って出てたんですよ。むしろあんなにハッキリとOKと出るのは珍しいぐらいなんです。だいたいはもっとボヤ~とした感じで出るもんなんですけど、私の言い方も悪かったかもしれません。私も普段はあそこまで断言しないんですけどね。あとたまにですけど、15件中1件、2件は大ハズしすることもあるんです。そういうのに限ってハッキリ見えていることだったりするんですけどね。たまたまそれに当たってしまったというか・・・」
おいっ! ハズしたのはたまたまかよっ! クジ運が悪いから抽選も全然当たらなかったけど、こんなめったにないというハズレクジだけ当てるというのも納得いかないぞっ!
なんだかハズしっぱなしの人生みたいじゃんかよぉ~(号泣)。
「私、相当ショックを受けています。本当にG大附属T小、ダメだったんですか? それにしても娘さんにはまだG大附属T小の制服が見えてるんですよ。4月から行かれる公立校に制服とかあったりするんですか?」
「まさか。普通の公立なんで私服ですよ」
「おかしいなあ~。じゃあなんでずーっと制服が見え続けてるんだろう?」(←知らねぇ~よ。こっちが聞きたいぜ)
「中学の制服とかでは?」
「いや。小学校の制服です。G大附属T小って編入とかないんですか?」
「普通ないでしょっ! あるとすれば空きがあるときに他県の国立小からの転籍でしょ? 公立小から国立小に入ったなんて話聞いたことないですよ」
「そうでしょうねえ。けど見え続けているので何かあるんだと思います。今後もG大附属T小の動向には注目していてください。あと娘さんは公立小でも十分うまくやっていきますよ。小さなトラブルは出てくるかもしれませんが、大事になるようなことはなさそうです。優等生で勉強もできるし、心配はないでしょう」
「これだけハズされるというのは何かあるんでしょうか。たとえばどこかで運命が変わってしまったとか?」
「そうですね。これだけハズれると何か影響しているかもしれません。今度いらっしゃるときには本人をつれてくるか、写真を持ってきてもらえますか。もう一度娘さんを鑑定し直す必要があります」
「私、結構いろんな人に娘はG大附属T小に入るって占いで言われたってベラベラしゃべってたんですけど、そういうのって影響しますかねぇ?」
「それはないです。それにしても本当になんでハズしたんか私にもわかりません。まだ見え続けてますからねえ」
先生自体も不思議だ不思議だと連発するのだが、そんなこと言われてもな、である。
「それより弟さんです。お姉ちゃんのほうは公立でもやっていけますが、弟さんはマズいです」
といきなり息子が出てきた。
「この人は公立だとダメです。ヤバいです。けどお姉ちゃんと同じ学校って出てますから、このままだと公立になってしまいます。そこはなんとか阻止しないと」
阻止するっていったいどうするんだよっ! けど理由は聞かないまでも、なんとなく息子の場合だと公立じゃダメな感じは確かにするんだよなあ~。
あれこれ私も突っ込んで約束の15分はとっくに過ぎ、かれこれ30分経とうとしている。
さすがにそろそろということになり、では次回ということになり電話を切った。
30分といえば1万円分。ちょっと得した気分だと一瞬思ったが、これだけハズしたんだから3ヶ月先といわずすぐに診てくれとか、今度は鑑定料まけろとかゴネてもよかったのかな。
しかし所詮、占いは当たるも八卦、当たらぬも八卦。野暮は禁物というやつか。
「お久しぶりですね。お元気でしたか?」
相手を包み込むような柔らかな口調は電話を通しても、相変わらずだ。
「実は娘の小学校受験の件なんですけど」
時間ももったいないので単刀直入に切り出す私。
「ああ、G大附属T小でしたよね。いかがでしたか?」
おおっ! 前回訪れてから10ヶ月ほど経っているのに内容を覚えているぞ、先生。
「実は落ちたんです。本当は一次抽選に落ちた日に電話しようと思ってたんですけど、国立小は全部受けるようにということだったので、結果が全部出る今日まで待ってたんです。G大附属T小とO小、O女附属小学校は一次抽選で落ちて、唯一抽選が通ったのがT大附属T小で・・」
「あっ、たぶん前にも言ったと思うんですけど、T大附属T小はダメです」
みなまで言い終わらないうちに私の言葉を遮る先生。
「けどそこしか抽選が通らなかったんです」
「G大附属T小がダメでしたか? 信じられない。ものすごくショックです」
ええ??? ショックを受けてるのはこっちやっちゅうねんっ!
「ああ~、全部逆に出てしまったんですねぇ。T大附属T小というのは娘さんには合わないんです。娘さんのいいところを発揮できないというか、ここじゃあもったいないんですよねぇ。けどいいセンまでいってたと思います。選考過程で揉めてますね。どうやら保守的な先生が多くて落とされてしまったみたいですけど、進歩的な先生の力が強ければ通ってましたよ」
と、あんた、その場におって見たんかっ!?と突っ込みたくなるようなことを言い始める先生。
「娘さんの場合はものすご~くハッキリとG大附属T小って出てたんですよ。むしろあんなにハッキリとOKと出るのは珍しいぐらいなんです。だいたいはもっとボヤ~とした感じで出るもんなんですけど、私の言い方も悪かったかもしれません。私も普段はあそこまで断言しないんですけどね。あとたまにですけど、15件中1件、2件は大ハズしすることもあるんです。そういうのに限ってハッキリ見えていることだったりするんですけどね。たまたまそれに当たってしまったというか・・・」
おいっ! ハズしたのはたまたまかよっ! クジ運が悪いから抽選も全然当たらなかったけど、こんなめったにないというハズレクジだけ当てるというのも納得いかないぞっ!
なんだかハズしっぱなしの人生みたいじゃんかよぉ~(号泣)。
「私、相当ショックを受けています。本当にG大附属T小、ダメだったんですか? それにしても娘さんにはまだG大附属T小の制服が見えてるんですよ。4月から行かれる公立校に制服とかあったりするんですか?」
「まさか。普通の公立なんで私服ですよ」
「おかしいなあ~。じゃあなんでずーっと制服が見え続けてるんだろう?」(←知らねぇ~よ。こっちが聞きたいぜ)
「中学の制服とかでは?」
「いや。小学校の制服です。G大附属T小って編入とかないんですか?」
「普通ないでしょっ! あるとすれば空きがあるときに他県の国立小からの転籍でしょ? 公立小から国立小に入ったなんて話聞いたことないですよ」
「そうでしょうねえ。けど見え続けているので何かあるんだと思います。今後もG大附属T小の動向には注目していてください。あと娘さんは公立小でも十分うまくやっていきますよ。小さなトラブルは出てくるかもしれませんが、大事になるようなことはなさそうです。優等生で勉強もできるし、心配はないでしょう」
「これだけハズされるというのは何かあるんでしょうか。たとえばどこかで運命が変わってしまったとか?」
「そうですね。これだけハズれると何か影響しているかもしれません。今度いらっしゃるときには本人をつれてくるか、写真を持ってきてもらえますか。もう一度娘さんを鑑定し直す必要があります」
「私、結構いろんな人に娘はG大附属T小に入るって占いで言われたってベラベラしゃべってたんですけど、そういうのって影響しますかねぇ?」
「それはないです。それにしても本当になんでハズしたんか私にもわかりません。まだ見え続けてますからねえ」
先生自体も不思議だ不思議だと連発するのだが、そんなこと言われてもな、である。
「それより弟さんです。お姉ちゃんのほうは公立でもやっていけますが、弟さんはマズいです」
といきなり息子が出てきた。
「この人は公立だとダメです。ヤバいです。けどお姉ちゃんと同じ学校って出てますから、このままだと公立になってしまいます。そこはなんとか阻止しないと」
阻止するっていったいどうするんだよっ! けど理由は聞かないまでも、なんとなく息子の場合だと公立じゃダメな感じは確かにするんだよなあ~。
あれこれ私も突っ込んで約束の15分はとっくに過ぎ、かれこれ30分経とうとしている。
さすがにそろそろということになり、では次回ということになり電話を切った。
30分といえば1万円分。ちょっと得した気分だと一瞬思ったが、これだけハズしたんだから3ヶ月先といわずすぐに診てくれとか、今度は鑑定料まけろとかゴネてもよかったのかな。
しかし所詮、占いは当たるも八卦、当たらぬも八卦。野暮は禁物というやつか。
2010年10月6日水曜日
銀座の先生に電話してみた①
さて気が治まらない私である。
オカンは「信じるほうがたーけ(たわけ)だ」と言うが、だって銀座の先生、あんなに断言してたじゃんっ!!
本当は受かると言われていたG大附属T小の一次抽選に落ちたときに連絡しようと思ってたんだけど、取り急ぎ受かってもダメでも国立小の受験がすべて終わってからにしようと心に決めていた。
そうだよ。終わっちゃったじゃんかよっ! 小学校受験がよぉ~!
「あらっ、ご無沙汰しています」とは、私が名乗ったあとに電話口で出た女性の第一声だ。
さすがに私が紹介した人たちが多数訪れているためか、いちげんさん扱いはされていない。
「ワレ、2万円も鑑定料払わせやがったくせに、思いっきりはずしやがったやんけっ!」と言いたいところをグぅーとこらえ、「予約を入れたいのですが」と性懲りもなく3回目の予約を入れる私。
電話で物を聞くにしてもまず予約を入れないと、答えてくれないような気がしたからだ。まったくぅ~、小心者な私。
「次回はですねえ、3ヶ月先になりますね」
なぬっ! 3ヶ月先だとぉ~!!! 最初は1ヶ月待ちで次が2ヶ月待ちで今回が3ヶ月待ちだとは、どんどん延びてるじゃんっ!
「一番早いところで3月16日になります」
マジか!? 来年のことを言うと鬼が笑うぞ。
「じゃあ、その日でいいです。けどその前にちょっとどうしても先生にお電話でもいいので早急に確認したいことがあるんですけど」
「そうですか。でも先生は今、ちょっと買い物に出かけているので戻ったら確認します。あと15分後にもう一度電話をもらえますか?」
ということなので了解して、いったん電話を切る。
しかし買い物ってなんだろう? アシスタントに行かせりゃいいのに。
言われたとおり15分後に電話をかけると、再度女性のアシスタントが出て、
「確認したところ、清永さんなら15分ほどお電話でお話してもいいと言っています。今、鑑定中なのでゆっくりお話ができる9時半すぎぐらいにお電話いただけますか」
ときた。
おしっ! 15分だったら5000円分だなっ!
キッチンに立ってあれこれHanaちゃんが来たときのためのつまみやら夕食の準備をしていたら、家の電話が鳴る。
電話の相手は夫であった。
「ハロー、元気? ロンドンは寒いよ。雪降った」
背後では息子が誰かとふざけているのか、笑い声が聞こえてくる。息子の笑い声と夫の屈託のない声を聞いているうちに、張り詰めていた何かがプチッと切れたみたいに涙が溢れてくる。
「受験だめだったよ」
娘がTVアニメに夢中なのをいいことに、彼女から見えないように子どものように泣いた。
「ええええ~!! なんで泣くの?」
「だって落ちたから」
「それで?」
「それでって何よ」
「いいじゃん。ミーはホッとしてるよ。どうせ送り迎えするのミーじゃん。M小学校はいいよ。近いし。友だちもみんな行くし。国立行ったって、ミーたちは将来どこ住んでるかわかんないじゃん」
「そうだけど、けど私がもっと早くから準備してあげればよかったとか、Wだってもっと早く行かせてあげればよかったとか、いろいろ考えちゃうよ」
「M小学校はいいところだよ。いつまでもそんなつまんないこと言ってないで、早く気持ちを切り替えて。じゃあロンドンで待ってるから。あ、そうそうニースで行きたいレストランとかも調べておいてね。毎日電話入れるから」
そう言って夫は電話を切った。
そうは言うが気持ちなんぞは、なかなか切り替えられないものである。
そうこうしているうちにHanaちゃんがうちにやって来て、あらかじめ冷やしておいたカヴァの辛口を開け、氷を入れたワインクーラーにボトルを放り込んでおく。
娘はHanaちゃんが来てくれて大喜びしている。娘が起きている間は今日の結果の話はご法度だ。
そのあたりはHanaちゃんも心得ている。
「さっき、銀座の先生のとこ、電話したんよ」
「マジですかっ? で、どうなったんです?」
「先に予約入れてんけど、3ヶ月先やって」
「ひぃ~!」
「で、話したいって言ったら9時半に電話くれやて。15分ぐらいなら話してくれるらしいよ」
「ホンマですか。へえ~、どう先生、説明するんですかねぇ。この結果を」
「いやあ~、このあとの楽しみやなぁ」
3人で夕食を囲みながらおしゃべりしているうちに約束の時間が近づいてきた。
「美央さん、そろそろ電話してください。私、Aちゃんとここでおしゃべりしてますから」
とナイス・フォローのHanaちゃん。
銀座の先生よ。この落とし前はどうつけてくれる?
オカンは「信じるほうがたーけ(たわけ)だ」と言うが、だって銀座の先生、あんなに断言してたじゃんっ!!
本当は受かると言われていたG大附属T小の一次抽選に落ちたときに連絡しようと思ってたんだけど、取り急ぎ受かってもダメでも国立小の受験がすべて終わってからにしようと心に決めていた。
そうだよ。終わっちゃったじゃんかよっ! 小学校受験がよぉ~!
「あらっ、ご無沙汰しています」とは、私が名乗ったあとに電話口で出た女性の第一声だ。
さすがに私が紹介した人たちが多数訪れているためか、いちげんさん扱いはされていない。
「ワレ、2万円も鑑定料払わせやがったくせに、思いっきりはずしやがったやんけっ!」と言いたいところをグぅーとこらえ、「予約を入れたいのですが」と性懲りもなく3回目の予約を入れる私。
電話で物を聞くにしてもまず予約を入れないと、答えてくれないような気がしたからだ。まったくぅ~、小心者な私。
「次回はですねえ、3ヶ月先になりますね」
なぬっ! 3ヶ月先だとぉ~!!! 最初は1ヶ月待ちで次が2ヶ月待ちで今回が3ヶ月待ちだとは、どんどん延びてるじゃんっ!
「一番早いところで3月16日になります」
マジか!? 来年のことを言うと鬼が笑うぞ。
「じゃあ、その日でいいです。けどその前にちょっとどうしても先生にお電話でもいいので早急に確認したいことがあるんですけど」
「そうですか。でも先生は今、ちょっと買い物に出かけているので戻ったら確認します。あと15分後にもう一度電話をもらえますか?」
ということなので了解して、いったん電話を切る。
しかし買い物ってなんだろう? アシスタントに行かせりゃいいのに。
言われたとおり15分後に電話をかけると、再度女性のアシスタントが出て、
「確認したところ、清永さんなら15分ほどお電話でお話してもいいと言っています。今、鑑定中なのでゆっくりお話ができる9時半すぎぐらいにお電話いただけますか」
ときた。
おしっ! 15分だったら5000円分だなっ!
キッチンに立ってあれこれHanaちゃんが来たときのためのつまみやら夕食の準備をしていたら、家の電話が鳴る。
電話の相手は夫であった。
「ハロー、元気? ロンドンは寒いよ。雪降った」
背後では息子が誰かとふざけているのか、笑い声が聞こえてくる。息子の笑い声と夫の屈託のない声を聞いているうちに、張り詰めていた何かがプチッと切れたみたいに涙が溢れてくる。
「受験だめだったよ」
娘がTVアニメに夢中なのをいいことに、彼女から見えないように子どものように泣いた。
「ええええ~!! なんで泣くの?」
「だって落ちたから」
「それで?」
「それでって何よ」
「いいじゃん。ミーはホッとしてるよ。どうせ送り迎えするのミーじゃん。M小学校はいいよ。近いし。友だちもみんな行くし。国立行ったって、ミーたちは将来どこ住んでるかわかんないじゃん」
「そうだけど、けど私がもっと早くから準備してあげればよかったとか、Wだってもっと早く行かせてあげればよかったとか、いろいろ考えちゃうよ」
「M小学校はいいところだよ。いつまでもそんなつまんないこと言ってないで、早く気持ちを切り替えて。じゃあロンドンで待ってるから。あ、そうそうニースで行きたいレストランとかも調べておいてね。毎日電話入れるから」
そう言って夫は電話を切った。
そうは言うが気持ちなんぞは、なかなか切り替えられないものである。
そうこうしているうちにHanaちゃんがうちにやって来て、あらかじめ冷やしておいたカヴァの辛口を開け、氷を入れたワインクーラーにボトルを放り込んでおく。
娘はHanaちゃんが来てくれて大喜びしている。娘が起きている間は今日の結果の話はご法度だ。
そのあたりはHanaちゃんも心得ている。
「さっき、銀座の先生のとこ、電話したんよ」
「マジですかっ? で、どうなったんです?」
「先に予約入れてんけど、3ヶ月先やって」
「ひぃ~!」
「で、話したいって言ったら9時半に電話くれやて。15分ぐらいなら話してくれるらしいよ」
「ホンマですか。へえ~、どう先生、説明するんですかねぇ。この結果を」
「いやあ~、このあとの楽しみやなぁ」
3人で夕食を囲みながらおしゃべりしているうちに約束の時間が近づいてきた。
「美央さん、そろそろ電話してください。私、Aちゃんとここでおしゃべりしてますから」
とナイス・フォローのHanaちゃん。
銀座の先生よ。この落とし前はどうつけてくれる?
2010年10月5日火曜日
ブルータスよ。お前もか?
娘が幼児教室に行っている間、私は悩んでいた。
「今晩は娘とふたりでどうしよう?」と。
夫と息子はすでにロンドンにいるので、私たちはふたりっきりだ。
こんな気分のときに娘とふたりっきりだと何かよからぬことを口走ってしまいそうで、自分が怖い。誰かがそばにいてほしい。
こんなときにいっしょにいてくれるとうれしいのがHANAちゃんだ。
家が近いということに加えて、HANAちゃんには包容力がある。私より13歳も年下なのだが、すべてを赦しすべてを受け止めすべてを包み込んでくれるような圧倒的な安心感を与えてくれる。
お願いだからいてくれよと祈るような気持ちで携帯に電話を入れると、「どうでしたか? 合格発表!?」といきなり聞いてくる。
「あかんかったよ」
「マジでっ!? そんなんありえへんわ。なんかの間違いちゃいますか?」
「間違いちゃうよっ! そうや、あんた今何してるん?」
「え? ああ、今目白の美容院で髪切ってるんですわ」
「またかいな」
そうなのだ。「今晩うちに来い」と突然私が誘うとき、なぜかHANAちゃんはいつも目白の美容院で髪を切っていたり、染めていたり、パーマをかけていたりするのだ。
「夜、なんか用事あんの?」
「ないですぅ、ないですぅ。あ、ほなお邪魔していいですかねえ」
「何がなんでも絶対にうち来てっ!」
「了解ですぅ。美容院終わったら速攻で向かいますわ」
よし。今晩の関門はこれで切り抜けた。HANAちゃんの胸を借りて思いっきり泣こう。
家に帰ったらHANAちゃんが来るのを待ちながら、あっちこっちに電話をかけまくる。
まずはオカンである。
「ふうん。まあしゃあないがね。あんた、そんな学校行ってまったら入ったあとついてけぇへんよ。公立でええほうにおったほうがええがね」
なぜかオカンは昔から同じようなことを言い続けている。私や弟たちが高校受験とかするときもそうだった。
オカンの言い分は「あまり難関校に入ると優秀なみんなについていけなくて、落ちこぼれて苦労する」というものだ。
これはオカンの強固な信念らしく、来年中学受験を控えている甥っ子にも同じことを言っている。
私はまったくそうは思わない。優秀な同級生たちと切磋琢磨していったほうが本人が伸びる可能性がよっぽど高いではないかと思う。
井の中の蛙で楽をするよりは、大海を泳ぎまわれる環境である。
「あんたもあんたやわ。占いなんか信じとったんかね。そんなもん、当たるわけないがねっ」
「ええ~、ママだって占ってもらいたいって言ってたくせに」
「そんなもんはお遊びなの。そんなもん信じるほうがターケ(たわけ)なの」
とにべもない。そうか信じる者は救われないのか?
そのあとは沙織(仮名)である。
「ええ~、あかんかったん? 銀座の先生、そんなアホなって感じやなあ。あんたが国立やって言うからがんばったんやっちゅうのになあ~。まあ気ぃ、落とさんとなんか楽しいこと考えてたほうがええでぇ~」
そうやなあ。
泰子(仮名)の場合は「ショックすぎるよっ! 先生が外すなんて!」と大騒ぎし、みっちゃん(仮名)はしんみりと「そうか。でも学習指導要領も変わるから公立もどんどん良くなっていくと思うから、心配要らないと思うよ」と締めくくった。
念のためとは言え、「2次試験が通っていたら、3次抽選のときに娘を預かってほしい」と頼んでいた朔美ちゃん(仮名)ママに、もうその必要がない旨を伝えねば。
あ~あ、先走った間抜けなお願いをしちゃったよなあと赤面することしきりだ。
しかしなかなか朔美ちゃんママとは連絡がつかない。そういえば合格発表の場でも会わなかったよなあ。
仕方がないので用件を留守番電話に吹き込む。
夜になってようやく朔美ちゃんママから、「ごめんね、連絡もらってたのに」と電話が入る。
「メッセージ入れた通りなんだけど、明日もうだいじょうぶになったから。ところで朔美ちゃんはどうだったの?」
「あ、う、うん。そっかあ、Aちゃんは絶対にだいじょうぶだと思ってたんだけど・・・」
何やら口ごもる朔美ちゃんママ。
「実はなんの間違いだかさっぱりわからなくて、うちでもみんな戸惑っていて、それでおじいちゃんおばあちゃんまでこっちに出てきちゃって、それで連絡が遅くなったんだけど・・・」
何やら前置きが長い朔美ちゃんママ。
「こんなことありえるのかしらって感じなんだけど、なぜか朔美の番号があったのよ」
「!」
「本番でできてなかったら絶対にだめだと思ってたんだけど、なぜか合格してたんだよね」
最後のほうは聞き取れないぐらい小声になっていく朔美ちゃんママの声。
なんとブルータスよ。お前もかっ!?
結局、同じ保育園から3人で受けに行って、落ちたのはうちの娘だけだったのだ。
オー・マイ・ガァ~!!! なんたる不条理!
じゃあ尚更、受かってたら3次抽選のときに娘を預かってくれって前もってお願いしていたの、どうしようもなくアホなお願いだったではないかっ!
あ~、恥ずかしい。もう私、バカみたい。
「そっか。おめでとう。雪美ちゃんも合格していたから、明日の抽選ふたりとも通るといいね」
「いや、なんだか怖くて。うちなんかで本当にいいんですかって申し訳ない感じで」
「そんなこと思わなくていいよ。朔美ちゃんってやっぱ神童だったんだね。明日結果がわかったら教えてね」
そう言って電話を切った。
あ~、私ってホント間抜けだわ。ちゃんと合格できる実力のある朔美ちゃんにこれまであれこれアドバイスしてたなんて、図々しいのにも程がある。もう恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。
とはいえ、ここまできたらきれいごとでもなんでもなくて、雪美ちゃんと朔美ちゃんには抽選も勝ち抜いていってほしい。
さあ、我らが屍を踏み越えて行け!
「今晩は娘とふたりでどうしよう?」と。
夫と息子はすでにロンドンにいるので、私たちはふたりっきりだ。
こんな気分のときに娘とふたりっきりだと何かよからぬことを口走ってしまいそうで、自分が怖い。誰かがそばにいてほしい。
こんなときにいっしょにいてくれるとうれしいのがHANAちゃんだ。
家が近いということに加えて、HANAちゃんには包容力がある。私より13歳も年下なのだが、すべてを赦しすべてを受け止めすべてを包み込んでくれるような圧倒的な安心感を与えてくれる。
お願いだからいてくれよと祈るような気持ちで携帯に電話を入れると、「どうでしたか? 合格発表!?」といきなり聞いてくる。
「あかんかったよ」
「マジでっ!? そんなんありえへんわ。なんかの間違いちゃいますか?」
「間違いちゃうよっ! そうや、あんた今何してるん?」
「え? ああ、今目白の美容院で髪切ってるんですわ」
「またかいな」
そうなのだ。「今晩うちに来い」と突然私が誘うとき、なぜかHANAちゃんはいつも目白の美容院で髪を切っていたり、染めていたり、パーマをかけていたりするのだ。
「夜、なんか用事あんの?」
「ないですぅ、ないですぅ。あ、ほなお邪魔していいですかねえ」
「何がなんでも絶対にうち来てっ!」
「了解ですぅ。美容院終わったら速攻で向かいますわ」
よし。今晩の関門はこれで切り抜けた。HANAちゃんの胸を借りて思いっきり泣こう。
家に帰ったらHANAちゃんが来るのを待ちながら、あっちこっちに電話をかけまくる。
まずはオカンである。
「ふうん。まあしゃあないがね。あんた、そんな学校行ってまったら入ったあとついてけぇへんよ。公立でええほうにおったほうがええがね」
なぜかオカンは昔から同じようなことを言い続けている。私や弟たちが高校受験とかするときもそうだった。
オカンの言い分は「あまり難関校に入ると優秀なみんなについていけなくて、落ちこぼれて苦労する」というものだ。
これはオカンの強固な信念らしく、来年中学受験を控えている甥っ子にも同じことを言っている。
私はまったくそうは思わない。優秀な同級生たちと切磋琢磨していったほうが本人が伸びる可能性がよっぽど高いではないかと思う。
井の中の蛙で楽をするよりは、大海を泳ぎまわれる環境である。
「あんたもあんたやわ。占いなんか信じとったんかね。そんなもん、当たるわけないがねっ」
「ええ~、ママだって占ってもらいたいって言ってたくせに」
「そんなもんはお遊びなの。そんなもん信じるほうがターケ(たわけ)なの」
とにべもない。そうか信じる者は救われないのか?
そのあとは沙織(仮名)である。
「ええ~、あかんかったん? 銀座の先生、そんなアホなって感じやなあ。あんたが国立やって言うからがんばったんやっちゅうのになあ~。まあ気ぃ、落とさんとなんか楽しいこと考えてたほうがええでぇ~」
そうやなあ。
泰子(仮名)の場合は「ショックすぎるよっ! 先生が外すなんて!」と大騒ぎし、みっちゃん(仮名)はしんみりと「そうか。でも学習指導要領も変わるから公立もどんどん良くなっていくと思うから、心配要らないと思うよ」と締めくくった。
念のためとは言え、「2次試験が通っていたら、3次抽選のときに娘を預かってほしい」と頼んでいた朔美ちゃん(仮名)ママに、もうその必要がない旨を伝えねば。
あ~あ、先走った間抜けなお願いをしちゃったよなあと赤面することしきりだ。
しかしなかなか朔美ちゃんママとは連絡がつかない。そういえば合格発表の場でも会わなかったよなあ。
仕方がないので用件を留守番電話に吹き込む。
夜になってようやく朔美ちゃんママから、「ごめんね、連絡もらってたのに」と電話が入る。
「メッセージ入れた通りなんだけど、明日もうだいじょうぶになったから。ところで朔美ちゃんはどうだったの?」
「あ、う、うん。そっかあ、Aちゃんは絶対にだいじょうぶだと思ってたんだけど・・・」
何やら口ごもる朔美ちゃんママ。
「実はなんの間違いだかさっぱりわからなくて、うちでもみんな戸惑っていて、それでおじいちゃんおばあちゃんまでこっちに出てきちゃって、それで連絡が遅くなったんだけど・・・」
何やら前置きが長い朔美ちゃんママ。
「こんなことありえるのかしらって感じなんだけど、なぜか朔美の番号があったのよ」
「!」
「本番でできてなかったら絶対にだめだと思ってたんだけど、なぜか合格してたんだよね」
最後のほうは聞き取れないぐらい小声になっていく朔美ちゃんママの声。
なんとブルータスよ。お前もかっ!?
結局、同じ保育園から3人で受けに行って、落ちたのはうちの娘だけだったのだ。
オー・マイ・ガァ~!!! なんたる不条理!
じゃあ尚更、受かってたら3次抽選のときに娘を預かってくれって前もってお願いしていたの、どうしようもなくアホなお願いだったではないかっ!
あ~、恥ずかしい。もう私、バカみたい。
「そっか。おめでとう。雪美ちゃんも合格していたから、明日の抽選ふたりとも通るといいね」
「いや、なんだか怖くて。うちなんかで本当にいいんですかって申し訳ない感じで」
「そんなこと思わなくていいよ。朔美ちゃんってやっぱ神童だったんだね。明日結果がわかったら教えてね」
そう言って電話を切った。
あ~、私ってホント間抜けだわ。ちゃんと合格できる実力のある朔美ちゃんにこれまであれこれアドバイスしてたなんて、図々しいのにも程がある。もう恥ずかしすぎて穴があったら入りたい。
とはいえ、ここまできたらきれいごとでもなんでもなくて、雪美ちゃんと朔美ちゃんには抽選も勝ち抜いていってほしい。
さあ、我らが屍を踏み越えて行け!
2010年10月4日月曜日
合格発表の結果は?
由美子さん(仮名)・雪美ちゃん(仮名)親子と待ち合わせをして、T大附属T小学校へ向かう。12月の下旬に入ったけど、穏やかで暖かい日だった。
「もう私立に行く準備しているから」と由美子さん。
「結果も見てないのに気が早いんだから」
「朔美ちゃん(仮名)ママとも話したんだけど、受かってるのAちゃんだけだから」
「そんなのわかんないじゃん」
「いやわかるよ。だってうちも朔美ちゃんも図形で4問も5問も残してるし、出題も今年はそれほど難しくないからね。これでできてないとキツイよ」
「そうかなあ」
そう言いつつも、確かにそれだけできてないと辛いかもなと心の中で思う。と同時に心は明日の抽選に飛んでいる。ここまで来て最後の抽選で落ちると水の泡である。
けど銀座の先生が間違いないって太鼓判を押してくれたんだもん。まあ太鼓判を押してくれたG大附属T小は一次試験にあたる抽選で落ちてしまい、あげくT大附属T小は合わないと言われていたけど、国立に行くことは間違いないって断言してたんだから、ここで落ちているはずがない。
絶対にだいじょうぶ。
ドキドキする胸を押さえつつ自分に言い聞かせる。
合否は掲示板に張り出されている。ずらりと並ぶ番号。
ふと大学の合格発表を思い出したが、その光景は幻想だとすぐに思い当たる。なぜなら私の受けた大学は全部他県にあり遠かったので、合格発表のためにわざわざ大学には出向かず、電報での合否連絡にしていたからだ。
T大附属T小は約4000人が一次に出願し、抽選で1800人に絞られ(←ただこの後、私立等がどんどん決まり受験を辞退する人も出てくるので、実際に2次まで進むのは1500人前後だという)、2次試験でおおよそ260人ぐらいに絞られ、3次抽選で男子80人、女子80人計160人が合格者だということになる。
前にも書いたけどここが最後の小学校受験の日程に当たるため、合格者160人から辞退者が出ることはない。
娘の受験番号は217番。試験当日は白の7番だった。
217番を目で追う。
あれ!? すぐに異変に気づく。200番台がほとんど出ていなかったのだ。
ないっ!!!!
217番がないっ! 嘘でしょっ!?
酸っぱいものが込み上げてくる。と同時に、「あれ!? 受かってる!」と突拍子もない声を由美子さんが上げている。
「Aちゃん、どうだった?」
「ないよっ! 番号」
「そうか。あの悪いんだけど、3次の受付しなきゃいけないから、雪美見ていて!」
と言ったと同時に受付場所になっている講堂へ駆け込んで行く由美子さん。
ガーンっ!!!!!
「あれ? ママどっか行っちゃったぁ~。Aちゃんママ、うちのママどこ行ったの?」
と間延びしたような雪美ちゃんの声。
「あ、うん。すぐ戻ってくるよ。だからそれまでAと遊んでて」
そう言いながらちょっと由美子さんって無神経だよなと、ムッとくる。
でも逆の立場だったら、私も舞い上がって同じことをしたのかな。
すると後ろからポンと肩を叩かれる。振り返ると幼児教室でいっしょの澪ちゃん(仮名)とママだった。
「やっぱダメだったよ。そっちは?」
と自嘲気味の澪ちゃんママ。
「うちも。けどいっしょに来た保育園のお友だちは合格してて、今3次の受付に行ったよ。だからそのお友だちも見てるの」
「そっか~。それちょっといやなシチュエーションだねえ」
「まあね」
「今日、幼児教室のクラス、これからあるけど行く?」
「うん。そのつもりで用意もしてきたよ」
「じゃあいっしょに行こうか」
ということで澪ちゃん親子も由美子さんの戻りを待ってくれることに。
その間、泰子にもメールを入れ、何度も掲示板も見直した。何度掲示板を見直してもやっぱり217番という数字はない。
おっ、そういえば白の23番さんはどうなったんだ? この数字の流れで行くと白の23番さんは233番のはず。
233番もないっ!
あんなにすばらしい終わりのあいさつをした白の23番さんも落ちているとは、いったいどういうことなのだ!?
わからん! さっぱりわからん! なんでうちの娘と白の23番さんが落ちているんだ!?
不条理だ。この世は矛盾に満ちている。
胃がキューっと縮んで固くなっているのがわかる。もう人目も構わず大声で泣き出したい感じ。
娘は何がおこなわれているのか、全然わかっていない。ここで私が悲しんだり、怖い顔をしたら心に傷を負ってしまうかもしれない。
そう思うと極力微笑むようにしようと思うと、体がバラバラに動き出してしまうような感覚に襲われる。
しばらくしたら由美子さんが戻ってきたので、澪ちゃんママを紹介し、3人でとりあえず私たちの幼児教室が入っている百貨店まで向かった。
まだクラスが始まるまで少し時間があったので、お茶をすることになったのだけど、澪ちゃんママもいたので敢えて、
「あぁ~、もうやってられないから飲むよっ!」
と言って、百貨店の地下にあるイタリアン・バールに入る。
「私もビール、飲んじゃぉ~」と澪ちゃんママ。
「じゃあ私も飲もうかな」と由美子さん。
あんたは飲まんでよろしっ!
けどここで優雅にカプチーノとか飲まれたらやっぱムカつくかな。
真昼間から3人でビールをかっくらい(←娘たちはオレンジジュース)、由美子さんに向かって、
「ここまできたら抽選、絶対に勝ち取ってこいよっ!」
とドスの効いた声でエールを送る私。
「そーよ、そーよ。私たちの分までよろしくねっ!」
初対面のくせに参戦してくる澪ちゃんママ。
「あ、う、うん。がんばるよ」
とここに来てちょっと気まずそうに俯き加減で答える由美子さんであった。
「もう私立に行く準備しているから」と由美子さん。
「結果も見てないのに気が早いんだから」
「朔美ちゃん(仮名)ママとも話したんだけど、受かってるのAちゃんだけだから」
「そんなのわかんないじゃん」
「いやわかるよ。だってうちも朔美ちゃんも図形で4問も5問も残してるし、出題も今年はそれほど難しくないからね。これでできてないとキツイよ」
「そうかなあ」
そう言いつつも、確かにそれだけできてないと辛いかもなと心の中で思う。と同時に心は明日の抽選に飛んでいる。ここまで来て最後の抽選で落ちると水の泡である。
けど銀座の先生が間違いないって太鼓判を押してくれたんだもん。まあ太鼓判を押してくれたG大附属T小は一次試験にあたる抽選で落ちてしまい、あげくT大附属T小は合わないと言われていたけど、国立に行くことは間違いないって断言してたんだから、ここで落ちているはずがない。
絶対にだいじょうぶ。
ドキドキする胸を押さえつつ自分に言い聞かせる。
合否は掲示板に張り出されている。ずらりと並ぶ番号。
ふと大学の合格発表を思い出したが、その光景は幻想だとすぐに思い当たる。なぜなら私の受けた大学は全部他県にあり遠かったので、合格発表のためにわざわざ大学には出向かず、電報での合否連絡にしていたからだ。
T大附属T小は約4000人が一次に出願し、抽選で1800人に絞られ(←ただこの後、私立等がどんどん決まり受験を辞退する人も出てくるので、実際に2次まで進むのは1500人前後だという)、2次試験でおおよそ260人ぐらいに絞られ、3次抽選で男子80人、女子80人計160人が合格者だということになる。
前にも書いたけどここが最後の小学校受験の日程に当たるため、合格者160人から辞退者が出ることはない。
娘の受験番号は217番。試験当日は白の7番だった。
217番を目で追う。
あれ!? すぐに異変に気づく。200番台がほとんど出ていなかったのだ。
ないっ!!!!
217番がないっ! 嘘でしょっ!?
酸っぱいものが込み上げてくる。と同時に、「あれ!? 受かってる!」と突拍子もない声を由美子さんが上げている。
「Aちゃん、どうだった?」
「ないよっ! 番号」
「そうか。あの悪いんだけど、3次の受付しなきゃいけないから、雪美見ていて!」
と言ったと同時に受付場所になっている講堂へ駆け込んで行く由美子さん。
ガーンっ!!!!!
「あれ? ママどっか行っちゃったぁ~。Aちゃんママ、うちのママどこ行ったの?」
と間延びしたような雪美ちゃんの声。
「あ、うん。すぐ戻ってくるよ。だからそれまでAと遊んでて」
そう言いながらちょっと由美子さんって無神経だよなと、ムッとくる。
でも逆の立場だったら、私も舞い上がって同じことをしたのかな。
すると後ろからポンと肩を叩かれる。振り返ると幼児教室でいっしょの澪ちゃん(仮名)とママだった。
「やっぱダメだったよ。そっちは?」
と自嘲気味の澪ちゃんママ。
「うちも。けどいっしょに来た保育園のお友だちは合格してて、今3次の受付に行ったよ。だからそのお友だちも見てるの」
「そっか~。それちょっといやなシチュエーションだねえ」
「まあね」
「今日、幼児教室のクラス、これからあるけど行く?」
「うん。そのつもりで用意もしてきたよ」
「じゃあいっしょに行こうか」
ということで澪ちゃん親子も由美子さんの戻りを待ってくれることに。
その間、泰子にもメールを入れ、何度も掲示板も見直した。何度掲示板を見直してもやっぱり217番という数字はない。
おっ、そういえば白の23番さんはどうなったんだ? この数字の流れで行くと白の23番さんは233番のはず。
233番もないっ!
あんなにすばらしい終わりのあいさつをした白の23番さんも落ちているとは、いったいどういうことなのだ!?
わからん! さっぱりわからん! なんでうちの娘と白の23番さんが落ちているんだ!?
不条理だ。この世は矛盾に満ちている。
胃がキューっと縮んで固くなっているのがわかる。もう人目も構わず大声で泣き出したい感じ。
娘は何がおこなわれているのか、全然わかっていない。ここで私が悲しんだり、怖い顔をしたら心に傷を負ってしまうかもしれない。
そう思うと極力微笑むようにしようと思うと、体がバラバラに動き出してしまうような感覚に襲われる。
しばらくしたら由美子さんが戻ってきたので、澪ちゃんママを紹介し、3人でとりあえず私たちの幼児教室が入っている百貨店まで向かった。
まだクラスが始まるまで少し時間があったので、お茶をすることになったのだけど、澪ちゃんママもいたので敢えて、
「あぁ~、もうやってられないから飲むよっ!」
と言って、百貨店の地下にあるイタリアン・バールに入る。
「私もビール、飲んじゃぉ~」と澪ちゃんママ。
「じゃあ私も飲もうかな」と由美子さん。
あんたは飲まんでよろしっ!
けどここで優雅にカプチーノとか飲まれたらやっぱムカつくかな。
真昼間から3人でビールをかっくらい(←娘たちはオレンジジュース)、由美子さんに向かって、
「ここまできたら抽選、絶対に勝ち取ってこいよっ!」
とドスの効いた声でエールを送る私。
「そーよ、そーよ。私たちの分までよろしくねっ!」
初対面のくせに参戦してくる澪ちゃんママ。
「あ、う、うん。がんばるよ」
とここに来てちょっと気まずそうに俯き加減で答える由美子さんであった。
2010年10月3日日曜日
T大附属T小学校2次試験合格発表の前に
いよいよ発表当日だ。午前中は部屋の掃除をしたり娘のピアノの練習をみたりしながら、ゆっくり過ごす。
お昼は昨日の夜の残りでいいやと考えていたら、泰子(仮名)から電話がかかってきた。
「今日だよね。発表。ねえねえ、その前にいっしょにお昼食べようよ」
と言うので近所のイタリアンで待ち合わせる。
ちなみにそのイタリアンは2次試験の日、お祝いで夜出かけたフレンチと姉妹店である。ここのオーナーは30代前半とおぼしき長身のなかなかのイケメンで、娘はこのオーナーの大ファンだ。
ついこの前までこれまた近所の洋食屋さんで働くウェーターのお兄さんのことが好きで、私もこの場所に引っ越してきて以来、彼に勝手にときめいていたので、親子揃って「あのお兄さんはイケている♪」とキャアキャア騒いでいたのだが、いつのまに娘は「だってこっちのお兄さんのほうが偉い人っぽいんだもん。もうあっちはどうでもいい」と、すっかりこちらに乗り換えてしまった。
確かにねえ。泰子とランチを食べることになったイタリアンも昼も夜もいつも満席で、雑誌にもよく取り上げられている。
イタリアンのほうもフレンチのほうも若くて感じのいい美男美女のスタッフを揃え、テキパキと采配を振るうオーナーは確かに素敵だし、いかにもこれからどんどん店舗も増やしまっせといったやり手で野心家の上昇志向臭もぷんぷん漂ってくる。
こういう男性は魅力的だしモテるよね~。将来性もありそうだし(←といっても3歳の息子さんがいるらしいが)。
未就学児の女の子にもわかりやすい魅力だってことなのかしら?
さてその日、あいにくオーナーはこちらの店には出てきていなくて、娘はブーブー文句を言っていたが、私たちはバジルのスパゲティーとサーモンのクリームソースのスパゲティーとマルガリータピザをシェアしながら、お受験話に花を咲かせる。
その間、娘と泰子の娘の真美ちゃん(仮名)も女の子同士でお話をしている。
「今日、発表何時からなの?」
「午後2時半からなんだけど、2時に雪美ちゃん(仮名)たちと待ち合わせしてるんだよねえ」
「そうかあ~。私もこれからレッスンじゃなかったら一緒に行くんだけどなあ~」
と好奇心むき出しの泰子。いくら娘がピアノの生徒だからといってもそこまでしようというのは、単純に泰子自身がお受験話が大好きだから以外何者でもないと思う。
「今年から行動観察が入ったという時点でかなりAちゃんには有利だよ。ここでポイントが稼げるはずだから、これまでの準備不足はかなり撤回できるはずだよ」
泰子にはすでに試験当日の話はしてあって、「それって私立だったらその場で合格だよ」と言っていた。
「でもなあ~。銀座の先生にはT大附属T小じゃないって言われてたしなあ~」
「だからさ、先生間違ってるんだよ。G大附属T小じゃなくて、T大付属T小だって学校名を間違えただけなんだよ。あの先生が外すわけないよ。うちの子だって当たったし、友だちもS学園受かったからね」
「まあそれを言うならバレエでいっしょの里美さん(仮名)のところもS女子学院受かってるからなあ~」
「そうだよ。絶対に受かってるよ。でもさ、AちゃんがT大附属T小に入ったらLくん(←息子)はどうするの? 塾入れるの?」
さっそく来年の話をする泰子。そうだよなあ~。うちは年子だから続くのよ~。
「T大附属T小は抽選は通りやすいからね。別々の小学校に行かれてもめんどくさいし、Lはコツコツ勉強したりできないタイプだから、受かってったら速攻でLの受験準備始めないとね。まあ逆にダメだったらもうLも公立でいいけど」
「勉強するなら早いほうがいいよ。それに兄弟で国立って珍しくないから。そうそう、そういえばさあ、この前O女附属小の入学者のための説明会ってのがあったんだけど、***のボーカルのHの息子が入学してたよ」
「マジ!?」
***とは元々ヴィジュアル系のバンドとして90年代にデビューし、今では国民的バンドと言ってしまえば大げさだが、それに準ずる超大物バンドである。
ちなみにかつて音楽雑誌の編集者をしていたころ、私はこのバンドのデビュー当時担当だった。
最初から事務所もレコード会社も気合が入っていて、スタッフからもメンバーからも「絶対に売れる」という強い信念が感じられ、案の定と言うか、やはり紆余曲折はありつつも依然としてメインストリームを歩き続けているバンドである。
そのバンドのボーカリストの息子がO女大附属小とは、あのすさまじい抽選の倍率を勝ち抜いたということだから、どこまで運が強いのか。
それにしてもO女大付属小もヴィジュアル系からやんごとなき方(幼稚園のほうだか)までなんと幅広いことか。
「でもさ、O女大附属のお母様方ってさ、***のこと知らないんだよね。そういう私も全然詳しくないんだけどさ」
「嘘でしょ? ***ぐらいだったら誰だって知ってるでしょ?」
「ほんとだって! 誰?それ?みたいな反応だったよ。けど、奥さんのほうは元タレントの××だからそっちはみんな知ってたけどね」
「ふ~ん。そういう世界もあるのかぁ。さすがO女のお母様方って感じだね」
などと話は盛り上がるのだが、そろそろ時間だ。
「結果わかったら速攻でメールか電話で教えてね。まあ、絶対に受かってるからだいじょうぶだよ」と別れ際に泰子が力強く励ましてくれた。
お昼は昨日の夜の残りでいいやと考えていたら、泰子(仮名)から電話がかかってきた。
「今日だよね。発表。ねえねえ、その前にいっしょにお昼食べようよ」
と言うので近所のイタリアンで待ち合わせる。
ちなみにそのイタリアンは2次試験の日、お祝いで夜出かけたフレンチと姉妹店である。ここのオーナーは30代前半とおぼしき長身のなかなかのイケメンで、娘はこのオーナーの大ファンだ。
ついこの前までこれまた近所の洋食屋さんで働くウェーターのお兄さんのことが好きで、私もこの場所に引っ越してきて以来、彼に勝手にときめいていたので、親子揃って「あのお兄さんはイケている♪」とキャアキャア騒いでいたのだが、いつのまに娘は「だってこっちのお兄さんのほうが偉い人っぽいんだもん。もうあっちはどうでもいい」と、すっかりこちらに乗り換えてしまった。
確かにねえ。泰子とランチを食べることになったイタリアンも昼も夜もいつも満席で、雑誌にもよく取り上げられている。
イタリアンのほうもフレンチのほうも若くて感じのいい美男美女のスタッフを揃え、テキパキと采配を振るうオーナーは確かに素敵だし、いかにもこれからどんどん店舗も増やしまっせといったやり手で野心家の上昇志向臭もぷんぷん漂ってくる。
こういう男性は魅力的だしモテるよね~。将来性もありそうだし(←といっても3歳の息子さんがいるらしいが)。
未就学児の女の子にもわかりやすい魅力だってことなのかしら?
さてその日、あいにくオーナーはこちらの店には出てきていなくて、娘はブーブー文句を言っていたが、私たちはバジルのスパゲティーとサーモンのクリームソースのスパゲティーとマルガリータピザをシェアしながら、お受験話に花を咲かせる。
その間、娘と泰子の娘の真美ちゃん(仮名)も女の子同士でお話をしている。
「今日、発表何時からなの?」
「午後2時半からなんだけど、2時に雪美ちゃん(仮名)たちと待ち合わせしてるんだよねえ」
「そうかあ~。私もこれからレッスンじゃなかったら一緒に行くんだけどなあ~」
と好奇心むき出しの泰子。いくら娘がピアノの生徒だからといってもそこまでしようというのは、単純に泰子自身がお受験話が大好きだから以外何者でもないと思う。
「今年から行動観察が入ったという時点でかなりAちゃんには有利だよ。ここでポイントが稼げるはずだから、これまでの準備不足はかなり撤回できるはずだよ」
泰子にはすでに試験当日の話はしてあって、「それって私立だったらその場で合格だよ」と言っていた。
「でもなあ~。銀座の先生にはT大附属T小じゃないって言われてたしなあ~」
「だからさ、先生間違ってるんだよ。G大附属T小じゃなくて、T大付属T小だって学校名を間違えただけなんだよ。あの先生が外すわけないよ。うちの子だって当たったし、友だちもS学園受かったからね」
「まあそれを言うならバレエでいっしょの里美さん(仮名)のところもS女子学院受かってるからなあ~」
「そうだよ。絶対に受かってるよ。でもさ、AちゃんがT大附属T小に入ったらLくん(←息子)はどうするの? 塾入れるの?」
さっそく来年の話をする泰子。そうだよなあ~。うちは年子だから続くのよ~。
「T大附属T小は抽選は通りやすいからね。別々の小学校に行かれてもめんどくさいし、Lはコツコツ勉強したりできないタイプだから、受かってったら速攻でLの受験準備始めないとね。まあ逆にダメだったらもうLも公立でいいけど」
「勉強するなら早いほうがいいよ。それに兄弟で国立って珍しくないから。そうそう、そういえばさあ、この前O女附属小の入学者のための説明会ってのがあったんだけど、***のボーカルのHの息子が入学してたよ」
「マジ!?」
***とは元々ヴィジュアル系のバンドとして90年代にデビューし、今では国民的バンドと言ってしまえば大げさだが、それに準ずる超大物バンドである。
ちなみにかつて音楽雑誌の編集者をしていたころ、私はこのバンドのデビュー当時担当だった。
最初から事務所もレコード会社も気合が入っていて、スタッフからもメンバーからも「絶対に売れる」という強い信念が感じられ、案の定と言うか、やはり紆余曲折はありつつも依然としてメインストリームを歩き続けているバンドである。
そのバンドのボーカリストの息子がO女大附属小とは、あのすさまじい抽選の倍率を勝ち抜いたということだから、どこまで運が強いのか。
それにしてもO女大付属小もヴィジュアル系からやんごとなき方(幼稚園のほうだか)までなんと幅広いことか。
「でもさ、O女大附属のお母様方ってさ、***のこと知らないんだよね。そういう私も全然詳しくないんだけどさ」
「嘘でしょ? ***ぐらいだったら誰だって知ってるでしょ?」
「ほんとだって! 誰?それ?みたいな反応だったよ。けど、奥さんのほうは元タレントの××だからそっちはみんな知ってたけどね」
「ふ~ん。そういう世界もあるのかぁ。さすがO女のお母様方って感じだね」
などと話は盛り上がるのだが、そろそろ時間だ。
「結果わかったら速攻でメールか電話で教えてね。まあ、絶対に受かってるからだいじょうぶだよ」と別れ際に泰子が力強く励ましてくれた。
2010年10月1日金曜日
発表前夜②
あと問題がひとつ。土曜日(翌日)は2次試験の発表でこの日は子連れでもOKなのが、2次試験に受かってる場合、日曜日(翌々日)の朝っぱらから3次試験すなわち抽選がおこなわれる。
この抽選は保護者1名のみの参加になるので、娘を連れて行くことができない。
夫たちはすでに空の人。そして日曜日のその時間帯はバレエの日。どうする!?
一番この場合頼みやすいのは家も近く、バレエもいっしょの朔美ちゃん(仮名)のところで預かってもらうことだろう。
しかも朔美ちゃんもT大附属T小を受けてるんだし。
朔美ちゃんも娘も2次試験に通っていて、私と朔美ちゃんのパパかママどちらかといっしょに抽選に行き、娘と残ったほうの朔美ちゃんの親子でバレエに行ってもらい、終わったら帰ってくるまでのちょっとの間、朔美ちゃんのおうちに居させてもらうことができればベストだ。
その場合、3次抽選には当然うちも朔美ちゃんも通って、「バンザイ!」ってことでそのあとそのままランチでお祝いにしちゃってもいい。
けど朔美ちゃんのところは2次試験に落ちてしまっている場合、どうする? 娘だけ預かってもらうのは気まずいけど、ほかに頼める人がいるわけでもなし。
この場合も頼んでみるしかない。
夕方朔美ちゃんのところに電話をして、「まだ2次試験の結果も出ていないし、受かっている可能性も低いだろうけど、それでも万が一という可能性もなくはないだろうから」というまどろっこしい前置きをしたうえで、その場合にはパパはイギリスに帰ってしまったので、娘を預かってほしいというお願いをした。
すると「じゃあ、Aちゃんが来るなら掃除しなきゃね」と快く引き受けてくれる朔美ちゃんママ。
「今日、Cグループはどうだったの?」
「う~ん。うちはダメだね」
と即答する朔美ちゃんママ。
「図形も4,5問残してるし、製作も途中までしかできなかったらしいし、うち元々クマ歩きも得意じゃないんだよね。あ、そうそう。Aちゃんのグループって始めのあいさつと終わりのあいさつをさせたって言ってたじゃない? うちの子たちはそういうのもなかったって。だからいいことはなんにもなかったって感じよ。そうそう、今日たまたま雪美ちゃんママ(=由美子さん)とバッタリ会ったんだけど、ふたりしてうちは落ちてるよって言い合ってて、3人の中で有望なのはAちゃんだけねって話してたんだよ」
「そんなの結果を見てみないとわかんないよ(←と言いながらかなりまんざらでもない感じ)」
「いやあ、Aちゃんだけだね。受かってるのは。じゃあ土曜日に連絡を取り合いましょう」
ということで、後顧の憂いもなし。
そうそう3次抽選のある日曜日の夜は黒百合姉妹のライブに行くことになっている。3次抽選も通ったあとのライブはさぞかし至福のときが約束されるだろう。
そう思っているときに黒百合姉妹のJURIから電話が入る。
「あさってのライブ、もちろん来るよね?」
「うん、行く行く」
「何度も悪いんだけど、また英語お願いしたいんだよねえ」
「いいよ。けど年明けでいい?」
「もちろん。今度はホームページの英語を見てほしいんだけど」
はっとここで思い当たった。黒百合姉妹から英訳仕事(←お金はもらってないけどなっ)が来たのはこれで3回目。
皆さん、すっかりお忘れのころだと思うが、銀座の先生から「3回、次の仕事につながるようなお願いごとを2009年はされる。ボランティアでも受けること」と言われたことは、黒百合姉妹関係の英訳のことだったのだろうか。
時期は違うけど、なんとなくこのことのような気がしないでもない。
私は黒百合姉妹の大ファンである。
どんな仕事であれ、黒百合姉妹に関わることが仕事に結びつくならばこんなうれしいことはないだろう。
それと同時にJURIが占い師でもあることを思い出した。
「そうそう、うち娘が今、受験していて明日、2次の発表があって黒百合のライブの日は3次抽選なんだけど・・・」
「あ、ごめん。私ね、受験関係のことは診ないって決めてるんだよ」
即答するJURI。そうだったんだ! そんなの知らなかったぞ!
「受験のことは当たるも八卦だし当たらざるのも八卦だから、保証できないんだよ。だからね、診ないようにしてるんだ」
まったくぅ~。占い自体が当たるも八卦、当たらざるも八卦なんだから、答えになってないよなあ~。
けど診ないことがポリシーならしかたない。
その割には「どこ受けたの?」などと根掘り葉掘り聞くJURI。
久しぶりにJURIと長電話を楽しむ。
いよいよ明日は2次試験の発表日。
夫のいないベッドはなんだかやけに大きく感じられ、久しぶりに私は娘と同じベッドで眠った。
娘からは女の子らしい甘い匂いが漂ってきて、寝顔を見ながら幸せな気分に浸ったのであった。
この抽選は保護者1名のみの参加になるので、娘を連れて行くことができない。
夫たちはすでに空の人。そして日曜日のその時間帯はバレエの日。どうする!?
一番この場合頼みやすいのは家も近く、バレエもいっしょの朔美ちゃん(仮名)のところで預かってもらうことだろう。
しかも朔美ちゃんもT大附属T小を受けてるんだし。
朔美ちゃんも娘も2次試験に通っていて、私と朔美ちゃんのパパかママどちらかといっしょに抽選に行き、娘と残ったほうの朔美ちゃんの親子でバレエに行ってもらい、終わったら帰ってくるまでのちょっとの間、朔美ちゃんのおうちに居させてもらうことができればベストだ。
その場合、3次抽選には当然うちも朔美ちゃんも通って、「バンザイ!」ってことでそのあとそのままランチでお祝いにしちゃってもいい。
けど朔美ちゃんのところは2次試験に落ちてしまっている場合、どうする? 娘だけ預かってもらうのは気まずいけど、ほかに頼める人がいるわけでもなし。
この場合も頼んでみるしかない。
夕方朔美ちゃんのところに電話をして、「まだ2次試験の結果も出ていないし、受かっている可能性も低いだろうけど、それでも万が一という可能性もなくはないだろうから」というまどろっこしい前置きをしたうえで、その場合にはパパはイギリスに帰ってしまったので、娘を預かってほしいというお願いをした。
すると「じゃあ、Aちゃんが来るなら掃除しなきゃね」と快く引き受けてくれる朔美ちゃんママ。
「今日、Cグループはどうだったの?」
「う~ん。うちはダメだね」
と即答する朔美ちゃんママ。
「図形も4,5問残してるし、製作も途中までしかできなかったらしいし、うち元々クマ歩きも得意じゃないんだよね。あ、そうそう。Aちゃんのグループって始めのあいさつと終わりのあいさつをさせたって言ってたじゃない? うちの子たちはそういうのもなかったって。だからいいことはなんにもなかったって感じよ。そうそう、今日たまたま雪美ちゃんママ(=由美子さん)とバッタリ会ったんだけど、ふたりしてうちは落ちてるよって言い合ってて、3人の中で有望なのはAちゃんだけねって話してたんだよ」
「そんなの結果を見てみないとわかんないよ(←と言いながらかなりまんざらでもない感じ)」
「いやあ、Aちゃんだけだね。受かってるのは。じゃあ土曜日に連絡を取り合いましょう」
ということで、後顧の憂いもなし。
そうそう3次抽選のある日曜日の夜は黒百合姉妹のライブに行くことになっている。3次抽選も通ったあとのライブはさぞかし至福のときが約束されるだろう。
そう思っているときに黒百合姉妹のJURIから電話が入る。
「あさってのライブ、もちろん来るよね?」
「うん、行く行く」
「何度も悪いんだけど、また英語お願いしたいんだよねえ」
「いいよ。けど年明けでいい?」
「もちろん。今度はホームページの英語を見てほしいんだけど」
はっとここで思い当たった。黒百合姉妹から英訳仕事(←お金はもらってないけどなっ)が来たのはこれで3回目。
皆さん、すっかりお忘れのころだと思うが、銀座の先生から「3回、次の仕事につながるようなお願いごとを2009年はされる。ボランティアでも受けること」と言われたことは、黒百合姉妹関係の英訳のことだったのだろうか。
時期は違うけど、なんとなくこのことのような気がしないでもない。
私は黒百合姉妹の大ファンである。
どんな仕事であれ、黒百合姉妹に関わることが仕事に結びつくならばこんなうれしいことはないだろう。
それと同時にJURIが占い師でもあることを思い出した。
「そうそう、うち娘が今、受験していて明日、2次の発表があって黒百合のライブの日は3次抽選なんだけど・・・」
「あ、ごめん。私ね、受験関係のことは診ないって決めてるんだよ」
即答するJURI。そうだったんだ! そんなの知らなかったぞ!
「受験のことは当たるも八卦だし当たらざるのも八卦だから、保証できないんだよ。だからね、診ないようにしてるんだ」
まったくぅ~。占い自体が当たるも八卦、当たらざるも八卦なんだから、答えになってないよなあ~。
けど診ないことがポリシーならしかたない。
その割には「どこ受けたの?」などと根掘り葉掘り聞くJURI。
久しぶりにJURIと長電話を楽しむ。
いよいよ明日は2次試験の発表日。
夫のいないベッドはなんだかやけに大きく感じられ、久しぶりに私は娘と同じベッドで眠った。
娘からは女の子らしい甘い匂いが漂ってきて、寝顔を見ながら幸せな気分に浸ったのであった。
2010年9月30日木曜日
発表前夜①
T大附属T小学校の2次試験の翌朝、夫と息子はイギリスに旅立った。
試験が終わってしまえば娘は日本にいる必要はないので、今から思えば7万円も出して(←私が払わされたけどなっ!)航空券の日にち変更をしたのはムダだった。
ま、こういうこともあるさ。しかたない。けど7万円はやっぱ痛い出費だよな。
毎晩、「クイズ大会の練習」と称して娘と一緒に勉強してきたので、その習慣がなくなってしまうと何やらポッカリ穴があいたような不思議な気分。
娘よ。もう「ちぎり」の練習はしなくていいんだよ。
私もこれからは心穏やかに過ごそう。
きっと家族の平和も戻ってくるだろう。
そうそう、書き忘れていたけど試験が終わって家に帰ってきてから、レストランにお祝いに出かけるまでの時間、私はWの新田先生(仮名)に電話をした。
Wにはいろいろな情報を与えてもらった。その分のお金を払ったのだから当然だろうとも言えるが、いただいた貴重な情報は先達のお受験ママたちからの実体験を伴うリアルなものだった。
こういうのはもらいっぱなしなのではなく、人としてやはり後に続くお受験ママたちのためにお返しするのが筋というものだろう。
珍しく律儀な気分になる私。こんな気分は10年に1回あるかないかだけなので、味わえるときに味わっておかないとね。
「Bグループ女子の試験についてちょっとお耳に入れたいことが」
「どうしましたか?」
電話口でも快活な新田先生。
「確かに先生が仰っていたとおりの試験の流れだったんですけど、ひとつだけ今まで聞いたこともない展開があったんです」
「ほう。それは?」
「実はうちの娘の部屋では試験が始まる前に先生から、“試験が始まる前のあいさつができる子はいるかな?”っていう問いかけがあったそうなんです」
「ほう。始めのあいさつですか。それは確かに初耳ですね。今までT大附属T小学校の試験ではそんな話は聞いたことがありません。それでどうなさいましたか?」
「うちの娘は白の部屋で7番だったんですけど、“はい。私がやります”と娘だけが手を挙げて、“白の7番さんだけですか? では白の7番さんどうぞ”と言われたので、娘はあいさつを始めたそうなんです」
「ほほ~う。ひとりだけですか。うんうん。それはすごいですねえ。それで?」
とちょっと興奮気味の新田先生。
「“皆さん、今日はとってもいいお天気ですね。このお天気に負けないような晴れやかな気分で皆さん、クイズ大会をがんばりましょう”ってあいさつしたそうなんです。それで先生が“白の7番さんのあいさつはどうでしたか? すばらしかったですね。じゃあみんなで大きな拍手”とおっしゃってみんなから拍手してもらったそうです」
「ほおお~。それはすごいっ。“晴れやかな気分”なんてよくそんな難しい言葉がその場で出ましたね。まあ“クイズ大会”っていうのはよくわかりませんけど、かなりいいですねえ。有望ですよっ!」
「それで終わりのあいさつっていうのもあったらしいんです。最初にあいさつしているので、そのときには娘は手を挙げなかったらしいんですけど・・」
「うんうんうん」
「で、今度は白の23番さんという子がひとりだけ手を挙げたそうで、その子は“皆さん。今日は皆さん全力を尽くしてがんばりました。お疲れ様でした”とあいさつしたそうで、そのときも先生から“すばらしいですね。じゃあ白の23番さんに大きな拍手”ということで、みんなで拍手したそうです」
「おお~。その子もすばらしいですねえ。白の23番さんもうちの受講生だったらうれしいんですけどねえ」
「先生、どう思います?」
「やっぱり今年から行動観察を入れた一環なんですかねえ。ほんと、今までにそんな話はまったくなかったですよ。聞いた限りではお子さんもその白の23番さんもかなり有望ですよ。かなり可能性あるんじゃないですかねえ~。結果が楽しみですね」
「こういった情報が明日のCグループの方にも役立つといいんですけど」
「大変参考になります。どんなささいなことでもいいので何か思い出したことなどありましたら、いつでもご連絡くださいね」
「はい。お役に立てて光栄です」
などと殊勝なことを言う私。それもあるけどどっちかといえば新田先生から、「そりゃあ合格間違いないですよっ!」などと太鼓判を押してもらいたい気持ちが強いのが本音だ。
そりゃそうよねえ。
私だって人の親ですもの。
さあWの話が出たところで、娘のお受験のためにいくら使ったのか、計算してみよう。
(←ちょっと唐突)
まずはWの講習代。これが一番かかっているはずだ。
・T大附属T小 直前対策 基礎編2回 ¥23,000
・T大附属T小 模擬 ¥12,000
・T大附属T小 入試一日体験 ¥12,000
・T大附属T小 Bグループ前日講習 ¥12,000
合計 ¥59,000なり
それなりに使ってるが、みっちゃん(仮名)や由美子さん(仮名)のところが通っていたSG会は月の基本月謝が7万円である。それに様々な講習をくっつけて多いときには20万ぐらいになるときがあると言っていたから、それを考えるとWは良心的な料金設定だろう。
しかもふたりのところはSG会に1年通ったわけだから、軽く100万円は超えてるはずだ。
それ以外には問題集や過去問。この内訳はばっちりくんドリル8冊、T大附属T小特訓2冊、過去問2冊、製作ドリル2冊、T大附属T小製作キット、T大附属T小「お話の記憶」問題集、T大附属T小「図形Bグループ」、その他親用の面接本などしめて、¥25,000
お受験グッズ関連では、スリッパ¥1,500、娘の上履き¥600、ブラウス¥780(西松屋)、¥980(ジャスコ)、¥4,200(←百貨店のバーゲン品。当日着用)、キュロット¥3,400(←百貨店の。当日着用)、¥1,980(ジャスコ)、カーディガングレー¥1,500(ジャスコ)、ベストグレー¥980(ジャスコ、当日着用)、ベスト紺¥980(ジャスコ)、セーター紺¥980(ジャスコ)、靴下¥98のを3足(しまむら)で計¥294
髪留め紺とグレー各¥600(百貨店)で計¥1,200
合計¥19,374
すごいっ! これだけこまごまといろいろなものを買っているのにもかかわらず2万円切ってる! 全部百貨店で揃えるとキュロットだけでも¥13,000するから私ったらお買い物上手!(←そのわりにはいらんものもたくさん買ってるが、この際目を瞑ろう)
やっぱりお受験スーツをケチって買わなかったのも大きかったのかしら♪
あとは交通費。バスやら地下鉄やらで¥5,000ぐらい。
で飛行機のキャンセル料¥70,000とお受験写真代¥2,000と住民票の写し1通¥600を合計すると、¥180,974なり。
上記の金額を娘のお受験に注ぎ込んだことになる。
しめて20万円以下。これで受かれば安いものだろうが、ダメだったら無駄金だ。
こういう費用を人は「子どもへの投資」と呼ぶのか。
さてこの投資。吉と出るか凶と出るか。
試験が終わってしまえば娘は日本にいる必要はないので、今から思えば7万円も出して(←私が払わされたけどなっ!)航空券の日にち変更をしたのはムダだった。
ま、こういうこともあるさ。しかたない。けど7万円はやっぱ痛い出費だよな。
毎晩、「クイズ大会の練習」と称して娘と一緒に勉強してきたので、その習慣がなくなってしまうと何やらポッカリ穴があいたような不思議な気分。
娘よ。もう「ちぎり」の練習はしなくていいんだよ。
私もこれからは心穏やかに過ごそう。
きっと家族の平和も戻ってくるだろう。
そうそう、書き忘れていたけど試験が終わって家に帰ってきてから、レストランにお祝いに出かけるまでの時間、私はWの新田先生(仮名)に電話をした。
Wにはいろいろな情報を与えてもらった。その分のお金を払ったのだから当然だろうとも言えるが、いただいた貴重な情報は先達のお受験ママたちからの実体験を伴うリアルなものだった。
こういうのはもらいっぱなしなのではなく、人としてやはり後に続くお受験ママたちのためにお返しするのが筋というものだろう。
珍しく律儀な気分になる私。こんな気分は10年に1回あるかないかだけなので、味わえるときに味わっておかないとね。
「Bグループ女子の試験についてちょっとお耳に入れたいことが」
「どうしましたか?」
電話口でも快活な新田先生。
「確かに先生が仰っていたとおりの試験の流れだったんですけど、ひとつだけ今まで聞いたこともない展開があったんです」
「ほう。それは?」
「実はうちの娘の部屋では試験が始まる前に先生から、“試験が始まる前のあいさつができる子はいるかな?”っていう問いかけがあったそうなんです」
「ほう。始めのあいさつですか。それは確かに初耳ですね。今までT大附属T小学校の試験ではそんな話は聞いたことがありません。それでどうなさいましたか?」
「うちの娘は白の部屋で7番だったんですけど、“はい。私がやります”と娘だけが手を挙げて、“白の7番さんだけですか? では白の7番さんどうぞ”と言われたので、娘はあいさつを始めたそうなんです」
「ほほ~う。ひとりだけですか。うんうん。それはすごいですねえ。それで?」
とちょっと興奮気味の新田先生。
「“皆さん、今日はとってもいいお天気ですね。このお天気に負けないような晴れやかな気分で皆さん、クイズ大会をがんばりましょう”ってあいさつしたそうなんです。それで先生が“白の7番さんのあいさつはどうでしたか? すばらしかったですね。じゃあみんなで大きな拍手”とおっしゃってみんなから拍手してもらったそうです」
「ほおお~。それはすごいっ。“晴れやかな気分”なんてよくそんな難しい言葉がその場で出ましたね。まあ“クイズ大会”っていうのはよくわかりませんけど、かなりいいですねえ。有望ですよっ!」
「それで終わりのあいさつっていうのもあったらしいんです。最初にあいさつしているので、そのときには娘は手を挙げなかったらしいんですけど・・」
「うんうんうん」
「で、今度は白の23番さんという子がひとりだけ手を挙げたそうで、その子は“皆さん。今日は皆さん全力を尽くしてがんばりました。お疲れ様でした”とあいさつしたそうで、そのときも先生から“すばらしいですね。じゃあ白の23番さんに大きな拍手”ということで、みんなで拍手したそうです」
「おお~。その子もすばらしいですねえ。白の23番さんもうちの受講生だったらうれしいんですけどねえ」
「先生、どう思います?」
「やっぱり今年から行動観察を入れた一環なんですかねえ。ほんと、今までにそんな話はまったくなかったですよ。聞いた限りではお子さんもその白の23番さんもかなり有望ですよ。かなり可能性あるんじゃないですかねえ~。結果が楽しみですね」
「こういった情報が明日のCグループの方にも役立つといいんですけど」
「大変参考になります。どんなささいなことでもいいので何か思い出したことなどありましたら、いつでもご連絡くださいね」
「はい。お役に立てて光栄です」
などと殊勝なことを言う私。それもあるけどどっちかといえば新田先生から、「そりゃあ合格間違いないですよっ!」などと太鼓判を押してもらいたい気持ちが強いのが本音だ。
そりゃそうよねえ。
私だって人の親ですもの。
さあWの話が出たところで、娘のお受験のためにいくら使ったのか、計算してみよう。
(←ちょっと唐突)
まずはWの講習代。これが一番かかっているはずだ。
・T大附属T小 直前対策 基礎編2回 ¥23,000
・T大附属T小 模擬 ¥12,000
・T大附属T小 入試一日体験 ¥12,000
・T大附属T小 Bグループ前日講習 ¥12,000
合計 ¥59,000なり
それなりに使ってるが、みっちゃん(仮名)や由美子さん(仮名)のところが通っていたSG会は月の基本月謝が7万円である。それに様々な講習をくっつけて多いときには20万ぐらいになるときがあると言っていたから、それを考えるとWは良心的な料金設定だろう。
しかもふたりのところはSG会に1年通ったわけだから、軽く100万円は超えてるはずだ。
それ以外には問題集や過去問。この内訳はばっちりくんドリル8冊、T大附属T小特訓2冊、過去問2冊、製作ドリル2冊、T大附属T小製作キット、T大附属T小「お話の記憶」問題集、T大附属T小「図形Bグループ」、その他親用の面接本などしめて、¥25,000
お受験グッズ関連では、スリッパ¥1,500、娘の上履き¥600、ブラウス¥780(西松屋)、¥980(ジャスコ)、¥4,200(←百貨店のバーゲン品。当日着用)、キュロット¥3,400(←百貨店の。当日着用)、¥1,980(ジャスコ)、カーディガングレー¥1,500(ジャスコ)、ベストグレー¥980(ジャスコ、当日着用)、ベスト紺¥980(ジャスコ)、セーター紺¥980(ジャスコ)、靴下¥98のを3足(しまむら)で計¥294
髪留め紺とグレー各¥600(百貨店)で計¥1,200
合計¥19,374
すごいっ! これだけこまごまといろいろなものを買っているのにもかかわらず2万円切ってる! 全部百貨店で揃えるとキュロットだけでも¥13,000するから私ったらお買い物上手!(←そのわりにはいらんものもたくさん買ってるが、この際目を瞑ろう)
やっぱりお受験スーツをケチって買わなかったのも大きかったのかしら♪
あとは交通費。バスやら地下鉄やらで¥5,000ぐらい。
で飛行機のキャンセル料¥70,000とお受験写真代¥2,000と住民票の写し1通¥600を合計すると、¥180,974なり。
上記の金額を娘のお受験に注ぎ込んだことになる。
しめて20万円以下。これで受かれば安いものだろうが、ダメだったら無駄金だ。
こういう費用を人は「子どもへの投資」と呼ぶのか。
さてこの投資。吉と出るか凶と出るか。
2010年9月24日金曜日
試験を終えて②
20分ほど経ったところで、やっと由美子さん雪美ちゃん(仮名)親子が出てきた。
「終わったね~」と言いながら駅方面に向かう私たち。さすがに試験当日は業者の列はできていない。
駅近くの遊歩道にはちょうど子どもがよじ登れるようなモニュメントみたいなものがあって、試験帰りらしき子どもたちが何人も遊んでいる。
さっそくそのモニュメントみたいなもので遊び始める娘と雪美ちゃん。
さっさとどっか適当なところに入ってお茶でもしたいところだが、試験が終わった解放感からだろうか、子どもたちはきゃっきゃと言いながら遊んでいる。
まったくぅ~、ここでそんなに遊びたいんだったら、T大附属T小に入学したあといっくらでもできるじゃないの。結果も出てないのに妙に楽観的な私。
子どもたちの気が済んだところで、駅の近くにあるジョナサンに入る。
あ~ら。皆さん、試験帰りのお母様とそのお子さまのグループばっかり! 皆様、和やかにケーキなど召し上がっていらっしゃる。
ほぼ満席ながらなんとか席を確保した私たち。娘が「パフェ、パフェ」とうるさいので、それにつられて雪美ちゃんも「パフェ、パフェ」と節をつけながら繰り返している。
「ここってパフェあったっけ?」と言いながら、メニューを開ける私たち。
あ~あ、終わった! 終わった!
ってな気分のときにお上品にお茶なんて飲んでられまして?
「由美子さん、飲むよね?(←もちろん有無を言わせぬ迫力でっ!)」
てめー、ここで「いや、私は紅茶で」などと言い出しやがったら、「皆さ~ん、年金不安の諸悪の根源はこの女のせいなんですよ~!!」(←由美子さんは厚労省のお役人)と、この場で大声で叫んでやる!!
と思ってたら、「いいね、いいね。つまみは?」などとナイスな反応を見せてくれる。
さすがは長妻チルドレン(←当時)。
「お疲れっ! プハァ~」
生ビールの大ジョッキを昼まっからあおってる私たち。気のせいかお上品なお母様方がこちらをヒソヒソ眉をひそめながら眺めているような。
でも気にしないもんねっ! 試験も終わったんだし。
娘たちはきゃっきゃと楽しそうにパフェをつついている。
自分に甘く子どもには厳しい私は子どもたちにパフェとか食べさせたことがなかった。
「クイズ大会に優勝した(←おいっ! まだ結果は出てないぞ!)ごほうびはパフェだったんだね」
とうれしそうな娘。ジョナサンのパフェでそんなに頑張ってくれたんだったら安いものだぞ。
最初の1杯を速攻で飲み干し、「ジョッキ、お代わりっ!」とお受験親子のサロンのようになっていたジョナサンでいきなり居酒屋のノリを持ち込んだ私たち。
しかし昼間のビールは回るよね~。
「雪美がね、図形問題4問残したって言うんだよねえ~。もう終わったねって感じ。ボーダーも越えないよ。これじゃあ。Aちゃんはどんな感じ?」
由美子さんが子どもたちにあまり聞こえないようにコソコソと話し出す。でも子どもたちは子どもたちで盛り上がっていて、まったく私たちの会話など聞いちゃいない。
「うちの子は1問残したって言ってた。けど合ってるかどうかは別問題だよ。制作は最後のノリをつけるところで終わっちゃったみたい」
「ええっ! そんなところまで進んだの? 雪美は半分ぐらいまでしかやってないって! クマ歩きとかは?」
「うん。先生に“天才!”ってほめられたらしいよ」
「はあ~。すごいね。Aちゃん。うちは全然そんなことなかったみたいよ」
「あ、あとね。始めのあいさつとか終わりのあいさつとかあったみたいよ」
「何それ? 雪美! 雪美ちゃんのクラスでは始めのあいさつとか終わりのあいさつとかあったの?」
「ええ~? そんなのなんにもないよ。先生が“始めます”って言って、“終わります”って終わっただけだよ」
「白のお部屋はね、先生から“誰かあいさつできる人はいますか?”って聞かれてみんなの前であいさつしたんだよ」と娘。
「そんな話、始めて聞いたよ。うちが通っていたSG会(←超高額!)でもそんな話出なかったもん。で、どうしたの?」
「えへ。始めのあいさつで手を挙げたのは私だけで、“皆さん、今日はとってもいいお天気ですね。今日のこのいいお天気に負けないように晴れやかな気持ちで、今日のクイズ大会をがんばりましょう”ってあいさつしたんだよ。そしたら“すばらしいですねえ”ってほめられて拍手いっぱいもらったよ」と得意げに話す娘。
「“晴れやかな気持ち”って、Aちゃんすごすぎっ! あ~あ。やっぱ雪美、落ちたね。Aちゃんは合格間違いないよ。それだけできてるし、あいさつもすばらしいよ」
暗い顔をする由美子さん。
「そんなのわかんないじゃん。たまたまAの部屋はあいさつさせたけど、全部のクラスがやったわけじゃないだろうし」
「いいや。Aちゃんは間違いなく合格してるよ。だって頭の出来が全然違うもん。でもね、負け惜しみじゃないけど、うちは私立が1校通ってるからそっち行けばいいからね。だからここがダメでも気楽といえば気楽なんだよ」
「あ、そうそう。そういえばG大附属O小、どうした?」
「もう2次でそっこーで落ちたよっ! そうそう、そのときの話聞いてよっ! 思い出すだけでも腹が立つ。あ、おねえさん、大ジョッキ、もう一杯っ! 美央さん、飲むよねっ!?」
なんだか目が据わり始めた由美子さん。
そうそう、このときからさかのぼること1ヶ月半前。
皆さんはG大付属O小の抽選に由美子さん親子といっしょに抽選に出かけて、うちは見事にハズれ、由美子さんのところは抽選に通り、なぜか落ち込む由美子さんをハズした私たちが一生懸命慰めたというエピソードを覚えておいでだろうか。
その後の後日談をこの場で聞くことになったのであった。
「終わったね~」と言いながら駅方面に向かう私たち。さすがに試験当日は業者の列はできていない。
駅近くの遊歩道にはちょうど子どもがよじ登れるようなモニュメントみたいなものがあって、試験帰りらしき子どもたちが何人も遊んでいる。
さっそくそのモニュメントみたいなもので遊び始める娘と雪美ちゃん。
さっさとどっか適当なところに入ってお茶でもしたいところだが、試験が終わった解放感からだろうか、子どもたちはきゃっきゃと言いながら遊んでいる。
まったくぅ~、ここでそんなに遊びたいんだったら、T大附属T小に入学したあといっくらでもできるじゃないの。結果も出てないのに妙に楽観的な私。
子どもたちの気が済んだところで、駅の近くにあるジョナサンに入る。
あ~ら。皆さん、試験帰りのお母様とそのお子さまのグループばっかり! 皆様、和やかにケーキなど召し上がっていらっしゃる。
ほぼ満席ながらなんとか席を確保した私たち。娘が「パフェ、パフェ」とうるさいので、それにつられて雪美ちゃんも「パフェ、パフェ」と節をつけながら繰り返している。
「ここってパフェあったっけ?」と言いながら、メニューを開ける私たち。
あ~あ、終わった! 終わった!
ってな気分のときにお上品にお茶なんて飲んでられまして?
「由美子さん、飲むよね?(←もちろん有無を言わせぬ迫力でっ!)」
てめー、ここで「いや、私は紅茶で」などと言い出しやがったら、「皆さ~ん、年金不安の諸悪の根源はこの女のせいなんですよ~!!」(←由美子さんは厚労省のお役人)と、この場で大声で叫んでやる!!
と思ってたら、「いいね、いいね。つまみは?」などとナイスな反応を見せてくれる。
さすがは長妻チルドレン(←当時)。
「お疲れっ! プハァ~」
生ビールの大ジョッキを昼まっからあおってる私たち。気のせいかお上品なお母様方がこちらをヒソヒソ眉をひそめながら眺めているような。
でも気にしないもんねっ! 試験も終わったんだし。
娘たちはきゃっきゃと楽しそうにパフェをつついている。
自分に甘く子どもには厳しい私は子どもたちにパフェとか食べさせたことがなかった。
「クイズ大会に優勝した(←おいっ! まだ結果は出てないぞ!)ごほうびはパフェだったんだね」
とうれしそうな娘。ジョナサンのパフェでそんなに頑張ってくれたんだったら安いものだぞ。
最初の1杯を速攻で飲み干し、「ジョッキ、お代わりっ!」とお受験親子のサロンのようになっていたジョナサンでいきなり居酒屋のノリを持ち込んだ私たち。
しかし昼間のビールは回るよね~。
「雪美がね、図形問題4問残したって言うんだよねえ~。もう終わったねって感じ。ボーダーも越えないよ。これじゃあ。Aちゃんはどんな感じ?」
由美子さんが子どもたちにあまり聞こえないようにコソコソと話し出す。でも子どもたちは子どもたちで盛り上がっていて、まったく私たちの会話など聞いちゃいない。
「うちの子は1問残したって言ってた。けど合ってるかどうかは別問題だよ。制作は最後のノリをつけるところで終わっちゃったみたい」
「ええっ! そんなところまで進んだの? 雪美は半分ぐらいまでしかやってないって! クマ歩きとかは?」
「うん。先生に“天才!”ってほめられたらしいよ」
「はあ~。すごいね。Aちゃん。うちは全然そんなことなかったみたいよ」
「あ、あとね。始めのあいさつとか終わりのあいさつとかあったみたいよ」
「何それ? 雪美! 雪美ちゃんのクラスでは始めのあいさつとか終わりのあいさつとかあったの?」
「ええ~? そんなのなんにもないよ。先生が“始めます”って言って、“終わります”って終わっただけだよ」
「白のお部屋はね、先生から“誰かあいさつできる人はいますか?”って聞かれてみんなの前であいさつしたんだよ」と娘。
「そんな話、始めて聞いたよ。うちが通っていたSG会(←超高額!)でもそんな話出なかったもん。で、どうしたの?」
「えへ。始めのあいさつで手を挙げたのは私だけで、“皆さん、今日はとってもいいお天気ですね。今日のこのいいお天気に負けないように晴れやかな気持ちで、今日のクイズ大会をがんばりましょう”ってあいさつしたんだよ。そしたら“すばらしいですねえ”ってほめられて拍手いっぱいもらったよ」と得意げに話す娘。
「“晴れやかな気持ち”って、Aちゃんすごすぎっ! あ~あ。やっぱ雪美、落ちたね。Aちゃんは合格間違いないよ。それだけできてるし、あいさつもすばらしいよ」
暗い顔をする由美子さん。
「そんなのわかんないじゃん。たまたまAの部屋はあいさつさせたけど、全部のクラスがやったわけじゃないだろうし」
「いいや。Aちゃんは間違いなく合格してるよ。だって頭の出来が全然違うもん。でもね、負け惜しみじゃないけど、うちは私立が1校通ってるからそっち行けばいいからね。だからここがダメでも気楽といえば気楽なんだよ」
「あ、そうそう。そういえばG大附属O小、どうした?」
「もう2次でそっこーで落ちたよっ! そうそう、そのときの話聞いてよっ! 思い出すだけでも腹が立つ。あ、おねえさん、大ジョッキ、もう一杯っ! 美央さん、飲むよねっ!?」
なんだか目が据わり始めた由美子さん。
そうそう、このときからさかのぼること1ヶ月半前。
皆さんはG大付属O小の抽選に由美子さん親子といっしょに抽選に出かけて、うちは見事にハズれ、由美子さんのところは抽選に通り、なぜか落ち込む由美子さんをハズした私たちが一生懸命慰めたというエピソードを覚えておいでだろうか。
その後の後日談をこの場で聞くことになったのであった。
2010年9月21日火曜日
試験を終えて①
「クイズ大会、楽しかった?」
「うん」
もう試験内容に関して聞きたくてしかたがないことが山のようにある。
逸る気持ちを抑えて(←抑えきれなかったと思うが!)、あれこれ娘に質問をぶつける。
そう、要は一番聞きたいことは、「娘よ! 君は試験がちゃんとできたのかい?」。
これに尽きるのである。
「お話の記憶はどうだった? 時間がなくてできなかったところとかなかった?」
「ううん。全部やったよ。わかんなかったことはないかな」
「図形は? どんなのが出たの?」
「やったことがないのが出たけど(←ちなみに出題されたのは左図通りに写しなさいという問題の変形バージョンで、書き写す側のマス目が変形しているけど位置は変わらないというものだった。←ってこの説明だとわかんないかっ!?)、最後の1問以外は全部できたよ」
「おお~、1問を残したのみかっ! エライっ! じゃあ制作は? ちぎりは?」
「うん。最後まで完成できなかった。あとね、ノリを貼れば全部できたんだけど」
「そうかっ! でもほとんどできたも同然だなっ! 行動観察は? 何やったの?」
「スポンジ(←すばらしいっ! Wの新田先生(仮名)の予測通り!)を積み上げてどのチームが一番高くできるかってのをやったよ。私たちのチームね、優勝したんだよ」
「それはよかったねえ。クマ歩きは?」
「うん。楽しかったよ。終わったときにね、先生から天才!って褒められたよ」
す、すばらしいっ! 相当できてるではないか!
「最初に先生に何か質問されなかった?」
「“朝ごはんに何を食べましたか?”って聞かれたから“おにぎりです”って答えたよ。その次に“おにぎりには何が入っていましたか?”って言われたから、“梅干とサケです”って言った」
そう、T大附属T小学校の口頭試問は、試験が始まる前に受験票に貼られた写真と本人を先生が確認するときに1問か2問、何か質問されると聞いていた。
このときに聞かれることはたいてい「朝ごはんに何を食べましたか?」とか「ここまで何で(←交通手段のこと)来ましたか?」という他愛のないもので、合否にはそれほど影響しないらしいが、一番大切なことはここではきちんと先生の目を見て話すことだという。
受け答えの利発さを求められているのではなく、視線が合わない子がいれば自閉の気や発達障害を疑い、排除するのだという。
「先生を目、ちゃんと見た?」
「うん。見たよ」
よしよし。
あと「朝ごはんに何を食べましたか?」と聞かれて、最悪なのは「何も食べていません」と答えさせることだけど、朝ごはんを通じてある程度ちゃんとした家庭であるということもこの際、アピールしておきたい。
なんとなく朝ごはんのことが聞かれそうな気がしていたので、おにぎりにしておいたのは正解だった。トーストというのも味気ないし、ご飯とおかずもあれこれあったって、子どもはとっさに答えられないからね。
国立小の口頭試問に必要なものは、“テンポ”。それに尽きるそうだ。
あとT大附属T小の試験は30人ひとつのグループとして色分けされ、赤の5番だとか青の26番だとかという番号が当日の受験番号になる。
Wの新田先生が言うには、教室は6人で一列、全部で5列という配置になり、お話の記憶のテープの位置や、黒板などは前にある関係から、一番前の真ん中辺りにあたる各色の7番、13番、19番は若干有利なのではないかということだった。
娘は白の7番であった。この点からいってもなんかいい感じだ。
「それとね、クイズ大会の始まる前にね、“これから試験を始めますが、誰か始めのあいさつが言える人はいますか?”って先生が言うからね」
何っ!? 始めのあいさつだと!? そんな話はWでも聞いたことないねっ!
「それで誰も手を挙げなかったので、私が手を挙げたのね」
えっ!? そうなの?
「で、どうなったの?」
あまりに意外な展開に思わず声がうわずる私。
「“はい、白の7番さんどうぞ”って言われたから、私あいさつしたの」
「ど、どんな?」
「“皆さん、今日はとってもいいお天気ですね。今日のこのいいお天気に負けないように晴れやかな気持ちで、今日のクイズ大会をがんばりましょう”ってあいさつしたんだよ」
「!!!」
「クイズ大会」かいっ! まあそうやって教えてきたのだから仕方がない。
それにしてもだ。「晴れやかな気持ち」だなんて、いつの間にそんな難しい言葉を覚えたんだ? 娘よ。
マジか? すばらしすぎるぞ。そのあいさつ。
「先生はそのあとなんて言ったの?」
「“皆さん、白の7番さんのあいさつはどうでしたか? すばらしかったですね。じゃあ拍手!”って拍手をいっぱいもらったよ」
ふっむっ! あまりの誇らしさに鼻の穴が膨らむ私。
「でね、終わったあとにね、“では終わりのあいさつができる人がいますか?”って言われたんだけど、そうしたら白の23番さんが“私が今度はやります”って手を挙げて・・・」
「ちょっと待った! そのときにAちゃん(←娘)は手を挙げなかったの?」
「うん。だって私、一度あいさつしてるんだもん」
エライ! あんまりやりすぎると単なるでしゃばりだもんね。
「で、白の23番さんはなんてあいさつしたの? あと他に手を挙げている子はいなかったの?」
「白の23番さんだけだったよ。白の23番さんはね、“今日は皆さん、全力を尽くしてがんばりました。本当にお疲れ様でした”だって」
すごい。「全力を尽くして」だって! やるなあ~。白の23番さん。
「先生はなんて言ってた?」
「“白の23番さんもすばらしいですね。じゃあ皆さん、拍手!”って拍手してもらってたよ」
おお~。娘と白の23番さんはかなり有望ではないかっ!
いいぞ~。いいぞ~。これはかなりいい線をいくのではないか?
「赤のお部屋はあいさつしなかったって」
「なんでそんなことがわかるの?」
「だってお部屋を移動するときに、赤のお部屋にいたお兄さんお姉さんに聞いてみたんだもん」
なんと娘なりに独自調査をしたというのか?
そうかあ~。部屋によるんだな。
「本当にそんなすばらしいあいさつしたの?」
できすぎていてちょっと半信半疑な私。
「うん。そうだよ。褒められると気持ちいいね」
君の笑顔も今日の天気に負けないぐらい晴れやかだよ。
白の部屋は娘と23番さんで決まりだな。
すばらしいっ! 期待に胸高鳴る私であった。
「うん」
もう試験内容に関して聞きたくてしかたがないことが山のようにある。
逸る気持ちを抑えて(←抑えきれなかったと思うが!)、あれこれ娘に質問をぶつける。
そう、要は一番聞きたいことは、「娘よ! 君は試験がちゃんとできたのかい?」。
これに尽きるのである。
「お話の記憶はどうだった? 時間がなくてできなかったところとかなかった?」
「ううん。全部やったよ。わかんなかったことはないかな」
「図形は? どんなのが出たの?」
「やったことがないのが出たけど(←ちなみに出題されたのは左図通りに写しなさいという問題の変形バージョンで、書き写す側のマス目が変形しているけど位置は変わらないというものだった。←ってこの説明だとわかんないかっ!?)、最後の1問以外は全部できたよ」
「おお~、1問を残したのみかっ! エライっ! じゃあ制作は? ちぎりは?」
「うん。最後まで完成できなかった。あとね、ノリを貼れば全部できたんだけど」
「そうかっ! でもほとんどできたも同然だなっ! 行動観察は? 何やったの?」
「スポンジ(←すばらしいっ! Wの新田先生(仮名)の予測通り!)を積み上げてどのチームが一番高くできるかってのをやったよ。私たちのチームね、優勝したんだよ」
「それはよかったねえ。クマ歩きは?」
「うん。楽しかったよ。終わったときにね、先生から天才!って褒められたよ」
す、すばらしいっ! 相当できてるではないか!
「最初に先生に何か質問されなかった?」
「“朝ごはんに何を食べましたか?”って聞かれたから“おにぎりです”って答えたよ。その次に“おにぎりには何が入っていましたか?”って言われたから、“梅干とサケです”って言った」
そう、T大附属T小学校の口頭試問は、試験が始まる前に受験票に貼られた写真と本人を先生が確認するときに1問か2問、何か質問されると聞いていた。
このときに聞かれることはたいてい「朝ごはんに何を食べましたか?」とか「ここまで何で(←交通手段のこと)来ましたか?」という他愛のないもので、合否にはそれほど影響しないらしいが、一番大切なことはここではきちんと先生の目を見て話すことだという。
受け答えの利発さを求められているのではなく、視線が合わない子がいれば自閉の気や発達障害を疑い、排除するのだという。
「先生を目、ちゃんと見た?」
「うん。見たよ」
よしよし。
あと「朝ごはんに何を食べましたか?」と聞かれて、最悪なのは「何も食べていません」と答えさせることだけど、朝ごはんを通じてある程度ちゃんとした家庭であるということもこの際、アピールしておきたい。
なんとなく朝ごはんのことが聞かれそうな気がしていたので、おにぎりにしておいたのは正解だった。トーストというのも味気ないし、ご飯とおかずもあれこれあったって、子どもはとっさに答えられないからね。
国立小の口頭試問に必要なものは、“テンポ”。それに尽きるそうだ。
あとT大附属T小の試験は30人ひとつのグループとして色分けされ、赤の5番だとか青の26番だとかという番号が当日の受験番号になる。
Wの新田先生が言うには、教室は6人で一列、全部で5列という配置になり、お話の記憶のテープの位置や、黒板などは前にある関係から、一番前の真ん中辺りにあたる各色の7番、13番、19番は若干有利なのではないかということだった。
娘は白の7番であった。この点からいってもなんかいい感じだ。
「それとね、クイズ大会の始まる前にね、“これから試験を始めますが、誰か始めのあいさつが言える人はいますか?”って先生が言うからね」
何っ!? 始めのあいさつだと!? そんな話はWでも聞いたことないねっ!
「それで誰も手を挙げなかったので、私が手を挙げたのね」
えっ!? そうなの?
「で、どうなったの?」
あまりに意外な展開に思わず声がうわずる私。
「“はい、白の7番さんどうぞ”って言われたから、私あいさつしたの」
「ど、どんな?」
「“皆さん、今日はとってもいいお天気ですね。今日のこのいいお天気に負けないように晴れやかな気持ちで、今日のクイズ大会をがんばりましょう”ってあいさつしたんだよ」
「!!!」
「クイズ大会」かいっ! まあそうやって教えてきたのだから仕方がない。
それにしてもだ。「晴れやかな気持ち」だなんて、いつの間にそんな難しい言葉を覚えたんだ? 娘よ。
マジか? すばらしすぎるぞ。そのあいさつ。
「先生はそのあとなんて言ったの?」
「“皆さん、白の7番さんのあいさつはどうでしたか? すばらしかったですね。じゃあ拍手!”って拍手をいっぱいもらったよ」
ふっむっ! あまりの誇らしさに鼻の穴が膨らむ私。
「でね、終わったあとにね、“では終わりのあいさつができる人がいますか?”って言われたんだけど、そうしたら白の23番さんが“私が今度はやります”って手を挙げて・・・」
「ちょっと待った! そのときにAちゃん(←娘)は手を挙げなかったの?」
「うん。だって私、一度あいさつしてるんだもん」
エライ! あんまりやりすぎると単なるでしゃばりだもんね。
「で、白の23番さんはなんてあいさつしたの? あと他に手を挙げている子はいなかったの?」
「白の23番さんだけだったよ。白の23番さんはね、“今日は皆さん、全力を尽くしてがんばりました。本当にお疲れ様でした”だって」
すごい。「全力を尽くして」だって! やるなあ~。白の23番さん。
「先生はなんて言ってた?」
「“白の23番さんもすばらしいですね。じゃあ皆さん、拍手!”って拍手してもらってたよ」
おお~。娘と白の23番さんはかなり有望ではないかっ!
いいぞ~。いいぞ~。これはかなりいい線をいくのではないか?
「赤のお部屋はあいさつしなかったって」
「なんでそんなことがわかるの?」
「だってお部屋を移動するときに、赤のお部屋にいたお兄さんお姉さんに聞いてみたんだもん」
なんと娘なりに独自調査をしたというのか?
そうかあ~。部屋によるんだな。
「本当にそんなすばらしいあいさつしたの?」
できすぎていてちょっと半信半疑な私。
「うん。そうだよ。褒められると気持ちいいね」
君の笑顔も今日の天気に負けないぐらい晴れやかだよ。
白の部屋は娘と23番さんで決まりだな。
すばらしいっ! 期待に胸高鳴る私であった。
2010年9月19日日曜日
T大附属T小学校試験当日②
子どもたちが試験を受けている間、保護者たちは講堂へ。ちなみにこの日の私の姿はグレージュのインナーに紺のジャケットとスカート。
ジャケットは袖は7分丈のものでスカートとジャケットはそれぞれ違うブランドで別々に買ったもの(←だいぶ前になっ)ながら、わりと似たような素材だったのでぱっと見はスーツみたい。
結局お受験スーツは買わずじまいだった。
前もって聞いていた通り、「T大附属T小学校の生活」というビデオを見せられる。
内容も前もって聞いていた通り。しかし途中途中で先生のコメントが入る。
実際に見てみると、聞いていたよりもなんだかすさまじい。
運動会の様子が始めに映し出されるのだが、ちっとも楽しそうじゃなくて子どもたちの顔が本当に苦痛で歪んでいるのだ。
「5年生の3人4脚はすごいですよ。なんといってもひとりひとり走るのよりタイムがいいですからね。だって連帯責任ですから」だとか、
「3年生でなわとびの2重跳びは連続で15分はできるようになります。高学年になると30分はいけますね」だとか、遠泳や山登りでフラフラになりながらうつろな眼をしている子どもたちの表情がアップされた映像を見ながら、
「本当にみんな一生懸命で可愛らしいですね」だとか、いちいち突っ込みどころ満載なコメントが入るのだ。
Wの新田先生が言ってた通り、本当にあっちこっちから小さく「ひぃっ!」と押し殺したような声が上がる。
しかしこの日のT大附属T小の先生のコメントで一番笑えたのが、
「こんなビデオを見せられるとうちの小学校って遊んでばっかりいると思われたでしょう(←誰も思わへんわいっ!)。勉強もそれなりにちゃんとやってますからね」
というものだった。
恐るべし。
そして最後の締めの言葉が、やはり「これぐらいの体力のないお子さんはご辞退されたほうがよろしいかと思います」だった。
体育学校のノリですな。まったく。
そしてビデオが終わると前もって用意してあった志望動機を書き写す。
志望動機を書いている途中で、真っ青な顔をした女の子がひとり講堂に連れてこられた。どうやら私の隣に座っていたお母さんのお子さんらしく、試験途中で気分が悪くなって退場させられることになったらしい。ここまできてなんて運の悪いことか。
しかしこのお母さん、最初の一声を上げる前に「ちぇっ!」と舌打ちしたのを私は聞き逃さなかったねっ!
そのあといくら「あらあら。どうしたの? だいじょうぶ?」などと優しく声をかけてたって、このお母さんの本音は「ちぇっ!」なのだ。
しかしわかるぞ。その気持ち。痛いくらい。
その後も2~3人、お腹が痛いだの、気持ち悪いだのという子が講堂に連れてこられて、お母さんといっしょに退場していた。
どのお母さんも「マジかよっ! この期に及んで」と言わんばかりのわかりやすい表情をしていた。
こうなってくるとうちの娘はだいじょうぶか!?と不安になってくる。
しかしそんな不安もよそに1時間きっかり経ったあと、在校生のお兄さんお姉さんに誘導されて試験を終えた娘のグループが講堂に入場してきた。
娘はニコニコしていて明るい表情をしていた。その姿を見るとなんだか胸がキュンとして、よし、よくやったっ! 頑張ったぞ!と誇らしい気持ちに目頭が熱くなる。
あの辛かった日々。あれはもう今日で終わるのだ。
私たちは手をつないで校門を出た。記念写真を撮って由美子さん(仮名)と雪美ちゃん(仮名)が出てくるのを待った。
試験が終わったらお茶することになっていたのだ。
ところがふたりは全然出てこない。とりあえず待っている間、娘にあれこれ試験のことを聞く。
娘から聞かされた話にその後、私は大いに驚かされることになる。
ジャケットは袖は7分丈のものでスカートとジャケットはそれぞれ違うブランドで別々に買ったもの(←だいぶ前になっ)ながら、わりと似たような素材だったのでぱっと見はスーツみたい。
結局お受験スーツは買わずじまいだった。
前もって聞いていた通り、「T大附属T小学校の生活」というビデオを見せられる。
内容も前もって聞いていた通り。しかし途中途中で先生のコメントが入る。
実際に見てみると、聞いていたよりもなんだかすさまじい。
運動会の様子が始めに映し出されるのだが、ちっとも楽しそうじゃなくて子どもたちの顔が本当に苦痛で歪んでいるのだ。
「5年生の3人4脚はすごいですよ。なんといってもひとりひとり走るのよりタイムがいいですからね。だって連帯責任ですから」だとか、
「3年生でなわとびの2重跳びは連続で15分はできるようになります。高学年になると30分はいけますね」だとか、遠泳や山登りでフラフラになりながらうつろな眼をしている子どもたちの表情がアップされた映像を見ながら、
「本当にみんな一生懸命で可愛らしいですね」だとか、いちいち突っ込みどころ満載なコメントが入るのだ。
Wの新田先生が言ってた通り、本当にあっちこっちから小さく「ひぃっ!」と押し殺したような声が上がる。
しかしこの日のT大附属T小の先生のコメントで一番笑えたのが、
「こんなビデオを見せられるとうちの小学校って遊んでばっかりいると思われたでしょう(←誰も思わへんわいっ!)。勉強もそれなりにちゃんとやってますからね」
というものだった。
恐るべし。
そして最後の締めの言葉が、やはり「これぐらいの体力のないお子さんはご辞退されたほうがよろしいかと思います」だった。
体育学校のノリですな。まったく。
そしてビデオが終わると前もって用意してあった志望動機を書き写す。
志望動機を書いている途中で、真っ青な顔をした女の子がひとり講堂に連れてこられた。どうやら私の隣に座っていたお母さんのお子さんらしく、試験途中で気分が悪くなって退場させられることになったらしい。ここまできてなんて運の悪いことか。
しかしこのお母さん、最初の一声を上げる前に「ちぇっ!」と舌打ちしたのを私は聞き逃さなかったねっ!
そのあといくら「あらあら。どうしたの? だいじょうぶ?」などと優しく声をかけてたって、このお母さんの本音は「ちぇっ!」なのだ。
しかしわかるぞ。その気持ち。痛いくらい。
その後も2~3人、お腹が痛いだの、気持ち悪いだのという子が講堂に連れてこられて、お母さんといっしょに退場していた。
どのお母さんも「マジかよっ! この期に及んで」と言わんばかりのわかりやすい表情をしていた。
こうなってくるとうちの娘はだいじょうぶか!?と不安になってくる。
しかしそんな不安もよそに1時間きっかり経ったあと、在校生のお兄さんお姉さんに誘導されて試験を終えた娘のグループが講堂に入場してきた。
娘はニコニコしていて明るい表情をしていた。その姿を見るとなんだか胸がキュンとして、よし、よくやったっ! 頑張ったぞ!と誇らしい気持ちに目頭が熱くなる。
あの辛かった日々。あれはもう今日で終わるのだ。
私たちは手をつないで校門を出た。記念写真を撮って由美子さん(仮名)と雪美ちゃん(仮名)が出てくるのを待った。
試験が終わったらお茶することになっていたのだ。
ところがふたりは全然出てこない。とりあえず待っている間、娘にあれこれ試験のことを聞く。
娘から聞かされた話にその後、私は大いに驚かされることになる。
2010年9月18日土曜日
T大附属T小学校試験当日①
娘の試験開始時刻は午後1時からなので、午前中はゆっくりと過ごす。
もう昨夜の前日講習以降はすべての勉強はストップ。ひたすらリラックスさせ、気持ちを楽にさせることに専念する。
幸い、快晴でわりと暖かい日であった。
試験日は来てしまえば、あとは腹をくくるのみである。
バスにふたりで乗り込み、受付の始まる30分前に学校到着。続々と受験生が列を作っている。
娘は特に緊張している様子はなく、
「マミィ、クイズ大会が終わったらパフェ食べさせてね」
などと余裕の様子。
いいとも、いいとも。今日さえ無事に乗り切ったら、パフェでもなんでも食ってくれ。
教室に入るまでの手順などはWで講習を受けているので、迷うことなくちゃっちゃと済ます。
娘のグループは白のグループで番号は7番。おお~、幸先よさそうな番号ではないかっ!
教室には暖かい日差しが差し込んでいる。
半そでの白い丸襟のブラウスに紺色のベスト、紺色のキュロット姿の娘は、ロングヘアーを二つに分けたみつあみをしていてめっちゃくちゃ可愛い。ぐるりと他の受験生を見回すと、とりたててめぼしい子はいない。
見た目だけならうちの娘はダントツだぞ。
と親バカながらに思う。
親バカの色眼鏡で見ると、よその子はなんだか貧弱で貧乏臭い。
だいたい筆記試験に通るのは7人に1人程度だといわれている。
この教室で言えばだいたい4人ぐらいが2次通過するはずなのだ。
この場にいる先生は来年度1年生を担任する先生だそうで、いわば「自分のクラスにはこんな子がほしい」と思う生徒を合格させるそうなので、試験というよりはある種のオーディションみたいなものなのだ。
私が先生なら絶対にうちの娘のような子は残すねっ! 傍で見ていても娘は目立っていて光り輝いて見えた。
ただここでちょっぴり不安なことがひとつ。
テストが始まるまでの待ち時間の間、在校生の6年生のお兄さん、お姉さんたちが各教室で絵本を読んでくれたり、歌を歌ってくれたり、紙芝居を見せてくれたりして受験生たちを和ませてくれるのだが、在校生のお姉さん方がどうにもダサいのだ。
個人的に昔から小学校高学年から中学生ぐらいの子どもは、一番ダサくて一番薄汚いと思っている。
それにしてもだ! いくら薄汚い年代だと言っても、普通、いるだろう。せめて1人かふたりはハッとするような美少女が!
ところがこの学校の女の子で可愛い子がまったく見当たらないのだ。どいつもこいつも色が黒くて固太りで髪の毛がボサボサしていて、自分を可愛らしく見せようだとかきれいに見せようだとかという意思を1ミクロンも感じさせないのである。
きっと運動はできて勉強もうんとできるんだろうけど、いいのか女の子として!?
間違ってもバレエとか習っていそうな子がいないのだ。
こんな中では女の子オーラ全開の娘はきっと浮いてしまう。
それとも小学校に入ったら入ったで、娘もこんな感じになってしまうのか?
それはそれで悩ましい。
「トイレだいじょうぶ?」
「うん」
と答える娘だが、どうにも不安になりちょっと無理やりトイレに連れて行く。
「マミィ、こんなトイレじゃ、できないよぉ~」
と情けない声を出す娘。
し、しまった! 小学校のトイレは全部和式だった! 特にT大附属T小の校舎は古めなので、洋式トイレなどなかったのだった。
しかも慣れないキュロット!
そう、今どきの子どもって和式トイレには慣れてないのよぉ~。
これは小学校に入るまでに訓練せねば!
そして教室に戻り、時間が来たら保護者たちは講堂へ。
このときにWの新田先生(仮名)からアドバイスされていたのが、子どもたちが元気になる「魔法の言葉」をひと言かけてあげようというもの。
もうここまで来たらどうにもならないのである。
「愛しているよ」
「今日は思いっきり楽しんで」
「Aちゃんならできるっ!」
「あとでパフェ食べようね」
「クイズ大会終わったらイギリスとニースに行くから」
「今日はフランス料理食べに行くから」
「あとでいっぱいむぎゅうってしようね」
等など・・・。
ひと言が選びきれなくて延々と声をかけ続ける私。
よそのお母さんたちを見ても皆さん、子どもの耳元で何やらブツブツと囁いている。
きっとどこのお受験教室でも同じようなアドバイスをしてるんだろうな。
娘はにっこりと微笑んで「またあとでね」と手を小さく振ってくれる。30人のグループに欠席(棄権!?)が4名、お母さんと別れるときになって泣き出した子が1名。
よしこれで5人退場! ひたすら娘に有利になることばかりを祈る私である。
もう昨夜の前日講習以降はすべての勉強はストップ。ひたすらリラックスさせ、気持ちを楽にさせることに専念する。
幸い、快晴でわりと暖かい日であった。
試験日は来てしまえば、あとは腹をくくるのみである。
バスにふたりで乗り込み、受付の始まる30分前に学校到着。続々と受験生が列を作っている。
娘は特に緊張している様子はなく、
「マミィ、クイズ大会が終わったらパフェ食べさせてね」
などと余裕の様子。
いいとも、いいとも。今日さえ無事に乗り切ったら、パフェでもなんでも食ってくれ。
教室に入るまでの手順などはWで講習を受けているので、迷うことなくちゃっちゃと済ます。
娘のグループは白のグループで番号は7番。おお~、幸先よさそうな番号ではないかっ!
教室には暖かい日差しが差し込んでいる。
半そでの白い丸襟のブラウスに紺色のベスト、紺色のキュロット姿の娘は、ロングヘアーを二つに分けたみつあみをしていてめっちゃくちゃ可愛い。ぐるりと他の受験生を見回すと、とりたててめぼしい子はいない。
見た目だけならうちの娘はダントツだぞ。
と親バカながらに思う。
親バカの色眼鏡で見ると、よその子はなんだか貧弱で貧乏臭い。
だいたい筆記試験に通るのは7人に1人程度だといわれている。
この教室で言えばだいたい4人ぐらいが2次通過するはずなのだ。
この場にいる先生は来年度1年生を担任する先生だそうで、いわば「自分のクラスにはこんな子がほしい」と思う生徒を合格させるそうなので、試験というよりはある種のオーディションみたいなものなのだ。
私が先生なら絶対にうちの娘のような子は残すねっ! 傍で見ていても娘は目立っていて光り輝いて見えた。
ただここでちょっぴり不安なことがひとつ。
テストが始まるまでの待ち時間の間、在校生の6年生のお兄さん、お姉さんたちが各教室で絵本を読んでくれたり、歌を歌ってくれたり、紙芝居を見せてくれたりして受験生たちを和ませてくれるのだが、在校生のお姉さん方がどうにもダサいのだ。
個人的に昔から小学校高学年から中学生ぐらいの子どもは、一番ダサくて一番薄汚いと思っている。
それにしてもだ! いくら薄汚い年代だと言っても、普通、いるだろう。せめて1人かふたりはハッとするような美少女が!
ところがこの学校の女の子で可愛い子がまったく見当たらないのだ。どいつもこいつも色が黒くて固太りで髪の毛がボサボサしていて、自分を可愛らしく見せようだとかきれいに見せようだとかという意思を1ミクロンも感じさせないのである。
きっと運動はできて勉強もうんとできるんだろうけど、いいのか女の子として!?
間違ってもバレエとか習っていそうな子がいないのだ。
こんな中では女の子オーラ全開の娘はきっと浮いてしまう。
それとも小学校に入ったら入ったで、娘もこんな感じになってしまうのか?
それはそれで悩ましい。
「トイレだいじょうぶ?」
「うん」
と答える娘だが、どうにも不安になりちょっと無理やりトイレに連れて行く。
「マミィ、こんなトイレじゃ、できないよぉ~」
と情けない声を出す娘。
し、しまった! 小学校のトイレは全部和式だった! 特にT大附属T小の校舎は古めなので、洋式トイレなどなかったのだった。
しかも慣れないキュロット!
そう、今どきの子どもって和式トイレには慣れてないのよぉ~。
これは小学校に入るまでに訓練せねば!
そして教室に戻り、時間が来たら保護者たちは講堂へ。
このときにWの新田先生(仮名)からアドバイスされていたのが、子どもたちが元気になる「魔法の言葉」をひと言かけてあげようというもの。
もうここまで来たらどうにもならないのである。
「愛しているよ」
「今日は思いっきり楽しんで」
「Aちゃんならできるっ!」
「あとでパフェ食べようね」
「クイズ大会終わったらイギリスとニースに行くから」
「今日はフランス料理食べに行くから」
「あとでいっぱいむぎゅうってしようね」
等など・・・。
ひと言が選びきれなくて延々と声をかけ続ける私。
よそのお母さんたちを見ても皆さん、子どもの耳元で何やらブツブツと囁いている。
きっとどこのお受験教室でも同じようなアドバイスをしてるんだろうな。
娘はにっこりと微笑んで「またあとでね」と手を小さく振ってくれる。30人のグループに欠席(棄権!?)が4名、お母さんと別れるときになって泣き出した子が1名。
よしこれで5人退場! ひたすら娘に有利になることばかりを祈る私である。
澪ちゃん(仮名)親子
Wの前日講座を終えていざ帰ろうと家路に向かう私たち。
娘からちらりと今日の判定を見せてもらうとどれもがA判定。
よっしゃあっ~!!!
この調子で明日も頑張れ!
「なんかノド乾いちゃったなあ~」と娘。
「おうち帰ったらオレンジジュースでも飲む?」などと話してたら、
「あらっ! こんにちは! AちゃんもWの講習受けてたんだね」
と声をかけてきたのが澪ちゃんママと澪ちゃんの親子であった。
澪ちゃんはうちの会社がやっている幼児教室で娘と同じクラスだ。
そういえば澪ちゃんのママやパパをT大附属T小学校の抽選やら何やらで見かけたっけ。
「澪ちゃんもBグループなんだね」
「そうそう。うちは明日2時半からなんだ。Aちゃんは何時から?」
「うちはその前の回なの」
「そっかあ。じゃあ当日は会えないね」
などと立ち話をしているうちに子どもたちもひょんなところで会えたことがうれしかったみたいで、盛り上がっている。
なんだったらお茶でもということになり、目に入ったカフェに4人で入る。
澪ちゃんは年中のころからWの講習を受けていて、ママが専業主婦なので平日に通っていたとのことだった。
しかも家が江東区だというので、Wからえらい遠いところから通っていたことになる。
うちの幼児教室もWと最寄り駅は同じ(←ということはうちの地元)なので、わざわざ何回か地下鉄を乗り換えて週に何回もこの街に来てたということになる。すごいなあ。
つくづく歩いて行けるところになんでもあるのは、ありがたいことだと思う。
私はさっそくビール、澪ちゃんママは何やら可愛らしいカクテルを飲みながら(←お茶じゃないだろっ!)、あれこれ語る。
澪ちゃんママとは知り合って1年半以上は経つのに、こんなにおしゃべりするのは初めてだ。
話しているうちにうちの幼児教室には澪ちゃんが赤ちゃんのころから通っていて、また別の場所で会社が運営しているキッズ英語教室にも3歳のころから通っているということがわかった。
なんとすばらしいっ! 我が社のヘビーユーザーではないかっ!
それに加えてWも行ってたのかあ~。
子どもにお金をかける人はかけるものだ。
「明日、お互い頑張ろうね」
そう言い合って澪ちゃん親子と別れたのであった。
娘からちらりと今日の判定を見せてもらうとどれもがA判定。
よっしゃあっ~!!!
この調子で明日も頑張れ!
「なんかノド乾いちゃったなあ~」と娘。
「おうち帰ったらオレンジジュースでも飲む?」などと話してたら、
「あらっ! こんにちは! AちゃんもWの講習受けてたんだね」
と声をかけてきたのが澪ちゃんママと澪ちゃんの親子であった。
澪ちゃんはうちの会社がやっている幼児教室で娘と同じクラスだ。
そういえば澪ちゃんのママやパパをT大附属T小学校の抽選やら何やらで見かけたっけ。
「澪ちゃんもBグループなんだね」
「そうそう。うちは明日2時半からなんだ。Aちゃんは何時から?」
「うちはその前の回なの」
「そっかあ。じゃあ当日は会えないね」
などと立ち話をしているうちに子どもたちもひょんなところで会えたことがうれしかったみたいで、盛り上がっている。
なんだったらお茶でもということになり、目に入ったカフェに4人で入る。
澪ちゃんは年中のころからWの講習を受けていて、ママが専業主婦なので平日に通っていたとのことだった。
しかも家が江東区だというので、Wからえらい遠いところから通っていたことになる。
うちの幼児教室もWと最寄り駅は同じ(←ということはうちの地元)なので、わざわざ何回か地下鉄を乗り換えて週に何回もこの街に来てたということになる。すごいなあ。
つくづく歩いて行けるところになんでもあるのは、ありがたいことだと思う。
私はさっそくビール、澪ちゃんママは何やら可愛らしいカクテルを飲みながら(←お茶じゃないだろっ!)、あれこれ語る。
澪ちゃんママとは知り合って1年半以上は経つのに、こんなにおしゃべりするのは初めてだ。
話しているうちにうちの幼児教室には澪ちゃんが赤ちゃんのころから通っていて、また別の場所で会社が運営しているキッズ英語教室にも3歳のころから通っているということがわかった。
なんとすばらしいっ! 我が社のヘビーユーザーではないかっ!
それに加えてWも行ってたのかあ~。
子どもにお金をかける人はかけるものだ。
「明日、お互い頑張ろうね」
そう言い合って澪ちゃん親子と別れたのであった。
2010年9月16日木曜日
恐るべし! Wの前日講習
T大附属T小学校の2次試験がいよいよ始まった。
例年通り初日はAグループ男女、2日目がBグループ、3日目がCグループだ。
そしてWには前日講習なるものがある。
それは何か?
なんとBグループのために、Aグループの試験が行われる当日にAグループで出された試験問題が集められてそのデータを元に翌日行われるBグループの試験の傾向を予測するというもので、同様にCグループのために、Bグループの試験当日にデータが集められ翌日のCグループの試験に備えるという離れ業的な講習だ。
そんなこと物理的に可能なのか?
あとこの場合、一番割りを食うのは初日のAグループだ。
泣いても笑っても試験は明日。後悔のないように午後から早退し、娘とともに前日講習にゴーッ!
前日講習は午後3時40分から。もう会場は人! 人! 人! である。
講習料壱万弐千円也。例によって箱に無造作に放り込まれる万札! 万札! 万札!である。
わーい、現金だ、現金だ。
しかしすでに何百人分のAグループの今年の試験問題、それに対する予想問題がすでに完成していて印刷されてるなんて、いったいどうなってるわけ!?
だって最後のグループの試験が終わったのってついさっきなんじゃないの?
一番早いパターンでも男子の最初のグループが終わるのが午前10時ごろ、女子の最初のグループに至っては午後2時過ぎぐらいのはずだ。
それなのにもう男女別に試験内容をゲットし、対策を立ててるなんてすさまじすぎる!
恐るべしW。
例によって保護者と子どもは分離させられ、子どもたちは今日出たAグループの出題を元に予測されるBグループ用の「お話の記憶」「図形」「制作」「クマ歩き」を行う。
保護者たちはカリスマ講師・新田先生(仮名)のありがたい解説だ。
まずは子ども編から。
本日出題された試験から今年の傾向を読み解く。
実際Aグループの図形の問題を見ると例年より易しめだ。通常Bグループの問題がAグループの問題以上に難しい問題は出ないので、基本さえきちんと押さえておけばだいじょうぶそうだ。
そしてなんと今年は「行動観察」が入っていたとのこと!
だいたい国立小のどこでも行われる「行動観察」はT大附属T小では過去行われたことがなかった。
ここにきてなぜいきなり「行動観察」?
この謎を鮮やかに解いてみせるのが我らが新田先生だ。
新田先生いわく、なんと今年の1年生であろうことか天下のT大附属T小で学級崩壊が起きているというのだ!
というわけであらかじめクラスの学級崩壊の要因になりそうな子どもを行動観察によって排除するという目的があるらしい。
さすが筆記試験ばっかりできたってダメだということよねえ~。
よって新田先生によるとこの場合の「行動観察」はグループを引っ張るリーダーシップの素養を見るだとか、グループのムードメーカーになっているだとか、協調性だとかそんな難しいことを考える必要はないらしく、ずばり問題児の排除だけなので、ほとんどの子は「行動観察」で引っかかることはないというのが結論だ。
「行動観察」の課題は男女ともスポンジのさいころ型を用い、男子はチームに分かれてどのチームが一番高く積み上げられるのかを競い、女子は協力しながらお城を作るというもの。
新田先生の予測はせっかくのスポンジなので明日も必ず使うとのこと。
すばらしいっ!
こういう「行動観察」なら娘はお手の物だ。
いいぞ、いいぞ。いい感じ。
「行動観察」が入った時間分、「制作」の時間が削られていてどうやら例年より易しくなっているとのこと。
これも娘にとっては好材料だ。
あとは当日の流れを1日講習のときより詳しく解説されたり、今年は赤色のクーピーしか使わなかったという話だったり、どこでマスクをはずしたかという話だったりで微に入り細に入ってる。
ほんと、まるで見てきたかのようなリアルな話ばかり。
こういう情報は会員でもある受験生やその親から試験が終了した時点で聞き出して、最低でも10人以上の一致した情報でウラをとっているのだという。
少人数の塾はきっとひとりひとりに目が届いて十分なケアをしてくれるだろうけど、こういう迅速は情報収集は大規模校ならではの人海戦術がものをいう。
「こうして皆さんは前日の試験の様子の情報を手にしているわけですから、皆さんも明日試験を受けるCグループの皆さんのために、さらには今後の受験生のためにどんなことでもいいので、明日の会場の様子をぜひ私たちに知らせてください。また可能であればお子さんたちに出題された問題を覚えておいてもらってください。あ、もちろん、問題を覚えることが優先ではなくて、合格するように集中して問題に取り組むことが最優先ですよ」
笑顔で情報提供を呼びかける新田先生。
ええ、もちろん。ご恩はちゃんと返しますよ。情報だってなんだってもらいっぱなしはいけないですからね。
ここはギブ&テイクということで、明日の試験が終わったらしっかりとご協力させていただきましょう。
ひとまずはWの新田先生、ありがとう。
情報提供とともに合格報告もできることを祈って・・・。
例年通り初日はAグループ男女、2日目がBグループ、3日目がCグループだ。
そしてWには前日講習なるものがある。
それは何か?
なんとBグループのために、Aグループの試験が行われる当日にAグループで出された試験問題が集められてそのデータを元に翌日行われるBグループの試験の傾向を予測するというもので、同様にCグループのために、Bグループの試験当日にデータが集められ翌日のCグループの試験に備えるという離れ業的な講習だ。
そんなこと物理的に可能なのか?
あとこの場合、一番割りを食うのは初日のAグループだ。
泣いても笑っても試験は明日。後悔のないように午後から早退し、娘とともに前日講習にゴーッ!
前日講習は午後3時40分から。もう会場は人! 人! 人! である。
講習料壱万弐千円也。例によって箱に無造作に放り込まれる万札! 万札! 万札!である。
わーい、現金だ、現金だ。
しかしすでに何百人分のAグループの今年の試験問題、それに対する予想問題がすでに完成していて印刷されてるなんて、いったいどうなってるわけ!?
だって最後のグループの試験が終わったのってついさっきなんじゃないの?
一番早いパターンでも男子の最初のグループが終わるのが午前10時ごろ、女子の最初のグループに至っては午後2時過ぎぐらいのはずだ。
それなのにもう男女別に試験内容をゲットし、対策を立ててるなんてすさまじすぎる!
恐るべしW。
例によって保護者と子どもは分離させられ、子どもたちは今日出たAグループの出題を元に予測されるBグループ用の「お話の記憶」「図形」「制作」「クマ歩き」を行う。
保護者たちはカリスマ講師・新田先生(仮名)のありがたい解説だ。
まずは子ども編から。
本日出題された試験から今年の傾向を読み解く。
実際Aグループの図形の問題を見ると例年より易しめだ。通常Bグループの問題がAグループの問題以上に難しい問題は出ないので、基本さえきちんと押さえておけばだいじょうぶそうだ。
そしてなんと今年は「行動観察」が入っていたとのこと!
だいたい国立小のどこでも行われる「行動観察」はT大附属T小では過去行われたことがなかった。
ここにきてなぜいきなり「行動観察」?
この謎を鮮やかに解いてみせるのが我らが新田先生だ。
新田先生いわく、なんと今年の1年生であろうことか天下のT大附属T小で学級崩壊が起きているというのだ!
というわけであらかじめクラスの学級崩壊の要因になりそうな子どもを行動観察によって排除するという目的があるらしい。
さすが筆記試験ばっかりできたってダメだということよねえ~。
よって新田先生によるとこの場合の「行動観察」はグループを引っ張るリーダーシップの素養を見るだとか、グループのムードメーカーになっているだとか、協調性だとかそんな難しいことを考える必要はないらしく、ずばり問題児の排除だけなので、ほとんどの子は「行動観察」で引っかかることはないというのが結論だ。
「行動観察」の課題は男女ともスポンジのさいころ型を用い、男子はチームに分かれてどのチームが一番高く積み上げられるのかを競い、女子は協力しながらお城を作るというもの。
新田先生の予測はせっかくのスポンジなので明日も必ず使うとのこと。
すばらしいっ!
こういう「行動観察」なら娘はお手の物だ。
いいぞ、いいぞ。いい感じ。
「行動観察」が入った時間分、「制作」の時間が削られていてどうやら例年より易しくなっているとのこと。
これも娘にとっては好材料だ。
あとは当日の流れを1日講習のときより詳しく解説されたり、今年は赤色のクーピーしか使わなかったという話だったり、どこでマスクをはずしたかという話だったりで微に入り細に入ってる。
ほんと、まるで見てきたかのようなリアルな話ばかり。
こういう情報は会員でもある受験生やその親から試験が終了した時点で聞き出して、最低でも10人以上の一致した情報でウラをとっているのだという。
少人数の塾はきっとひとりひとりに目が届いて十分なケアをしてくれるだろうけど、こういう迅速は情報収集は大規模校ならではの人海戦術がものをいう。
「こうして皆さんは前日の試験の様子の情報を手にしているわけですから、皆さんも明日試験を受けるCグループの皆さんのために、さらには今後の受験生のためにどんなことでもいいので、明日の会場の様子をぜひ私たちに知らせてください。また可能であればお子さんたちに出題された問題を覚えておいてもらってください。あ、もちろん、問題を覚えることが優先ではなくて、合格するように集中して問題に取り組むことが最優先ですよ」
笑顔で情報提供を呼びかける新田先生。
ええ、もちろん。ご恩はちゃんと返しますよ。情報だってなんだってもらいっぱなしはいけないですからね。
ここはギブ&テイクということで、明日の試験が終わったらしっかりとご協力させていただきましょう。
ひとまずはWの新田先生、ありがとう。
情報提供とともに合格報告もできることを祈って・・・。
まったく偶然の再会
私が以前、働いていたレコード会社は中にグループ会社がたくさんあって、私が最初に配属された会社はその中でも出版を手がける会社だった。ずいぶん前に紹介した同期でかつ同じ大学出身の森田(仮名)が現在社長を務めている。
前原さん(仮名)は4期か5期上の先輩で、私が入社したころは当時一番売れていた音楽情報誌の副編集長だった。
豪放磊落で変わり者だったが、相当なインテリでああいう特殊な世界では愛されるキャラクターだった。
業界屈指のグルメとしても有名でそのせいかどっぷり太っていて、歯並びが異常に悪い人だった。
キャラクター的に柄ではないが、茶色く変色し解けたような歯並びはシンナー中毒でボロボロになった歯を彷彿させ(←って実際はそんな歯見たことないけど。あと断じて彼にはヤンキー的な資質はない)、彼の風貌を一層奇怪なものにしていた。
ところが今目の前に立っている前原さんは当時からゆうに30キロは違うだろうと思われるほど痩せており、トレードマークともいえたあのシンナーでボロボロになったような歯並びはきれいに整えられていた。
いや厳密にいえば痩せたせいで歯ばかりがどうも人工的に目立ってしまい、どうもしっくりしていない。
そのせいか、ふつう痩せて歯並びを整えれば以前より絶対に見てくれが良くなるはずなのに、不思議と前原さんの場合はそうはなっていない。
以前の風貌のほうが愛嬌があったというか、今は何やら荒んだ禍々しさに包まれている。
前原さんは前社長の右腕兼ペットのような存在だった。
しかし編集長として任された雑誌を前原さんは何冊も廃刊させてしまっていた。
折からの出版不況で経営危機に襲われた会社の建て直しの任を受けた森田が社長になったときに、高給取りだけど会社のお荷物になってしまっていた前原さんは、森田からリストラされたというもっぱらの噂だった。
マスコミOB会で森田に会ったときにその噂の真偽を本人に確かめたことがあったが、森田は苦虫を潰したような顔をして、
「前原さんはセンスもあるし、めっちゃええ人やけどな。広岡さん(仮名:昔の私の上司)にしろ、給料がめっちゃ高いねん。他のやつらを守らんとあかんからな」
とかなり飲んだ後にぽつりと漏らした。
森田は情に厚いやつだけど、情に流されるやつではない。
いくら私のことを「女の中では一番の親友」といったところで、もし私がまだ会社にいたとしたら、私の首だって躊躇なく切るだろう。やつはそうゆうやつだ。
「おお~、これが噂の清永の子か」
しみじみと前原さんは娘を見る。
「前原さん、今お仕事は?」
「まあ、適当だよ。適当。アハハハ」
声だけは明るいがその調子じゃ仕事はしていなさそうだ。
どう考えても40歳代後半の前原さんが以前と同じぐらいの収入を得るのはかなり難しいというか、不可能だろう。
出版の世界だけでなく、音楽業界も縮小していっているのだ。
前原さんだけじゃなく、未だその業界に残っている人たちから景気のいい話を聞くことはない。
つくづく30歳の早いうちに他業界に転職しておいてよかったと思うこのごろである。
5分ほど立ち話をしてお互い連絡先を交換することもなく私たちは別れた。
今後、前原さんはどうなっていくんだろう。
いい大学を出てたって、いい会社に入ったって本当にこれからはどうなるかわからない世の中なのだ。
そう思うと娘がテストでいい結果を残さなかったことなんて、急にどうでもよくなってしまった。
お受験していいところに入ったところで所詮、たかが小学校なのである。
前原さんとの偶然の再会は結果的に、感情的に熱くなった私の気持ちをクールダウンさせるのに十分なものであった。
前原さん(仮名)は4期か5期上の先輩で、私が入社したころは当時一番売れていた音楽情報誌の副編集長だった。
豪放磊落で変わり者だったが、相当なインテリでああいう特殊な世界では愛されるキャラクターだった。
業界屈指のグルメとしても有名でそのせいかどっぷり太っていて、歯並びが異常に悪い人だった。
キャラクター的に柄ではないが、茶色く変色し解けたような歯並びはシンナー中毒でボロボロになった歯を彷彿させ(←って実際はそんな歯見たことないけど。あと断じて彼にはヤンキー的な資質はない)、彼の風貌を一層奇怪なものにしていた。
ところが今目の前に立っている前原さんは当時からゆうに30キロは違うだろうと思われるほど痩せており、トレードマークともいえたあのシンナーでボロボロになったような歯並びはきれいに整えられていた。
いや厳密にいえば痩せたせいで歯ばかりがどうも人工的に目立ってしまい、どうもしっくりしていない。
そのせいか、ふつう痩せて歯並びを整えれば以前より絶対に見てくれが良くなるはずなのに、不思議と前原さんの場合はそうはなっていない。
以前の風貌のほうが愛嬌があったというか、今は何やら荒んだ禍々しさに包まれている。
前原さんは前社長の右腕兼ペットのような存在だった。
しかし編集長として任された雑誌を前原さんは何冊も廃刊させてしまっていた。
折からの出版不況で経営危機に襲われた会社の建て直しの任を受けた森田が社長になったときに、高給取りだけど会社のお荷物になってしまっていた前原さんは、森田からリストラされたというもっぱらの噂だった。
マスコミOB会で森田に会ったときにその噂の真偽を本人に確かめたことがあったが、森田は苦虫を潰したような顔をして、
「前原さんはセンスもあるし、めっちゃええ人やけどな。広岡さん(仮名:昔の私の上司)にしろ、給料がめっちゃ高いねん。他のやつらを守らんとあかんからな」
とかなり飲んだ後にぽつりと漏らした。
森田は情に厚いやつだけど、情に流されるやつではない。
いくら私のことを「女の中では一番の親友」といったところで、もし私がまだ会社にいたとしたら、私の首だって躊躇なく切るだろう。やつはそうゆうやつだ。
「おお~、これが噂の清永の子か」
しみじみと前原さんは娘を見る。
「前原さん、今お仕事は?」
「まあ、適当だよ。適当。アハハハ」
声だけは明るいがその調子じゃ仕事はしていなさそうだ。
どう考えても40歳代後半の前原さんが以前と同じぐらいの収入を得るのはかなり難しいというか、不可能だろう。
出版の世界だけでなく、音楽業界も縮小していっているのだ。
前原さんだけじゃなく、未だその業界に残っている人たちから景気のいい話を聞くことはない。
つくづく30歳の早いうちに他業界に転職しておいてよかったと思うこのごろである。
5分ほど立ち話をしてお互い連絡先を交換することもなく私たちは別れた。
今後、前原さんはどうなっていくんだろう。
いい大学を出てたって、いい会社に入ったって本当にこれからはどうなるかわからない世の中なのだ。
そう思うと娘がテストでいい結果を残さなかったことなんて、急にどうでもよくなってしまった。
お受験していいところに入ったところで所詮、たかが小学校なのである。
前原さんとの偶然の再会は結果的に、感情的に熱くなった私の気持ちをクールダウンさせるのに十分なものであった。
2010年9月15日水曜日
Wの1日入試体験③
そして講習の締めは試験当日までの時間の過ごし方だ。
泣いても笑っても試験まで1週間切っているのだ。あとは体調を整えて、楽しく笑顔で試験を受けられるように子どもたちをその気にさせようとのこと。
T大附属T小に向いている子どもは「明るくてタフであきらめない子ども。問題を解決しようとあがく子ども」。
うん。うちの娘に向いてそうだ!(←ついこの前まではO女附属小が一番向いていると思っていたが、それはそれ。これはこれ)
「ここまでお子さんたちなりに頑張って、お父様方お母様方もずいぶんいっしょに頑張ってこられたと思います。どういう結果になっても、仮にダメだったとしてもやってきたことは絶対に無駄になりません。国立受験の勉強を通じて身につけたことは公立であろうとどこであろうと学校という場所では絶対に必要とされ、先生方に評価される資質です。あと小学校受験で人生が決まるわけではありません。どういう結果であれお子さんのすべてを受け入れてください」
カリスマ講師新田先生(仮名)が熱く語る。聞きようによっては「ダメでもそれはそれ。うちでは責任は取りませんよ」と言っているように聞こえなくもないが、「どういう結果であれ受け入れる」というのはその通りだと思う。
確かにダメならダメで仕方がないではないか。
確かに娘はよくがんばった。私に叱られ怒鳴られ、ときには手を上げられながらも「クイズ大会(←未だにお受験だとは知らないでいる!)をやめる」とは言わなかった。
これこそ、T大附属T小が求める「あきらめない子」ではないか!
確かに当日マスクをしたまま試験を受けさせられるだろうからと、家の中でマスクをしてプリントに取り組む様子などは異様だった。
このあと娘に会ったらしっかりと抱きしめ、よく頑張ったねと優しく声をかけてあげよう。
私の心は穏やかに満たされていた。
・・・・のは娘から見せられたこの日のプリント結果を見るまでだった。
なんと! こんな直前になってニアミスの連続で試験結果がボロボロだったのである。
「何をやってるんだぁ~!!! このバカモンがぁ!!!!」
一瞬で頭に血が上る。
何が頑張っただ、何がありのままを受け入れるだ。
こんなんじゃあかんだろうがぁっ!!!
どうしてこんなにハラハラさせられるんだろう。うちの娘はダメなら徹底してダメならあきらめもつくのに、中途半端にできたりできなかったり、下手に期待を持たされたり、裏切られたりする。
まあ期待するのは親の勝手なわけだし、徹底してダメな娘を持ってもそれはそれで困る。
振り上げた拳を振り下ろすわけにもいかず、モヤモヤとするばかり。
神童・朔美ちゃん(仮名)の試験結果を見せてもらうと、それなりにできている。
朔美ちゃんママはそれほど結果に拘泥している様子もなく、淡々としている。きっとこれぐらい淡々としているほうが子どもにとってはいいんだろうなあと頭では思うものの、なかなか感情がついていけない。
朔美ちゃん親子とお茶してから別れたあと、駅につながっているデパートの通路を歩きながらもついつい説教モードになる私。
ところが何やら辺りにものすごく禍々しいオーラを感じて、つないでいた娘の手をぎゅっと固く握る。
「マミィ、急に黙ってどうしたの?」
と訝しがる娘。
何だ何だ。これは?
禍々しいオーラは同じく地下でつながっている大型書店から流れてくるようだ。そのオーラに引かれるように書店に足を踏み入れると、なんとそこには知っているような知らないような疲れ切ったおじさんが異様な存在感を放って佇んでいた。
この人、もしかして・・・・?
「おお、もしや清永なのでは?」
そのおじさんが声をかけてきた。やっぱり。思ったとおりだ。
「マミィ、知ってる人?」
娘は怯えて私の背後に回る。子ども心にもその風貌は異様に映っただろう。
その人とは私の前の会社の先輩である前原さんなのであった。
泣いても笑っても試験まで1週間切っているのだ。あとは体調を整えて、楽しく笑顔で試験を受けられるように子どもたちをその気にさせようとのこと。
T大附属T小に向いている子どもは「明るくてタフであきらめない子ども。問題を解決しようとあがく子ども」。
うん。うちの娘に向いてそうだ!(←ついこの前まではO女附属小が一番向いていると思っていたが、それはそれ。これはこれ)
「ここまでお子さんたちなりに頑張って、お父様方お母様方もずいぶんいっしょに頑張ってこられたと思います。どういう結果になっても、仮にダメだったとしてもやってきたことは絶対に無駄になりません。国立受験の勉強を通じて身につけたことは公立であろうとどこであろうと学校という場所では絶対に必要とされ、先生方に評価される資質です。あと小学校受験で人生が決まるわけではありません。どういう結果であれお子さんのすべてを受け入れてください」
カリスマ講師新田先生(仮名)が熱く語る。聞きようによっては「ダメでもそれはそれ。うちでは責任は取りませんよ」と言っているように聞こえなくもないが、「どういう結果であれ受け入れる」というのはその通りだと思う。
確かにダメならダメで仕方がないではないか。
確かに娘はよくがんばった。私に叱られ怒鳴られ、ときには手を上げられながらも「クイズ大会(←未だにお受験だとは知らないでいる!)をやめる」とは言わなかった。
これこそ、T大附属T小が求める「あきらめない子」ではないか!
確かに当日マスクをしたまま試験を受けさせられるだろうからと、家の中でマスクをしてプリントに取り組む様子などは異様だった。
このあと娘に会ったらしっかりと抱きしめ、よく頑張ったねと優しく声をかけてあげよう。
私の心は穏やかに満たされていた。
・・・・のは娘から見せられたこの日のプリント結果を見るまでだった。
なんと! こんな直前になってニアミスの連続で試験結果がボロボロだったのである。
「何をやってるんだぁ~!!! このバカモンがぁ!!!!」
一瞬で頭に血が上る。
何が頑張っただ、何がありのままを受け入れるだ。
こんなんじゃあかんだろうがぁっ!!!
どうしてこんなにハラハラさせられるんだろう。うちの娘はダメなら徹底してダメならあきらめもつくのに、中途半端にできたりできなかったり、下手に期待を持たされたり、裏切られたりする。
まあ期待するのは親の勝手なわけだし、徹底してダメな娘を持ってもそれはそれで困る。
振り上げた拳を振り下ろすわけにもいかず、モヤモヤとするばかり。
神童・朔美ちゃん(仮名)の試験結果を見せてもらうと、それなりにできている。
朔美ちゃんママはそれほど結果に拘泥している様子もなく、淡々としている。きっとこれぐらい淡々としているほうが子どもにとってはいいんだろうなあと頭では思うものの、なかなか感情がついていけない。
朔美ちゃん親子とお茶してから別れたあと、駅につながっているデパートの通路を歩きながらもついつい説教モードになる私。
ところが何やら辺りにものすごく禍々しいオーラを感じて、つないでいた娘の手をぎゅっと固く握る。
「マミィ、急に黙ってどうしたの?」
と訝しがる娘。
何だ何だ。これは?
禍々しいオーラは同じく地下でつながっている大型書店から流れてくるようだ。そのオーラに引かれるように書店に足を踏み入れると、なんとそこには知っているような知らないような疲れ切ったおじさんが異様な存在感を放って佇んでいた。
この人、もしかして・・・・?
「おお、もしや清永なのでは?」
そのおじさんが声をかけてきた。やっぱり。思ったとおりだ。
「マミィ、知ってる人?」
娘は怯えて私の背後に回る。子ども心にもその風貌は異様に映っただろう。
その人とは私の前の会社の先輩である前原さんなのであった。
2010年9月14日火曜日
Wの1日入試体験②
まるでその場に居合わせたかのような臨場感をもって、試験当日の様子を説明する新田先生(仮名)。
試験当日の流れ・子ども編のあとは、保護者編だ。
当日、保護者たちは子どもの受験番号別にグループ分けされ、体育館で待たされるらしい。
まずT大附属T小の生活の様子を映したビデオを見せられるのだという。
新田先生いわく、このビデオがすさまじいらしい。
最初に運動会の様子を見せられるらしいのだが、かけっこでも綱引きでも「絶対に何が何でも勝て!」という周りの人間の煽り具合も映され、そのプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも歯を食いしばってがんばっている子どもたちが次から次へと映し出され、そのあとは遠距離通学に耐える子どもたち、2キロの遠泳を延々と続ける子どもたち、2000メートル級の山登りに吐きそうになっている子どもたち、縄跳びの2重跳びを30分近くひたすらやっている子どもたちなど、これでもか、これでもかというぐらいにしごきに耐え苦痛に顔を歪めた子どもたちの姿が映し出されているというのだ。
そして、先生からひとこと。
「これぐらいの体力がない子は辞退してください」
と冷たく言い放たれるのだとか。
ひょえ~。
子どもの体力に自信がなく、気の弱いお母様方はそれだけで「もうやめて~ぇえ」と叫びだしたくなるのだとか。
確かにすさまじいよなあ。聞きしに勝るスパルタ方式!
そんなビデオ、いきなり見せられると引くよなあ。あらかじめ聞いておいてよかったよ。
そしてその子どもたちの阿鼻叫喚の様子が映し出されたビデオを鑑賞したのちは、志望理由を20分で書くのだとか。
この志望理由はあらかじめ用意しておけばいいので、当日は書き写すのみ。
実は以前、講習で聞いた志望理由の書き方のコツを参考にして書き直した志望理由を、ファックスで1週間ほど前に新田先生に送って添削してもらっていた。
うふふ、自慢じゃないがこう見えても元編集者である。
カリスマ講師・新田先生から一文字も赤を入れられることなく、「完璧です」とのお褒めの言葉を預かりましたよ。
おおほほほぉ~。
よし、志望理由はこれでばっちりだぁ!
そして発表のあとは抽選そして最終結果発表と続く。
服装で要注意日は3次試験すなわち抽選の日だという。このときだけ紺色のスーツでばっちり決めればいいとのことだ。
T大附属T小は合格までも流れの中で保護者は計8回も学校に呼ばれる。
それは保護者が学校にどこまで協力できるのか試す意味でもあるらしい。
まったく、こっちとくらあ働いてるんでい! 手間かけるんじゃない!
とは言ってはいけない世界なのである。とほほ。
試験当日の流れ・子ども編のあとは、保護者編だ。
当日、保護者たちは子どもの受験番号別にグループ分けされ、体育館で待たされるらしい。
まずT大附属T小の生活の様子を映したビデオを見せられるのだという。
新田先生いわく、このビデオがすさまじいらしい。
最初に運動会の様子を見せられるらしいのだが、かけっこでも綱引きでも「絶対に何が何でも勝て!」という周りの人間の煽り具合も映され、そのプレッシャーに押しつぶされそうになりながらも歯を食いしばってがんばっている子どもたちが次から次へと映し出され、そのあとは遠距離通学に耐える子どもたち、2キロの遠泳を延々と続ける子どもたち、2000メートル級の山登りに吐きそうになっている子どもたち、縄跳びの2重跳びを30分近くひたすらやっている子どもたちなど、これでもか、これでもかというぐらいにしごきに耐え苦痛に顔を歪めた子どもたちの姿が映し出されているというのだ。
そして、先生からひとこと。
「これぐらいの体力がない子は辞退してください」
と冷たく言い放たれるのだとか。
ひょえ~。
子どもの体力に自信がなく、気の弱いお母様方はそれだけで「もうやめて~ぇえ」と叫びだしたくなるのだとか。
確かにすさまじいよなあ。聞きしに勝るスパルタ方式!
そんなビデオ、いきなり見せられると引くよなあ。あらかじめ聞いておいてよかったよ。
そしてその子どもたちの阿鼻叫喚の様子が映し出されたビデオを鑑賞したのちは、志望理由を20分で書くのだとか。
この志望理由はあらかじめ用意しておけばいいので、当日は書き写すのみ。
実は以前、講習で聞いた志望理由の書き方のコツを参考にして書き直した志望理由を、ファックスで1週間ほど前に新田先生に送って添削してもらっていた。
うふふ、自慢じゃないがこう見えても元編集者である。
カリスマ講師・新田先生から一文字も赤を入れられることなく、「完璧です」とのお褒めの言葉を預かりましたよ。
おおほほほぉ~。
よし、志望理由はこれでばっちりだぁ!
そして発表のあとは抽選そして最終結果発表と続く。
服装で要注意日は3次試験すなわち抽選の日だという。このときだけ紺色のスーツでばっちり決めればいいとのことだ。
T大附属T小は合格までも流れの中で保護者は計8回も学校に呼ばれる。
それは保護者が学校にどこまで協力できるのか試す意味でもあるらしい。
まったく、こっちとくらあ働いてるんでい! 手間かけるんじゃない!
とは言ってはいけない世界なのである。とほほ。
2010年9月2日木曜日
Wの1日入試体験①
T大附属T小の入試まであと1週間を切った日曜日。この日はWで行われる「T大附属T小の1日入試体験」というのに行ってきた。
本番さながらに子どもたちはお受験用の洋服を着て、本番と同じようにテストを受け、その間に保護者たちはみっちり例のカリスマ講師(後から聞いたら本部校の代表でした)新田先生(仮名)からお役立ち度200%の講習を受けるという流れになっている。
お受験用のお洋服といえば、白い丸い襟のブラウスを西松屋で1枚、地元のジャスコで1枚購入していたのだが(両方とも1000円以下の激安品)、T大附属T小対策には元気のいい印象をつけるためにみんな12月だというのに半袖で臨むという話をWの講習で聞いていたので、慌てて半袖のブラウスを購入することに。
しかしいかんせん12月だ。半袖のシャツなんてどこにも売ってない!
・・・と思っていたら、ちゃんとありましたよ。百貨店のお受験コーナーに!!
恐るべし百貨店。しかし単なる半袖のシンプルな白いシャツがなんで4700円もするわけ!?
あとすごいなあ~と感心したのは、「T大附属T小の指示製作練習セット」っていうのが販売されていて過去に出た制作の材料と作り方のDVDがついて、なんと5,250円! この中には過去問のプリントもついているのだが、もうこうなると高いんだか、安いんだか感覚がわからなくなってくる。
え!? この練習キットを買ったかですって?
ええええ、買いましたともよ。夫からはだいぶんと「なんだ、このわけわからないものに5000円とは!」と叱られましたけどね。しょぼん。
で、1日講習である。神童・朔美ちゃん(仮名)といざWの本部校へ。
もう外は木枯らしが吹き荒れ冬将軍の本格到来といった様相なのに、いったいどうしたのだ、この中の熱気は!?
2次試験まで1週間切っていることもあり、人、人、人!
しかもこの講習は当日現金払いなので、無造作にどんどんと箱(←それまでまんじゅうが入っていたような感じのやつ)に万札が放り込まれていく。
この1日の講習の売上だけでいくらぐらいあるんだろう?
ちなみに今、私は教育関係の仕事をしているのだが、ここ何年もずーっと苦戦が続いている。教育以外の部署が善戦してくれているので、なんとか潰れずにすんでる。
その原因は少子化の問題だとか、競合他社との競争激化だとかいろいろ言われている。
仕事にかかわっているほとんどの人たちは本当に純粋に仕事を愛しているし、自分たちがやっていることは本当に意義があるのだと信じて疑っていない。
実際、うちの娘も息子も会社のやっている幼児教室に通わせているが、本当に良心的だし、値段も場合によっちゃあWの10分の1ぐらいだったりする。
にもかかわらず大苦戦しているのだ。
しかしWのこの繁盛振り! 母親としてというより職業人として、いったいどうなっているんだ!?と思う。
やはり狭いセグメントで特化した者勝ちなのか?
う~ん。それにしてもあの札束! 会社のエラい人たちにも見せてみたいものだ。
熱気溢れる保護者用の会場にて、我らが新田先生の登場。
この日の解説は2次試験当日の流れから入る。
まずは服装から。コートと靴を脱いでから学校に入るので、コートと靴はなんでもいいとのこと。そして上履きに名前を書いてはいけない。
そして控え室。控え室の様子から、頭につけるゴム製のハチマキについてまで描写は微に入り細に入っている。
あんた、それ見たんかいっ? と関西人じゃなくても突っ込みたいところだ。
だって去年、ゴムを取り替えたところだからブカブカして脱げることはないって、あんた、本当に何者?という世界だ。
しかし我々はこういった情報に決して安くはないお金を払っているわけだよ。
受験番号は色+数字の組み合わせらしく、待っている間6年生がやってきていろいろと芸をやって楽しませてくれるらしい。
新田先生の読みでは、おそらくこのときに全員してきたマスクをはずさせるのではないかとのことで、その後先生から子どもたちにひとりずつ簡単な質問をされるそうだ。しかしこの質問での答えは評価には関係ないそうだが、必ず先生の目を見て話すようにとのこと。
もう新田先生の解説はそんな調子で本番の試験の様子を詳しく教えてくれるので、当日きっと「あ~あ、このことを言ったたんだな」と腑に落ちること間違いないだろう。
「お話の記憶」「図形」「製作」「クマ歩き」のそれぞれのポイントを押さえたあとは、「生物」について。
T大附属T小は年によっては、「ザリガニ」だとか「コウロギ」などを子どもに捕まえさせる試験が出る。
新田先生によると学校の敷地にいる生物が試験に使われるので、毎年新田先生はその生物の生息状況を調べに行くのだという!
なんというプロ根性!
「今年は私の予測ですが、ザリガニもコウロギもありません。そして亀もないです」
と大胆予測。
「ザリガニは敷地の池を調べたら今年は生息していませんでした。亀も菌がたくさんついていて危険なのでやめているはずです。そしてコウロギですが、コウロギ担当の先生が異動されたそうなので、コウロギも出ません。そして何より子どもたちは容赦ないですから、試験にコウロギを出すと大量のコウロギが死にます。それに耐えられなくてコウロギ担当の先生が移られたという話もあります」
コウロギ担当? 大量のコウロギ死? まったくホンマかいなっ!という摩訶不思議な世界。
う~ん。シュールすぎる。
本番さながらに子どもたちはお受験用の洋服を着て、本番と同じようにテストを受け、その間に保護者たちはみっちり例のカリスマ講師(後から聞いたら本部校の代表でした)新田先生(仮名)からお役立ち度200%の講習を受けるという流れになっている。
お受験用のお洋服といえば、白い丸い襟のブラウスを西松屋で1枚、地元のジャスコで1枚購入していたのだが(両方とも1000円以下の激安品)、T大附属T小対策には元気のいい印象をつけるためにみんな12月だというのに半袖で臨むという話をWの講習で聞いていたので、慌てて半袖のブラウスを購入することに。
しかしいかんせん12月だ。半袖のシャツなんてどこにも売ってない!
・・・と思っていたら、ちゃんとありましたよ。百貨店のお受験コーナーに!!
恐るべし百貨店。しかし単なる半袖のシンプルな白いシャツがなんで4700円もするわけ!?
あとすごいなあ~と感心したのは、「T大附属T小の指示製作練習セット」っていうのが販売されていて過去に出た制作の材料と作り方のDVDがついて、なんと5,250円! この中には過去問のプリントもついているのだが、もうこうなると高いんだか、安いんだか感覚がわからなくなってくる。
え!? この練習キットを買ったかですって?
ええええ、買いましたともよ。夫からはだいぶんと「なんだ、このわけわからないものに5000円とは!」と叱られましたけどね。しょぼん。
で、1日講習である。神童・朔美ちゃん(仮名)といざWの本部校へ。
もう外は木枯らしが吹き荒れ冬将軍の本格到来といった様相なのに、いったいどうしたのだ、この中の熱気は!?
2次試験まで1週間切っていることもあり、人、人、人!
しかもこの講習は当日現金払いなので、無造作にどんどんと箱(←それまでまんじゅうが入っていたような感じのやつ)に万札が放り込まれていく。
この1日の講習の売上だけでいくらぐらいあるんだろう?
ちなみに今、私は教育関係の仕事をしているのだが、ここ何年もずーっと苦戦が続いている。教育以外の部署が善戦してくれているので、なんとか潰れずにすんでる。
その原因は少子化の問題だとか、競合他社との競争激化だとかいろいろ言われている。
仕事にかかわっているほとんどの人たちは本当に純粋に仕事を愛しているし、自分たちがやっていることは本当に意義があるのだと信じて疑っていない。
実際、うちの娘も息子も会社のやっている幼児教室に通わせているが、本当に良心的だし、値段も場合によっちゃあWの10分の1ぐらいだったりする。
にもかかわらず大苦戦しているのだ。
しかしWのこの繁盛振り! 母親としてというより職業人として、いったいどうなっているんだ!?と思う。
やはり狭いセグメントで特化した者勝ちなのか?
う~ん。それにしてもあの札束! 会社のエラい人たちにも見せてみたいものだ。
熱気溢れる保護者用の会場にて、我らが新田先生の登場。
この日の解説は2次試験当日の流れから入る。
まずは服装から。コートと靴を脱いでから学校に入るので、コートと靴はなんでもいいとのこと。そして上履きに名前を書いてはいけない。
そして控え室。控え室の様子から、頭につけるゴム製のハチマキについてまで描写は微に入り細に入っている。
あんた、それ見たんかいっ? と関西人じゃなくても突っ込みたいところだ。
だって去年、ゴムを取り替えたところだからブカブカして脱げることはないって、あんた、本当に何者?という世界だ。
しかし我々はこういった情報に決して安くはないお金を払っているわけだよ。
受験番号は色+数字の組み合わせらしく、待っている間6年生がやってきていろいろと芸をやって楽しませてくれるらしい。
新田先生の読みでは、おそらくこのときに全員してきたマスクをはずさせるのではないかとのことで、その後先生から子どもたちにひとりずつ簡単な質問をされるそうだ。しかしこの質問での答えは評価には関係ないそうだが、必ず先生の目を見て話すようにとのこと。
もう新田先生の解説はそんな調子で本番の試験の様子を詳しく教えてくれるので、当日きっと「あ~あ、このことを言ったたんだな」と腑に落ちること間違いないだろう。
「お話の記憶」「図形」「製作」「クマ歩き」のそれぞれのポイントを押さえたあとは、「生物」について。
T大附属T小は年によっては、「ザリガニ」だとか「コウロギ」などを子どもに捕まえさせる試験が出る。
新田先生によると学校の敷地にいる生物が試験に使われるので、毎年新田先生はその生物の生息状況を調べに行くのだという!
なんというプロ根性!
「今年は私の予測ですが、ザリガニもコウロギもありません。そして亀もないです」
と大胆予測。
「ザリガニは敷地の池を調べたら今年は生息していませんでした。亀も菌がたくさんついていて危険なのでやめているはずです。そしてコウロギですが、コウロギ担当の先生が異動されたそうなので、コウロギも出ません。そして何より子どもたちは容赦ないですから、試験にコウロギを出すと大量のコウロギが死にます。それに耐えられなくてコウロギ担当の先生が移られたという話もあります」
コウロギ担当? 大量のコウロギ死? まったくホンマかいなっ!という摩訶不思議な世界。
う~ん。シュールすぎる。
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