初めてWの講習を受けた翌日、いつものようにバレエに行くと娘の保育園のクラスメイトかつバレエ教室もいっしょの朔美ちゃんパパである佐藤さん(仮名)から声をかけられた。
「あのぅ、Aちゃん(←うちの娘)って国立とか受けるんですよねぇ?」
「うん、受けるよ」と答えながら、そういえば前の週に朔美ちゃんママが“うちのパパったらO女が国立ってことも知らなくって、もうなんなの?って感じで驚いたわ~”などと話をしていたことを思い出した。
「実はですね、家で試しにT大附属T小学校の過去問とか買って朔美にやらせてみたら、これが結構できちゃったりするんですよ。で、ダメもとで抽選受けに行ったら受かっちゃってどうしようかと思って・・・。でAちゃんもT大附属T小学校の抽選行ったんですか?」
「うん、うちも雪美ちゃん(仮名)も抽選通ったよ。私たちはBグループだけど、朔美ちゃんは2月生まれだからCグループでしょ?」
「そうなんですよ。ぼくもママもT大附属T小学校なんておこがましくて受けられないってビビッていて、辞退しようかと迷ってるんですよ」
朔美ちゃんパパは気弱な声を出す。
「辞退ですって!?」
「そう、辞退です」
「だめだよ。そんなもったいない。今まで準備を一生懸命してきた人だって抽選に落ちちゃうんだから、せっかく通ったのだったら挑戦しないと!」
「いやあ~、でも自信ないし・・・」
「親が子どもを信じないでどうする! 今からでも遅くない! 準備あるのみ!」
「そ、そんなあ~」
「グズグズ言わず準備準備!」
う~ん。どこかで見たような光景だと思ったら、なんだ。G大附属T小を落ちたときに、すっかりやる気を失くした私に雪美ちゃんママこと由美子さんが叱咤激励した構図そのものではないか。
しかも1ヵ月後に私が叱咤激励する側に回ってるし・・・。
「しかも過去問も解けちゃうわけでしょ?」
「まあまぐれですかねえ~。やらせるとそれなりにやるんですけどね」
ここではたっと思い出した。そうだ。朔美ちゃんはものすごく頭のいい子なのだ。
早生まれだということもあって体はうちの娘なんかと比べると華奢で小さいけれど、大人っぽい冷めた口調で本質をズバズバと突いてくる。批判精神旺盛というか、少し話しただけでも聡明な子だと瞬時にわかる。
そういえばまだ2歳児クラスのときに廊下のロッカーに貼ってあるお友だちの名前を次から次へと読み上げていって、他の親たちを震撼させたっけ。
「そういえば朔美ちゃん、神童じゃん!」
「またまた~。なわけないじゃないですか」
とはにかむ朔美ちゃんパパ。しかしまんざらでもなさそうだぞ。
そしてバレエのレッスンが終わると今後は朔美ちゃんママが迎えに来ていて、「そうそう、抽選の件なんだけど・・・」と話しかけてくる。
ママも同様に「おこがましくって2次試験なんて受けられない」という。
うちと朔美ちゃんの家は歩いて1分とか2分ぐらいの距離だ。
「なんだったら2次試験までの間、いっしょに勉強させる?」
「え!? そんなあ~、うちの子はAちゃんの足ひっぱちゃうよ。きっとレベルが違うから」
「けどうちにも問題集とかあるから持ち寄ってやったりとか、ちぎりなんかは共通して出るからいっしょにやらせたほうが本人たちもいいんじゃない?」
「そうだね。じゃあ来週ぐらいからお願いしようかな」
ということで新たなお受験仲間として朔美ちゃんも加わったのであった。
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