2010年8月8日日曜日

Wのカリスマ講師

 さて先週に引き続きWの直前講習だ。先週は土曜日当番だったため夫に代わりに出てもらったのだが、2回目は自ら参加する。
 気分を出すために娘には西松屋で買った白いブラウスとジャスコで買った紺色のキュロット、白い靴下というお受験スタイルで臨ませる。

 そして保護者たちは別の部屋に案内される。晩秋だというのに保護者たちの部屋は熱気に満ちている。受験って母親が熱心なパターンが多いとばかり思い込んでいたけど、熱心な父親も多いということをここ数ヶ月で知った。
 講習も両親揃ってメモ片手に気合満々な人たちが多い。夫がカルチャーショック受けるわけだよなあ~。
 
 時間が来たところで講師登場。新田(仮名)と名乗る講師はNHKのアナウンサーにいそうなタイプで、ずんぐりむっくりの冴えない風貌の中年のおじさん講師。でも低くよく通る声をしている。
 保護者を集めてこのおじさんがどんな話をするのだろう。しかも子どもたちが講習を受けている1時間半の間、保護者たちにもみっちりと1時間半、そんなに話をするネタなどあるものなのか?

 ところがこの新田先生の話がめっぽうおもしろいっ!
 カリスマ講師というのはこういう人のことをいうのか?
いわゆるお金が取れるトークというのか、保護者たちが聞きたい情報を惜しげもなく披露してくれるのもあるが、声のトーンとか話し方とか話の持っていき方がプロフェッショナルなのだ。
 講義スタイルで人の話を一方的に1時間半も聞くのは結構つらいはずなんだけど、あっという間の1時間半だった。
 本当のところはわからないけど、限りなくT大附属T小の出題者の先生以上にT大附属T小の受験に関してはくわしいのではないか、日本で5本の指にまちがいなく入るほどエキスパートだろうなあと思わせてくれる。
 この人の話を聞くためだけにお金を払う価値は十分ある。
 たった1回の講習でコロリと新田先生にやられた私である。

 この1時間半の間に出た話というのが、「お話の記憶」「重ね図形」「点図形」「ちぎり」「製作」などのT大附属T小必須の試験項目の対応策とチェックポイントがくわしく語られる。
 ずっとすべて完璧にできないといけないと思い込んでいたけど、新田先生いわくBグループは7割できればいいそうなのだ。それだけで気がぐっと楽になる。

 しかも製作は手元を見るだけなので、最後まで完成させる必要はないらしく、また完成した作品も見られる可能性は低いのだという。
 じゃあなんのために製作なんかさせるのかというと、そのときの子どもたちの手の動き、態度、テキパキやっているか、真剣にやっているか、時間切れになってもすぐに気持ちが切り替えられるのか、そういった作る過程を見ているのだという。
 そうかあ~、そんなことってこういう講習を受けないとわかんないもんね。

 そしてこの講習の白眉はなんといっても「志望理由のアンケートの書き方」だ。
 なんのために「志望理由」を書かせるのか? 話はここから始まる。
 T大附属T小学校の場合、学校説明会がない。なぜか? それはそれだけたくさんの人を収容しきれる施設がないからだそうだ。
 それで代わりに考案されたのが「志望理由のアンケート」だということで、ここのアンケートの目的は受験者たちがどれだけT大附属T小のことを知っているのかということを問う試金石だというのだ。

 通常私立などの「志望理由」は、まず家庭の教育方針があり、その教育方針が志望校の教育方針と合致しており、そこで子どもを伸ばしてほしいというものを中心に据え、そこに本人のアピールやらを散りばめ、熱く切望というのが王道パターンだ。ほとんどのお受験本では表現方法は違うにしても、基本がこのパターンを踏襲している。

 しかしT大附属T小の「志望理由」はそれではいけないのだという。10行あるT大附属T小の志望理由のアンケートは10行全部、「私は御校をこのような学校だと理解しています」という内容に費やすべきなのだそうだ。
 アンケートが合否に及ぼす影響はそれほど高いわけではないそうだが、親子面接もないT大附属T小の2次試験ではこの「志望理由」を書くことが唯一親が子どものためにやってあげられることなのだ。
 だからこそベストを尽くしたい。

 もちろん我らが新田先生は何をポイントにするべきか、書いたらNGなことも丁寧に教えてくれる。私立と違って温度の高い言葉もNGだ。さらりとしたクールな態度がT大附属T小の保護者には求められる姿なのだ。

 まあ間違いなくこの日講習を受けた親はこのアドバイスに従って志望理由を書くだろうから、似通ったものばかりになってしまうんだろうけど、なんと新田先生はFAXで下書きを送れば添削までしてくれるのだという。
 至れりつくせり。

 そして2次試験の案内に書かれていた「当日はマスクを持参してください」という見過ごしてしまいそうな文章について。
 その1文ひとつとっても保護者の協力具合を見ているというのだ。当日は当然マスクをして学校に向かい、マスクをしたままテストを受けさせられる可能性があるので、マスクをしてプリントをやる練習を今後は家でもやらせるべきだという。

 もうすごい。すごすぎる。たった1回でもこの充実さ。かえってプロフェッショナルなカリスマ講師の話を聞いたことで、気が楽になったというか、肩の力が抜けた気がする。
 プロの仕事というのはこういうことをいうんだろうなあと実感したのであった。

0 件のコメント:

コメントを投稿