2010年11月12日金曜日

3度目の銀座の先生②

 「娘さんは大きなトラブルが特に起こるわけではないのですが、お友だち関係で悩んでいないですか? このお友だちとは小学校に行っても関係が続きます。ショートのボブの女の子が見えるんですけど、心当たりはありませんか?」
と銀座の先生。
 ショートのボブの女の子ねえ~。
 ・・・・むむむ、あるぞあるぞ心当たり。
 うちの娘は口が立つので保育園での出来事もよく話す。将来、絶対に関西弁で言うところの「文句言いぃ」になると思うのだが、何せグズグズとあーでもない、こーでもないと言うタイプなのだ。
 そんな文句言いぃの娘の文句の中でも頻度が高いのが、“晴美ちゃん”(仮名)というお友だちで彼女はズバリ、ショートのボブなのだ。

晴美ちゃんは小柄なのだか、気が強くしっかりしているので、みんなを仕切っている。保育園の行事なんかではよく「始めのあいさつ」だの「終わりのあいさつ」などを任されるタイプだ。
いっしょに遊んでいてもあれこれ仕切られることや、持っているものや着ているものをやたらとほしがられることや、面と向かって「Aちゃんって太ってるよね」と言われることが娘にとっていやなことなのだそうだが、人懐っこい子で会えば「Aちゃんママ~」と必ず向こうから話かけてくる。
娘が今お友だち関係で悩んでいるとすれば、今の時点では晴美ちゃんしかいないだろう。

「この子は悪気があるわけではないんですよねえ。芯は悪い子じゃないし。たぶん娘さんのことがものすごく好きでやきもちを焼いている節もあるんですよねえ」
うん、それだったらわかるかも。娘の持ち物や着ているものをやたらとほしがったり、私のところに来て甘えてみたり、やきもちだと言われると晴美ちゃんの言動はすっきりする。挙句に娘が好きな亮太くん(仮名)のことを晴美ちゃんも好きらしいし、恋のライバルでもあるのだ。
「小学校でも同じクラスになる可能性は高いですね。とにかく縁のある子です。」
なるほどねえ~。けど娘が4月から通うM小学校の新1年生は2クラスしかないのよねえ。晴美ちゃんと同じクラスになるかどうか、4月になったら確かめてやろうじゃないの。

「あとはやっぱり中学受験ですかねえ~。制服も見えるし受かるって出てますよ。中高一貫で共学がいいですね。女子校は向いてません」
「制服ってどんな制服なんですか?」
「いやあ~、ちょっとボヤけているんで、よくは見えないんですけど」
「実は今、ちょっといいなあと思っている中高一貫校はG大附属T中ではなくて、G大附属O中なんですよね。そもそもT中は高校と一貫校ではないですけど、O中は国際教育に力を入れてますから、うちには向いているんです」
「ああ、G大附属系は特に向いてますよ。T中じゃなくてもG大附属系ならいいと思います。もしかしたらG大まで進む可能性もありますからね」
「でね、先生。O中は制服がなくて私服なんですよ。中高とも。なのになんで制服が見えるんですか? ってことはO中ではないってことですか?」
淡々と理屈をこねる私。
「へえ~、O中って制服がないんですか? でも受験する場合には制服が見えるんですよ。ふつう区立でも制服がありますよね? けど中学受験しないで区立に行く場合には制服が見えないんです。だから受験すれば制服がないところでも制服が見えるんですよ」
先生も微笑を絶やさず淡々と先生なりの理屈を言う。
でもなんか釈然としないよなあ~。

「中学から高校に行くときは一応テストを受ける形は取りますけど受験ではないです。大学受験もしますけどやっぱり系列の大学って出ているからG大ってことになりますかね。同じ国立でもT大附属系はやっぱりダメです。娘さんには向いてません。あと塾はあまり早くから行かなくてもいいです。娘さんのピークは5年生ですから受験時にピークに近づけるためには塾通いは5年生または4年生からでもだいじょうぶです」
中学受験塾ねえ~。やっぱり話が先すぎて全然ピンとこない。

「あと海外と縁が深いですねえ。交換留学生に選ばれる可能性も中学生ぐらいのときに出てきます。あとは海外の大学に行く可能性もありますね」
「え!? でも大学はG大に行く可能性が高いんですよね? それってG大を卒業してから海外の大学に行くってことなんですか?」
「・・・うーん、そこまではちょっと」
途端に歯切れの悪くなる先生。おいおい、だいじょうぶかよ。

「あと本人がモデルとかアイドルに憧れているみたいなんですけど、どうなんですか?」
うちの会社の宣伝用のDVDに出演して以来、何かあるたびに「芸能事務所に入れろ」とうるさいうちの娘。芸能人なんて国立小学校に入るよりもよっぽど倍率が高いんだぞ。抽選はないかもしれないけど。
「ああ、いいんじゃないですか。お母さんがステージママになってがんばりすぎなければだいじょうぶですよ。芸能界で大成はしませんけど、趣味程度だったらOKですよ」
なるほど。青春の思い出程度ならという意味なのね。それにしてもステージママだなんて。こういうときに本人以上張り切ってプレッシャーをかけかねない自分の性格を言い当てられているようで、いやな感じ。

 おっと、この時点ですでに50分経過。このままいくと娘の話だけで2万円かかってしまうではないか!
 いけないいけない、早々に次に話題を移さねば!

2010年11月11日木曜日

3度目の銀座の先生①

 いよいよ3ヶ月待った銀座の先生に占ってもらう日がやってきた。
 見事に娘の小学校受験結果をはずされたので、結構どうでもいいやという気分になっている。
 1回2万円もするのに、あれだけはずされてまたノコノコ行って支払うのもシャクではあったが、そこは小心者の私。ドタキャンする勇気もなかったので、時間通りに例のマンションに向かった。

 ちなみに先生に3回目診てもらうことを夫に話したら、心底驚かれた。「あれだけはずされてなぜ?」というのが一番大きいのだろう。
 私だって驚くよ、自分自身を! まったくネギを背負った鴨かいっ。私は!

 10分ほど待たされたあとに先生がいる部屋に通される。
 部屋を暗くしてろうそくの炎で背後を見られる儀式も今までどおり。
 上半身だけの人型の書かれた用紙にいつものようにさらさらと先生はボールペンを走らせ、「今回も何も悪いものは憑いていませんね」とにっこり微笑む。
 前髪を短くしているので、印象が違って見える。前髪が短いとより素朴な感じになり、これはこれで可愛らしいんだけど、前髪が長くて横に流していた前の感じのほうが私の好みだ。

 「お久しぶりですね」と先生が微笑みかけてきて、「ご主人のご家族がまた揉めていますね」と切り出してきた。
 最初はここからかい。確かにクリスマスのときにも姉妹たちが2グループに分かれてしまい、対立をしていた。揉めていることは確かだ。でも離れている私たちにはどうすることもできない。
 そんな気持ちを見透かすように、
 「いったんは解決したみたいですけどね。まあ気にせずに。関わらないことです」
と先生は淡々と言う。だったら言わなくてもいいのにっ!

「さてっと」と先生はこれからが本題だという調子で、
「お嬢さんのG大附属T小をはずしたこと、いまだによくわからないのですよ」
と切り出してきた。
 って言われてもさっ! よくわからないのはこっちなのさっ!
 「写真持ってきていらしゃってますか?」と聞かれたので、写メールで写した娘の写真を何枚か先生に見せる。
 「わぁ、やっぱり可愛いですね~」と褒めてくれるのはいいんだけど、どうなのよ? そことのところは?

 「やっぱり写真見てもG大附属T小の制服が未だに見えるんですよねえ。お電話でもお話した通り、編入とかありえるのかなあ。ああ、でも公立から国立の編入って帰国子女でもない限りふつうないですよねえ。う~ん、やっぱりわからないなあ。G大附属T小に縁がとっても強いんですけどね」
 と考え込む先生。そんなに縁が強いところがなんで一次抽選であっけなく落ちるのよ?

 「中学は確実に行くと思うんですけどねえ」
 なぬ中学だと! そんな先すぎる話、まったくピンとこないねっ! だって1年以内の小学校受験をあれだけはずされて、今から6年も先の中学受験の話なんてもっと当てにならないじゃないかっ!
 「G大附属T中学を受験するという前提で常にこの学校のチェックはしてください。ただ仮に編入があるとしてもたまたまそういう情報が入って知るというパターンになりそうです」
 はあ~。

 「でもこの子は公立小学校でも全然問題ないですよ。ちゃんと勉強もやるし、優等生です。お友だちにも恵まれるし、大きなトラブルは見えないです。私立もインターナショナルスクールも見えないですからね。今、精神的にも安定してるし、ちょっと前は少し不安定だったこともあったみたいですね」
 あのね~。仮に娘が不安定だった時期があったとしたら、お受験のころでしょ? 確かに私もずいぶんガミガミ言って娘を追い詰めた側面もあったかもしれない。
 けどね、元々近所の公立でいいと思っていた私に、絶対に国立が受かるから絶対にお受験させろとアドバイスをしたのは誰なのよ? あなたでしょうが!
 そう言い出したい気持ちをぐぐぅーっと抑える。

 そうは言っても先生の予言を鵜呑みにして、実際その通りに動いたのは他ならぬ私自身だからだ。

2010年11月10日水曜日

子どもたちのDVDデビュー②

 撮影場所は高級住宅街の中にあるハウススタジオだった。中には会社の担当者たち以外に、制作会社の人たちや出演するタレントの事務所のスタッフやヘアメイクやスタイリストもいる。気のせいかやたらとスタッフが多い。
 元々エンターテインメント系の仕事をしていた私にとっては懐かしい雰囲気だ。しかし今日の私の役割は子役モデルの付き添い、つまりはステージママ!
 気分はりえママか、はたまた美空ひばりのおっかぁさんか。(←安達祐美の子役時代のママ説もあるよなあ~)

 登場する子役モデルはうちの子どもたちを入れると全部で4人。当たり前だが4人のうち2人はうちの子どもたち! 重責だなあ~。
 スタッフの一人がうちの子どもたちを見て、「おっ、やっぱりハーフってかわいいな」と言う。
 そういわれるたびにゲンナリする。もちろん悪気があるわけじゃないことはよくわかっている。けど言われる親にしてみればハーフだからうちの子はかわいいんじゃなくて、私たちの子どもだからかわいいのだ。
「ハーフだから」という前置きには、なんかズルしているイメージというのか、「だからかわいくて当たり前だ」という前置きもいっしょについている感じがして、どうも素直にかわいいと言われている気になれないのだ。
私だけが被害妄想でそんなふうに思っているのかと思いきや、同じくハーフの子を持つ友人たちとその手の話をすると、「そうそうそう!!!」と激しく盛り上がる。
そんなこともあり、ついついそんなことを言ってしまいがちな人にこの場をお借りしてお願いしたいのは、冠の「ハーフだから~」という言葉はできたら呑み込んでほしい。ただ単に「かわいいね」とだけ言ってもらえればうれしいな。

 さて撮影に関する手順が説明される。子どもたちに特にヘアメイクだとかスタイリストはつかないので、手遊びとかジェスチャーを練習して覚えたらそのまま撮影開始となる。
 お姉さん役のアイドルの卵はなんと14歳だという。顔が小さくて細くて確かにかわいいけど、あまり華がない。
 歌だとか踊りだとか何か特別に秀でているものがあれば別だが、ただのアイドルだとかただの女優だかの道を歩むなら厳しいかなとエンターテインメント業界人の目で思わず観察してしまう。
 それでも彼女の顔の大きさは、並んでいる子どもたちとほとんど同じだ。うちの娘と並ぶと下手したらうちの娘のほうがデカイかも。誰よりも顔のデカイ私なぞは、絶対にこういう人といっしょに写真は撮られまいと固く心に誓う。

 はい。ここでさっそく問題発生。撮影前の練習ですでに息子は「やらないっ!」の一点張り。おい、頼むよ。まったく。
 子どもモデルの残りのふたりはそれぞれ3歳と4歳の男の子だったのだが、ちゃんと自分の役割がわかっているらしく健気に練習している。ふたりともどこかの事務所に所属しているわけではない素人さんなのだという。
 娘は元々やる気満々なので張り切って練習している。子どもたちの中では6歳と最年長で体もデカイのでみんなを引っ張っている感じだ。

 それに比べて我が息子よ。「ねえ抱っこしてえ~」と私にしがみついて離れない。
 ねえ、この中で君は2番目に大きいんだよ。
 「さあLくんもせっかくハンサムなんだからがんばってやってみようか」
 スタッフ全員で息子をおだてたりなだめたり持ち上げたりするが、息子は「出ないっ!」の一点張りなのだ。困ったのぉ~。
 私も「ここでがんばったら、あとでアイスクリーム食べさせてあげる」と食べ物で釣る。
 それでも息子は「いやっ!」の一点張りだ。

 ついに監督さんが「じゃあ、Lくんは抜き! 子どもは3人で行こう」と号令をかけると「イエーイ」と答えるうちのバカ息子。どうやら出なくてもいいということがわかって喜んでいる様子。せっかくのいいチャンスを棒に振ったことをわかってるのか? 息子よ。

 子どもたちが一生懸命練習しているところで、ふと気付くとニヤニヤしながらTさんの胸を揉んでいる息子。お前はセクハラおやじかっ! Tさんは我が社でも巨乳で有名なのだが、されるがままにされているTさん。
「ちょっとあんた、何やってるの! ごねんね~」と息子の手をはたき、Tさんに平謝りに謝ると、「いいっすよ。だってLくん、ハンサムだし」ときた。
 まじかよ。そんな問題か!? それにいい気になってずっとTさんの胸を触り続ける息子。ああ、誰かこの坊主をなんとかしてくれよ。(←それって親の役目だろうがっ!)

 そして撮影開始。そこでまたまた問題発生。なんとカメラが回っている本番中に、何を思ったが息子が乱入したのだ!
 「カットぉおおお!」と監督さん。
 「何? Lくん出るの?」
 「やだよ」と舌を出す息子。
 本番が始まると、何度も乱入を試みてスタッフたちから取り押さえられるのだけど、その手を振り切っては撮影を中断させる息子。
あんた、いったい何者?
ついに監督さんもキレ、「外につまみ出せ!」との命令が。
うちの会社の若手男子がおどおどと「ぼくが散歩に連れ出します」と息子の手を引き、スタジオから出て行った。
いったいなんなの? なんでこうなるの?
我が息子ながら?マークがいっぱい。
「赤すぐ」編集部からはたまたま声がかからなかっただけだが、こんな調子じゃあ子役モデルとかとんでもないよな。

対する娘はカメラが回ると絶好調で、練習のときより弾けている。なんと途中からはアイドルの卵を押しのけてひとりで目立っているではないかっ!
たくさんのスタッフに囲まれてスタッフたちも「いいねえ~」とか「Aちゃん、かわいいよ~」とかおだててくれるので、すっかりその気になっている!
すべてのシーンを撮り終わり、「お疲れ様でしたっ! もういいよ」と監督さんから声をかけられると、「ええ~!? もう終わり? もっと出てもいいよ」と名残惜しそうだ。

「あ~、楽しかったぁ~。またやりたいなあ。ねえ、マミィ、アイドルとかモデルってどうしたらなれるの?」
帰り道にハイな調子で聞く娘。
「う~ん、芸能事務所とか入るんじゃない?」
適当に答える私。
「じゃあ、事務所に入れてよ。どこにあるの? なんて名前のとこなの? それってジャニーズ事務所みたいなの?」
ジャニーズは男子しかおらんだろうが。
それにしても我が家では地上波のテレビをほとんどといっていいぐらい子どもたちに見せていないのにも関わらず、事務所=ジャニーズ事務所と結びつけるとは恐るべし未就学児だ。

 「マミィ、アイスクリームは?」
それに対する息子の反応だ。
「だめだよ。だって撮影でがんばってないもん」
「イヤア~!!! アイスクリーム!!! マミィ、“あとでアイスクリーム食べさせてあげる”って言った!! 嘘つきっ!!!」
 泣き叫ぶ息子。
 あのね、その前に“ここでがんばったら”っていう前置きがあったの! だからアイスクリームはなしっ!

 「アイスクリーム!!!!」
 「事務所入りたいっ!! アイドルになるっ!」

 子どもたちの要求の二重奏を聞きながら、「ハイハイハイ」と適当に答える私であった。

2010年11月9日火曜日

子どもたちのDVDデビュー①

 ある冬の寒い1日。この日は我が社の通信教育コースの宣伝用DVDの撮影日であった。担当のTさんからぜひうちの娘をモデルにしたいと言われ、ふたつ返事でお受けした。
 うちの娘はこのコースを年中のときからやっていたので、宣伝用のパンフレットに何回か利用者のコメントとして顔写真を載せたこともあり、「Aちゃんは可愛いのでぜひ♪」ということで白羽の矢が当たったのだ。

 他にも制作会社のスタッフのお子さんもモデルに出るということだったので、「なんだったらうちの息子もぜひ!」とTさんにねじ込んで、無理やり息子も出してもらうことに。
 ちなみに息子はひとりでコツコツやるような通信教育には向いていないと思い、このコースは取らしていない。
 今から思えば、お受験対策用に息子にもやらせればよかったと悔やむことしきり。
 うちの通信教育は小学校で学ぶ先取りが基本だから、お受験自体には内容はリンクしないけど(←お受験のペーパーと小学校で習うことはまったく別物)、机に向かってコツコツ勉強する習慣作りにはなったはずだ。

 Tさんによると撮影する内容はアイドルの卵の女の子がお姉さん役となって、子どもたちと歌ったり、手遊びしたり、踊ったりするのだという。2~3分の歌や手遊びを全部で6パターン撮影するということで、これと使用キャラクターの着ぐるみのシーンを合わせたものが今回、宣伝用のDVDの内容になるそうだ。
 DVDは資料請求してきたユーザーに資料と一緒に送られたり、イベント時にはモニターで流したり、場合によっては会社のHPにも流したりするらしい。
 そのプレス数はなんと8万枚!
 昔、私が作ったモロッコ音楽のCDより遥かに多いプレス数ではないかっ!

 この話を娘はずいぶんと喜び、「撮影だなんて、アイドルとかモデルさんみたい♪」とはしゃいでいた。
 対する息子は「絶対に出ないっ!」の一点張り。

 ちなみに子どもたちが赤ちゃんだったときに、登場する読者モデルの8割以上がハーフだという説のリクルート刊「赤ちゃんができたらすぐに読む本」こと略して「赤すぐ」にモデル登録をした。
 娘のときには結構頻繁に声がかかり、何度か出させてもらったし、そのうちの何回かは私もいっしょに撮影された。
 その当時、まさか30代半ば過ぎになって読者モデルとして雑誌に出られるなんて夢にも思っていなかった。これも子どもがいるといろんなことを経験させてもらえる一例だ。
 対する息子にはなぜか一度も編集部から声がかからず。
 多分いかにもハーフといったルックスの娘に対して、息子はあまりバタ臭くない。赤ちゃんのときは特に今より日本人色が強く出ていたので、ハーフ好きの編集部の好みには合わなかったのかもしれない。
 代わりにといってはなんだが、息子が1歳のときに街で芸能プロダクションのスカウトの女性から声をかけられたことがあり、あまりの誇らしさに鼻の穴を全開にしてあっちこっちで自慢しまくったら、うちの近所の子どもたちにとって一度や二度スカウトから声がかかることって全然珍しいことじゃないことが判明して、がっくりきたことがある。
 さすが都会の子どもは違うねえ~。
 うちの実家のほうならたとえ田舎者相手の詐欺だったとしても、スカウトなんて事態は末代まで話題になるぞ。

2010年11月4日木曜日

HANAちゃんとのど自慢大会②

 番組が始まる前にオカン(←オカンはHANAちゃんに会っている)やら、沙織(仮名)やら高校時代からの友人の真美ちゃん(仮名・彼女もHANAちゃんに会っている)や我が家でのホームパーティーで何度か顔をあわせているカリンママこと洋子(仮名)にも、「HANAちゃんが出るからヨロシクっ!」と連絡をする。
 
 そして番組オープニング。出たあ~!! さっそくHANAちゃんが出ているぅ~。
 画面に映るHANAちゃんはやっぱりひまわりのような明るい笑顔を浮かべている。しかしテレビというのはよく1.5倍増に映るというが、その通りだ。
 HANAちゃんはずいぶん以前と比べると痩せたんだけど、それでも実物より太って映っている。今回コンビを組んだRKさんもとっても痩せている人なのに、テレビでは痩せているようには見えない。
 テレビで痩せている人って相当痩せてるんだろうなあ~。私なんて映ったらエライことになりそうだ。

 彼女たちの出番は11番目。画面にいつふたりが映りこむがわからないので、目が離せない。
 生まれて初めてじっくりとこの番組を見たわけなのだが、出場者のレベルがいまいちというのは完全に私の思い込みだということがわかった。
 昔ちらっと見た出場者の中には、よぼよぼのおばあさんが出てきて歌のクオリティーよりもその年齢でチャレンジをしたことに対して評価されていたり、あがりまくって完全に音程を外している人もいたので、そういうイメージを引きずっていたのだが、今はさすがにそんなことはなさそうだ。

 HANAちゃんの歌もRKさんの歌も何度も聞いていたので、当然優勝でしょうと思っていたのだが、ライバルたちは手ごわい。
 またNHKなので選曲も考慮に入れられそうだ。単なる想像だがポップスやロックを歌う人よりも演歌や浪曲を歌う人のほうがポイントが高いんじゃないか?
 スポーツでもそうだが、漠然と見ているよりこっちのチームに勝ってほしいと思いながら見るほうが断然盛り上がる。
当然、HANAちゃんたちに勝ってほしいと思うので、自然と他の出場者のレベルがどれぐらいなのかということが気になり、目が離せなくなってしまう。ライバルたちが歌い始めると、「やばいっ! この人、上手いっ!」と、その都度ハラハラする。
「のど自慢大会」がこんなにもハラハラ・ドキドキするものだとは40歳過ぎるまでわたしゃあ、知らなかったねっ!
 
そしてやってきたHANAちゃんたちの出番。
「HANAちゃん、頑張れっ!!」
 テレビに向かって声援を送る私たち。うちの息子なぞ、「HANAちゃん、ここにいるよ」とテレビ画面を直に触りながら、「あれ? HANAちゃん、気づいてくれないよぉ~」とほざいている。まったく“おいっ、しっかりしてくれよっ”状態である。まったくもって“お受験”どころではない感じ。トホホ。

 まずはRKさんから歌い出す。曲はjujuの曲だとあとから聞いた。
 RKさんは透明感のある声でさらっとしたやさしい歌い方をする。対するHANAちゃんはパワフルで歌い上げるタイプのボーカリストだ。
 最初にAIをテレビで見たときに、「あれ!? なんでHANAちゃん、テレビに映ってるの? うん!? どうやら別人!?」と家族全員で驚いたものだった。
 HANAちゃんとAIは見た目もそっくりなのだ。けど歌に関してHANAちゃんの力はAIと比べても(←ってか、勝手に比べるなよっ!って話だよね?)、遜色ないと私は思っている(←大いに贔屓目もあるけどなっ)。

 HANAちゃんが歌い始めると、家族揃って「おぉ~!」と歓声を上げる。曲に合わせて歌い方を変えているのか、いつもより抑制の効いた感じだ。
 ちなみにどれぐらいいつもと違ったのか名作「ドリーム・ガールズ」に無理やりたとえてみると、前のHANAちゃんのスタイルがジェニファー・ハドソンのような感じだったとすると、今回のHANAちゃんはビヨンセのような感じなのだ。
もっともこの映画ではビヨンセ自体、忠実に役柄のモデルとなったダイアナ・ロスとジェニファー・ハドゾンが演じたフローレンス・バラードの基になったエフィ役との対比を再現するために、普段と比べて相当抑えた歌い方をしていたのだという。
HANAちゃんもRKさんと組むことで全体のバランスを考えたのかもしれない。

そして全員が歌い終わって結果発表!
ジャジャーン♪
見事、HANAちゃん&RKさんの優勝! おめでとう!!!

そして渋谷のNHKホールでおこなわれる全国大会へ!

知らなかったんだけど、何人か「のど自慢」で優勝した人が歌手デビューとかしてるんだよねえ。例)ジェロとか
あとは全国大会も征してなんらかのチャンスが巡ってくればいいのだけど。

それと驚いたのはこの日ゲストで出ていた伍代夏子の美しかったこと!
素人さんたちに囲まれた伍代さんの美しさは際立っていた。
やっぱバリバリの芸能人ってふつうじゃないんだね。

その後のHANAちゃんの活躍にも乞うご期待!

HANAちゃんとのど自慢大会①

 その日、私たち家族はテレビの前で全員きちんと正座して画面を見守った。
 その様子は傍から見ればきっと、高度成長期の日本で初めてテレビを購入した家庭で(←しかも町内初!)で力道山とブラッド・プラッシーの戦いを固唾を呑んで見守る人々の姿を彷彿させたことであろう(←適当)。

 私たちが待ちわびたテレビ番組とは、毎週日曜日放送のNHKの「のど自慢大会」。
 この番組は1946年から続いているのだという。
これだけの超長寿番組なので当然何度か見たことはあるのだが、初めから最後まで通して見たことはこれまでなかった。
 NHKの「のど自慢大会」といえば、演歌か浪曲というイメージが染み付いている。今のアラフォー世代以下で演歌や浪曲が大好きという人は圧倒的少数派だろう。
子どものころ、母方の祖父母の家に行くとおじいちゃんが好きでよく見ていたが、番組が始まると同時に私はテレビのある部屋を離れたし、うちの両親も昔は演歌とか浪曲を嫌っていたので(←今ではジャパネット高田で買ったホームカラオケで演歌ばかり歌ってるけどなっ)、実家でも「のど自慢」が始まると誰かが有無をいわさずチャンネルを替えるというのが習い性になっていた。
 
 もちろん最近では演歌や浪曲ばかりじゃなくて、歌謡曲やロックなど歌われる曲の幅が増えてきていることも知っていたけど、いかんせん所詮素人である。
 素人でもある水準以上の人を時間もかけて見せる「アメリカン・アイドル」みたいな番組だと見ごたえもあるが、1フレーズ、2フレーズで鐘が鳴った段階でおしまいみたいな感じはなんとあわただしく、また出る人の水準も相当いまいちで野暮ったいというのが「のど自慢大会」に対するイメージだった。

 それなのにである。
 どうして私たち家族が正座までして「のど自慢大会」の始まるのを待っているかというと、なんとHANAちゃんが出演することになったからだ。
 
HANAちゃんはうちの会社が運営委託されている施設の職員として働きながら、歌を歌っている。
 もちろんプロとしてデビューできて歌1本で食べていければそれに越したことはないけど、現実はなかなか厳しい。
 同じようなことを考えている人がゴマンといるのに、音楽はダウンロードするものという風潮の中で肝心な市場は収縮している。
 それでもHANAちゃんが歌うのをやめないのは歌わずにはいられないからだろうし、何よりも好きだからだろう。
 この場合の「好き」というのも、歌を歌っているときが楽しいからだとかそういったレベルのものではなく、歌のためなら徹夜が続こうがどんな労力があっても構わない、これをやっていないと死んでしまうというレベルのものだと思う(←HANAちゃん、違ってたらごめんねっ)。
 当然ゴマンといるライバルたちから頭ひとつ抜きん出るために、虎視眈々とチャンスを窺うことになる。
 そこでやってきたのがNHKの「のど自慢大会」への出場というビッグチャンスである。

 果たしてHANAちゃんはチャンスをモノにすることができるのか!?

2010年11月1日月曜日

公立不信②

 「誰じゃぁ、うちのY介をボコボコにした罰当たりモンはっ!?」
 可愛い甥っ子がやられたと聞いて、むかっ腹を立てる私。
 「やったのはね、同じクラスの女の子の3年生になるお兄ちゃんなんやて。女の子がお兄ちゃんをそそのかしてやらせたんやがね」
 「どういうこっちゃ? 1年生のくせにどういうあばずれなんじゃぁ!? そいつはよぉ~」
 「教室でね、Y介が通ろうと思っとった通路にその子がおって邪魔やったらしいんやわ。で、“どいて”って言っても知らん顔されたもんで、“どけよっ!”って強く言ったらしいんやわ。で、その言い方が気に入らんかったらしくて自分のお兄ちゃんに“あいつ、しめたって”って頼んで、お兄ちゃんもひとりやと心細かったんかしらんけど、もうひとり悪いヤツ連れてきてそいつとふたりでY介をボコボコにして、影でその女の子が笑いながら見とったらしいんやて」
 「なんちゅう話や! まあそのお兄ちゃんとその友だちは単なるアホやけど、その女の子、末恐ろしいなっ! で、どうしたん?」

 「もちろん学校に行って担任の先生に話をして、その子らの親にも話してもらったんやけど、ウンともスンとも言ってこん。知らん顔されとる」
 「なんちゅう~、あきれた親じゃ。知り合いなん?」
 「元々顔は知っとるよ。母親はまだ20代前半で男と遊び狂っとるで、子どもほったらかしらしいわ。いわゆるネグレストってやつやね。どうしようもないあばずれなんやけど、最近赤ちゃんができたから家にはおるらしいわ」
 「絵に描いたような下流家族やなあ~。小3の子がおってまだ20代前半とは! で、赤ん坊の父親は誰なん?」
 「なんや彼氏らしいけど、彼氏も家に転がり込んどるみたいやよ」

 「延々と続く不幸の再生産ちゅう感じやねえ~。で、ウンともスンとも謝りにこんの、学校側はどうなわけ?」
 「完全に及び腰やて。その下流家族はそんな程度やん。やけどY介がボコボコにされたんは、学校内やから完全に学校の監督下でのできごとやろ。やけどあかん、学校側は私らに“すいませんでした”って言うだけで、なんもせん」
 「T(←私の弟)はなんって言ってるの?」
 「めっちゃ怒っとるよ。“うちのY介はお前んとこの薄汚いガキとは出来が違うんじゃ。バカタレが、この激安一家のくせによぉ”って」
 「お、本人に言った?」
 「陰で言っとるだけやって。あの人、そんな根性ない」
 「確かに。でもそれじゃあ収まらんやろ?」
 「そうや。学校は当てにできん。そういやあ千恵子ちゃん(仮名)覚えとる?」

 千恵子ちゃんとはRちゃんのママ友のひとりで、長男のS太朗の友だち朝也くん(仮名)のお母さんだ。
 ふたりは中学受験の同志で、お互い切磋琢磨し励ましあって受験に臨んでいる。
 私たちが帰省したときにうちでホームパーティーを開き、朝也くん一家と飲んだことがある。
 千恵子ちゃんは一見、元ヤンだ。何がすごいって目つきが鋭い。愛想もない。けどものすごく教育ママで、朝也くんの塾代の費用を捻出するためにスーパーのお惣菜売り場で毎日お惣菜を作っている。勉強もいっしょに子どもたちとやり、S太朗の勉強も見てくれて弱点なんかも教えてくれたりする。
 塾でいっしょだったことがきっかけになってふたりは仲良くなった。ふたりのタイプはまったく違うが、千恵子ちゃんは仲良くなればとことん面倒見のいい姉御肌なのだ。

 「千恵子ちゃんにもY介がボコボコにされた話をしたらえらい怒ってくれて、“よっしゃ、これから学校に行ってその小1のあばずれ、しめたろか”って言って、いっしょに学校に行ってきた」
 「ちょっと待て! まさか大の大人ふたりで小1の子になんかしたんか?」
 「うふふふ。お義姉さん、この顔見て」
 「うわぁ! なんや、これっ!」
  携帯に送られてきた写メール。

 Rちゃんは顔の筋肉をある程度自由自在に動かせる変な特技を持っている。私に送ってきたのは、なんとも壮絶な恐喝顔というか、ちんぴら顔というか、これ普通、子どもうなされるでぇ~というまったく本人の顔の原型を留めていない怖い顔の写真だった。
 
 「“あんた、よぉ、うちのY介におもろいことしてくれたなあ? 今度しょうもないことやったら、あんたもあんたのお兄ちゃんもわかってるやろなあ?”ってその子にこんな顔して言うたった。で、隣にはめっちゃメンチ切った千恵子ちゃん」
 「う~ん。そりゃあ怖いなあ~」
 「そのあばずれ、心底恐怖に歪んだ顔して震えとったわ。ま、しばらくY介も無事やろ。学校がなんもせんで、こっちも自衛せんと」

 なんということだ。私の母校はどうなってるのだ?
 とっても救いのない話を聞いて、かなり気が滅入った。
 これは公立云々は関係のない話かもしれないが、少なくても国立や私立にはそういった家庭の子どもはいないだろう。
 今後、同じようなことがうちの子どもたちの身の上で起こった場合、私にはRちゃんみたいに顔の筋肉を自由に動かせる特技もなければ、頼れる千恵子ちゃんみたいな人もいない。
 娘の小学校入学を控えて神経質になる私であった。