2009年6月7日日曜日

沙織③

ちなみに沙織(仮名)にももちろん銀座の先生の話はしていたが、元来そういった占い的なものには懐疑的な彼女である。
「ふうん~。相変わらずそういうの好きやなあ。ほんでいくら?」
「2万円」
「なんや、それ! ようそんなんにお金なんか払うなあ?」
話は以上である。
沙織は神秘的なものとか宗教的なものとか目に見えないものとか全然興味がなくて、ましてやそういったものにお金を払うという行為自体彼女の中ではありえないことだ。
そのあたりはうちの夫にも相通じるものがある。

それから少しして、沙織(仮名)から携帯にメールがきた。結構長文なメッセージであれこれと「エッサウィラ」を読んだ感想が書いてあった。
内容は以下の通り。
「おもしろかった。なつかしいエピソード。よく覚えていたなあ。ようこんだけ書けるなあ感心。文章力が高い。さすが元編集者、すでに素人ではない。設定や情景が珍しく面白い。ここまで書いて今の生活に支障はないのか? 描写がエグイ。エロと文学が混ざって古くは山田詠美みたいな分野? もっとどっとかにテイストを合わせたほうが安心して読める。エロだと杉本彩みたいに女性視点の欲望が書かれていて潔くていいが、これはエロがメインテーマじゃないだろうから。主人公の名前がピンとこない。エピソードがあまりにリアル。写真と一緒だと景色が浮かんでさらによさそう。タイトルがいい。各章ごとに小さいタイトルがあればアクセントになっていいかも・・・・続き待ってるよ!」
といったところ。
山田詠美だとか杉本彩だとかという固有名詞が出て、「ふうううん~!」と感心させられてしまう。なぜなら私はこの二人を意識したことが全くなく、作品も山田詠美のデビュー作とその後の1、2作以外読んだことがないのだ。
誰それみたいだと言われるということはオリジナリティがないと言われているのに等しい気もするが、まったく誰それみたいじゃないなんてこともありえないだろう。
それが自分が影響を受けた作家からなのか、まったくそんなことがない作家からなのか、そのあたりは微妙だけど、考え始めれば私は誰の影響を受けているのだろう?
好きな作家と影響を受ける作家は別物なのだろうか?

「感想送ってくれてありがとう」
 沙織に電話する。
「うん、メールにもあれこれ書いたけどおもろかったよ」
「そういえばさあ、Hの田上さん(仮名)が前に飲んだ時に、俺にも送ってくれよっていうから送ったのに、うんともすんとも言うてきはらん」
「たぶん、ショック受けてはるんちゃう?」
「なんのショックよ?」
「だってその田上さんって人、あんたよう昔から話題にしてるけど、妹みたいに可愛がってくれはる人なんやろ? そりゃあ、妹が小説に書いてあるようなあんなことやらこんなことをしとったのかって、わかったらショックやって」
「だからあれはあくまでも小説なの!」
「はいはい。また続き書いたら送ってな」
 そう朗らかに沙織は答えて電話を切った。

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