2009年11月6日金曜日

春が来た♪②

 今年の春は転職運があると言われていた夫。
 社長(イギリス人)と折り合いが悪く、周期的にターゲットにされることもあって、その度に“もう辞めたい”と愚痴る夫。
 仕事の内容の割には待遇(主に給与面)に納得がいかないらしく、転職を狙っているが、なかなか叶わない。
 ある意味悪運が強いのか、破たん前のリーマン・ブラザーズやAIGの最終面接で落とされて、のちに胸をなでおろした話は以前した通り。

 定期的に会社の愚痴を言う夫に、“本当は2年半後のほうがいいんだけど、今年の春も転職運があるらしいよ”と慰めたものの、それどころかこの不況の影響は夫の会社もまのがれておらず、突然手取り減の状態に陥ることが決定してしまったのだ!

 手取り減の要因は社会保険料だ。
 会社が小さいためか夫の会社は外国人に限って、社会保険料(健康保険、雇用保険、厚生年金)は払っても払わなくても本人の意思次第ということになっていた。
 健康保険は海外のものに入っているし、子どもたちの分は私の社会保険に入れているし、年金はどうせイギリスでも払っていない。
 要は社会保険料を払うメリットが何もなかったので、その分手取りとしてもらい、所得税だけを引かれた手取りから住民税は自分で払い、源泉徴収も自分でやってきたのだ。
 年収自体はたいしたことがなくても、手取りでそれなりにもらえていたため、ダブルインカムでそれなりに暮らしてきたのだ。

 それなのにここにきて、いきなり会社が全員社会保険に入るようにと強引に推し進めてきたのだ。
 これまでも国の方針としては、外国人も社会保険料を払うようにという流れになっていた。
 それを一気に入管法を改正して、ビザの管理は入管、外国人登録カードの発行は市町村と2つの窓口に分かれていたものを一本化して、就労ビザの更新時には就労先の健康保険証提示が条件と改められたのだ。
 もちろんこれまでだって規模の小さな会社でも社会保険加入は強制だが、会社側の負担が大きいためかなりの会社が未加入だというのが現実だった。
 法改正によってもう未加入のままでいいわけにはいかなくなった。
 増え続ける不法滞在者対策なのだが、とんだとばっちりである。

 しかも夫の会社の総務がまたいい加減で算出した社会保険料が毎回違う数字で上がってくるので、夫もぶち切れ、私も自分の会社の総務の人に相談したほど。
 ますます夫の会社に対する愚痴は増え、“会社辞めたい”病はひどくなるばかり。

 「春に転職運というか、それより転職せざるえない状況だな」
 暗い口調で呟く夫。
 「しかもジャック(仮名。会社の社長)のヤツ、どうやら会社をどっかに売るつもりらしいんだな」
「え、マジ?」
ジャックはアフリカ系イギリス人。まったく外人ときたらすぐに会社を売ったり、買ったりしやがる。もうちょっと腰据えて商売しろっていうのっ。

「入管法の改正だけじゃなくて、会社を少しでも高く売るために、全社員社会保険に加入させたということも考えられるな」
「ちょっとちょっと、会社をどこに売るつもりなわけ? あと売られたらどうなるわけ?」
「まあ2、3候補があるだろうけど、そのうちのどこかだと思う。そのあとのことはわからないよ。場合によったらクビかも」
「クビっ!?」
「そうなったらゆっくり勉強もして、日本語もやり直して、君のために毎晩ご飯作ってあげるよ」
 いらんちゅうーの! それより働いて外貨を稼いでおくれ(涙)。

と我が家ではこんな具合に転職運の春どころか、先行き不透明な春を迎えたのであった。

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