大樹くん(仮名)ママにコテンパン(←古臭い表現だな)にやられた翌日はバレエの日であった。
娘と息子をレッスン場に送り届け、待合室に行くと里美さんが一足先に来ていてちょこんと座っていた。
「S女、合格おめでとう。良かったね」
と声をかけると、
「次はAちゃん(←娘)の番ですよ。そうそう、これO女の問題集です。うちはもう使わないので差し上げますよ」
とほとんど使われた形跡のない問題集を気前よくくれる里美さん。
あれこれS女の試験の話や合格発表までの心境などの話をしたあとに、昨夜の大樹くんママから言われた話をする。
徐々に眉間に皺を寄せていく里美さん。あれ? 里美さんってこんなに気難しい顔をする人だったっけ?
ひととおり話し終わると、
「それはですね。間違っていますっ!」
と断言する里美さん。
ええっ!? 間違ってるの?
「いいですか! そんなこと言い出したらどこだってその小学校が子どもに合わないリスクはあるのです! それは公立小とて同じこと。万が一、国立小が合わなければそのときは辞めて公立に行けばいいのです。けど公立小で合わなければどうなりますか? 引っ越しますか? 国立であればまだ選択肢はあるのです! 国立から公立に行くことはできますが、公立から国立には行けないのです。それは私立も同じです。それはなぜですか? 国立や私立はお受験を経て入学が許されますけど、公立は誰もが入学を許されるからです」
「そして親が希望して入れた学校でもし子どもが合わなかったとしても、それはそれで仕方がないと納得いきます。けど希望ではないところで合わなかったら? それこそ救われないでしょう? どこの小学校でも必ず嫌なところはあるはずです。けど希望して行ったところと希望ではないところで遭遇する嫌なことは、受け止める側の心理も違ってきます」
「あと子どもは柔軟です。この年代の子どもたちに合う合わないという基準は誰が決めるのですか? 子どもは環境によって変わっていきます。そのお友だちのお母さんが言っていた国立小学校に合わなくて苦しんだという子どもたちは、まあ、そもそもそんなに何人も合わずに苦しむ子どもたちを知っているというのも不自然な感じはしますが、それは置いといて。そもそもその子どもたちは公立でも合わなくて苦しんだはずなんです。だってそうでしょう? 国立で合わない子が公立に行ったら合うんですか?」
さあ? それはどうなんでしょうねえ・・・。
「さあ、美央さん。しっかりして! 私立受験はあらかた終わってますから、あとは国立受験あるのみですよ。そんな戯言に惑わされたらダメです。さあ、そんなことより図形にお話の記憶に制作に熊歩きです。T大附属とO女がまだ残っているんですから、がんばって!」
・・・・・っ!
すごいぞ。里美さん! さすが娘を超難関人気校S女に入れただけあって気合が違うぞ!
ああ~、里美さんと大樹くんママの直接対決を見てみたい。すごいだろうなあ。
お受験派と非お受験派のガチンコ勝負。どっちが勝つのかしら?
ああ~、どっちにしてもすごい。ポリシーあるわぁ~。あっぱれだわ~。
「そうよねえ? そうよねえ? 国立めざしたっていいのよね? 私」
「そうです! さあ、ここは踏ん張り時ですよ!」
「がんばるわ、私」
「その意気です」
またしてもフラフラと揺れる筋なし骨なしの私なのであった。すまんな。娘よ。
2010年6月23日水曜日
2010年6月22日火曜日
年中さんも迷っている!
公立の選択希望書類の提出日も過ぎてしまったある土曜日の午後は子どもたちの保育園でバザーがあり、バザーを仕切った年中さんのクラスの保護者たちと打ち上げをすることになった。
こういう飲み会をする場合、たいてい2次会の会場は我が家になる。
周りがオフィス街で階下の住人もいない我が家は多少騒いでもだいじょうぶなので、子どもたちがドタドタ走り回るこういった場にはうってつけなのだ。
うちの息子は年中クラスなのでこのクラスの保護者たちは当然息子の同級生の親たちになるのだが、2次会で出た話題はすでに「小学校をどうするか?」というもので、来年入学を控えている我が家は当然のように、「おたくはどうしたの?」と質問攻めにされた。
やはり関心が高いのが区立のM小学校にしたのか、MG小学校にしたのかというもので、うちは隣接校選択の申請書を出し損ねていてまあ何せ近いので自動的にM小学校にしたという話をすると、もう出るわ出るわ、いかにM小学校はいじめが横行していて荒れているかという話や、MG小学校では先生のうつ病発生率が高くて行っている塾によって派閥ができているという話や、もうどちらにしても散々である。
「Aちゃん(←うちの娘)は受験しないの?」と当然のように出る質問。
「一応、クジは引きに行くけど」
と正直に答える私。
「じゃあ準備とかしてるの? 塾に行ったりとか?」
という質問に対して、
「塾には行ってないけど、一応勉強は最近始めたよ」
とバカ正直に答えるバカな私。こういうことは黙っとけよな。まったく。
「へえ~、勉強ってどんなことするの?」
よせばいいのに買ってきた過去問とかばっちりくんドリル基礎編とか見せる私。
「へえ~、お話の記憶とか図形とか出るんだ。難しそうだね」
「そうそう、特にT大附属T小は難問ぞろいなの。たとえばね、お話の記憶ひとつとってもG大附属O小の問題なんかと比べるとね・・・・」
泰子(仮名)や由美子さん(仮名)やみっちゃん(仮名)からの受け売りを余すことなく得意げに鼻の穴を全開に膨らませ語る私。
ほんと、こういうのって受かってからエラそうに言えっちゅうねん、と自分に突っ込む。
「へえ~、すごいのね。いろいろと」
などと大半のお母様がたが感心した様子を見せている中、
「ちょっと待った!」の声がかかる。
声の主は大樹くん(仮名)ママだ。
大樹くんは息子のクラスで一番仲のいい友だちで、いつもつるんだりケンカしたりしている。
大樹くんママとはわりと年も近くさっぱりとした性格でお互い酒好きなので、会えば親しく接している。
大樹くんには中学生のお姉ちゃんがいて、MG小学校出身だ。何かとセレブ感溢れる(←公立にしては・・)MG小学校だが、唯一大樹くんママはことあるごとにMG小学校の庶民的な部分をアピールし、巷でよく囁かれている“MG小学校・中学受験でみんなギスギス説”を、
「そんなことないって。MG小学校って普通だって。そんな100%の人が受験するなんてあるわけないじゃないのっ。もう昭和の香りのする(←どんな匂いだ!?)いい小学校よぉ」
と全否定するのであった。
そのある意味、MG小学校原理主義者である大樹くんママが「ちょっと待った!」をかけたのである。
「なんで公立じゃダメなわけ?」
結構飲んでいるせいか大樹くんママの目が据わっている。
う、なんとストレートな質問。頭の中でアラームが鳴る。
この場にいる人たちが来年受験するかどうかわからないけど、間違いなくこの場で公立小学校を否定するようなことは言わないほうが無難だろう。
「国立ってそんなにいいもんでもないよ」
とさらにほとんどの人が疑ってみたこともない「国立=受かったら絶対にラッキー」だとか「国立=なんだかすごそうで、なんだかとっても良さそう」という前提をあっけなく覆してみせる大樹くんママ。
絶対にこの場にいたママ連中たちの心に大きな波紋を広げたに違いない。
「それにね、知り合いで何人も国立に行っているうちの人がいるけど、その学校に合わなかったらそれは悲惨よぉ。何人もそれで苦しんだ子どもたちを実際に私は知ってるんだから」
何? 知り合いでそんなに何人も国立に行ってる人がいるのか!? それはそれですごいではないか!
「なんのために国立受験をさせるのか、なぜ公立じゃないとだめかってちゃんと親がしっかり考えなきゃ。抽選に受かればラッキーだなんて、安易に考えちゃだめよぉ」
うーん。耳が痛いぞ。「抽選に受かればラッキー」どころか、うちの場合「占い師の口車に乗せられて」だもんね。
って、もっとだめじゃん!
「なんのために国立受験をさせるのか?」
根本的なことを問われてしどろもどろな私。
お受験派もお受験しない派もそれぞれポリシーがしっかりあるというのに、ああ言われちゃフラフラ、こう言われりゃあフラフラのダメぶりを白日の下に晒された夜なのであった。
こういう飲み会をする場合、たいてい2次会の会場は我が家になる。
周りがオフィス街で階下の住人もいない我が家は多少騒いでもだいじょうぶなので、子どもたちがドタドタ走り回るこういった場にはうってつけなのだ。
うちの息子は年中クラスなのでこのクラスの保護者たちは当然息子の同級生の親たちになるのだが、2次会で出た話題はすでに「小学校をどうするか?」というもので、来年入学を控えている我が家は当然のように、「おたくはどうしたの?」と質問攻めにされた。
やはり関心が高いのが区立のM小学校にしたのか、MG小学校にしたのかというもので、うちは隣接校選択の申請書を出し損ねていてまあ何せ近いので自動的にM小学校にしたという話をすると、もう出るわ出るわ、いかにM小学校はいじめが横行していて荒れているかという話や、MG小学校では先生のうつ病発生率が高くて行っている塾によって派閥ができているという話や、もうどちらにしても散々である。
「Aちゃん(←うちの娘)は受験しないの?」と当然のように出る質問。
「一応、クジは引きに行くけど」
と正直に答える私。
「じゃあ準備とかしてるの? 塾に行ったりとか?」
という質問に対して、
「塾には行ってないけど、一応勉強は最近始めたよ」
とバカ正直に答えるバカな私。こういうことは黙っとけよな。まったく。
「へえ~、勉強ってどんなことするの?」
よせばいいのに買ってきた過去問とかばっちりくんドリル基礎編とか見せる私。
「へえ~、お話の記憶とか図形とか出るんだ。難しそうだね」
「そうそう、特にT大附属T小は難問ぞろいなの。たとえばね、お話の記憶ひとつとってもG大附属O小の問題なんかと比べるとね・・・・」
泰子(仮名)や由美子さん(仮名)やみっちゃん(仮名)からの受け売りを余すことなく得意げに鼻の穴を全開に膨らませ語る私。
ほんと、こういうのって受かってからエラそうに言えっちゅうねん、と自分に突っ込む。
「へえ~、すごいのね。いろいろと」
などと大半のお母様がたが感心した様子を見せている中、
「ちょっと待った!」の声がかかる。
声の主は大樹くん(仮名)ママだ。
大樹くんは息子のクラスで一番仲のいい友だちで、いつもつるんだりケンカしたりしている。
大樹くんママとはわりと年も近くさっぱりとした性格でお互い酒好きなので、会えば親しく接している。
大樹くんには中学生のお姉ちゃんがいて、MG小学校出身だ。何かとセレブ感溢れる(←公立にしては・・)MG小学校だが、唯一大樹くんママはことあるごとにMG小学校の庶民的な部分をアピールし、巷でよく囁かれている“MG小学校・中学受験でみんなギスギス説”を、
「そんなことないって。MG小学校って普通だって。そんな100%の人が受験するなんてあるわけないじゃないのっ。もう昭和の香りのする(←どんな匂いだ!?)いい小学校よぉ」
と全否定するのであった。
そのある意味、MG小学校原理主義者である大樹くんママが「ちょっと待った!」をかけたのである。
「なんで公立じゃダメなわけ?」
結構飲んでいるせいか大樹くんママの目が据わっている。
う、なんとストレートな質問。頭の中でアラームが鳴る。
この場にいる人たちが来年受験するかどうかわからないけど、間違いなくこの場で公立小学校を否定するようなことは言わないほうが無難だろう。
「国立ってそんなにいいもんでもないよ」
とさらにほとんどの人が疑ってみたこともない「国立=受かったら絶対にラッキー」だとか「国立=なんだかすごそうで、なんだかとっても良さそう」という前提をあっけなく覆してみせる大樹くんママ。
絶対にこの場にいたママ連中たちの心に大きな波紋を広げたに違いない。
「それにね、知り合いで何人も国立に行っているうちの人がいるけど、その学校に合わなかったらそれは悲惨よぉ。何人もそれで苦しんだ子どもたちを実際に私は知ってるんだから」
何? 知り合いでそんなに何人も国立に行ってる人がいるのか!? それはそれですごいではないか!
「なんのために国立受験をさせるのか、なぜ公立じゃないとだめかってちゃんと親がしっかり考えなきゃ。抽選に受かればラッキーだなんて、安易に考えちゃだめよぉ」
うーん。耳が痛いぞ。「抽選に受かればラッキー」どころか、うちの場合「占い師の口車に乗せられて」だもんね。
って、もっとだめじゃん!
「なんのために国立受験をさせるのか?」
根本的なことを問われてしどろもどろな私。
お受験派もお受験しない派もそれぞれポリシーがしっかりあるというのに、ああ言われちゃフラフラ、こう言われりゃあフラフラのダメぶりを白日の下に晒された夜なのであった。
2010年6月15日火曜日
隣接校選択制度
11月に入ると私立受験もさることながら、公立組は公立組で早々に結論を出さなければいけないのが、学区内の小学校に素直に行くか、隣接する学区を選択するかの問題だ。
学区選択については自治体によって考え方や条件が違っていて、その自治体内のどこの小学校でも選べるというところから、隣接する学区内から選ぶ形をとっているところ、まったく学区を選べないところと様々だ。
たとえば私の田舎などは学区の範囲が広いので、小学校を選択できたところで物理的に通うことができない。
東京で選択制をとっているところが多いのは、やはり人が集中していることと公共の交通が発達していることと無関係ではないと思う。
我が区では隣接校選択制を採用しているので、我が家の場合も学区以外の4校を選択することが可能だ。
何度も書いているがうちから数十秒のところにあるM小学校が指定校で、選べる4校のうちの1校が我が区屈指の人気校MG小学校である。
M小学校とMG小学校は隣接しているくせに校風が同じ公立だとは思えないほどかなり違うらしく、うちの子どもたちと同じ保育園に通う親たちのほとんどがどちらにするべきか相当悩むのだという。
のびのび育てるならM小学校、中学受験させるならMG小学校という色分けができているらしく、M小学校の中学受験率がだいたい18%ぐらい(=首都圏の受験率だそうだ)に対して、MG小学校はなんと限りなく100%!!
M小学校は昨今流行のオープンスペースなので立ち歩く子もいる学級があるというが、MG小学校は研究指定校にもなっているので、授業のレベルも親の意識も高いらしく先生のプレッシャーも相当キツイのだとか。
またMG小学校は人気校なので学区外からの希望者は自ずと抽選になる。その倍率は年によっても違うが3倍ぐらいだという。
10月に区内の公立小学校すべてが公開授業を行っていたので、どこにすべきか迷っている親たちにとってはかっこうの判断材料になるはずだったが、あいにく私は国立の抽選や願書提出などでいっぱいいっぱいになってしまい、M小学校もMG小学校も見学に行かずじまいだった。
夫はハナっからM小学校派で、わざわざ見るまでもなし!という考え方だ。
私も銀座の先生の言うことが正しければ(←すでにハズしてるけどなっ)、娘はG大附属T小ではないにしろ、国立に行く運命なのだから、何もわざわざ公立をチェックする必要なしということで学校見学にも行かず、選択希望の書類も提出しなかった。
そうしているうちに区立の選択はM小学校以外にできなくなってしまっていた。
みっちゃん(仮名)と由美子さん(仮名)は10月のうちに区立小学校もそれぞれ見て回ったらしく、ふたりとも口を揃えてやっぱりどうしても子どもを公立に入れたくないという気持ちが固まったと言っていた。
このふたりにかかれば天下のMG小学校でさえレベルが低いと斬って捨てられた。
だったらM小学校はどうなっちゃうの?ってなもんだ。
ふたりが言うにはMG小学校のように大半の子どもたちが塾に行くようなところは学校の授業が簡単すぎてつまらないので、逆に持て余して授業妨害するケースもあるのだという。
私立小学校に行ったころがないのでわからないけど、そんなに公立と私立ってのは違うものなのかね?
ふたりの話を聞くとつくづく教育は親の選択しだいなのかと憂鬱になるのであった。
2010年6月14日月曜日
私立、受験始まる!②
里美さんと電話で話した翌日は泰子(仮名)から電話がかかってきた。
内容は泰子のお友だちでやはり銀座の先生に診てもらったおうちの子もお受験合格したよということだった。
お友だちの第一希望はこれまた人気のSY女子で、先生からは「ちょっと難しいけど、SYの名前がついた講習を受ければだいじょうぶ」と言われて、実際にSY関係の講習は受けまくったのだという。
「全部で4校受かる」と言われていたらしいが、2校合格がわかった時点で受験を終了させたらしい。
「ね、銀座の先生のやっぱり当たってたよ。だからAちゃんもどっかの国立に行くことは間違いないんだよ。それがO女かT小か。けど女の子はO女がいいよ。AちゃんはO女のほうが向いてそうだけど」
とほぼ里美さんと同じようなことを言う。
話を聞いていると私立の結果が出るのは早いみたいで、私立も併願している由美子さん(仮名)のところやみっちゃん(仮名)はどうなったんだろうと思っていたところに、みっちゃんからメールが来た。
「陽太(仮名)、G校無事合格しました! 私の第一希望はT大附属T小だけど本人がどうしてもG校に行きたいと言うので、後ろ髪引かれる思いですが、これでお受験終了です。うちの分もAちゃん(←うちの娘)、T大附属T小、がんばってくださいね。もちろんO女も」
というものだった。
さっそくみっちゃんにおめでとうの電話をかける。G校は私立でも超難関校で偏差値の高さはピカイチなのだ。
「すごいね。G校。陽太、がんばったね。カズヒロ(仮名・陽太パパ)も喜んでるでしょ?」
「カズヒロくんはね、いまひとつわかってないみたい。G校ってお弁当作らなくちゃいけないんだけど、どうしても陽太がG校に行きたいって。塩むすびだけでいいからG校に行かせてくださいって頭下げて私たちに頼むのよ。そんなに行きたいのなら行かせてあげようかと思って」
すごい。6歳にしてどうしても行きたい学校があるなんて。
うちみたいに真正面から「受験」と言わずに、「クイズ大会」とごまかして受験勉強させているのが果たして正しいのかという気分になってしまう。
「他の私立はどうだったの?」
「うちは他にH学園とS学院を受けたんだけど、おかげさまでみんな合格したんだけど・・・」
「さすがだね。あれ? S学院は雪美ちゃん(仮名)も受けなかったっけ?」
「そうなの・・・。実は同じ日に受験したんだけど。雪美ちゃんね、学校選択が悪くて今のところ全滅なのよ」
とみっちゃんは心底気の毒そうに言う。
そう同じ塾に通ってがんばってきたみっちゃんと雪美ちゃんママの由美子さん(仮名)は今や完全に同志と化していて、固い絆で結ばれている。
みっちゃんはタイプ的に自分のところさえ受かればいいと考える人ではない。
「雪美ちゃんって努力してるし、いつもいい判定をもらってたのよ。けどあれはどう考えても由美子さんの戦略ミスで、受けた私立がS学院とH女子まではいいけど、あとがよりによってA学院とB学園だったのよ!」
「その選択のどこがだめなの?」
と私。
A学院は超人気校で芸能人の子弟が多いのでも有名だ。みっちゃんいわく、よほどのお金持ちかよほどのコネがなければ、最低でも両親のどちらかがA学院出身者じゃなければかすりもしないところなのだという。
「へえ~。ということは由美子さんかヒロキ(仮名)がA学院出身なの?」
「それが違うからだめだったのよ。塾からも学校選択を見直したほうがいいって言われてたしね。私立ならH女子が本命だったんだけどここが残念ながら落ちちゃって、それで由美子さんが動揺しちゃって・・・。普通だったらS学院なら確実だったはずなのに、あろうことか、由美子さんったらS学院の試験日にパパに仕事を休んでもらうことを忘れたり、赤ちゃんを預け忘れたりして、パパはいないわ、けど赤ちゃんは連れてきちゃうわで散々だったの。もし時間がうちとズレていればその間、赤ちゃんを見てあげられたのに、最悪なことに面接時間がまったく陽太と重なっちゃって、うちも見てあげられなくて、それでS学院もダメだったのよ。ただB学園はまだ結果が出ていないんだけど、正直言って私立というだけでレベル的にはどうかなっていうところなのよ。ここなら100%合格すると思うんだけど」
そうか~。私立は私立でいろいろあるんだな。
抽選という運頼みの要素がない分、親の戦略とか選択がダイレクトに問われてしまうのも辛そうだ。
だったら由美子さんのところはしばらくそっとしておいてあげよう。
内容は泰子のお友だちでやはり銀座の先生に診てもらったおうちの子もお受験合格したよということだった。
お友だちの第一希望はこれまた人気のSY女子で、先生からは「ちょっと難しいけど、SYの名前がついた講習を受ければだいじょうぶ」と言われて、実際にSY関係の講習は受けまくったのだという。
「全部で4校受かる」と言われていたらしいが、2校合格がわかった時点で受験を終了させたらしい。
「ね、銀座の先生のやっぱり当たってたよ。だからAちゃんもどっかの国立に行くことは間違いないんだよ。それがO女かT小か。けど女の子はO女がいいよ。AちゃんはO女のほうが向いてそうだけど」
とほぼ里美さんと同じようなことを言う。
話を聞いていると私立の結果が出るのは早いみたいで、私立も併願している由美子さん(仮名)のところやみっちゃん(仮名)はどうなったんだろうと思っていたところに、みっちゃんからメールが来た。
「陽太(仮名)、G校無事合格しました! 私の第一希望はT大附属T小だけど本人がどうしてもG校に行きたいと言うので、後ろ髪引かれる思いですが、これでお受験終了です。うちの分もAちゃん(←うちの娘)、T大附属T小、がんばってくださいね。もちろんO女も」
というものだった。
さっそくみっちゃんにおめでとうの電話をかける。G校は私立でも超難関校で偏差値の高さはピカイチなのだ。
「すごいね。G校。陽太、がんばったね。カズヒロ(仮名・陽太パパ)も喜んでるでしょ?」
「カズヒロくんはね、いまひとつわかってないみたい。G校ってお弁当作らなくちゃいけないんだけど、どうしても陽太がG校に行きたいって。塩むすびだけでいいからG校に行かせてくださいって頭下げて私たちに頼むのよ。そんなに行きたいのなら行かせてあげようかと思って」
すごい。6歳にしてどうしても行きたい学校があるなんて。
うちみたいに真正面から「受験」と言わずに、「クイズ大会」とごまかして受験勉強させているのが果たして正しいのかという気分になってしまう。
「他の私立はどうだったの?」
「うちは他にH学園とS学院を受けたんだけど、おかげさまでみんな合格したんだけど・・・」
「さすがだね。あれ? S学院は雪美ちゃん(仮名)も受けなかったっけ?」
「そうなの・・・。実は同じ日に受験したんだけど。雪美ちゃんね、学校選択が悪くて今のところ全滅なのよ」
とみっちゃんは心底気の毒そうに言う。
そう同じ塾に通ってがんばってきたみっちゃんと雪美ちゃんママの由美子さん(仮名)は今や完全に同志と化していて、固い絆で結ばれている。
みっちゃんはタイプ的に自分のところさえ受かればいいと考える人ではない。
「雪美ちゃんって努力してるし、いつもいい判定をもらってたのよ。けどあれはどう考えても由美子さんの戦略ミスで、受けた私立がS学院とH女子まではいいけど、あとがよりによってA学院とB学園だったのよ!」
「その選択のどこがだめなの?」
と私。
A学院は超人気校で芸能人の子弟が多いのでも有名だ。みっちゃんいわく、よほどのお金持ちかよほどのコネがなければ、最低でも両親のどちらかがA学院出身者じゃなければかすりもしないところなのだという。
「へえ~。ということは由美子さんかヒロキ(仮名)がA学院出身なの?」
「それが違うからだめだったのよ。塾からも学校選択を見直したほうがいいって言われてたしね。私立ならH女子が本命だったんだけどここが残念ながら落ちちゃって、それで由美子さんが動揺しちゃって・・・。普通だったらS学院なら確実だったはずなのに、あろうことか、由美子さんったらS学院の試験日にパパに仕事を休んでもらうことを忘れたり、赤ちゃんを預け忘れたりして、パパはいないわ、けど赤ちゃんは連れてきちゃうわで散々だったの。もし時間がうちとズレていればその間、赤ちゃんを見てあげられたのに、最悪なことに面接時間がまったく陽太と重なっちゃって、うちも見てあげられなくて、それでS学院もダメだったのよ。ただB学園はまだ結果が出ていないんだけど、正直言って私立というだけでレベル的にはどうかなっていうところなのよ。ここなら100%合格すると思うんだけど」
そうか~。私立は私立でいろいろあるんだな。
抽選という運頼みの要素がない分、親の戦略とか選択がダイレクトに問われてしまうのも辛そうだ。
だったら由美子さんのところはしばらくそっとしておいてあげよう。
2010年6月12日土曜日
私立、受験始まる!①
11月の最初の週から私立小学校のお受験が一斉に始まる。
なんでも人気校の倍率は5倍ほどになるらしいし、日程が重なるところが多いらしいので、その調整には苦労させられるらしい。
そんな中、娘と同じバレエ教室の詩音ちゃん(仮名)ママである里美さん(仮名)からメールが届いた。
「どうなることやらと思いましたが、S女、合格しました!」
といううれしい内容だった。
里美さんも2回ほど銀座の先生のところに行っていて、詩音ちゃんのお受験のことも見てもらっている。
なんでも詩音ちゃんが行きたいと自分で選んだところがいいらしく、私立の女子校でカソリック系で射撃だとかアチェリーらしきクラブがあるところで、制服の襟に特徴のあるところだと予言されていたらしい。
S女は詩音ちゃんがホームページを見て制服が気に入り、どうしてもここに行きたいと言い張ったそうだ。
ただS女は人気もあるしペーパーも難しいので、塾に通い準備もいろいろしたようだ。すっかり受験問題に詳しくなった里美さんが娘たちのバレエの待ち時間の間、いろいろと問題の解き方とか教え方のコツとかその他のお受験情報を教えてくれて、ひたすらそんな話ばかりしていたから、傍から見れば私たちはさぞかしお受験話ばかりしている教育ママゴンに映ったことだろう。
さっそく「合格おめでとう!」の電話を入れると、
「やはり銀座の先生の言うことは当たってましたよ」
とうれしそうな里美さん。
「S女って制服の襟に特徴あるの?」
「そうなんです。襟を見ればすぐわかりますよ。カソリックだし。でもね、射撃だとかアーチェリークラブはないんですけどね。まあ、本人が希望した学校だし、半分当たって半分ハズれたというところですかね。けどうちも合格しましたから、だいじょうぶ、Aちゃん(←うちの娘)もあとはT大附属T小か、O女のどちらか合格しますよ。どっちかといえばAちゃんはO女が良さそうですけど。Aちゃんの場合、半分ハズしたのは学校名だけだと思いますよ」
「だといいんだけどね~。でもブロックの問題が全然できないんだよね」
と私。
娘の解けないブロックの問題というのは図面上にブロックが積み上げられていて、矢印から見た方向から見える形を書けというものだ。情けないことに実は私も苦手だ。
「ああ~、あれですね。コツはちゃんとあるんですけどね。でもブロックは国立じゃ出ないですよ。過去10年T大附属T小ですら出てないから、やんなくてもいいです。時間もうないですから、出ない確率の高いものをやるより、頻度の高いものに重点を絞ったほうがいいですよ。あとうちはもうこれでお受験終了なので、O女の過去問とか差し上げますよ」
「お受験終了かあ~。いいなあ~」
「国立はこれからですから。がんばってくださいね」
と里美さん。
S女の場合は大学まであるので、本人さえ望めばあと16年間も同じ学校に通うことになるのだ。すごいよなあ~。ここでがんばったことによって、中学受験も高校受験も大学受験もしなくていいのだ。
ほんと、この年でがんばらせた甲斐もあろうというものだ。
なんでも人気校の倍率は5倍ほどになるらしいし、日程が重なるところが多いらしいので、その調整には苦労させられるらしい。
そんな中、娘と同じバレエ教室の詩音ちゃん(仮名)ママである里美さん(仮名)からメールが届いた。
「どうなることやらと思いましたが、S女、合格しました!」
といううれしい内容だった。
里美さんも2回ほど銀座の先生のところに行っていて、詩音ちゃんのお受験のことも見てもらっている。
なんでも詩音ちゃんが行きたいと自分で選んだところがいいらしく、私立の女子校でカソリック系で射撃だとかアチェリーらしきクラブがあるところで、制服の襟に特徴のあるところだと予言されていたらしい。
S女は詩音ちゃんがホームページを見て制服が気に入り、どうしてもここに行きたいと言い張ったそうだ。
ただS女は人気もあるしペーパーも難しいので、塾に通い準備もいろいろしたようだ。すっかり受験問題に詳しくなった里美さんが娘たちのバレエの待ち時間の間、いろいろと問題の解き方とか教え方のコツとかその他のお受験情報を教えてくれて、ひたすらそんな話ばかりしていたから、傍から見れば私たちはさぞかしお受験話ばかりしている教育ママゴンに映ったことだろう。
さっそく「合格おめでとう!」の電話を入れると、
「やはり銀座の先生の言うことは当たってましたよ」
とうれしそうな里美さん。
「S女って制服の襟に特徴あるの?」
「そうなんです。襟を見ればすぐわかりますよ。カソリックだし。でもね、射撃だとかアーチェリークラブはないんですけどね。まあ、本人が希望した学校だし、半分当たって半分ハズれたというところですかね。けどうちも合格しましたから、だいじょうぶ、Aちゃん(←うちの娘)もあとはT大附属T小か、O女のどちらか合格しますよ。どっちかといえばAちゃんはO女が良さそうですけど。Aちゃんの場合、半分ハズしたのは学校名だけだと思いますよ」
「だといいんだけどね~。でもブロックの問題が全然できないんだよね」
と私。
娘の解けないブロックの問題というのは図面上にブロックが積み上げられていて、矢印から見た方向から見える形を書けというものだ。情けないことに実は私も苦手だ。
「ああ~、あれですね。コツはちゃんとあるんですけどね。でもブロックは国立じゃ出ないですよ。過去10年T大附属T小ですら出てないから、やんなくてもいいです。時間もうないですから、出ない確率の高いものをやるより、頻度の高いものに重点を絞ったほうがいいですよ。あとうちはもうこれでお受験終了なので、O女の過去問とか差し上げますよ」
「お受験終了かあ~。いいなあ~」
「国立はこれからですから。がんばってくださいね」
と里美さん。
S女の場合は大学まであるので、本人さえ望めばあと16年間も同じ学校に通うことになるのだ。すごいよなあ~。ここでがんばったことによって、中学受験も高校受験も大学受験もしなくていいのだ。
ほんと、この年でがんばらせた甲斐もあろうというものだ。
2010年6月10日木曜日
T大附属T小学校 一次書類提出と許永中
たいがいの国立小の願書は学校まで行って出すというのが基本だが、唯一の例外がT大附属T小学校で、一次書類に限っていえば郵送での受付になる。
期間は5日間。その他の特徴は他の国立小の一次書類が受験者の名前と住所電話番号を書けばいいぐらいなものなのに対して、T大附属T小学校は志望理由と学校までの通学経路まで書かなくてはいけない。
中でも時間を割かれたのが最寄り駅までの地図というもので、日ごろ地図を手書きすることはないので、何度も下書きを繰り返した。
まったくこんなのって合格してからでいいじゃんという気分になる。
志望理由については、学校説明会がないので1000円で買わされた学校案内を片手にひねり出すしかない。
なんとかそれらしきことを書いてやっとのことで一次書類を書き上げ、提出日の1日目で郵便局から送る。もちろん配達記録つきで、だ。
それとこれとは関係ないが、このごろ私を悩ませているものが咳だ。
私だけでなく娘もずっと咳をしていて、いきつけの近所の小児科で咳止めや抗生物質をもらって二人揃って飲んでいるのだがまったく効かない。
熱はないので風邪というわけでもなさそうだが、O女附属小でせっかくクジに通っても風邪を引いたり咳き込んだりする外部受験生はアウトだという(内部進学組はインフルエンザに罹っても這ってでも来いと言われてるらしいが)ので、親子できっちりO女の受験が始まるまでに治しておかないといけない。
実際娘も苦しそうだし、私も仕事に支障をきたす。
そこで医者を替えてみることにし、呼吸器を看板に出している個人クリニックに行ってみた。そこは珍しく土曜日の午後も診察をおこなっているところで、路地から一本奥に入った目立たない場所にあった。
しかし中に入ると患者がいっぱいいてみんな咳き込んでいるので、待っているだけでいろんなウィルスにやられそうな場所であった。
なんと3時間も待たされてようやく診察室に通されると、そこで待っていたのは満面の笑みを浮かべた許永中に無理やり黒髪のかつらを被せたかのような怪しいオッサンであった。
「おやおや、今日はどうされましたかな?」とにこやかに話しかけてくる許永中。
なんだか怖すぎる! しまった、別のところにしとけばよかったぜと怪しすぎる許永中を見て軽く後悔するが、こうなったら仕方ない。
症状を説明して、「もしかしたら肺結核とか、肺がんなんてことはないですよね?」と内心ものすごく心配していたことを打ち明けると、
「おほほほ。だいじょうぶですよ。肺結核とか肺がんになると痩せてきますから、あなたは全然痩せてないから心配ないですよ」
とすべての表情筋を総動員させて意識的に作っているかのような満面の笑みを浮かべながら、失礼なことを言う許永中。
悪かったよな。痩せてなくて!
「お嬢さんもだいじょうぶですよ。プリプリしてますから」
と私たち親子の乙女心を木っ端微塵にする許永中。
結局、二人揃って「マイコプラズマ」の疑いがあるということで、漢方薬をどっさり出される。
知らなかったんだけど、「マイコプラズマ」って大人はあまり罹らないものなのらしい。
また許永中の話によると私たちがかかりつけ医からもらっていた抗生物質は良すぎて、自分の免疫力までダメージを受けるのだという。
時間をかけて漢方で治すことというが、O女の一次抽選まで1ヶ月とちょっと。それまでに治してもらわないと困っちゃう。
結局週1で許永中のもとに通うことになり、毎日出された漢方を飲むことになったのだが、あまりの苦さまずさのために卒倒しそうになる。
大人の私ですらあまりのまずさに吐き出しそうになるのだから、まだ6歳の娘にとってはさぞ辛かろうと思いきや、なんだかんだで私よりちゃんと飲んでいる。
「マミィ。まずいお薬ほどちゃんと効くんだって。マミィも文句言わずに飲まなきゃだめよ」
と言いながら健気に薬を飲み干す我が娘。
いいぞ、その意気、その意気。
その気合でこのお受験を乗り切っておくれ!
期間は5日間。その他の特徴は他の国立小の一次書類が受験者の名前と住所電話番号を書けばいいぐらいなものなのに対して、T大附属T小学校は志望理由と学校までの通学経路まで書かなくてはいけない。
中でも時間を割かれたのが最寄り駅までの地図というもので、日ごろ地図を手書きすることはないので、何度も下書きを繰り返した。
まったくこんなのって合格してからでいいじゃんという気分になる。
志望理由については、学校説明会がないので1000円で買わされた学校案内を片手にひねり出すしかない。
なんとかそれらしきことを書いてやっとのことで一次書類を書き上げ、提出日の1日目で郵便局から送る。もちろん配達記録つきで、だ。
それとこれとは関係ないが、このごろ私を悩ませているものが咳だ。
私だけでなく娘もずっと咳をしていて、いきつけの近所の小児科で咳止めや抗生物質をもらって二人揃って飲んでいるのだがまったく効かない。
熱はないので風邪というわけでもなさそうだが、O女附属小でせっかくクジに通っても風邪を引いたり咳き込んだりする外部受験生はアウトだという(内部進学組はインフルエンザに罹っても這ってでも来いと言われてるらしいが)ので、親子できっちりO女の受験が始まるまでに治しておかないといけない。
実際娘も苦しそうだし、私も仕事に支障をきたす。
そこで医者を替えてみることにし、呼吸器を看板に出している個人クリニックに行ってみた。そこは珍しく土曜日の午後も診察をおこなっているところで、路地から一本奥に入った目立たない場所にあった。
しかし中に入ると患者がいっぱいいてみんな咳き込んでいるので、待っているだけでいろんなウィルスにやられそうな場所であった。
なんと3時間も待たされてようやく診察室に通されると、そこで待っていたのは満面の笑みを浮かべた許永中に無理やり黒髪のかつらを被せたかのような怪しいオッサンであった。
「おやおや、今日はどうされましたかな?」とにこやかに話しかけてくる許永中。
なんだか怖すぎる! しまった、別のところにしとけばよかったぜと怪しすぎる許永中を見て軽く後悔するが、こうなったら仕方ない。
症状を説明して、「もしかしたら肺結核とか、肺がんなんてことはないですよね?」と内心ものすごく心配していたことを打ち明けると、
「おほほほ。だいじょうぶですよ。肺結核とか肺がんになると痩せてきますから、あなたは全然痩せてないから心配ないですよ」
とすべての表情筋を総動員させて意識的に作っているかのような満面の笑みを浮かべながら、失礼なことを言う許永中。
悪かったよな。痩せてなくて!
「お嬢さんもだいじょうぶですよ。プリプリしてますから」
と私たち親子の乙女心を木っ端微塵にする許永中。
結局、二人揃って「マイコプラズマ」の疑いがあるということで、漢方薬をどっさり出される。
知らなかったんだけど、「マイコプラズマ」って大人はあまり罹らないものなのらしい。
また許永中の話によると私たちがかかりつけ医からもらっていた抗生物質は良すぎて、自分の免疫力までダメージを受けるのだという。
時間をかけて漢方で治すことというが、O女の一次抽選まで1ヶ月とちょっと。それまでに治してもらわないと困っちゃう。
結局週1で許永中のもとに通うことになり、毎日出された漢方を飲むことになったのだが、あまりの苦さまずさのために卒倒しそうになる。
大人の私ですらあまりのまずさに吐き出しそうになるのだから、まだ6歳の娘にとってはさぞ辛かろうと思いきや、なんだかんだで私よりちゃんと飲んでいる。
「マミィ。まずいお薬ほどちゃんと効くんだって。マミィも文句言わずに飲まなきゃだめよ」
と言いながら健気に薬を飲み干す我が娘。
いいぞ、その意気、その意気。
その気合でこのお受験を乗り切っておくれ!
2010年6月6日日曜日
お受験か、里帰りか?
「そろそろチケット買いたいんだけど、出発日はいつにするの?」
夏ごろから今年のクリスマスは里帰りしたいと言い張る夫。
ハッキリいってそれどころじゃない。
「う~ん」と言葉を濁し、やり過ごしてきたが11月も近くなるとだんだんこの手も使えなくなってくる。
「G大系だったら11月末に結果が出てたんだけど、O女の最終結果が昨年度は12月11日、T大附属T小は12月22日になってるから、それまでは無理でしょ」
「12月22日!? マスト・ビー・ジョーキング!! クリスマスぎりぎりだし、そのころはチケット高いよ! 少なくても12月18日以前に出発しないとね」
「12月18日なんて、お受験以前に私の会社的に無理だよ!」
「じゃあ、いつからにする?」
「だ・か・ら、お受験が終わってからだって!」
「だ・か・ら、それはいつわかる?」
「だ・か・ら、抽選しだいだよ! T大附属は11月17日、O女は12月8日が抽選日だからそこでお受験が終わるか、その続きがあるかはわかんないよ。ただ一番日程的に引っ張るのはT大附属だから、11月17日次第かな」
「抽選通りそうなの?」
「そんなのわかんないよ。今のところ全敗だけど、T大附属は半分抽選で通るから」
「ミーも美央もクジ運ないからね。わかった、じゃあ、ミーと子どもたちの分だけチケット先に買うから、美央は自分の分は自分で買って」
あ~、めんどくさい。
そもそも冬のイギリスなんて最悪じゃないか。寒いし、暗いし、雨ばっかり降ってるし、陰気だし、食べ物はまずい(←これは年中)し、イギリスなんて嫌いだ。
しかも日ごろの生活費は夫のお金、貯金とレジャーと旅行は私のお金という役割分担になっている我が家のお財布事情からすると、里帰り費用は当然私の負担になる。
前回だって年2回のボーナス分がきっちり飛んでいってしまった。
「ねえ、イギリス以外どこも行かないの?」
貧乏性の私はせっかくヨーロッパまで飛ぶならもう一箇所ぐらいどこか行きたいものだぜということで、毎回必ず別の国もセットして行くようにしている。
前回はイギリスの他にスペインとオランダにいる友だちのところにも立ち寄った。
「今回はお金がないからだめっ!」
そう夫の会社が買収された折に、今まで払わずに済んでいた社会保険料も徴収されることになったため、手取りが減った我が家の財政。
「お金がないなら、そもそもイギリスなんて帰らなきゃいいじゃん!」
「ミーは3年も帰ってないんだよ。ひどすぎる。じゃあ美央はもしイギリスに住んでて3年も日本に帰れなかったらどう思う?」
「実際イギリスに住んでないからわかんないよ。そもそも日本といっしょにしないでよっ。イギリスなんて寒いし、天気悪いし、食べ物まずいし、お風呂は使いづらいし、物価は高いし、最悪っ! せめて違う国とかに行けなきゃ、お金を出す身にしてみればモチベーションが上がらないっちゅうの!」
「ひどいっ! イギリスの悪口を言うな。日本だって総理大臣はコロコロ変わるし、東京都知事は狂ってるし、外国嫌いの島国のくせに」
「島国はイギリスもいっしょだろ。それに今回の話と東京都知事が狂っているというのはまったく異次元の話でしょ」
「いや、同じだねっ!」
と話がどんどんわけのわからない方向にねじれていく私たち。
「とにかくどっか連れてってくれないなら、イギリスなんて行かないからねっ!」
「それを言うなら、そもそもお受験なんかしなくてもよかったんだ。近くに公立の小学校があるんだから」
「今さらそんなこと言わないでよ!」
ああ、お受験か、里帰りか。
我が家は大揺れなのである。
夏ごろから今年のクリスマスは里帰りしたいと言い張る夫。
ハッキリいってそれどころじゃない。
「う~ん」と言葉を濁し、やり過ごしてきたが11月も近くなるとだんだんこの手も使えなくなってくる。
「G大系だったら11月末に結果が出てたんだけど、O女の最終結果が昨年度は12月11日、T大附属T小は12月22日になってるから、それまでは無理でしょ」
「12月22日!? マスト・ビー・ジョーキング!! クリスマスぎりぎりだし、そのころはチケット高いよ! 少なくても12月18日以前に出発しないとね」
「12月18日なんて、お受験以前に私の会社的に無理だよ!」
「じゃあ、いつからにする?」
「だ・か・ら、お受験が終わってからだって!」
「だ・か・ら、それはいつわかる?」
「だ・か・ら、抽選しだいだよ! T大附属は11月17日、O女は12月8日が抽選日だからそこでお受験が終わるか、その続きがあるかはわかんないよ。ただ一番日程的に引っ張るのはT大附属だから、11月17日次第かな」
「抽選通りそうなの?」
「そんなのわかんないよ。今のところ全敗だけど、T大附属は半分抽選で通るから」
「ミーも美央もクジ運ないからね。わかった、じゃあ、ミーと子どもたちの分だけチケット先に買うから、美央は自分の分は自分で買って」
あ~、めんどくさい。
そもそも冬のイギリスなんて最悪じゃないか。寒いし、暗いし、雨ばっかり降ってるし、陰気だし、食べ物はまずい(←これは年中)し、イギリスなんて嫌いだ。
しかも日ごろの生活費は夫のお金、貯金とレジャーと旅行は私のお金という役割分担になっている我が家のお財布事情からすると、里帰り費用は当然私の負担になる。
前回だって年2回のボーナス分がきっちり飛んでいってしまった。
「ねえ、イギリス以外どこも行かないの?」
貧乏性の私はせっかくヨーロッパまで飛ぶならもう一箇所ぐらいどこか行きたいものだぜということで、毎回必ず別の国もセットして行くようにしている。
前回はイギリスの他にスペインとオランダにいる友だちのところにも立ち寄った。
「今回はお金がないからだめっ!」
そう夫の会社が買収された折に、今まで払わずに済んでいた社会保険料も徴収されることになったため、手取りが減った我が家の財政。
「お金がないなら、そもそもイギリスなんて帰らなきゃいいじゃん!」
「ミーは3年も帰ってないんだよ。ひどすぎる。じゃあ美央はもしイギリスに住んでて3年も日本に帰れなかったらどう思う?」
「実際イギリスに住んでないからわかんないよ。そもそも日本といっしょにしないでよっ。イギリスなんて寒いし、天気悪いし、食べ物まずいし、お風呂は使いづらいし、物価は高いし、最悪っ! せめて違う国とかに行けなきゃ、お金を出す身にしてみればモチベーションが上がらないっちゅうの!」
「ひどいっ! イギリスの悪口を言うな。日本だって総理大臣はコロコロ変わるし、東京都知事は狂ってるし、外国嫌いの島国のくせに」
「島国はイギリスもいっしょだろ。それに今回の話と東京都知事が狂っているというのはまったく異次元の話でしょ」
「いや、同じだねっ!」
と話がどんどんわけのわからない方向にねじれていく私たち。
「とにかくどっか連れてってくれないなら、イギリスなんて行かないからねっ!」
「それを言うなら、そもそもお受験なんかしなくてもよかったんだ。近くに公立の小学校があるんだから」
「今さらそんなこと言わないでよ!」
ああ、お受験か、里帰りか。
我が家は大揺れなのである。
2010年6月3日木曜日
由美子さん(仮名)の憂鬱
G大附属O小の抽選に通った挙句に落ち込んでいる由美子さん。
どうやら国立小学校を4校受ければ1校は必ず抽選に通ると言われていることを間に受けて、ここで運を使い果たしてしまったと思っているのだ。
実際は4校受けて全部はずれる人もいるだろうし、1校といわず2校、3校と抽選に通る人もいるだろうけど、由美子さんはなぜか1人1校しか通らないと思い込んでいるのだ。
「あ~あ、もう終わったね・・・」
すっかり自暴自棄気味の由美子さん。
「そんなこと言ってるけど、運の量は決まってるわけじゃないんだから!」
「いや、決まってるねっ!」
あくまでも譲らない。
「取り合えず2次試験の受付に行こうかと思うんだけど・・・」
「いいよ。行っておいでよ。雪美ちゃん(仮名)いっしょにうちの子とみてるから」
という私の言葉を待っていたかのように、そそくさと受付に向かう由美子さん。
校庭を見渡すと相変わらず楽しそうに子どもたちが走り回っている。
「あれ? 雪美ちゃんママは?」と聞く夫。事情を話すと、
「ここ、落ちてよかったよ。遠すぎだよ」と言う。
「でもいい学校らしいよ。まあ難点は中学まで半分しか行けないこと。女の子はオカッパ頭にしないといけないことだけど」
「いい学校でも毎日通えないよ。どうせ送り迎えはミーの仕事でしょっ!」
「その通り」
などと話していると、遠くから「マミーっ!!」と娘の叫ぶ声が!
慌てて私と夫が駆け寄ると、「L(←息子)がゲロ吐いた!」と言うではないか!
校庭にしっかりとランチで食べたラーメンをリバースしている我が息子。
どうやらはしゃぎすぎてゲロを吐いたらしい。吐いたところで息子はケロッとしてニコニコしている。
ここが人口芝の校庭じゃなくてよかった。
こっそり足で砂を蹴り、少しでも息子のゲロの痕跡を消そうとする私たち。
「来年、自分の番が来たときのための彼なりのマーキング行為だったりして」
「勘弁してよ~!」
と話しているうちに由美子さんが戻ってきた。
相変わらず青ざめた顔をしている。
駅に向かう途中もずーっと暗い由美子さん。
そこで向かいからなんとお受験スーツに身を包んだ果歩ちゃん(仮名)ママこと宮本さん(仮名)が歩いてくるではないかっ!
彼女も私に気づき、軽く会釈して通り過ぎていった。
この場所であの格好をしているというのは、どう考えても彼女も抽選帰りだろう。ニコニコしていたから、抽選に受かっていたかもしれない。
「美央さんの知り合い?」と聞いてくる由美子さん。
「まあね」と歯切れの悪い私。
宮本さんは育児休暇中、毎日通っていた児童館でよくいっしょになった人で、娘の果歩ちゃんはうちの娘と同い年。バリバリの専業主婦だ。
きっと悪い人じゃないんだろうけど、ハッキリいって苦手なタイプだ。
小中学生だった9年もの間、私の「敵」(←一方的かもしれないけどな)として不動の地位を築いていた神谷利恵(仮名)を思い出させるタイプなのだ。
でも宮本さんを苦手だと思っているのは私だけではないらしく、仲のいいママ友たちはたいてい彼女が苦手だと言っていたし、泰子(仮名)なんかも事あるごとに彼女の悪口を言っている。
たとえば・・・
「果歩ちゃん、S(←お受験教室)に行ってるらしいけど、成績悪いらしいよ。あとね、いろいろと補習とか受けてるらしいけど、お金も続かなくなったんだって。まったくぅ、貧乏人はお受験なんかするなっちゅうの!」
という具合だ。
・・・・まあ、泰子にかかれば、我が家もとてもじゃないがお受験なんてできませんな。
「あ~あ、いいなあ~。美央さんのところはチャンスがあって」
相変わらずブツブツ言っている由美子さん。
我が家でお茶しながらの会話だ。
「Aちゃん(←娘)はO女で決まりだねっ!」
と決め付ける由美子さん。
「なんでよ? だったらうれしいけど、抽選すごいじゃん、倍率」
「だってAちゃん、O女の雰囲気に合ってるよ。あ~あ、いいなあ~」
「だから! 他でも抽選当たるって!」
まったく、なんで落ちたうちが、受かった人をこんなに慰め続けなくてはいけないのか? 世の中って不条理だ。
どうやら国立小学校を4校受ければ1校は必ず抽選に通ると言われていることを間に受けて、ここで運を使い果たしてしまったと思っているのだ。
実際は4校受けて全部はずれる人もいるだろうし、1校といわず2校、3校と抽選に通る人もいるだろうけど、由美子さんはなぜか1人1校しか通らないと思い込んでいるのだ。
「あ~あ、もう終わったね・・・」
すっかり自暴自棄気味の由美子さん。
「そんなこと言ってるけど、運の量は決まってるわけじゃないんだから!」
「いや、決まってるねっ!」
あくまでも譲らない。
「取り合えず2次試験の受付に行こうかと思うんだけど・・・」
「いいよ。行っておいでよ。雪美ちゃん(仮名)いっしょにうちの子とみてるから」
という私の言葉を待っていたかのように、そそくさと受付に向かう由美子さん。
校庭を見渡すと相変わらず楽しそうに子どもたちが走り回っている。
「あれ? 雪美ちゃんママは?」と聞く夫。事情を話すと、
「ここ、落ちてよかったよ。遠すぎだよ」と言う。
「でもいい学校らしいよ。まあ難点は中学まで半分しか行けないこと。女の子はオカッパ頭にしないといけないことだけど」
「いい学校でも毎日通えないよ。どうせ送り迎えはミーの仕事でしょっ!」
「その通り」
などと話していると、遠くから「マミーっ!!」と娘の叫ぶ声が!
慌てて私と夫が駆け寄ると、「L(←息子)がゲロ吐いた!」と言うではないか!
校庭にしっかりとランチで食べたラーメンをリバースしている我が息子。
どうやらはしゃぎすぎてゲロを吐いたらしい。吐いたところで息子はケロッとしてニコニコしている。
ここが人口芝の校庭じゃなくてよかった。
こっそり足で砂を蹴り、少しでも息子のゲロの痕跡を消そうとする私たち。
「来年、自分の番が来たときのための彼なりのマーキング行為だったりして」
「勘弁してよ~!」
と話しているうちに由美子さんが戻ってきた。
相変わらず青ざめた顔をしている。
駅に向かう途中もずーっと暗い由美子さん。
そこで向かいからなんとお受験スーツに身を包んだ果歩ちゃん(仮名)ママこと宮本さん(仮名)が歩いてくるではないかっ!
彼女も私に気づき、軽く会釈して通り過ぎていった。
この場所であの格好をしているというのは、どう考えても彼女も抽選帰りだろう。ニコニコしていたから、抽選に受かっていたかもしれない。
「美央さんの知り合い?」と聞いてくる由美子さん。
「まあね」と歯切れの悪い私。
宮本さんは育児休暇中、毎日通っていた児童館でよくいっしょになった人で、娘の果歩ちゃんはうちの娘と同い年。バリバリの専業主婦だ。
きっと悪い人じゃないんだろうけど、ハッキリいって苦手なタイプだ。
小中学生だった9年もの間、私の「敵」(←一方的かもしれないけどな)として不動の地位を築いていた神谷利恵(仮名)を思い出させるタイプなのだ。
でも宮本さんを苦手だと思っているのは私だけではないらしく、仲のいいママ友たちはたいてい彼女が苦手だと言っていたし、泰子(仮名)なんかも事あるごとに彼女の悪口を言っている。
たとえば・・・
「果歩ちゃん、S(←お受験教室)に行ってるらしいけど、成績悪いらしいよ。あとね、いろいろと補習とか受けてるらしいけど、お金も続かなくなったんだって。まったくぅ、貧乏人はお受験なんかするなっちゅうの!」
という具合だ。
・・・・まあ、泰子にかかれば、我が家もとてもじゃないがお受験なんてできませんな。
「あ~あ、いいなあ~。美央さんのところはチャンスがあって」
相変わらずブツブツ言っている由美子さん。
我が家でお茶しながらの会話だ。
「Aちゃん(←娘)はO女で決まりだねっ!」
と決め付ける由美子さん。
「なんでよ? だったらうれしいけど、抽選すごいじゃん、倍率」
「だってAちゃん、O女の雰囲気に合ってるよ。あ~あ、いいなあ~」
「だから! 他でも抽選当たるって!」
まったく、なんで落ちたうちが、受かった人をこんなに慰め続けなくてはいけないのか? 世の中って不条理だ。
2010年6月2日水曜日
G大附属O小一次抽選!
G大附属O小の一次抽選日は、立木さんと番号をもらいに行った週の日曜日午後から女子の部は行われた。
この学校は同じ系列のT小と同様に誕生日別にグループが分かれていないので、午前は男子、午後は女子という具合に進んでいく。
すでに午前中に抽選に行ったみっちゃん(仮名)からメールが来ていて、「陽太(仮名)は残念ながらハズレです。美央さんと由美子さん(仮名)のところは当たるといいね。がんばれ」と、これまた先週のG大附属T小の再来を思わせるメール内容だ。
この日は薄曇の肌寒い日で、場所を夫にも把握してもらいたいので、我が家は全員で行くことにし、由美子さんと雪美ちゃん(仮名)と駅で待ち合わせた。
私は一応ジャケットを羽織って行ったのだが(←お受験スーツはまだ買っていない)、なんといつもお受験スーツでばっちりキメている由美子さんが超カジュアルじゃないか!
「おっ、美央さん、ばっちりだね」
と会った瞬間言う由美子さん。
「うふふ、今日はハッキリ言ってどうでもいいんだぁ。ここって中学に半分しか進めないし、本命はなんといってもT大附属T小だから、こんなところで運を使い果たしたくないんだ」
ほお~、そういうもんかね?
うちの娘は雪美ちゃんとお出かけできるということで、なんだかうれしそうだ。息子も元々活発な雪美ちゃんと気が合うらしく、学年が違ってもよく保育園でいっしょに遊んでいるらしい。
子どもたちには目的は告げていない。ただ「雪美ちゃんと出かけるよ」と伝えたのみだ。
最寄り駅の改札を出ると、やはり業者がずらりと待ち構えている。もちろんお受験スーツの保護者たちの軍団も学校に向かっている。
こういう光景を初めて目にする夫は、「あははは」と乾いた笑い声を上げる。
さぞかし外国人の夫からすれば異様な光景に映ったことだろう。日本人の私ですら初めのころは、思わず笑っちゃっていたが、恐ろしいことにこういうことは慣れるのである。
「勉強始めてる?」と由美子さん。
「うん。けどやっぱり遅かったのかな。思ったとおりに進まないというか、なんというか」
「コツがつかめるまでちょっと時間がかかるもんなのよね。とにかく同じ問題は3回以上やらないと定着しないから、毎日根気よく続けるしかないね」
「はあ~」
そうこうしているうちにG大附属O小に到着。
夫はブツブツと「ここ、遠いよ」と文句を言っている。
そんな夫の不満を軽く無視し、子どもたちを夫に任せ、会場になっている体育館に向かう私と由美子さん。
子どもたちは広い校庭を走り回っていて楽しそうだ。
会場に入るとすでに人。人。人だ。
ここの抽選は立会い人が何人か見ているところで、1ケタの数字を引いて行くというもの。0から9までの数字のうち6つの数字が選ばれる。ってことは勝率6割なわけだ。
意外と高確率。T大附属T小も5割以上は一次抽選で通るというから、ペーパーテストがあるところは一次抽選で通る可能性が高いので、テストで落とされないように勉強をがんばるしかないということだ。
今回の私の番号は「252」番。2番という数字が来れば一次抽選突破だ。
対する由美子さんの番号は589番。
「当選された方はその場で黙ってお待ちください。運悪くはずれた方々へのご配慮をお願いします」
とアナウンスが入る。そうよねえ~。ここではしゃがれてもムカつくよね。
静寂の中、次々と番号が呼ばれデカデカと貼り出されていく。
いつまで経っても2番も9番も来ない。
「ふふ、当たんないね。まあここはどうでも良かったから。でも美央さんのところは当たってるといいね」
とここにきてもやる気なさげな由美子さん。
ついに最後の番号が呼ばれる。
やっぱ2番、来ないのかな。あ~あ、やっぱりクジ運のない私。
「最後は9番です!」
その瞬間、固まった由美子さん。
「これいらないっ! 美央さんにあげるから!」
と咄嗟に口に出す由美子さん。おいおい、あげるって言われてもどうしようもないって!
「おめでとう。良かったじゃん」
と言う私に、「良くない! 全然良くないっ!」と息巻く由美子さん。
「あ~あ、終わっちゃったよ」という由美子さんは泣き出しそうな顔をしている。
おいおい、受かっておいて何言ってやがるというやつだ。
ここを第一希望にしていてそれでも抽選はずれた保護者から、刺されるよ、あんた。
この学校は同じ系列のT小と同様に誕生日別にグループが分かれていないので、午前は男子、午後は女子という具合に進んでいく。
すでに午前中に抽選に行ったみっちゃん(仮名)からメールが来ていて、「陽太(仮名)は残念ながらハズレです。美央さんと由美子さん(仮名)のところは当たるといいね。がんばれ」と、これまた先週のG大附属T小の再来を思わせるメール内容だ。
この日は薄曇の肌寒い日で、場所を夫にも把握してもらいたいので、我が家は全員で行くことにし、由美子さんと雪美ちゃん(仮名)と駅で待ち合わせた。
私は一応ジャケットを羽織って行ったのだが(←お受験スーツはまだ買っていない)、なんといつもお受験スーツでばっちりキメている由美子さんが超カジュアルじゃないか!
「おっ、美央さん、ばっちりだね」
と会った瞬間言う由美子さん。
「うふふ、今日はハッキリ言ってどうでもいいんだぁ。ここって中学に半分しか進めないし、本命はなんといってもT大附属T小だから、こんなところで運を使い果たしたくないんだ」
ほお~、そういうもんかね?
うちの娘は雪美ちゃんとお出かけできるということで、なんだかうれしそうだ。息子も元々活発な雪美ちゃんと気が合うらしく、学年が違ってもよく保育園でいっしょに遊んでいるらしい。
子どもたちには目的は告げていない。ただ「雪美ちゃんと出かけるよ」と伝えたのみだ。
最寄り駅の改札を出ると、やはり業者がずらりと待ち構えている。もちろんお受験スーツの保護者たちの軍団も学校に向かっている。
こういう光景を初めて目にする夫は、「あははは」と乾いた笑い声を上げる。
さぞかし外国人の夫からすれば異様な光景に映ったことだろう。日本人の私ですら初めのころは、思わず笑っちゃっていたが、恐ろしいことにこういうことは慣れるのである。
「勉強始めてる?」と由美子さん。
「うん。けどやっぱり遅かったのかな。思ったとおりに進まないというか、なんというか」
「コツがつかめるまでちょっと時間がかかるもんなのよね。とにかく同じ問題は3回以上やらないと定着しないから、毎日根気よく続けるしかないね」
「はあ~」
そうこうしているうちにG大附属O小に到着。
夫はブツブツと「ここ、遠いよ」と文句を言っている。
そんな夫の不満を軽く無視し、子どもたちを夫に任せ、会場になっている体育館に向かう私と由美子さん。
子どもたちは広い校庭を走り回っていて楽しそうだ。
会場に入るとすでに人。人。人だ。
ここの抽選は立会い人が何人か見ているところで、1ケタの数字を引いて行くというもの。0から9までの数字のうち6つの数字が選ばれる。ってことは勝率6割なわけだ。
意外と高確率。T大附属T小も5割以上は一次抽選で通るというから、ペーパーテストがあるところは一次抽選で通る可能性が高いので、テストで落とされないように勉強をがんばるしかないということだ。
今回の私の番号は「252」番。2番という数字が来れば一次抽選突破だ。
対する由美子さんの番号は589番。
「当選された方はその場で黙ってお待ちください。運悪くはずれた方々へのご配慮をお願いします」
とアナウンスが入る。そうよねえ~。ここではしゃがれてもムカつくよね。
静寂の中、次々と番号が呼ばれデカデカと貼り出されていく。
いつまで経っても2番も9番も来ない。
「ふふ、当たんないね。まあここはどうでも良かったから。でも美央さんのところは当たってるといいね」
とここにきてもやる気なさげな由美子さん。
ついに最後の番号が呼ばれる。
やっぱ2番、来ないのかな。あ~あ、やっぱりクジ運のない私。
「最後は9番です!」
その瞬間、固まった由美子さん。
「これいらないっ! 美央さんにあげるから!」
と咄嗟に口に出す由美子さん。おいおい、あげるって言われてもどうしようもないって!
「おめでとう。良かったじゃん」
と言う私に、「良くない! 全然良くないっ!」と息巻く由美子さん。
「あ~あ、終わっちゃったよ」という由美子さんは泣き出しそうな顔をしている。
おいおい、受かっておいて何言ってやがるというやつだ。
ここを第一希望にしていてそれでも抽選はずれた保護者から、刺されるよ、あんた。
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