大樹くん(仮名)ママにコテンパン(←古臭い表現だな)にやられた翌日はバレエの日であった。
娘と息子をレッスン場に送り届け、待合室に行くと里美さんが一足先に来ていてちょこんと座っていた。
「S女、合格おめでとう。良かったね」
と声をかけると、
「次はAちゃん(←娘)の番ですよ。そうそう、これO女の問題集です。うちはもう使わないので差し上げますよ」
とほとんど使われた形跡のない問題集を気前よくくれる里美さん。
あれこれS女の試験の話や合格発表までの心境などの話をしたあとに、昨夜の大樹くんママから言われた話をする。
徐々に眉間に皺を寄せていく里美さん。あれ? 里美さんってこんなに気難しい顔をする人だったっけ?
ひととおり話し終わると、
「それはですね。間違っていますっ!」
と断言する里美さん。
ええっ!? 間違ってるの?
「いいですか! そんなこと言い出したらどこだってその小学校が子どもに合わないリスクはあるのです! それは公立小とて同じこと。万が一、国立小が合わなければそのときは辞めて公立に行けばいいのです。けど公立小で合わなければどうなりますか? 引っ越しますか? 国立であればまだ選択肢はあるのです! 国立から公立に行くことはできますが、公立から国立には行けないのです。それは私立も同じです。それはなぜですか? 国立や私立はお受験を経て入学が許されますけど、公立は誰もが入学を許されるからです」
「そして親が希望して入れた学校でもし子どもが合わなかったとしても、それはそれで仕方がないと納得いきます。けど希望ではないところで合わなかったら? それこそ救われないでしょう? どこの小学校でも必ず嫌なところはあるはずです。けど希望して行ったところと希望ではないところで遭遇する嫌なことは、受け止める側の心理も違ってきます」
「あと子どもは柔軟です。この年代の子どもたちに合う合わないという基準は誰が決めるのですか? 子どもは環境によって変わっていきます。そのお友だちのお母さんが言っていた国立小学校に合わなくて苦しんだという子どもたちは、まあ、そもそもそんなに何人も合わずに苦しむ子どもたちを知っているというのも不自然な感じはしますが、それは置いといて。そもそもその子どもたちは公立でも合わなくて苦しんだはずなんです。だってそうでしょう? 国立で合わない子が公立に行ったら合うんですか?」
さあ? それはどうなんでしょうねえ・・・。
「さあ、美央さん。しっかりして! 私立受験はあらかた終わってますから、あとは国立受験あるのみですよ。そんな戯言に惑わされたらダメです。さあ、そんなことより図形にお話の記憶に制作に熊歩きです。T大附属とO女がまだ残っているんですから、がんばって!」
・・・・・っ!
すごいぞ。里美さん! さすが娘を超難関人気校S女に入れただけあって気合が違うぞ!
ああ~、里美さんと大樹くんママの直接対決を見てみたい。すごいだろうなあ。
お受験派と非お受験派のガチンコ勝負。どっちが勝つのかしら?
ああ~、どっちにしてもすごい。ポリシーあるわぁ~。あっぱれだわ~。
「そうよねえ? そうよねえ? 国立めざしたっていいのよね? 私」
「そうです! さあ、ここは踏ん張り時ですよ!」
「がんばるわ、私」
「その意気です」
またしてもフラフラと揺れる筋なし骨なしの私なのであった。すまんな。娘よ。
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