公立の選択希望書類の提出日も過ぎてしまったある土曜日の午後は子どもたちの保育園でバザーがあり、バザーを仕切った年中さんのクラスの保護者たちと打ち上げをすることになった。
こういう飲み会をする場合、たいてい2次会の会場は我が家になる。
周りがオフィス街で階下の住人もいない我が家は多少騒いでもだいじょうぶなので、子どもたちがドタドタ走り回るこういった場にはうってつけなのだ。
うちの息子は年中クラスなのでこのクラスの保護者たちは当然息子の同級生の親たちになるのだが、2次会で出た話題はすでに「小学校をどうするか?」というもので、来年入学を控えている我が家は当然のように、「おたくはどうしたの?」と質問攻めにされた。
やはり関心が高いのが区立のM小学校にしたのか、MG小学校にしたのかというもので、うちは隣接校選択の申請書を出し損ねていてまあ何せ近いので自動的にM小学校にしたという話をすると、もう出るわ出るわ、いかにM小学校はいじめが横行していて荒れているかという話や、MG小学校では先生のうつ病発生率が高くて行っている塾によって派閥ができているという話や、もうどちらにしても散々である。
「Aちゃん(←うちの娘)は受験しないの?」と当然のように出る質問。
「一応、クジは引きに行くけど」
と正直に答える私。
「じゃあ準備とかしてるの? 塾に行ったりとか?」
という質問に対して、
「塾には行ってないけど、一応勉強は最近始めたよ」
とバカ正直に答えるバカな私。こういうことは黙っとけよな。まったく。
「へえ~、勉強ってどんなことするの?」
よせばいいのに買ってきた過去問とかばっちりくんドリル基礎編とか見せる私。
「へえ~、お話の記憶とか図形とか出るんだ。難しそうだね」
「そうそう、特にT大附属T小は難問ぞろいなの。たとえばね、お話の記憶ひとつとってもG大附属O小の問題なんかと比べるとね・・・・」
泰子(仮名)や由美子さん(仮名)やみっちゃん(仮名)からの受け売りを余すことなく得意げに鼻の穴を全開に膨らませ語る私。
ほんと、こういうのって受かってからエラそうに言えっちゅうねん、と自分に突っ込む。
「へえ~、すごいのね。いろいろと」
などと大半のお母様がたが感心した様子を見せている中、
「ちょっと待った!」の声がかかる。
声の主は大樹くん(仮名)ママだ。
大樹くんは息子のクラスで一番仲のいい友だちで、いつもつるんだりケンカしたりしている。
大樹くんママとはわりと年も近くさっぱりとした性格でお互い酒好きなので、会えば親しく接している。
大樹くんには中学生のお姉ちゃんがいて、MG小学校出身だ。何かとセレブ感溢れる(←公立にしては・・)MG小学校だが、唯一大樹くんママはことあるごとにMG小学校の庶民的な部分をアピールし、巷でよく囁かれている“MG小学校・中学受験でみんなギスギス説”を、
「そんなことないって。MG小学校って普通だって。そんな100%の人が受験するなんてあるわけないじゃないのっ。もう昭和の香りのする(←どんな匂いだ!?)いい小学校よぉ」
と全否定するのであった。
そのある意味、MG小学校原理主義者である大樹くんママが「ちょっと待った!」をかけたのである。
「なんで公立じゃダメなわけ?」
結構飲んでいるせいか大樹くんママの目が据わっている。
う、なんとストレートな質問。頭の中でアラームが鳴る。
この場にいる人たちが来年受験するかどうかわからないけど、間違いなくこの場で公立小学校を否定するようなことは言わないほうが無難だろう。
「国立ってそんなにいいもんでもないよ」
とさらにほとんどの人が疑ってみたこともない「国立=受かったら絶対にラッキー」だとか「国立=なんだかすごそうで、なんだかとっても良さそう」という前提をあっけなく覆してみせる大樹くんママ。
絶対にこの場にいたママ連中たちの心に大きな波紋を広げたに違いない。
「それにね、知り合いで何人も国立に行っているうちの人がいるけど、その学校に合わなかったらそれは悲惨よぉ。何人もそれで苦しんだ子どもたちを実際に私は知ってるんだから」
何? 知り合いでそんなに何人も国立に行ってる人がいるのか!? それはそれですごいではないか!
「なんのために国立受験をさせるのか、なぜ公立じゃないとだめかってちゃんと親がしっかり考えなきゃ。抽選に受かればラッキーだなんて、安易に考えちゃだめよぉ」
うーん。耳が痛いぞ。「抽選に受かればラッキー」どころか、うちの場合「占い師の口車に乗せられて」だもんね。
って、もっとだめじゃん!
「なんのために国立受験をさせるのか?」
根本的なことを問われてしどろもどろな私。
お受験派もお受験しない派もそれぞれポリシーがしっかりあるというのに、ああ言われちゃフラフラ、こう言われりゃあフラフラのダメぶりを白日の下に晒された夜なのであった。
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