G大附属O小の抽選に通った挙句に落ち込んでいる由美子さん。
どうやら国立小学校を4校受ければ1校は必ず抽選に通ると言われていることを間に受けて、ここで運を使い果たしてしまったと思っているのだ。
実際は4校受けて全部はずれる人もいるだろうし、1校といわず2校、3校と抽選に通る人もいるだろうけど、由美子さんはなぜか1人1校しか通らないと思い込んでいるのだ。
「あ~あ、もう終わったね・・・」
すっかり自暴自棄気味の由美子さん。
「そんなこと言ってるけど、運の量は決まってるわけじゃないんだから!」
「いや、決まってるねっ!」
あくまでも譲らない。
「取り合えず2次試験の受付に行こうかと思うんだけど・・・」
「いいよ。行っておいでよ。雪美ちゃん(仮名)いっしょにうちの子とみてるから」
という私の言葉を待っていたかのように、そそくさと受付に向かう由美子さん。
校庭を見渡すと相変わらず楽しそうに子どもたちが走り回っている。
「あれ? 雪美ちゃんママは?」と聞く夫。事情を話すと、
「ここ、落ちてよかったよ。遠すぎだよ」と言う。
「でもいい学校らしいよ。まあ難点は中学まで半分しか行けないこと。女の子はオカッパ頭にしないといけないことだけど」
「いい学校でも毎日通えないよ。どうせ送り迎えはミーの仕事でしょっ!」
「その通り」
などと話していると、遠くから「マミーっ!!」と娘の叫ぶ声が!
慌てて私と夫が駆け寄ると、「L(←息子)がゲロ吐いた!」と言うではないか!
校庭にしっかりとランチで食べたラーメンをリバースしている我が息子。
どうやらはしゃぎすぎてゲロを吐いたらしい。吐いたところで息子はケロッとしてニコニコしている。
ここが人口芝の校庭じゃなくてよかった。
こっそり足で砂を蹴り、少しでも息子のゲロの痕跡を消そうとする私たち。
「来年、自分の番が来たときのための彼なりのマーキング行為だったりして」
「勘弁してよ~!」
と話しているうちに由美子さんが戻ってきた。
相変わらず青ざめた顔をしている。
駅に向かう途中もずーっと暗い由美子さん。
そこで向かいからなんとお受験スーツに身を包んだ果歩ちゃん(仮名)ママこと宮本さん(仮名)が歩いてくるではないかっ!
彼女も私に気づき、軽く会釈して通り過ぎていった。
この場所であの格好をしているというのは、どう考えても彼女も抽選帰りだろう。ニコニコしていたから、抽選に受かっていたかもしれない。
「美央さんの知り合い?」と聞いてくる由美子さん。
「まあね」と歯切れの悪い私。
宮本さんは育児休暇中、毎日通っていた児童館でよくいっしょになった人で、娘の果歩ちゃんはうちの娘と同い年。バリバリの専業主婦だ。
きっと悪い人じゃないんだろうけど、ハッキリいって苦手なタイプだ。
小中学生だった9年もの間、私の「敵」(←一方的かもしれないけどな)として不動の地位を築いていた神谷利恵(仮名)を思い出させるタイプなのだ。
でも宮本さんを苦手だと思っているのは私だけではないらしく、仲のいいママ友たちはたいてい彼女が苦手だと言っていたし、泰子(仮名)なんかも事あるごとに彼女の悪口を言っている。
たとえば・・・
「果歩ちゃん、S(←お受験教室)に行ってるらしいけど、成績悪いらしいよ。あとね、いろいろと補習とか受けてるらしいけど、お金も続かなくなったんだって。まったくぅ、貧乏人はお受験なんかするなっちゅうの!」
という具合だ。
・・・・まあ、泰子にかかれば、我が家もとてもじゃないがお受験なんてできませんな。
「あ~あ、いいなあ~。美央さんのところはチャンスがあって」
相変わらずブツブツ言っている由美子さん。
我が家でお茶しながらの会話だ。
「Aちゃん(←娘)はO女で決まりだねっ!」
と決め付ける由美子さん。
「なんでよ? だったらうれしいけど、抽選すごいじゃん、倍率」
「だってAちゃん、O女の雰囲気に合ってるよ。あ~あ、いいなあ~」
「だから! 他でも抽選当たるって!」
まったく、なんで落ちたうちが、受かった人をこんなに慰め続けなくてはいけないのか? 世の中って不条理だ。
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