G大附属O小の一次抽選日は、立木さんと番号をもらいに行った週の日曜日午後から女子の部は行われた。
この学校は同じ系列のT小と同様に誕生日別にグループが分かれていないので、午前は男子、午後は女子という具合に進んでいく。
すでに午前中に抽選に行ったみっちゃん(仮名)からメールが来ていて、「陽太(仮名)は残念ながらハズレです。美央さんと由美子さん(仮名)のところは当たるといいね。がんばれ」と、これまた先週のG大附属T小の再来を思わせるメール内容だ。
この日は薄曇の肌寒い日で、場所を夫にも把握してもらいたいので、我が家は全員で行くことにし、由美子さんと雪美ちゃん(仮名)と駅で待ち合わせた。
私は一応ジャケットを羽織って行ったのだが(←お受験スーツはまだ買っていない)、なんといつもお受験スーツでばっちりキメている由美子さんが超カジュアルじゃないか!
「おっ、美央さん、ばっちりだね」
と会った瞬間言う由美子さん。
「うふふ、今日はハッキリ言ってどうでもいいんだぁ。ここって中学に半分しか進めないし、本命はなんといってもT大附属T小だから、こんなところで運を使い果たしたくないんだ」
ほお~、そういうもんかね?
うちの娘は雪美ちゃんとお出かけできるということで、なんだかうれしそうだ。息子も元々活発な雪美ちゃんと気が合うらしく、学年が違ってもよく保育園でいっしょに遊んでいるらしい。
子どもたちには目的は告げていない。ただ「雪美ちゃんと出かけるよ」と伝えたのみだ。
最寄り駅の改札を出ると、やはり業者がずらりと待ち構えている。もちろんお受験スーツの保護者たちの軍団も学校に向かっている。
こういう光景を初めて目にする夫は、「あははは」と乾いた笑い声を上げる。
さぞかし外国人の夫からすれば異様な光景に映ったことだろう。日本人の私ですら初めのころは、思わず笑っちゃっていたが、恐ろしいことにこういうことは慣れるのである。
「勉強始めてる?」と由美子さん。
「うん。けどやっぱり遅かったのかな。思ったとおりに進まないというか、なんというか」
「コツがつかめるまでちょっと時間がかかるもんなのよね。とにかく同じ問題は3回以上やらないと定着しないから、毎日根気よく続けるしかないね」
「はあ~」
そうこうしているうちにG大附属O小に到着。
夫はブツブツと「ここ、遠いよ」と文句を言っている。
そんな夫の不満を軽く無視し、子どもたちを夫に任せ、会場になっている体育館に向かう私と由美子さん。
子どもたちは広い校庭を走り回っていて楽しそうだ。
会場に入るとすでに人。人。人だ。
ここの抽選は立会い人が何人か見ているところで、1ケタの数字を引いて行くというもの。0から9までの数字のうち6つの数字が選ばれる。ってことは勝率6割なわけだ。
意外と高確率。T大附属T小も5割以上は一次抽選で通るというから、ペーパーテストがあるところは一次抽選で通る可能性が高いので、テストで落とされないように勉強をがんばるしかないということだ。
今回の私の番号は「252」番。2番という数字が来れば一次抽選突破だ。
対する由美子さんの番号は589番。
「当選された方はその場で黙ってお待ちください。運悪くはずれた方々へのご配慮をお願いします」
とアナウンスが入る。そうよねえ~。ここではしゃがれてもムカつくよね。
静寂の中、次々と番号が呼ばれデカデカと貼り出されていく。
いつまで経っても2番も9番も来ない。
「ふふ、当たんないね。まあここはどうでも良かったから。でも美央さんのところは当たってるといいね」
とここにきてもやる気なさげな由美子さん。
ついに最後の番号が呼ばれる。
やっぱ2番、来ないのかな。あ~あ、やっぱりクジ運のない私。
「最後は9番です!」
その瞬間、固まった由美子さん。
「これいらないっ! 美央さんにあげるから!」
と咄嗟に口に出す由美子さん。おいおい、あげるって言われてもどうしようもないって!
「おめでとう。良かったじゃん」
と言う私に、「良くない! 全然良くないっ!」と息巻く由美子さん。
「あ~あ、終わっちゃったよ」という由美子さんは泣き出しそうな顔をしている。
おいおい、受かっておいて何言ってやがるというやつだ。
ここを第一希望にしていてそれでも抽選はずれた保護者から、刺されるよ、あんた。
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