2010年3月12日金曜日

息子のクラスメイトたち①

 アルゴクラブとお受験写真撮影から1週間後。
 保育園の親子遠足があり、ひょんなことからその後、息子のクラスメイトの礼恩(れおん・仮名)のおうちで飲むことに。
 メンバーは礼恩くんの家族・河田家(仮名)と、同じくクラスメイトの敦くん(仮名)の家族・武田家(仮名)と、亘くん(仮名)の家族・大山家(仮名)と、大樹くん(仮名)の家族・若山家(仮名)とうちの5家族。
 武田家からはママ、大山家は両親揃って、若山家はママと、それぞれのうちの子どもたちという内訳。
 このメンバーで飲むのは初めてで、特に河田家の人々とこれまでまったく接点がなく、お話しすること自体初めてだった。

 息子のクラスは19人中、男子13人、女子6人と男の子が多いクラスで、男女半々の娘のクラスとは雰囲気が違う。
 中でも早生まれの息子はこのクラスで一番幼く、体だけは大きいが、いつまで経っても甘えん坊で赤ちゃんっぽい。
 そのせいもあって、ちょっと前まで息子が遊ぶのは女の子たちとか、おとなしめの男の子たちのグループだった。
 そのせいか私も息子のクラスで付き合うのは、女の子の親たちとか、おとなしめの男の子の親たちばかりで、たぶんたまたまだろうけど、そうした親たちはパパにもママにもキャリアがあって、適度に教育熱心そうな人たちばかりであった。
 ひと言でいえば私にとってもっとも付き合いやすいタイプの人々である。

1年ほど前に大樹くんが転園してきてからは、息子と気が合うのかふたりでよくつるむようになった。
 大樹くんのママとも飲んだこともあり、人材育成の仕事をしている彼女は仕事柄か子どもの教育に対して彼女なりのこだわりを見せていた。
それはみっちゃん(仮名)や由美子さん(仮名)たちとは別のベクトルのこだわりで、子どもには泥んこ遊びや、好きなことを思いっきりさせて、大らかな気持ちで子どもの自主性に任せるというものだ。 
 まあ、タイプこそ違うものの、彼女もある意味で教育熱心なタイプといえよう。

 それとは別に息子のクラスには、いわゆる男の子らしい元気なグループがいて、これもたまたまなんだろうけど、なぜかこの子たちの親は自営業の人ばかりだ。
 クラスのリーダーは敦くん。家はお蕎麦屋さんで小2のお兄ちゃんと娘と同じクラスのお兄ちゃんと敦くんの3人兄弟。
 この武田3兄弟は“地元の亀田3兄弟”とも称されている。
 全員判を押したように同じ顔をしていて、体格もよく、運動神経が驚異的にすばらしい。運動会のときなど、この兄弟の独壇場である。
 ちなみにこの兄弟の次男坊も娘と同級生なのだが、やはり勢いはクラスでピカイチだ。もちろんこの兄弟の例外に漏れず体格もいいのだが、お兄ちゃんや敦くんがクラスでダントツに体も一番デカいのに対して、彼だけは唯一体格ではクラスで二番手に甘んじている。
 なぜなら、彼のクラスにはうちの娘というタテにも横にももっとデカい女の子がいるからだ。(トホホ)

 その敦くんとつるんでいるのが、礼恩くんでこのふたりが男の子道のレースを先頭きってぶっちぎっているのに対して、あとの男の子たちは大きく引き離されていて、次に走っているのが亘くんや大樹くん、それからまた大きく引き離されて他の男の子たち、そしてまた大きく引き離されて最後の最後がうちの息子というのが、私の認識だった。

 ところがその認識が大いにグラついた衝撃の出来事が春に起こったのだった。

2010年3月6日土曜日

お受験写真②

 何はともあれ、写真撮影ということでまずは陽太から。ちゃっちゃと撮影が終わり、うちの娘の番になったのだが、カメラマンから何度もダメだしをされている。
 パスポートセンターなんかで撮るような写真のときは、特に何か言われたことはないんだけど、ここでは姿勢が悪いと何度も注意されている。
 パソコンの画面からいいものを選ぶんだけど、すぐに決まった陽太を尻目に、娘のものはスタッフの人が全部ダメだという。
 確かにどれも真っ直ぐ前を向いていなくて、ちょっと小首を傾げていたり、比較的真っ直ぐなものは、表情がイマイチだったりするのだ。
 再度撮り直しても、取り立てていいショットはなく、何度言っても娘はまっすぐに座っていられない。

 なんでだろう? 今まで娘の姿勢とか気にしたことがなかったけど、やっぱり体ごと傾いてしまっている。
 それに比べて日頃はチャラチャラしているのに、いざというときはピシッとしている陽太。こういうのもお受験塾に行ってる行っていないの問題なんだろうか。

 それでも無理やり若干体が傾いているものの、表情はいいものを選ぶ。当たり前だけど近所のカメラ屋で撮った感じと全然違う。
 一応受験にも使うだろうからということで、パスポート写真の値段で撮ってもらってなんだか得した気分♪

 それにしてもお受験写真のパンフレットには家族写真っていうのもある。
 こちらはうんと高くて2枚で定価が10600円!
 みっちゃんが言うには、学校によっては家族全員で写っている写真だとか、親子で写っている写真が必要になってくるらしい。
 「陽太の受ける学校はどうなの?」
と聞くと、みっちゃんは福々しい笑顔を見せ、
 「うん。もうみんなで撮ったから、こっちはもうだいじょうぶよ」
と言う。まったくあの酒好きでお調子者のカズヒロ(仮名)が、どんな顔してお受験写真に納まっているのやら。

 ちなみに後日お受験写真の話を泰子(仮名・近所のママ友にしてお受験の達人。そして私と娘のピアノの先生)にしたところ、
「撮り直し、撮り直し!」
とにべもない。
「ダメだよ。写真、真っ直ぐじゃなきゃ。第一、美央さん、気合いなさすぎ! 本当に受験する気あるわけぇ?」
と手厳しい。
 
 しかし写真ひとつ撮るだけで私と娘はグッタリだ。お受験の道は険しいのぅ~。

2010年3月5日金曜日

お受験写真①

 アルゴクラブのあとは、お受験写真を撮りに池袋のフォトスタジオへゴー!
 なんでもホームページからプリントアウトすれば、ディスカウントしてくれるんだとか。
 うちはどのみちパスポートの写真を撮らなければいけなかったので、みっちゃん(仮名)と陽太(仮名)に同行することに。

「ちゃんと写真もお受験パックっていうのがあるのよ。やっぱりスタジオで願書の写真はちゃんと撮らないとね」
とみっちゃん。
 すごいな、お受験界。なんでも商売になるんだな。 

「そこはね、2枚組みで4600円のところディスカウントで3500円になるし、5枚組は5600円が4500円になるから、ずいぶんとお得よ」
4500円!? 高くないか!?
「多少の修正も利くみたいだし、焼き増しも1枚500円らしいからそうでもないわよ」
それにしてもなあ~。

 スタジオで陽太と娘はお受験仕様の洋服に着替え、撮影の準備に入る。娘は一応白いブラウスを着せ、髪の毛はおさげにした。
 「パスポートの写真もほしいんですけど、おいくらですか?」
とスタッフに聞くと、パスポートは2枚組で1900円だという。
 あれ!? お受験の写真と値段がずいぶん違うなあ。背景とかフォルムとか何か違うんですか?と突っ込んでみると、スタッフはしどろもどろになりながら、
「違いはありません・・・・」
と言う。
 え? なんで? お受験というだけで、そんな値をつけるわけ? 同じ2枚組でも1900円と4600円(実際は割引されて3500円)って全然値段が違うじゃん! これってぼったくり!?

 セコビッチの私は当然のことながら、
「じゃあ、パスポート写真ということで今日は写真を撮って、うちの場合は実際、願書で写真が必要になってくるのか、または必要になっても今、そのサイズがわからないわけだから、後日サイズをお伝えして1枚500円でもいいってことですよね!?」
と鼻息荒く聞く。
「まあ、それも可能だということです・・・」
と歯切れの悪いスタッフ。

「だって! みっちゃんはどうするの?」
「私は当初の予定通り、お受験パックの5枚組(5600円→4500円になるやつ)でいいわ」
 ええ!? なんで?
 私だったら1900円で撮っておいて、あとの3枚は焼き増しするぞ。そうすれば3400円で済むじゃん! 1100円分も違うなんて!

 これって何かい? 結婚式みたいなもの? めでたいことにお金は惜しむなっちゅうやつ? お受験みたいな子どもの将来がかかっているときに、セコイこと言うなってこと?
 なんだか納得がいかんよなあ。結婚式業界はゼクシーの登場で相場をみんなが把握するようになって、めでたいからといってバンバンお金を使う風潮を変えたって言われているらしいけど、受験業界におけるゼクシー的なものってまだ登場しないのかね?

2010年3月4日木曜日

アルゴクラブ

そうこうしているうちにアルゴクラブの時間が始まった。
なんと子どもたちはうちの娘を入れても4人しかいなくて、コーチと呼ばれる講師が3人もついている。
 手厚いなあ~。
 どうやらここでは子どもたちの競争心を適度に煽ることでやる気を引き出す方式らしく、よく出来た子どもにMVP賞を与えたり、態度が良かったらマナー王に選んだりして全員の前で褒め称えるようだ。
 元気にみんなであいさつをして、授業が始まる。授業は1時間半。
 うちの娘は陽太(仮名)と同じグループに入れてもらって、何が始まるんだろうと期待に胸を膨らませている様子だ。

 数字の記憶ゲームをやったり、パズルを組み合わせたりしていたのだが、後ろで見学している私とみっちゃん(仮名)に、
 「お母さん方もどうぞ」
とパズルを手渡される。3分間の間にいくつもの組み合わせを試すということらしいが、なんと私もみっちゃんも一回もできない。
 「あれ? 何これ?」
と大の大人がふたりであれこれ試している傍らで、何度も子どもたちの「できた!」という元気のいい声が上がる。

 多い子はなんと3分間に9通りも組み合わせてみせ、陽太も7通り作っていた。うちの娘は慣れていないものあるけど、それでも1通りはできていて、次々と積み木だとか、詰めアルゴだとかやらされ、どんどん出来る子どもたちとは対照的に、何を試しても私もみっちゃんも全敗という有様だった。

 「私、これでもちゃんと大学出てるんだからねっ!」
と小声で、でも思わずヒステリックに舌打ちする私。
 「私だって、中学から雙葉よっ。こうみえても管理職よっ!」
とみっちゃん。
 ダメだなあ~。大人って。ここまでできないとは。
 まあ私は元々超文系だからしょうがない気もするけど、なんとみっちゃんは数学科出身なんだとか! 
 全然ダメじゃん!

 けどアルゴクラブの子どもたちってすごい。きっと頭が柔らかいから先入観にとらわれず、パズルを組み合わせていくことができるんだろう。
 こう鮮やかに通っている結果を見せつけられると、行かせるしかないではないか!

 あとはクイズのようなことをやって、解答を導き出すための考え方を学んだり、論理的に考えるためのヒントを与えられたり、実に将来ためになりそうな“考える力”を養う基礎を学ぶ内容だったと思う。
 娘もマナー王をもらえてうれしそうで、授業が終わったときにはすっかり私もアルゴクラブのファンになっていた。
 ただ小学1年生になるまで待てば、最寄駅にアルゴクラブの講座を持っている別の進学塾があるため、それまで待つことにする。
 
 しかしそれまで親バカながら、うちの娘は何でも人よりできると考えていた(←息子は別ね~)。
 しゃべるのも歩くのも早かったし、しっかりしてるし、発想力もいいし。
 けどアルゴクラブに来ている子どもたちを見ていると上には上がいるというのか、早くからちゃんと系統だって訓練されている感じがするのだ。
 すでにこんなに差が開いているのか・・・。
  恐るべしアルゴクラブ!

みっちゃんみたいな教育熱心な人と付き合っていると、昨今言われている教育格差だとか、学力格差の問題って当然あるよなと思う。
 だってこういうところに通っている子どもたちと、DS三昧の子どもたちは当然出来が違って当たり前だ。
 それどころか虐待されてたり、育児放棄されてたり、そんな極端な例じゃなくたって、たいして子どもの教育に関心がなかったり、そんな余裕がなかったりする親だっているだろうから、親の経済状況とモチベーションで全然違ってくると思う。

 けどある一定以上の年齢の人になると、家が貧しくても親が無教養でも、東大とか出て、長じて立派な政治家になっただとか、学者になったなんて、偉い人のエピソードを聞くけど、今の貧しくて無教養な親とそのころの親って何かが違うんだろうか?
 今でも家が貧乏で親も教育されてなくても神童の誉れが高い子どもなんて存在するんだろうか?
 寡聞にしてそんな話あんまり聞かないよなあ~。

 つくづく考えさせられる今日このごろだ。

G大附属T小学校 募集公示始まる!

 学校説明会の翌日、衆院選があった。
 前日の夜、説明会から流れて池袋で飲んでいた私たちだったが、西口では民主党の鳩山党首が、東口では自民党の麻生総理が最後の舌戦を繰り広げていた。
 暑くて熱かった池袋の夜。
 結果は大方の予想通り、民主党の圧勝で政権交代が実現した。

 こうして民主党政権のスタートした9月だが、同時にG大附属T小学校の募集公示も始まった。
 公示内容がHP上にもアップされるというので、早速チェック。
 願書の配布日だとか、提出日、抽選の日付など、受験のスケジュールが掲載される。
 もちろん全ての日程を手帳にも、家に飾ってあるカレンダーにもすかさず記入。
 いよいよ始まるのだ。

 衆院選から一週間後の日曜日。
 陽太(仮名)ママことみっちゃん(仮名)と陽太が通っているアルゴクラブの見学に行くのと、お受験写真を撮りに行く約束をする。

 アルゴクラブというのは京都大学名誉教授 広中平祐先生と、数学者でありジャグラーとしても有名なピーター・フランクル氏がアルゴクラブ最高教室長として共同開発した小学校低学年向けの数理教育システムだそうで、パズルゲームや頭脳トレーニングなど、子どもたちが“遊び感覚”で楽しく取り込めるプログラムで、“算数センス”や“数学的思考力”を鍛え伸ばすということを売りにしているとのこと。
なんでもフランチャイズ方式で全国展開しているらしく、この講座を持っているのは全国区の有名進学塾だ。
小学1年生から3年生までを対象としている講座だが、年長クラスから講座をやっているところもあって、陽太は高田馬場にある有名進学塾で4月から通っているという。

「特にね、空間に対するセンスが養われるみたいなの。小学校になったらどうせ塾通いが始まるし、SG会の合間の寛ぎタイムというか、お遊び時間で息抜きになっているのよ。すっごくいいから、Aちゃん(うちの娘)も体験させてみない?」
とみっちゃんから言われて、行ってみることにしたのだ。

それにしても数理教育システムの講座が息抜きになっているというのが、すさまじい。
まあうちは私も夫も数学的センスがゼロなので、子どもたちにそういうものを期待するのも酷だろう。
 けどどこで何をするにしても今後必要になってくるのは、コミュニケーション能力と数学的センスだと私は考えている。
DNA的に数学的センスがなさそうならば、教育で補うしかないではないか。
だったらということで早速体験レッスンを受けてみることにしたのだ。

娘は陽太と電車に乗って出かけられるのがうれしいのか、ずっとはしゃいでいる。陽太も「俺が連れていってやるからよぉ」と張り切っている。
陽太がイキがって汚い言葉を使うたびに、みっちゃんが「これっ、面接でそんなんじゃ困るでしょ」と釘を刺している。

高田馬場にある有名進学塾の建物の中に入ると、中学受験の合格者の一覧がずら~と展示されていて圧巻だ。
小学校受験でどこにも入れなかったら、今度は中学受験なのか。
なんだか中学受験のほうが大変そうだ。
私は田舎者なので中学なんて近所の公立しか選べなくて、それが当たり前だと思っていたんだけど、中学受験で追い立てられても選択肢がたくさんあるほうがいいんだろうか。

私の場合は、中学生活が苦痛で苦痛で仕方がなかった。多分人生の中の一番の暗黒期は中学時代だと思う。
小学生のときとメンバーがまったく同じで、田舎の中学のくせに校内暴力全盛期だったこともあって、めちゃくちゃ荒れていた。
ヤンキーたちからいい子ぶりっこだと思われていた私なんぞはいい標的で、いやな目には散々あった。
毎日毎日、あいつら全員死ねばいいのにと退屈な授業のときなんぞは、ひとりひとり具体的にどうやったら一番苦しんで殺してやれるのかマジで考えていたし、突然地震でも災害でも起こって中学なんかなくなればいいと思っていた。

漫画なんかに出てくるヤンキーのいないナントカ学園なんて、いったいどこにあるんだろう。
もしそんな素敵な楽園みたいな中学があるのなら、行ってみたかった。
自分で行きたい中学が選べるのなら選んでみたかった。
そう考えると中学受験もありだな。
あ、でも小学受験で成功すれば中学受験もパスできるんだし。
でも入った小学校が合わなければ、そのまま中学に行けても苦痛だろうし。
こういうのって、考え出すとキリがない。

あ、でもうちは銀座の先生によると、小学校受験以降は大学受験まで受験しなくていいんだった!

それってホンマかいな。

2010年3月2日火曜日

学校説明会反省会!?③

SG会の送迎の段取りで、みっちゃん(仮名)とヒロキ(仮名)がいったん、焼き鳥やを出て、私とタケル(仮名)が残される。
うちも子どもたちを幼児教室(←お受験塾ではない。月謝はSG会の基本料金の10分の1!)に夫が連れて行っているので、終わり次第、子どもたちも連れて合流してもらうことになっている。

「学校説明会に行って、なんでそのまま飲みに流れるわけ!?」
電話口で夫が呆れている。そりゃそうだ。
それはタケルのところも同じらしく、妻の洋子(仮名)もメンツ的にこんなことになるだろうなと予想していたそうだ。

取り残された私たちはチビチビとビールを飲みながら、
「どうよ。タケル。毎晩マクドナルド」
「ねえさんこそ。月20万円っすよ。ああ~、俺、ぜってぇ、無理! 無理無理。そこまでやんなきゃいけないんだったら、いいやって感じっす」
「そうだねえ~」
などとしみじみしてしまう。

そうこうしているうちに、白いブラウスと紺のスカートやズボンといういわゆるお受験スタイルの雪美ちゃん(仮名)を連れたヒロキ(仮名)と、陽太(仮名)を連れたカズヒロ(仮名)が戻ってくる。
「なんだよ、こんな楽しいところで集まっちゃって。光子は帰したから、代わりに俺、来ちゃったよ」
と単なる酒好きのカズヒロ。飲みと聞くといつもめちゃくちゃ幸せそうな顔をする。

「どうよ、子どもたち。勉強は?」
 ジュース! ジュース!とはしゃいでいる陽太と雪美ちゃんに声をかけると、バッチリだよ、とか、楽勝だねという言葉が返ってくる。
 マジかよ。

 「ちょっとプリント見せてみ」
 とプリントを見ると、何やらパズルみたいなものとか、回転図形のようなものがぎっちり書かれている。
 酔っ払っているせいか、意味がよくわからない。
 「タケル、これわかる?」
 どれどれという動作をしたあと、プリントをチラッと眺め、
 「なんっすかね、これ?」
と“アイ・ドント・ノー”と外国人がやるジェスチャーをするタケル。
 ガーン! やばくない? 私たち。
 小学校受験の問題も解けないのか?
「はいはい、勉強は終わり終わり。飲む飲む飲む!」
と上機嫌でプリントを取り上げるカズヒロ。

「陽太くん! 雪美ちゃん!」
とそこでやってきたのが我が子たちと夫。
「まったく信じられないよ。なんで飲んでる? こんな時間から」
と呆れ顔の夫。

いわゆる幼児教室というところに通っているうちの子どもたちのプリントを見比べると、計算だったり文字の書き方だったり、小学校の予習的な意味合いのものばかりだ。
まあ、こっちはなるほどねぇという感じだ。
ちなみに小学校受験は子どもたちが文字を読んだり、書いたりできないという前提で行われるため(←いまどきそれはないだろっ!)、問題が読み上げられて該当するものに○をつけたり、記憶力を試すような内容が多いのだという。
つくづくお受験塾で習うものはちょっと特殊なんだと思う。
この特殊な問題を解く能力が高い子がお受験を制するのだろう。
ひゃあ~、それってどうなわけ?

勢い余ってそのまま池袋の西口から東口に抜けて、カラオケにでも行くかと夕方の雑踏を歩き出す。
外はビルの群れの谷間に見える大きなオレンジ色の太陽がゆっくりと傾き始めている。
石田衣良の人気シリーズでおなじみ「池袋ウェストゲートパーク」の舞台、西口公園はものすごい人だかりができている。
なんでも民主党の鳩山代表自ら、これからここで最後の応援演説を行うのだとか。

「政権変わるかね? 明日」
 誰ともなしに呟く。
「ここまできたら、そりゃそうでしょ」
「明日選挙行く?」
「今回は行くでしょ」
などと話をしながら、東口を出るとこれまたパルコと西武百貨店の前の交差点のところには日本の国旗がはためいていて、人、人、また人が溢れている。人数だけいったら、西口より多いかもしれない。
「こっちはなんだ?」
西口、東口ともものすごい熱気と戦いを前にした緊張感に包まれている。

「東口には麻生さんだって!」
「マジ!? 小池さんの応援?」
「ビッグだねえ~」
 そう言いながらカラオケに向かう私たち。

 私たちは自民党の選挙カーに背を向けて歩き出す。
 どこが政権をとっても子どもたちが生きやすい未来を作ってほしい。
ちゃんと教育のことを考えてほしい。それを政策に生かしてほしい。
教育政策に不満があるから、公教育を避ける保護者が出てくる。だからこそお受験がブームになる。
お受験に対する温度差はあっても、ここにいたメンバーはすべて子どもたちの未来に幸あれと祈るような気持ちで願っている。
お願いしますよっ! 政治家のみなさん!

学校説明会反省会!?②

ぷは~。うまい、うますぎるぜ。真夏のビール。しかも学校説明会あと。
 まだ説明会しか終わっていないのに、すっかりお疲れ様気分の私たち(←って私だけ!?)

「ちょっと由美子さん(仮名)に電話してもいいですかねぇ」
といそいそと妻に電話をかけるヒロキ(仮名)。
「あ、そうそう私もカズヒロくん(仮名)に電話しなきゃ」
とみっちゃん(仮名)。
なんでもヒロキのところの雪美ちゃん(仮名)もみっちゃんのところの陽太(仮名)も同じSG会というお受験塾に通っていて、毎週土日は全部塾通いに費やしているのだという。夫婦交替で送り迎えをしているので、その段取りの連絡をしているというわけだ。

「ヒロキ的にはどうなの? お受験。月20万ぐらい塾代に使ってるんでしょ?」
 私たちは最初のジョッキを恐ろしいスピードで空にし、2杯目もペースを落とすことなく飲みきり、店に入ってから20分もしないうちにすでに3杯目に突入している。
 ああ~、お天道様がこんなに明るいうちに、私たちったらどうなわけ!?
 でもおいしいのよ、真っ昼間のお酒は。背徳の味よねえ~。

「いやあ、私は由美子さんの言うことに従うだけですから。言われるまま、お金を出して、言われるまま送迎を手伝って、大して自分にはポリシーがないですからねえ。こういう場合、声の大きいものが強いですよ」
とポツリポツリと話す。この男、見た目はおとなしいが、実はものすごい酒豪である。ビールを速攻で飲み上げたあと、知らないうちに焼酎のボトルを抱えている。

「そうよね。由美子さん、しっかりしてるし、雪美ちゃんもものすごく頑張っているから、きっとお受験合格するわよ。だって夜の11時ごろまで毎晩勉強してるんでしょ?」
とみっちゃん。
 「夜の11時!?」
 同時に叫んだのは、私とタケル(仮名)40歳・スーツがまったく似合わない男である。
 
 タケルのところのカリンちゃんは完全に記念受験組で、特に塾に行っているわけでもなく、準備をしているわけではない。
 それは我が家とて同じこと。

 「ちょっとね、雪美が可哀相なのは、毎晩夕食がマクドナルドなんですよ」
 「マクドナルド!?」
 「由美子さんが時間がもったいないって言ってね。私はちなみに毎晩ホカ弁ですよ」
 「マジ!?」
 「うちも似たようなもんよ。うちは早朝5時起きで勉強してるけどね。けどね、頑張れば絶対に結果が出るから。今だけよ。頑張れるのは。それに親も一緒に戦ってあげられるのは、小学校受験だけだから」
 みっちゃんは菩薩のような柔和な笑みを浮かべながらも、闘志満々だ。

 すごい。そんなの子どもじゃなくて自分がもたないよな。
 お受験話に圧倒されているのか、タケルはジョッキを抱えたまま、固まっている。
 わかるよ、タケル。私も固まるよ。
 うちなんかは元々銀座の先生に言われるがまま、なんの準備もしないでお受験戦争に巻き込まれようとしてるんだから、気合いがみんなと違うよ。

 気合いだ! A(←うちの娘)、気合いだ!
 ・・・・アニマル浜口じゃあるまいし。
 まったくもって柄じゃない。

 はあ~。