志願票を取りに行った日の夜、夫はバンドの練習のために出かけていった。家の近くのスタジオで2時間ほど練習したあとは、いつもメンバーを引き連れてうちに帰ってきて、軽くみんなで飲むのが定例になっている。
この日、夫が連れて帰ってきたのがカズヒロ(みっちゃんの夫であり陽太パパ)とタケル(洋子の夫でありカリンパパ)全員仮名である。
陽太の第一志望がT大附属T小だったことから、「今日、誰が志願票取りに行ったの?」と聞くと、「俺、行ったよ」と答えるカズヒロ。
タケルのところは試験のあるT大附属T小とG大附属O小はパスだという。完全に運試し組だ。
「パンフレット買った?」と聞くと、
「なんか並んでたからめんどくさくてさ、買わなかったら光子に“何やってんだっっ!!”って殴られそうになった。マジ、あいつ怖いよ。必死すぎて」
と「そんなことよりビール、ビール」とうれしそうにビールを注いでいるカズヒロ。
夫がバンドの練習に行っている間、パンフレットを流し読みしてみたのだが、なんだかすごい学校であった。
「130年の歴史」とか「校章は明治天皇から下賜された御紋」とか「本校での教育成果が全国の公立小学校を牽引」とか、もうハハア~と気分は「お代官さま。おねげぇしますだ」とひれ伏す下賤の者だ。
もう超上から目線! 皆の者、控えよっ!って感じ。
「本校生徒が乗り越えるべき3つの試練」というのもすごい。
まずは有名な遠泳2キロ。あとは2500メートル級の登山。そしてスキー。
なんだかめちゃくちゃ体を鍛えまくってるぞ。
運動オンチで集団行動が苦手で、競争させられたり強制されたりするのが死ぬほど嫌いな私には絶対に向かない学校である。
自分だったらまず不登校になるな。変な確信をする私。
そして教育目標もすごい。
なんといっても「国民的自覚を持つ子ども」なのだ。
国民ですよ。国民! 国民と言われるとその前につく冠が「日本」というより「大日本帝国」のほうを思い浮かべてしまう私って偏ってる?
しかもうちの子ども、ハーフだし。国民って言われてもなあ~。
あとは「文化を継承し、創造し~」とか「人間としての自覚~」とか、もう「自覚」を促されっぱなしなのである。
でも自覚って強制されて芽生えるもんかね?
パンフレットを見れば見るほど、自分には合わないT大附属T小学校。
要はスパルタチックなんだよなあ。
そうは言っても、私に合わなくても(←たぶん夫にも合わなさそうだが)、娘には合っているという可能性はある。
あ、でも銀座の先生に娘もT大附属T小は合わないって言われてたか。
じゃあ、だめじゃん!!
しかも結果が出るのがここが一番遅いし。
まあどうせ合わないんだったら、クジでとっとと落としてもらった方がスッキリするかもね。
2010年5月1日土曜日
2010年4月28日水曜日
T大附属T小 志願票配布日
翌日はT大附属T小の志願票配布日だった。
朝の9時から受付スタートだったので、また例によってバスに揺られてT小に向かう。
T大附属T小に行くのは初めてだ。
このバスに乗る時間帯はちょうどG大附属とO女附属の幼稚園生がお母さんと登園するタイミングにあたり、毎回思うのはお母さんたちもちゃんとしてそうだし、子どもたちもきちんとしつけられていることだ。
どちらの附属の子どもたちもバスを降りるときに必ず運転手さんに向かって、「ありがとうございました」と大きな声でお礼を言う。
きっと毎朝の習慣になっているのだろう。こういうのは見ていて気持ちいいし、そういう子どもたちには有望な未来が待っているだろう。
最近読んだお受験本によると、小学校の志望理由には具体的な事柄を述べたほうがいいと書いてあったので、もしこのふたつの附属小学校で志望理由を聞かれたら、そのうちのひとつにこの朝のエピソードを入れようと目論んでいる。
T大附属T小はバス停から“教育の森”(←ネーミングもナイス!)と呼ばれる緑地を突き抜けて5~6分の場所にあり、都会のど真ん中だというのに自然豊かな絶好な教育環境にある。
さすがは天下のT大附属T小!
教育の森のあたりからすでに学校に向かうとおぼしき保護者たちの姿が見えてくる。
この時点で9時10分前なのだが、なんですかっ! この長蛇の列は!!
志願票もらうだけでしょ? なんでこんな朝っぱらから並んでいるのだ?(←まあ、そういう私もなっ!)
しかも気のせいか、お父さん率が異様に高い。
とりあえず列の最後に並ぶと、雨後の竹の子のようにぞろぞろと人が集まってくる。
しかし9時過ぎるとドンドン列が進んでいき、あっという間に校門の前に。
何やら志願票だけでなく、パンフレット販売のブースができていて、その前に人が集まっている。
パンフレット代、千円也。
なんのパンフレットかと思ったら、なんのことはない。「学校説明会は行いませんから、代わりにパンフレットを買ってください」ということなのだ。
天下のT大附属T小さまに言われりゃ、買わんわけにはいかんだろう。
しかしボロくないか!? 5000人受けに来て、受験料以外にパンフレット代、500万円也。なんか悔しいぞ。
しかし悔しがっていたら、小学校の情報は得られないのだ。
ええええ、わかりましたとも。買いますよ。まったくっ。
しかし保護者たちの様子が他の国立以上にピリピリしているように感じるのは、気のせいだろうか?
なんか親たちの必死さが怖い。絶対にうちの子だけは出し抜いてやる的な闘志をヒシヒシと感じるのだ。
他の国立小学校はクジ運が大きく作用するのに対して、この小学校は半数が一次のクジは通る。その後のペーパーテストが大きくものを言うので、「運試し」というより「取りに行く」というスタンスの違いがこの気迫を生むのだろう。
駅方面に向かって歩くと、あれあれ、いつの間にか業者がパンフレットを配り始めている。
教育の森から駅まで続く業者の数はこれまでの学校の比ではない。
いちいちパンフレットを全部もらっていたら、なんと厚さ30センチほどになってしまった! 業者も稼ぎ時なんだろうなあ~。
信号待ちをしていると、あらあら見知った顔のお母さんを発見。
娘と同じ幼児教室(←お受験塾ではない)に通っている澪ちゃん(仮名)ママだ。彼女もこちらに気づき小さく手を振っている。志願票を取りに来るだけなのにバッチリお受験スーツ姿だ。
ちなみにお受験スーツをまだ買っていない私は(←早く買えよな)、ちょっとだけ改まった普段着だ。
だってこれから会社行くんだもん。いちいちあんなん着てられないって。
とりあえずスケジュールをこなすだけでも必死な私なのであった。
朝の9時から受付スタートだったので、また例によってバスに揺られてT小に向かう。
T大附属T小に行くのは初めてだ。
このバスに乗る時間帯はちょうどG大附属とO女附属の幼稚園生がお母さんと登園するタイミングにあたり、毎回思うのはお母さんたちもちゃんとしてそうだし、子どもたちもきちんとしつけられていることだ。
どちらの附属の子どもたちもバスを降りるときに必ず運転手さんに向かって、「ありがとうございました」と大きな声でお礼を言う。
きっと毎朝の習慣になっているのだろう。こういうのは見ていて気持ちいいし、そういう子どもたちには有望な未来が待っているだろう。
最近読んだお受験本によると、小学校の志望理由には具体的な事柄を述べたほうがいいと書いてあったので、もしこのふたつの附属小学校で志望理由を聞かれたら、そのうちのひとつにこの朝のエピソードを入れようと目論んでいる。
T大附属T小はバス停から“教育の森”(←ネーミングもナイス!)と呼ばれる緑地を突き抜けて5~6分の場所にあり、都会のど真ん中だというのに自然豊かな絶好な教育環境にある。
さすがは天下のT大附属T小!
教育の森のあたりからすでに学校に向かうとおぼしき保護者たちの姿が見えてくる。
この時点で9時10分前なのだが、なんですかっ! この長蛇の列は!!
志願票もらうだけでしょ? なんでこんな朝っぱらから並んでいるのだ?(←まあ、そういう私もなっ!)
しかも気のせいか、お父さん率が異様に高い。
とりあえず列の最後に並ぶと、雨後の竹の子のようにぞろぞろと人が集まってくる。
しかし9時過ぎるとドンドン列が進んでいき、あっという間に校門の前に。
何やら志願票だけでなく、パンフレット販売のブースができていて、その前に人が集まっている。
パンフレット代、千円也。
なんのパンフレットかと思ったら、なんのことはない。「学校説明会は行いませんから、代わりにパンフレットを買ってください」ということなのだ。
天下のT大附属T小さまに言われりゃ、買わんわけにはいかんだろう。
しかしボロくないか!? 5000人受けに来て、受験料以外にパンフレット代、500万円也。なんか悔しいぞ。
しかし悔しがっていたら、小学校の情報は得られないのだ。
ええええ、わかりましたとも。買いますよ。まったくっ。
しかし保護者たちの様子が他の国立以上にピリピリしているように感じるのは、気のせいだろうか?
なんか親たちの必死さが怖い。絶対にうちの子だけは出し抜いてやる的な闘志をヒシヒシと感じるのだ。
他の国立小学校はクジ運が大きく作用するのに対して、この小学校は半数が一次のクジは通る。その後のペーパーテストが大きくものを言うので、「運試し」というより「取りに行く」というスタンスの違いがこの気迫を生むのだろう。
駅方面に向かって歩くと、あれあれ、いつの間にか業者がパンフレットを配り始めている。
教育の森から駅まで続く業者の数はこれまでの学校の比ではない。
いちいちパンフレットを全部もらっていたら、なんと厚さ30センチほどになってしまった! 業者も稼ぎ時なんだろうなあ~。
信号待ちをしていると、あらあら見知った顔のお母さんを発見。
娘と同じ幼児教室(←お受験塾ではない)に通っている澪ちゃん(仮名)ママだ。彼女もこちらに気づき小さく手を振っている。志願票を取りに来るだけなのにバッチリお受験スーツ姿だ。
ちなみにお受験スーツをまだ買っていない私は(←早く買えよな)、ちょっとだけ改まった普段着だ。
だってこれから会社行くんだもん。いちいちあんなん着てられないって。
とりあえずスケジュールをこなすだけでも必死な私なのであった。
2010年4月25日日曜日
これは偶然なのか?②
「次の土曜日だもんね。クジ」
と土田さんはすっかり立ち話モードに入っている。
私は観念して自転車から降りてスタンドを立てると、
「あら、ごめんね。呼び止めたみたいで」
と彼女はぺろりと舌を出した。
「Aちゃん、どっか塾とか行ってるの?」
と聞く土田さんに、ついに銀座の先生の話をする私。
「へえ~。占いねえ~」
土田さんは感心していいのやら、疑っていいのやら、どう反応したらいいのか決めあぐねている表情を浮かべている。
「でもそういえばね」と土田さんは何かを思い出すように話を切り出す。
なんでも今日子ちゃんが幼稚園受験をする前に、すでに附属幼稚園に通っているお母さんにバッタリ会ったときに、今日子ちゃんが同じ幼稚園に入る夢を見たから絶対に受かるからぜひ受験してみてと強く勧められたのが、受験するきっかけになったと言うのだ。
「だからきっと占い師に言われたのもありえない話じゃないかもしれないよ」
と自分自身を納得させるかのように「うん、そうだよ。きっと」と繰り返す土田さん。
「じゃあ、土田さんもAが今日子ちゃんといっしょの小学校に入る夢でも見てよ」
と我ながら切実な言い方をしている自分に驚く私。土田さんも私の勢いに押されているのか、「そうだね。うん、夢にきっと出てくるよ」とたじろいでいる。
“あちゃ~、やっちまったよ”と思う瞬間だ。
このころになるとすっかりもう近所の区立小学校に行くことなど考えられなくなっていた。
占ってもらうまではお受験することなんてまったく考えたことすらなかったのに。
半信半疑だったのに学校に何度も足を運んだり、情報を集めたり、受験の日程が近づいてくるたびに、“何が何でも絶対に国立!”と鼻息が荒くなってきている。
そう思うなら受験準備ちゃんとしろよっ!
と自分に突っ込みを入れるのだが、それはそれ。「記念でだいじょうぶ」という先生の言葉に従えば自然にしていていいはずだからだ。
「きっと今日、ここでバッタリ会ったのも偶然じゃないんだよ。何かの縁があってのことだから。土曜日のクジの結果、絶対に教えてね。きっとだいじょうぶだよ」
と言い残して去っていった土田さん。
ちょっと詮索好きな人だけど、子どもたちがいっしょの学校に通うようになったらきっと頼りにするだろうし、もっと仲良くなってもいいかなって思った瞬間でもあった。
彼女が言う通り、このバッタリが単なる偶然じゃないといいんだけど・・・。
と土田さんはすっかり立ち話モードに入っている。
私は観念して自転車から降りてスタンドを立てると、
「あら、ごめんね。呼び止めたみたいで」
と彼女はぺろりと舌を出した。
「Aちゃん、どっか塾とか行ってるの?」
と聞く土田さんに、ついに銀座の先生の話をする私。
「へえ~。占いねえ~」
土田さんは感心していいのやら、疑っていいのやら、どう反応したらいいのか決めあぐねている表情を浮かべている。
「でもそういえばね」と土田さんは何かを思い出すように話を切り出す。
なんでも今日子ちゃんが幼稚園受験をする前に、すでに附属幼稚園に通っているお母さんにバッタリ会ったときに、今日子ちゃんが同じ幼稚園に入る夢を見たから絶対に受かるからぜひ受験してみてと強く勧められたのが、受験するきっかけになったと言うのだ。
「だからきっと占い師に言われたのもありえない話じゃないかもしれないよ」
と自分自身を納得させるかのように「うん、そうだよ。きっと」と繰り返す土田さん。
「じゃあ、土田さんもAが今日子ちゃんといっしょの小学校に入る夢でも見てよ」
と我ながら切実な言い方をしている自分に驚く私。土田さんも私の勢いに押されているのか、「そうだね。うん、夢にきっと出てくるよ」とたじろいでいる。
“あちゃ~、やっちまったよ”と思う瞬間だ。
このころになるとすっかりもう近所の区立小学校に行くことなど考えられなくなっていた。
占ってもらうまではお受験することなんてまったく考えたことすらなかったのに。
半信半疑だったのに学校に何度も足を運んだり、情報を集めたり、受験の日程が近づいてくるたびに、“何が何でも絶対に国立!”と鼻息が荒くなってきている。
そう思うなら受験準備ちゃんとしろよっ!
と自分に突っ込みを入れるのだが、それはそれ。「記念でだいじょうぶ」という先生の言葉に従えば自然にしていていいはずだからだ。
「きっと今日、ここでバッタリ会ったのも偶然じゃないんだよ。何かの縁があってのことだから。土曜日のクジの結果、絶対に教えてね。きっとだいじょうぶだよ」
と言い残して去っていった土田さん。
ちょっと詮索好きな人だけど、子どもたちがいっしょの学校に通うようになったらきっと頼りにするだろうし、もっと仲良くなってもいいかなって思った瞬間でもあった。
彼女が言う通り、このバッタリが単なる偶然じゃないといいんだけど・・・。
これは偶然なのか?①
保美さんや奈美子さんたちとのランチのあと、一度家に戻り再び買い物のためひとり自転車で外出した私。
そこでバッタリ出くわしたのが土田さん(仮名)と今日子ちゃん(仮名)親子だ。
自転車に乗ったまま「こんにちは」とあいさつをして走り抜けようとしたら、
「(G大附属)T小の説明会にいたんだって!?」
と声をかけられ、思わず立ち止まる。
まったく~。誰に何を言われているのか、わかったもんじゃない。
「Aちゃんママを見たよっていう人が何人もいてね。何々、T小受験するの?」
と土田さんは好奇心を隠さない。
この親子、結構うちから近いマンションに住んでいて、育休のときに毎日のように通った児童館でよくいっしょになったものだ。
ちなみに「Aちゃんっていつも可愛いお洋服着てるよね? やっぱり外国製?」と聞いたママとはこの人のことだ。
さらに言えば今日子ちゃんはG大附属T幼稚園に通っていて、エスカレーター式にT小学校に上がることが確定している。
もし銀座の先生の言うことが正しければ、娘と同じ小学校に通うことになるのだ。
正直言って先生から「兄弟そろってG大附属T小学校に入る」と占われたときに、どんな学校なのか土田さんに相談してみようかと考えたこともあったが、すでに通っている人にそういう話をするのもなんとなくはばかられ、するなら抽選が通るなりなんらかの結果が出てからでもいいかと思いあぐねていたところであった。
たまたま1ヶ月ぐらい前にもバッタリ出くわし、
「Aちゃん、小学校どうするの? やっぱりインターナショナル・スクール?」
とむき出しの好奇心で尋ねられた。そのときは、
「国立は一応受けてみるけど、クジ運が悪いからこればっかりはね」
と答えると、土田さんはいかに今日子ちゃんが強運の持ち主で幼稚園受験のときにもその運の強さが発揮され、実はO女も3次まで進んでいて、けど結果的には今のところが向いていてこれで中学までは安泰だということをいっきにまくし立てていた。
「うちも今日子ちゃんみたいに運があればいいんだけど」
という思いっきりな私の社交辞令に、
「ぜひAちゃんには入ってきてもらいたいわ。うちのところはね、自己主張がハッキリしている子じゃないとやっていけないの。Aちゃんならしっかりしているから、途中からでもみんなにちゃんとついてこれると思うよ」
と驚くほど無邪気な調子で彼女は応じた。
それって内部進学生の特権意識丸出しの上から目線だよな。本人はそんなつもりはないんだろうけど、ハッキリいってムカつく。
このとき数億分の1ミクロンぐらいだけ、お受験殺人事件の加害者である母親の苛立ちが理解できたような気がしたものだった。
そこでバッタリ出くわしたのが土田さん(仮名)と今日子ちゃん(仮名)親子だ。
自転車に乗ったまま「こんにちは」とあいさつをして走り抜けようとしたら、
「(G大附属)T小の説明会にいたんだって!?」
と声をかけられ、思わず立ち止まる。
まったく~。誰に何を言われているのか、わかったもんじゃない。
「Aちゃんママを見たよっていう人が何人もいてね。何々、T小受験するの?」
と土田さんは好奇心を隠さない。
この親子、結構うちから近いマンションに住んでいて、育休のときに毎日のように通った児童館でよくいっしょになったものだ。
ちなみに「Aちゃんっていつも可愛いお洋服着てるよね? やっぱり外国製?」と聞いたママとはこの人のことだ。
さらに言えば今日子ちゃんはG大附属T幼稚園に通っていて、エスカレーター式にT小学校に上がることが確定している。
もし銀座の先生の言うことが正しければ、娘と同じ小学校に通うことになるのだ。
正直言って先生から「兄弟そろってG大附属T小学校に入る」と占われたときに、どんな学校なのか土田さんに相談してみようかと考えたこともあったが、すでに通っている人にそういう話をするのもなんとなくはばかられ、するなら抽選が通るなりなんらかの結果が出てからでもいいかと思いあぐねていたところであった。
たまたま1ヶ月ぐらい前にもバッタリ出くわし、
「Aちゃん、小学校どうするの? やっぱりインターナショナル・スクール?」
とむき出しの好奇心で尋ねられた。そのときは、
「国立は一応受けてみるけど、クジ運が悪いからこればっかりはね」
と答えると、土田さんはいかに今日子ちゃんが強運の持ち主で幼稚園受験のときにもその運の強さが発揮され、実はO女も3次まで進んでいて、けど結果的には今のところが向いていてこれで中学までは安泰だということをいっきにまくし立てていた。
「うちも今日子ちゃんみたいに運があればいいんだけど」
という思いっきりな私の社交辞令に、
「ぜひAちゃんには入ってきてもらいたいわ。うちのところはね、自己主張がハッキリしている子じゃないとやっていけないの。Aちゃんならしっかりしているから、途中からでもみんなにちゃんとついてこれると思うよ」
と驚くほど無邪気な調子で彼女は応じた。
それって内部進学生の特権意識丸出しの上から目線だよな。本人はそんなつもりはないんだろうけど、ハッキリいってムカつく。
このとき数億分の1ミクロンぐらいだけ、お受験殺人事件の加害者である母親の苛立ちが理解できたような気がしたものだった。
2010年4月24日土曜日
恵一くんの変貌②
なんと自営業を営むご主人と店舗兼自宅の一戸建てを購入したのだが、不況の煽りで収入が激減し、ローンが払えなくなってしまったのだという。
何度か遊びに行ったことがあるという保美さんは、
「でもあの家は立地がいいから、いい値段で売れるよ」
と太鼓判を押している。
「じゃあ引っ越すの?」
「近くで安い賃貸が借りられればいいんだけど。保育園もあと半年だけだから今のところを卒園させてあげたいし」
とため息をつく千鶴さん。気のせいか白髪が目立ってきているような。きっと気苦労が多いんだろうな。
「だから小学校も引っ越し先次第だから、どこになるのかわからないんだよね」
「もう来年みんな小学生なんだね~」
「あっという間だねえ~」
「AちゃんはやっぱりM小学校なの?」
と奈美子さん。そう、恵一くんと娘は学区が同じなので、ふつうに区立に行けば同じ小学校に入ることになる。
「限りなくM小だけど、一応クジ引きする(←=国立受験)つもり」
「ほんと? うちもクジ引くよ。美央さん、どっか塾行かせてる?」
気のせいか奈美子さんの目が爛々と輝き始める。
「いや、もうぶっつけ本番。実は超当たるという評判の占い師の先生に国立受かるって言われてさ。しかも記念でいいって言われたから、何も準備してないんだ~」
「へえ~(←あきらかにアホを見る目つき)。どこ受かるって言われたの?(←とりあえず聞いてやったって感じ)」
「G大附属T小だって」
「今週の土曜日クジだもんね。うちも受けるよ。美央さんのところはここだけ?」
「一応、4校全部受けるけど」
「うちはあとT大附属T小だけ。こっちが本命なのよね。O小は遠いし、O女は途中から女子校になっちゃうし、G大附属T小は確率が低いから、ペーパーで勝負のT大附属T小でがんばらないとね」
そう前にも書いたがT大附属T小の場合、絶対に記念では受からない。ここを狙う親たちは2年以上塾通いをさせて、準備するのだ。
店内は空いていて貸切状態のようになっていることもあって、子供たちは走り回ったりふざけて遊んでいる。
ただ恵一くんを除いて。
彼はきちんとテーブルに座り、ニコニコしながら大人たちの会話を聞いている。
「奈美子さん、恵一くんを塾に通わせてるでしょ!」
「うん、年中から行ってるよ」
なんでそんなこと聞くんだという表情を浮かべる奈美子さん。
「Wでしょ!」
「うわぁ、美央さん、正解。なんでわかったの?」
Wというのは国立にめっぽう強いといわれている大手のお受験塾で、学校説明会等で業者が配る広告などにも必ず入っている。
東京の国立小学校のうち4校が池袋駅をターミナルにしていることもあってか、Wの本部は池袋駅の西口にある。
さっちゃん(仮名)や由美子さん(仮名)が通わせているS会ほど月謝は高額ではないが、それでも月に軽く3万円は超えるだろう。
それを年中から通わせるとなるとかなりな出費になるだろう。
「それなのに抽選で落ちたらバカみたいだけどね」
と微笑む奈美子さん。
そうだよなあ~。私もそれがあるから塾通いって、踏み切れないんだよなあ~。
それにしてもそれだけ不確実なものにお金がかけられる人がいる一方で、せっかく手に入れたマイホームを競売にかけられてしまう人もいる。
つくづく世の中は格差社会だ。
「もしかして恵一くん、すっごく落ち着いたのはWのおかげ?」
「うん。そうかもね。試験を受ける態度とか、行動観察とかもやってくれてるから」
「それはすごい!」
「けど相変わらず幼稚園ではお友だちを殴ってるみたいよ」
しかし目の前におとなしく座っている恵一くんと、以前の凶暴な恵一くんはまるで別人のようだ。
お受験塾、恐るべし。子どもをここまで劇的に変えてしまうとは・・・。
娘はともかく、気まぐれな息子もWに入れるとしっかりしてくれるのかしら?
家に帰って夫に恵一くんの話をして、ついでに息子もWに入れてみる?と提案してみると、首を横に振り、
「でもじっと座っておとなしくしているなんてL(息子)らしくないよ。そんなの不自然だよ」
といかにもなコメントをする夫。
さしずめ「時計じかけのオレンジ」の“ルドヴィコ療法”でも思い出したのだろう。
かくいう私も恵一くんと、映画のラストで回復し以前の邪悪な顔を再び見せるマルコム・マクダウェル演じるアレックスの姿がなんとなくダブったのであった。
何度か遊びに行ったことがあるという保美さんは、
「でもあの家は立地がいいから、いい値段で売れるよ」
と太鼓判を押している。
「じゃあ引っ越すの?」
「近くで安い賃貸が借りられればいいんだけど。保育園もあと半年だけだから今のところを卒園させてあげたいし」
とため息をつく千鶴さん。気のせいか白髪が目立ってきているような。きっと気苦労が多いんだろうな。
「だから小学校も引っ越し先次第だから、どこになるのかわからないんだよね」
「もう来年みんな小学生なんだね~」
「あっという間だねえ~」
「AちゃんはやっぱりM小学校なの?」
と奈美子さん。そう、恵一くんと娘は学区が同じなので、ふつうに区立に行けば同じ小学校に入ることになる。
「限りなくM小だけど、一応クジ引きする(←=国立受験)つもり」
「ほんと? うちもクジ引くよ。美央さん、どっか塾行かせてる?」
気のせいか奈美子さんの目が爛々と輝き始める。
「いや、もうぶっつけ本番。実は超当たるという評判の占い師の先生に国立受かるって言われてさ。しかも記念でいいって言われたから、何も準備してないんだ~」
「へえ~(←あきらかにアホを見る目つき)。どこ受かるって言われたの?(←とりあえず聞いてやったって感じ)」
「G大附属T小だって」
「今週の土曜日クジだもんね。うちも受けるよ。美央さんのところはここだけ?」
「一応、4校全部受けるけど」
「うちはあとT大附属T小だけ。こっちが本命なのよね。O小は遠いし、O女は途中から女子校になっちゃうし、G大附属T小は確率が低いから、ペーパーで勝負のT大附属T小でがんばらないとね」
そう前にも書いたがT大附属T小の場合、絶対に記念では受からない。ここを狙う親たちは2年以上塾通いをさせて、準備するのだ。
店内は空いていて貸切状態のようになっていることもあって、子供たちは走り回ったりふざけて遊んでいる。
ただ恵一くんを除いて。
彼はきちんとテーブルに座り、ニコニコしながら大人たちの会話を聞いている。
「奈美子さん、恵一くんを塾に通わせてるでしょ!」
「うん、年中から行ってるよ」
なんでそんなこと聞くんだという表情を浮かべる奈美子さん。
「Wでしょ!」
「うわぁ、美央さん、正解。なんでわかったの?」
Wというのは国立にめっぽう強いといわれている大手のお受験塾で、学校説明会等で業者が配る広告などにも必ず入っている。
東京の国立小学校のうち4校が池袋駅をターミナルにしていることもあってか、Wの本部は池袋駅の西口にある。
さっちゃん(仮名)や由美子さん(仮名)が通わせているS会ほど月謝は高額ではないが、それでも月に軽く3万円は超えるだろう。
それを年中から通わせるとなるとかなりな出費になるだろう。
「それなのに抽選で落ちたらバカみたいだけどね」
と微笑む奈美子さん。
そうだよなあ~。私もそれがあるから塾通いって、踏み切れないんだよなあ~。
それにしてもそれだけ不確実なものにお金がかけられる人がいる一方で、せっかく手に入れたマイホームを競売にかけられてしまう人もいる。
つくづく世の中は格差社会だ。
「もしかして恵一くん、すっごく落ち着いたのはWのおかげ?」
「うん。そうかもね。試験を受ける態度とか、行動観察とかもやってくれてるから」
「それはすごい!」
「けど相変わらず幼稚園ではお友だちを殴ってるみたいよ」
しかし目の前におとなしく座っている恵一くんと、以前の凶暴な恵一くんはまるで別人のようだ。
お受験塾、恐るべし。子どもをここまで劇的に変えてしまうとは・・・。
娘はともかく、気まぐれな息子もWに入れるとしっかりしてくれるのかしら?
家に帰って夫に恵一くんの話をして、ついでに息子もWに入れてみる?と提案してみると、首を横に振り、
「でもじっと座っておとなしくしているなんてL(息子)らしくないよ。そんなの不自然だよ」
といかにもなコメントをする夫。
さしずめ「時計じかけのオレンジ」の“ルドヴィコ療法”でも思い出したのだろう。
かくいう私も恵一くんと、映画のラストで回復し以前の邪悪な顔を再び見せるマルコム・マクダウェル演じるアレックスの姿がなんとなくダブったのであった。
恵一くんの変貌①
恵一くん(仮名)ママの奈美子さん(仮名)は清楚でおっとりとしたきれいな人だが、赤ちゃんのころから恵一くんは癇癪持ちで手がかかる子だった。
ハイハイを始めるころには娘や勇人くんの髪を引っ張ったり、ママの乳首を噛んだりやりたい放題。
歩くころになると一瞬でも目が離せない。
ただ知能は高いらしく文字を覚えるのも早かったし、言葉も達者だ。
幼稚園に入ると悪童ぶりに磨きがかかり、奈美子さんは毎日“今日はだれそれを殴った”だの“蹴った”だの“噛んだ”などと先生から報告を受けるはめになる。
毎年娘や息子のお誕生日パーティーに奈美子さんも招待しているのだが、幼稚園に入った年から“他の人の迷惑になるから”という理由で来てくれなくなった。
なんでも別のお友だちのお誕生日パーティーで恵一くんが4人ほど殴り倒し、楽しいパーティーが子供たちの泣き喚く阿鼻叫喚の地獄絵図と化したのだとか。
「本当に困っちゃう」
奈美子さんはため息をつく。
感情に任せて叱りつける私と大違いで、奈美子さんはいつも優しく諭すように恵一くんに接しているのだが、本人はもちろん聞いちゃいない。
いつもならこういう待ち合わせのとき、走り回ってどこかにいなくなるはずの恵一くんがきちんと両手を膝の上にそろえ、ニコニコしながらおとなしく座っているじゃないか!
しかも「こんにちは」というあいさつも素晴らしい!
どうした!? 恵一!?
しかし私はこの時点では、まあ久しぶりだし、しばらく見ないうちにきっと落ち着いたんだろうなぁ~という感想を持つのにとどまったのであった。
イタリアン・レストランに入り、昼間っからワインでも飲もうということになり、さっそくボトルを頼んだのだが、イケる口の奈美子さんが「今、ちょっと飲めないの」と言う。
おお~、まさかまさか!
「うふふ、そうなの。今、5ヶ月になったの。予定日は3月末だから卒園式とか入学式に出られるかどうか微妙なんだけどね」
とのこと。いやあ~。良かった。良かった。
奈美子さん夫婦はずっと二人目を望んでいたんだけど、なかなか恵まれず挙句何度か流産を繰り返していた。いわゆる二人目不妊というやつだ。深刻に悩んでいたからさぞかしうれしいことだろう。
恵一くんが落ち着いたのも、もしかしたらお兄ちゃんになる自覚ができたからかもしれない。
「保美さん(仮名)はどうなの? 二人目は?」
「あるわけないじゃないっ! もう48歳だよっ! 生理もあがっちゃたわよっ!」
「え? マジっ?」
「そういう美央さんこそ、どうなのよっ? 3人目!」
「ありえないっしょっ!」
「そうだ、千鶴さん(仮名)はどうなの? 二人目の予定は?」
「・・・ありえないよ。お金ないから」
ポツリと呟く千鶴さん。
「そうだよね。子どもお金かかるよねぇ~」
「っていうか、うち競売にかけられるから・・・」
「競売!?」
ハイハイを始めるころには娘や勇人くんの髪を引っ張ったり、ママの乳首を噛んだりやりたい放題。
歩くころになると一瞬でも目が離せない。
ただ知能は高いらしく文字を覚えるのも早かったし、言葉も達者だ。
幼稚園に入ると悪童ぶりに磨きがかかり、奈美子さんは毎日“今日はだれそれを殴った”だの“蹴った”だの“噛んだ”などと先生から報告を受けるはめになる。
毎年娘や息子のお誕生日パーティーに奈美子さんも招待しているのだが、幼稚園に入った年から“他の人の迷惑になるから”という理由で来てくれなくなった。
なんでも別のお友だちのお誕生日パーティーで恵一くんが4人ほど殴り倒し、楽しいパーティーが子供たちの泣き喚く阿鼻叫喚の地獄絵図と化したのだとか。
「本当に困っちゃう」
奈美子さんはため息をつく。
感情に任せて叱りつける私と大違いで、奈美子さんはいつも優しく諭すように恵一くんに接しているのだが、本人はもちろん聞いちゃいない。
いつもならこういう待ち合わせのとき、走り回ってどこかにいなくなるはずの恵一くんがきちんと両手を膝の上にそろえ、ニコニコしながらおとなしく座っているじゃないか!
しかも「こんにちは」というあいさつも素晴らしい!
どうした!? 恵一!?
しかし私はこの時点では、まあ久しぶりだし、しばらく見ないうちにきっと落ち着いたんだろうなぁ~という感想を持つのにとどまったのであった。
イタリアン・レストランに入り、昼間っからワインでも飲もうということになり、さっそくボトルを頼んだのだが、イケる口の奈美子さんが「今、ちょっと飲めないの」と言う。
おお~、まさかまさか!
「うふふ、そうなの。今、5ヶ月になったの。予定日は3月末だから卒園式とか入学式に出られるかどうか微妙なんだけどね」
とのこと。いやあ~。良かった。良かった。
奈美子さん夫婦はずっと二人目を望んでいたんだけど、なかなか恵まれず挙句何度か流産を繰り返していた。いわゆる二人目不妊というやつだ。深刻に悩んでいたからさぞかしうれしいことだろう。
恵一くんが落ち着いたのも、もしかしたらお兄ちゃんになる自覚ができたからかもしれない。
「保美さん(仮名)はどうなの? 二人目は?」
「あるわけないじゃないっ! もう48歳だよっ! 生理もあがっちゃたわよっ!」
「え? マジっ?」
「そういう美央さんこそ、どうなのよっ? 3人目!」
「ありえないっしょっ!」
「そうだ、千鶴さん(仮名)はどうなの? 二人目の予定は?」
「・・・ありえないよ。お金ないから」
ポツリと呟く千鶴さん。
「そうだよね。子どもお金かかるよねぇ~」
「っていうか、うち競売にかけられるから・・・」
「競売!?」
2010年4月21日水曜日
初めてのママ友
娘が生まれたばかりのころ、里帰り出産から東京に帰ったきた私にはひとりもママ友がいなかった。
家の周りはオフィス街で自宅にやってきた保健士さんからも、「うちの区でもちょうどこのあたりはお子さんのいない地域なのよね」と言われ(←ところがそれがガセだったことが後日判明。3軒隣のタワーマンションには泰子のところを含め同世代の子どもがけっこういたのだった)、友だちはみんな平日の日中は働いてるし、とっても孤独だったのだ。
人一倍寂しがりやで家でじっとしていることができない私は、早く夫が帰ってきてくれないかと毎日時計を眺めて過ごし、いっそのこと育休を切り上げて早く仕事に戻りたいと思ったほどだ。
またそう思う自分を母性本能に乏しいダメな母親だと責め、すっかり鬱々していたのであった。
そんな状態で迎えた3ヶ月健診。そこで知り合ったのが勇人くん(仮名)ママである保美さん(仮名)と恵一くん(仮名)ママである奈美子さん(仮名)。
保美さんは私より年上で勇人くんを42歳のときに出産した。ダンナは16歳年下でいわゆる出来ちゃった婚。介護士とシャンソン歌手の2つの顔を持つ。
一方の奈美子さんは当時30歳ですらっとして清楚な感じのきれいな人だ。こちらは専業主婦。
私たちは年齢もバックグランドも全然違ったが、なぜか意気投合した。
保美さんも奈美子さんも飲めるタイプだったので、ホームパーティーをしたり、誕生日が近い子供たちの合同バースデーパーティを開いたり、お買い物にいっしょに出かけたり、なんだかんだと理由をつけてはつるみ、私と保美さんが育休明けで職場復帰するまで、しょっちゅう会っていた。
会う頻度こそ減ったが、職場復帰しても定期的にランチしたりして付き合いは続いていた。
しかし子供たちがそろって年中さんになったころ、勇人くんの喘息が悪化して、空気のきれいなところに住まないと治療がむつかしいと診断された保美さん一家は多摩地区へ引っ越すことになった。
駅からずいぶんと遠いところらしいが、目の前には大きな公園があり、勇人くんの喘息はメキメキ良くなっていたのだという。
保美さんたちが引っ越してからさすがに定期的に会ったりはできなくなったが、年賀状のやり取りは続いているし、娘のお誕生会には必ず声をかけている。
そんな中、保美さんたちが久しぶりに東京に出てくるので、みんなでランチをしようということになり集まった。
この日は私と奈美子さんのほかに、千鶴さん(仮名)と千春ちゃん(仮名)親子も来ていた。
千春ちゃんは勇人くんが前に通っていた保育園のお友だちで、千鶴さんはその時代の保美さんのママ友だ。
この親子とは勇人くんのお誕生日会で2回ほど会ったことがあった。
千春ちゃんはいつもクラスで一番大きいらしく、元々保美さんから“うちの保育園にもAちゃん(うちの娘)並みにタテにもヨコにも大きい女の子がいるよ”と言われていた本人だが、実際並んでみたらうちの娘のほうがタテにもヨコにもデカかった(トホホ)。
とはいえ千春ちゃんも貫禄たっぷりの女の子(←ってそんな言い方されてもうれしくないか!?)で、お互いデカい女の子を持つ身であることと、年が近いこともあってか、千鶴さんも親しみやすく話しやすい人である。
この4組の親子でランチである。
待ち合わせ場所に着くとすでにもうみんな集まっていた。
「久しぶりっ!」ときゃあきゃあ言いながら再会を喜ぶものの、何か変だ。
着いて早々、違和感を抱く私。
勇人くんと千春ちゃんも久しぶりの再会だったらしく、大騒ぎして喜んでいる。
うちの子供たちは勇人くんや恵一くんのことを覚えていないみたいで、私の背中に隠れたりして戸惑っている。
そこまではいたって普通のことだ。
じゃあこの変な感じの正体は何?
わかった! 恵一くんの様子がいつもと違うからだ。
いったいどうしたんだ!?
家の周りはオフィス街で自宅にやってきた保健士さんからも、「うちの区でもちょうどこのあたりはお子さんのいない地域なのよね」と言われ(←ところがそれがガセだったことが後日判明。3軒隣のタワーマンションには泰子のところを含め同世代の子どもがけっこういたのだった)、友だちはみんな平日の日中は働いてるし、とっても孤独だったのだ。
人一倍寂しがりやで家でじっとしていることができない私は、早く夫が帰ってきてくれないかと毎日時計を眺めて過ごし、いっそのこと育休を切り上げて早く仕事に戻りたいと思ったほどだ。
またそう思う自分を母性本能に乏しいダメな母親だと責め、すっかり鬱々していたのであった。
そんな状態で迎えた3ヶ月健診。そこで知り合ったのが勇人くん(仮名)ママである保美さん(仮名)と恵一くん(仮名)ママである奈美子さん(仮名)。
保美さんは私より年上で勇人くんを42歳のときに出産した。ダンナは16歳年下でいわゆる出来ちゃった婚。介護士とシャンソン歌手の2つの顔を持つ。
一方の奈美子さんは当時30歳ですらっとして清楚な感じのきれいな人だ。こちらは専業主婦。
私たちは年齢もバックグランドも全然違ったが、なぜか意気投合した。
保美さんも奈美子さんも飲めるタイプだったので、ホームパーティーをしたり、誕生日が近い子供たちの合同バースデーパーティを開いたり、お買い物にいっしょに出かけたり、なんだかんだと理由をつけてはつるみ、私と保美さんが育休明けで職場復帰するまで、しょっちゅう会っていた。
会う頻度こそ減ったが、職場復帰しても定期的にランチしたりして付き合いは続いていた。
しかし子供たちがそろって年中さんになったころ、勇人くんの喘息が悪化して、空気のきれいなところに住まないと治療がむつかしいと診断された保美さん一家は多摩地区へ引っ越すことになった。
駅からずいぶんと遠いところらしいが、目の前には大きな公園があり、勇人くんの喘息はメキメキ良くなっていたのだという。
保美さんたちが引っ越してからさすがに定期的に会ったりはできなくなったが、年賀状のやり取りは続いているし、娘のお誕生会には必ず声をかけている。
そんな中、保美さんたちが久しぶりに東京に出てくるので、みんなでランチをしようということになり集まった。
この日は私と奈美子さんのほかに、千鶴さん(仮名)と千春ちゃん(仮名)親子も来ていた。
千春ちゃんは勇人くんが前に通っていた保育園のお友だちで、千鶴さんはその時代の保美さんのママ友だ。
この親子とは勇人くんのお誕生日会で2回ほど会ったことがあった。
千春ちゃんはいつもクラスで一番大きいらしく、元々保美さんから“うちの保育園にもAちゃん(うちの娘)並みにタテにもヨコにも大きい女の子がいるよ”と言われていた本人だが、実際並んでみたらうちの娘のほうがタテにもヨコにもデカかった(トホホ)。
とはいえ千春ちゃんも貫禄たっぷりの女の子(←ってそんな言い方されてもうれしくないか!?)で、お互いデカい女の子を持つ身であることと、年が近いこともあってか、千鶴さんも親しみやすく話しやすい人である。
この4組の親子でランチである。
待ち合わせ場所に着くとすでにもうみんな集まっていた。
「久しぶりっ!」ときゃあきゃあ言いながら再会を喜ぶものの、何か変だ。
着いて早々、違和感を抱く私。
勇人くんと千春ちゃんも久しぶりの再会だったらしく、大騒ぎして喜んでいる。
うちの子供たちは勇人くんや恵一くんのことを覚えていないみたいで、私の背中に隠れたりして戸惑っている。
そこまではいたって普通のことだ。
じゃあこの変な感じの正体は何?
わかった! 恵一くんの様子がいつもと違うからだ。
いったいどうしたんだ!?
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