娘が生まれたばかりのころ、里帰り出産から東京に帰ったきた私にはひとりもママ友がいなかった。
家の周りはオフィス街で自宅にやってきた保健士さんからも、「うちの区でもちょうどこのあたりはお子さんのいない地域なのよね」と言われ(←ところがそれがガセだったことが後日判明。3軒隣のタワーマンションには泰子のところを含め同世代の子どもがけっこういたのだった)、友だちはみんな平日の日中は働いてるし、とっても孤独だったのだ。
人一倍寂しがりやで家でじっとしていることができない私は、早く夫が帰ってきてくれないかと毎日時計を眺めて過ごし、いっそのこと育休を切り上げて早く仕事に戻りたいと思ったほどだ。
またそう思う自分を母性本能に乏しいダメな母親だと責め、すっかり鬱々していたのであった。
そんな状態で迎えた3ヶ月健診。そこで知り合ったのが勇人くん(仮名)ママである保美さん(仮名)と恵一くん(仮名)ママである奈美子さん(仮名)。
保美さんは私より年上で勇人くんを42歳のときに出産した。ダンナは16歳年下でいわゆる出来ちゃった婚。介護士とシャンソン歌手の2つの顔を持つ。
一方の奈美子さんは当時30歳ですらっとして清楚な感じのきれいな人だ。こちらは専業主婦。
私たちは年齢もバックグランドも全然違ったが、なぜか意気投合した。
保美さんも奈美子さんも飲めるタイプだったので、ホームパーティーをしたり、誕生日が近い子供たちの合同バースデーパーティを開いたり、お買い物にいっしょに出かけたり、なんだかんだと理由をつけてはつるみ、私と保美さんが育休明けで職場復帰するまで、しょっちゅう会っていた。
会う頻度こそ減ったが、職場復帰しても定期的にランチしたりして付き合いは続いていた。
しかし子供たちがそろって年中さんになったころ、勇人くんの喘息が悪化して、空気のきれいなところに住まないと治療がむつかしいと診断された保美さん一家は多摩地区へ引っ越すことになった。
駅からずいぶんと遠いところらしいが、目の前には大きな公園があり、勇人くんの喘息はメキメキ良くなっていたのだという。
保美さんたちが引っ越してからさすがに定期的に会ったりはできなくなったが、年賀状のやり取りは続いているし、娘のお誕生会には必ず声をかけている。
そんな中、保美さんたちが久しぶりに東京に出てくるので、みんなでランチをしようということになり集まった。
この日は私と奈美子さんのほかに、千鶴さん(仮名)と千春ちゃん(仮名)親子も来ていた。
千春ちゃんは勇人くんが前に通っていた保育園のお友だちで、千鶴さんはその時代の保美さんのママ友だ。
この親子とは勇人くんのお誕生日会で2回ほど会ったことがあった。
千春ちゃんはいつもクラスで一番大きいらしく、元々保美さんから“うちの保育園にもAちゃん(うちの娘)並みにタテにもヨコにも大きい女の子がいるよ”と言われていた本人だが、実際並んでみたらうちの娘のほうがタテにもヨコにもデカかった(トホホ)。
とはいえ千春ちゃんも貫禄たっぷりの女の子(←ってそんな言い方されてもうれしくないか!?)で、お互いデカい女の子を持つ身であることと、年が近いこともあってか、千鶴さんも親しみやすく話しやすい人である。
この4組の親子でランチである。
待ち合わせ場所に着くとすでにもうみんな集まっていた。
「久しぶりっ!」ときゃあきゃあ言いながら再会を喜ぶものの、何か変だ。
着いて早々、違和感を抱く私。
勇人くんと千春ちゃんも久しぶりの再会だったらしく、大騒ぎして喜んでいる。
うちの子供たちは勇人くんや恵一くんのことを覚えていないみたいで、私の背中に隠れたりして戸惑っている。
そこまではいたって普通のことだ。
じゃあこの変な感じの正体は何?
わかった! 恵一くんの様子がいつもと違うからだ。
いったいどうしたんだ!?
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