2010年4月25日日曜日

これは偶然なのか?②

 「次の土曜日だもんね。クジ」
と土田さんはすっかり立ち話モードに入っている。
 私は観念して自転車から降りてスタンドを立てると、
 「あら、ごめんね。呼び止めたみたいで」
と彼女はぺろりと舌を出した。
 「Aちゃん、どっか塾とか行ってるの?」
と聞く土田さんに、ついに銀座の先生の話をする私。

 「へえ~。占いねえ~」
 土田さんは感心していいのやら、疑っていいのやら、どう反応したらいいのか決めあぐねている表情を浮かべている。

 「でもそういえばね」と土田さんは何かを思い出すように話を切り出す。
 なんでも今日子ちゃんが幼稚園受験をする前に、すでに附属幼稚園に通っているお母さんにバッタリ会ったときに、今日子ちゃんが同じ幼稚園に入る夢を見たから絶対に受かるからぜひ受験してみてと強く勧められたのが、受験するきっかけになったと言うのだ。
 「だからきっと占い師に言われたのもありえない話じゃないかもしれないよ」
と自分自身を納得させるかのように「うん、そうだよ。きっと」と繰り返す土田さん。

 「じゃあ、土田さんもAが今日子ちゃんといっしょの小学校に入る夢でも見てよ」
と我ながら切実な言い方をしている自分に驚く私。土田さんも私の勢いに押されているのか、「そうだね。うん、夢にきっと出てくるよ」とたじろいでいる。
 “あちゃ~、やっちまったよ”と思う瞬間だ。

 このころになるとすっかりもう近所の区立小学校に行くことなど考えられなくなっていた。
 占ってもらうまではお受験することなんてまったく考えたことすらなかったのに。
 半信半疑だったのに学校に何度も足を運んだり、情報を集めたり、受験の日程が近づいてくるたびに、“何が何でも絶対に国立!”と鼻息が荒くなってきている。
 そう思うなら受験準備ちゃんとしろよっ!
と自分に突っ込みを入れるのだが、それはそれ。「記念でだいじょうぶ」という先生の言葉に従えば自然にしていていいはずだからだ。
 
 「きっと今日、ここでバッタリ会ったのも偶然じゃないんだよ。何かの縁があってのことだから。土曜日のクジの結果、絶対に教えてね。きっとだいじょうぶだよ」
と言い残して去っていった土田さん。
 ちょっと詮索好きな人だけど、子どもたちがいっしょの学校に通うようになったらきっと頼りにするだろうし、もっと仲良くなってもいいかなって思った瞬間でもあった。

 彼女が言う通り、このバッタリが単なる偶然じゃないといいんだけど・・・。

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