2009年10月20日火曜日

ママ友の書評①

 娘の保育園のクラスの保護者たちは仲がよく、よくつるんでいる。
クラス全体でもよく飲み会をするし、一部の親たちだけで集って飲むこともしばしば。
 だいたいいつもつるむメンバーというのは決まっていて、うち、右京家(仮名)、松野家(仮名)、藤吉家(仮名)、井戸田家(仮名)、脇坂家(仮名)、白波家(仮名)あたりがコアメンバーで、中でも右京家と松野家は夫がバンドをいっしょにやっていることもあり、行き来はしょっちゅうだ。

 それぞれの子どもたち同士が仲のいいからという理由ではなく(ただし5~6歳ぐらいの子どもだったら、たいてい誰とでも遊ぶ)、単純に親同士、気の合う合わないだけの基準で付き合っている。
 多少の例外はあるが、そういう家のママたちは私と大して年が違わない。
 35歳になる年で結婚して、36歳になる直前で娘を産んだ私は、地方によっては最高齢ママになるかもしれないけど、うちは都心に住んでいるのでママたちの年齢層が結構高い。
 あとの共通項はママのキャリアもしっかりとあること。どの家の夫たちも協力的で夫婦仲がいいこと。それぞれの子どもたちに弟か妹がいること。そして夫婦揃ってノリがよく、酒好きであることだ。

 また基本的にみんな歩いて行ける範囲のところに住んでいるので、外で飲もうが家で飲もうが電車とか気にしなくていい気楽さがいい。
 まあたいてい誰かの家で飲んでいるので、子どもたちも放って遊ばせておけるし、何か作って持ち寄ったりして、下手に外で飲むよりずっと楽しい。

 例によってみんなで集まって飲んでいるときに、小夏ちゃん(仮名)ママこと井戸田さんと日本の小説家の話になり、ふたりして舞城王太郎はすごいという話で盛り上がったついでに、自分の書き上げた小説についてポロッと漏らしてしまった。

 彼女はこのメンバーの中では最年少の20代後半(というかクラスのママの中でもほぼ最年少)でフリーのライターとして大手出版社を中心にして活躍している。
彼女の夫は日本最大の出版社K社のコミック編集者なので、夫婦揃って出版業界人だ。

 ちなみに娘のクラスはこの夫婦のほかに、飲み会コアメンバーではないが、夫婦揃って日経系の出版社の編集者だとか、同じく日経系の広告を扱っている編プロで編集者をやっているママもいて、私も元編集者なので、出版系限定の飲み会というのも鋭意企画中だ。

 それはさておき、井戸田さんに小説の話をすると、読んでみたいという話になり翌日送ったのだ。
 彼女は若いが、出版系の人間だ。T書店の本田くん(仮名)とどう違う見方をするのだろうか。

 それよりも彼女はママ友でもある。ママ友というのは性的なものを匂わすべからずという不文律があると私は考えている。そこが単なる友だちとの大きな違いだ。
 女全開で子育てはできないし、第一家族ぐるみで付き合うのにそんなものは邪魔なだけだし、警戒されてしまう。
 当然この保護者たちの中で、私はお母さんで夫の妻であるという揺ぎない立場抜きでは好き勝手なことは言えないのだ。
 
 だからこそ母でもなく、妻でもないときのことを書いた小説は女の部分が突出しているし、そういうのをママ友でもある井戸田さんに見せるのもいかがなものかという懸念はあった。

 そういう意味で送る前に、「ママ友が書いたものだという概念は絶対に捨ててから読んでね」と彼女に念を押したのだ。
 「うん、わかった~」と彼女はアルコールで頬を染めて答えた。
 その顔には小じわだとか、毛穴だとかは全然現れていない。なんせ私と彼女は一回りも違うのだ。
 私はなんとなくため息をついた。

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