4月も過ぎようとしていた。
銀座の先生によると、なんであれ2008年1月から4月の間に興味を持ったことを勉強すればフリーへの道が拓けるということだった。
ところがこの間特に新たに興味を持ったものもなく、仕事と家庭以外でやっていることといえば、以前からやっているピアノとフラメンコ、そしてT書店の本田くん(仮名)に見せるためにコツコツと書いている小説だけだ。
その小説が少しずつでも進むたびに読んでもらっていたHANAちゃんは3月末に派遣の契約切れで、会社を去ることになった。
彼女がいなくなった喪失感は大きかったが、何せ家が近いのはものすごくアドバンテージがある。さすがにしょっちゅうというわけにはいかなくなったが、ちょくちょく彼女はうちに遊びに来てくれていっしょに晩御飯を食べたり、電話したりメールしたりして付き合いが続いている。
しかし近い将来の飯の種になりそうなものはさっぱり思いつかない。占いの見立てによると2010年の春には会社を辞めて独立することになっているのだ。2010年春といえばあと2年を切っている。
これから勉強してモノになるようなものなんて、さっぱり思いつかない。
部署を変わってからは、自分ならではのクリエイティビティとかその手のことにさえこだわらなければ、特に仕事に不満はない。
おっかない上司はその分野ではカリスマ的存在で本当に尊敬できる人だし、そのうえご家庭の事情であまり会社には来ない。
私たちの部署がやっていることは2008年に入って急に社内で注目されるようになり、社内的社会的にも大いに意義のある仕事内容だと思う。
人間関係もいいし、ほぼ定時には帰ることができる。お給料だって特別いいわけではないが、ボーナスもあるし決して悪くはないと思う。
だから娘が小学生になるからといって、無理に会社を辞める必要もないのだ。だって何であれ個人で何かを始めて今ぐらいの収入を得るのは難しいと思うし、娘が小学生になったところで学童とかその手のものが充実しているので、物理的にもフルタイムで働くことは大いに可能だ。
けど私は会社員生活に飽きているのだろうか? 抽象的な言葉だけど、何かもっとクリエイティブなことがやりたいという焦燥感のようなものがどんどん強まってくる。
ただその焦燥感は10代のころ、20代のころに感じたような何者かになりたいという全能感とは裏腹のコンプレックスみたいなもの、自意識が過剰に煮詰まったような青い特権意識とは別種なものだ。
何がどう違うかうまく説明できないけど、自分自身が何者かになりたいというよりも、自分しか生み出せない何かを作り上げたいという欲求が日に日に高まっていった。
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