「子どもたちは将来、結婚もするし孫だってちゃんと見れますよ」
それは前回聞いたとおり。
「仕事もちゃんと手に職を持ってやっていけますか?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ。ふたりともちゃんと専門分野でそれぞれ活躍しますよ。向いている仕事はさっきも言った通り」
おお、よかった、よかった。
「それはそうと、最近果物を使ったパイ?ですかねえ? そういったものを作りましたか?」
「パイですか?」
「あなたの守護霊があなたが作った果物のパイがとってもおいしかったって、おっしゃっているんです」
「私の守護霊がですか!?」
なんだよ~、それ~。守護霊って味覚があるの? もしかして貧しい食生活とかしていたら、「もっとうまいもん、食えよ!」とかって、守護霊様に渇を入れられたりするのかしら?
「また作ってほしいそうですよ」
うわ! 食べたいものをリクエストする守護霊。毎晩、今日はカレーが食べたいだの、焼肉にしてくれだの、刺身にしろだの催促されたらイヤだろうなあ。
「夫が作ったものじゃなくって、私が作ったものですか?」
「ええ、あなたが作ったものだそうです」
私は酒飲みなので、基本的に甘いものは家では食べない。ましてやお菓子作りはきっちりきっちり材料を量って作らないといけないので、男の料理的にガガァーと混ぜて、チャチャチャと作るアバウトなクッキングスタイルの私には、スイーツ作りは似合わない。っていうのか、めんどくさい。
だからパイなんてそんなひちめんどくさいもんなんか、作るわけないじゃないの!
それに引き換え、マメな夫は毎週末手作りのパンを焼いたり、母の日にはなぜかチーズケーキを焼いてくれたり、毎年子どもたちの誕生日ケーキを焼いたり、極めつけはなんといっても私たちのウェディングケーキは新郎の夫の手作りだったのだ。
しかし突如、私の頭の中で♪チャラララアア~ン、チャラララタアターン♪(←バッハの超有名オルガン曲「トッカーターとフガー」)とメロディが鳴り響く。決して嘉門達夫の「♪タララーン 鼻から牛乳~♪」ではない。
思い出したのだ。
そうだそうだ、確かに作りましたよ。パイ。2ヶ月ほど前に!!
あれは2ヶ月ほど前のことだ。定年退職した元上司・鋼鉄の女こと、稲橋さん(仮名)のところに、何人かで遊びに行って夕食をご馳走になったのだ。
料理上手な彼女はこれでもかとたくさんおいしい料理を作ってくれていて、最後に出てきたのが、「りんごのタルト」だったのだ。
「うわ~、これおいしいですねえ」とみんなで言いながら食べていたら、「これ、めちゃめちゃ簡単なのよ」という話になり、誰かが「レシピを教えてくださいよ」と言い出したので、翌日さっそく全員のPCに鋼鉄の女から、懇切丁寧なレシピ(写真つき)が送られてきたのだ。
こんなものが送られてきて、放っておくなんて小心者の私にはできないね! だってコメントにはしっかりと「清永さんは特に適当に作らないこと。分量をはかって!」と名指しで書かれていたのだ。
恐ろしい。
そしてその週末、いそいそと鋼鉄の女のレシピに従って「りんごのタルト」を作ったのだ。
お味のほうはといえば、子どもたちにも好評であっというまに平らげてしまった。
もちろん、さっそく写メールで鋼鉄の女に作ったタルトの出来栄えを送り、速攻で「りんごの並べ方が汚い! きちんと縁に沿って円く並べること!」とダメだしを喰らってしまったが、結局ちゃんと作ったのは私だけだったらしく、のちに別の人に「清永さんのああいうところはかわいい」と鋼鉄の女は語ったという。
まあ鋼鉄の女が怖いばっかりに普通だったら作るはずもない「りんごのタルト」を作るハメになったのだが、先生はこのことを言っているのだろうか。
「パイナップルのパイ?」
「はあ?」
「パイナップルのパイってあるんですかねえ?」
「さあ? あるといえばあるかもしれませんけど」
「あなたの守護霊がパイナップルのパイを作ってほしいって言ってるんですよ。意味わかりますか?」
「いや、わかんないです」
「ご主人と協力してもいいから、パイナップルのパイを作れって言ってるんですけど、私もパイナップルのパイってなんだか想像できないんですよ。けどこれを作ることで何か新展開があるかもしれないってことみたいですけど」
「へえ~。まあでもそういうことなら作ってみてもいいですけど」
「ぜひそうしてあげてください。楽しみにしているそうですよ」
私の守護霊様って甘党なのかしら?
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