「さて、あなたのご主人のことですが」
先生が次に切り出してきたのは夫のことだった。
「相変わらずいいご主人ですねえ。この人は本当にいいですよ。配偶者の位置にきちんと立っているし、コツコツと努力しているのも見えています」
「転職はどうでしょうねえ。明日にでも会社を変わりたがっているんですけど」
「ご主人の仕事運は48歳から急激に良くなります(この時点で夫は45歳)。今年の春も転職はいいですけど、48歳まで待ったほうがスムースですよ」
ああ、これも前回と同じ答えだ。
「何か勉強されていますよね?」
そうなのだ。夫は半年ほど前から通信教育でオーストラリアの大学の経営学のコースを取っている。
5年ほど前も同じ大学で、言語学を働きながら夜、コツコツ勉強しながら3年ほどで修了し、大学院の修士号を取得した。
きちんと決めたことをやり遂げる姿勢に私は大いに惚れ直し、尊敬したものであった。
しかし言語学の修士号と言うのは彼の知的好奇心は大いに刺激し、仕事でも持っていると人々に説得力を与えてはいるが、彼の収入増には結びつかなかった。
転職活動をしても、言語学の修士課程は語学産業以外では意味がなく、そこでより有利な転職のために、もっと収入に結びつきそうなマネージメントコースを取ることにしたのだ。
会計学やらマーケティングなどひとつひとつ修了していけば、4年後にはMBAを取得できるという形で今、夫は勉強している。
ただ先日コース選択時に入力ミスをしてしまい、一度にふたつのコースをこなさなくてはいけなくなり、このごろは毎晩勉強に追われ、ちょっとストレスが溜まりかけている。
「今やっていらっしゃる勉強はいいですよ。必ずやり遂げてください。ご主人が思っている以上に素晴らしい結果を生みます。ちょっと今、ストレスがあるかもしれませんが、休み休みでもいいので、とにかく修了させることです」
おお、このMBA取得が48歳からの仕事運アップにつながるのか? あ、でも44歳から勉強を始めて、4年後の48歳に修了するのだから、48歳からの仕事運アップはまさにタイミングがぴったり。
また今ストレスが溜まっているっていうのもズバリだ。
すごいよ~、先生。やっぱり。
そういえば夫の仕事といえば、前回診てもらったときに、「彼は運が強いので、仮に今会社を辞めてもなんとかなるし、辞めなくても4年半後にもっと楽に転職できる」って言われていた。
そしてその後の転職活動で、夫が最終面接まで行って落とされた会社が3社。
最後の最後で落とされた理由はどうしてもわからない。
夫はずいぶん落ち込み、かなり「どうせ僕なんて」モードに突入してしまったが、 ただ、その3社と言うのが、ひとつはあのリーマン・ブラザーズ、もうひとつはAIG生命、もうひとつは名前は忘れてしまったがコンピューター関連のグローバル企業で、この会社も先月倒産してしまった。
逆に最終面接が通って、たとえばリーマン・ブラザーズなんて行っていたら、真っ先に路頭に迷うハメになっただろう。
そういう意味では3社とも落としてくれてありがとう、だったのだ。
確かにある意味運が強いのかも。
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