何人かの一級建築士を呼びつけて、合い見積りを取らせて、結果弟の友だちのお兄さんの事務所に決定という田舎特有のウェットな選択を経て、我が家のリフォームは始まった。
20年前、父の友だちだからという理由だけで建築士を決めて、痛い目に遭っているはずなのに、みんななかなか学習しないものである。
そこで驚愕の事実が発覚する。
キッチンと洗面台を挟んである壁の中が腐っていたらしく、配線にも達しようとしていて、もう少し放っておいたら、漏電していたというのだ。
恐ろしすぎるぜ、それって欠陥住宅だろうがっ!
まあそんなこんながあってオカンはいよいよリフォーム工事開始が近づいてきて浮き足立っているのだ。
積年のオカンのリベンジやいかに!である。
「銀座の先生が言うにはリフォームの場合やと、家の外観が変わるって言ってたよ。そのへんどうなわけ?」
「そんなもん、変わるのは中だけやで、外身なんか変わらんわ」
「けど店舗部分がなくなるんやろ? シャッターがあったところとかどうするの?」
「そんなもん、建築家の人があんばようやってくれるで、任せとけばいいわ」
「!!!」
おいっ! いいのかそんなんで! 前だってお任せにしてえらい目に遭ってたやろうっ! いい加減人任せはやめろ。
ああ恐ろしい。あんなダメな町に長年住んでいると、しっかりしていたはずのオカンまでダメになってしまうのか。
「あと2月中はインフルエンザとかそういったウィルス性のものに気をつけろだって」
「ふん! 私は体が丈夫やで、ここ8年間ぐらい風邪なんてひとつも引いとらんわ」
「まあそういう油断が大敵なんやで、気をつけといてよ」
「でもその占い、本当に当たるんかね?」
「私的にはいいことばっかり言われとるで、当たってほしいけど」
「私も診てもらおうかな。たぶん“あなた、男(←間違いなく私の父のこと)に苦労させられてきたわね”って同情されるわ。ふう~(ためいき)」
「・・・・・」
「それにしても2万円やろ? 1日5人診たとして10万。週5回働いたとして50万。で、一ヶ月で200万! ひえええ~! いい商売やない。でアルバイト雇って一人月30万も払えばいいやろ」
「事務所は結構高そうなマンションやったよ」
「高いっていったって、せいぜい30万とか40万やろ。諸経費が毎月5万かかったとしても、粗利は6割以上はあるやろう?」
いきなり利益率を計算し始めるオカン。廃業しても未だに商売人だ。
まあ確かに言われてみれば、占いって流行れば儲かるだろうな。
そうでなきゃ、細木数子みたいに指が折れるんじゃないかと心配したくなるような巨大な宝石のついた指輪なんてとっかえひっかえできないよね。
もっとも銀座の先生からはそういった生臭い感じは漂ってこないけど。
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