「近々引っ越す予定とかありませんか?」
唐突に切り出す先生。
そんなことは100%ありえない。我が家は都心にありながらもそこそこ広く、それでいて家賃は相場の半額近く。あまりにも条件がいいので、最初は「すわっ、訳あり物件か!?」と訝っていたほどである。
「そうですよねえ。見えているのは大きめの一軒屋ですから。あなたが住んでいるのは賃貸のマンションですものね」
そんな、私が住んでいるところまで見えるのか!? だったらちゃんと掃除しとかないとな。まあ、そんな問題じゃないか。
「あなた自身の引越しじゃないとすると・・・・ご実家に引越しの予定はありますか?」
それもない。バリバリ農耕民族的な私の家族は一度根を張った場所から、仮にその根が腐っていたとしても絶対に離れやしない。
「うーん、おかしいなあ。引越しがクッキリ見えてるんだけどなあ」
首をかしげる先生。
「引越しはないですけど、うちの実家、来月から家のリフォームをするんですよ」
「ああ! それだわ! リフォームしている間、一時どこかに引っ越すとかないですか?」
「いや、それはないです」
「じゃあよっぽど外観が変わるんだろうなあ。あなたの実家、見た目がずいぶん変わりますよ」
そ、そうなのか!? ずっと自営業を自宅で営んでいたうちの両親は去年の年末、ついに商売を畳んで、その前から上の弟家族と同居を始めていたこともあって、店舗部分と居間とキッチンを全部ぶち抜いて、広いLDKを作り、車庫を両親の寝室にし、ついでに風呂場も全部一新することになっていたのだ。
まあ店舗がなくなる分、外観は確かに変わっちゃうかもしれないけど、それにしてもそんなことまでわかるのか? 先生!
「その間、そうですねえ、2月中までこのうちのお母さんは感染症とか風邪のひどいものとかに注意が必要です。おかしいと思ったらすぐに病院に行くなり、休むなりしてもらってください。3月になればもうだいじょうぶになりますから、それまでの間は気をつけてください」
「私の父って結構アルツ(ハイマー)入ってるんですけど、だいじょうぶですかねえ?」
「だいじょうぶですよ。しばらくこのまま行きますから。長生きされますよ」
おいおいおい、妄想が始まっている父の様子がこのまましばらく行かれても困るんだけどなあ。トホホ。まあ、これ以上、しばらくはひどくはならないということか?
「うちの家族はだいじょうぶですかねえ?(←なんとも漠然としている質問だ)」
「はい、だいじょうぶですよ。お母さんの風邪は気をつけてくださいね」
そうか、だいじょうぶか。それなら心配なし! はい、以上実家のこと、終わり!
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