2010年9月21日火曜日

試験を終えて①

 「クイズ大会、楽しかった?」
 「うん」
 もう試験内容に関して聞きたくてしかたがないことが山のようにある。
 逸る気持ちを抑えて(←抑えきれなかったと思うが!)、あれこれ娘に質問をぶつける。
 そう、要は一番聞きたいことは、「娘よ! 君は試験がちゃんとできたのかい?」。
 これに尽きるのである。

 「お話の記憶はどうだった? 時間がなくてできなかったところとかなかった?」
 「ううん。全部やったよ。わかんなかったことはないかな」
 「図形は? どんなのが出たの?」
 「やったことがないのが出たけど(←ちなみに出題されたのは左図通りに写しなさいという問題の変形バージョンで、書き写す側のマス目が変形しているけど位置は変わらないというものだった。←ってこの説明だとわかんないかっ!?)、最後の1問以外は全部できたよ」
 「おお~、1問を残したのみかっ! エライっ! じゃあ制作は? ちぎりは?」
 「うん。最後まで完成できなかった。あとね、ノリを貼れば全部できたんだけど」
 「そうかっ! でもほとんどできたも同然だなっ! 行動観察は? 何やったの?」
 「スポンジ(←すばらしいっ! Wの新田先生(仮名)の予測通り!)を積み上げてどのチームが一番高くできるかってのをやったよ。私たちのチームね、優勝したんだよ」
「それはよかったねえ。クマ歩きは?」
「うん。楽しかったよ。終わったときにね、先生から天才!って褒められたよ」

す、すばらしいっ! 相当できてるではないか!
「最初に先生に何か質問されなかった?」
「“朝ごはんに何を食べましたか?”って聞かれたから“おにぎりです”って答えたよ。その次に“おにぎりには何が入っていましたか?”って言われたから、“梅干とサケです”って言った」

そう、T大附属T小学校の口頭試問は、試験が始まる前に受験票に貼られた写真と本人を先生が確認するときに1問か2問、何か質問されると聞いていた。
このときに聞かれることはたいてい「朝ごはんに何を食べましたか?」とか「ここまで何で(←交通手段のこと)来ましたか?」という他愛のないもので、合否にはそれほど影響しないらしいが、一番大切なことはここではきちんと先生の目を見て話すことだという。
受け答えの利発さを求められているのではなく、視線が合わない子がいれば自閉の気や発達障害を疑い、排除するのだという。
「先生を目、ちゃんと見た?」
「うん。見たよ」
よしよし。

あと「朝ごはんに何を食べましたか?」と聞かれて、最悪なのは「何も食べていません」と答えさせることだけど、朝ごはんを通じてある程度ちゃんとした家庭であるということもこの際、アピールしておきたい。
なんとなく朝ごはんのことが聞かれそうな気がしていたので、おにぎりにしておいたのは正解だった。トーストというのも味気ないし、ご飯とおかずもあれこれあったって、子どもはとっさに答えられないからね。
国立小の口頭試問に必要なものは、“テンポ”。それに尽きるそうだ。

あとT大附属T小の試験は30人ひとつのグループとして色分けされ、赤の5番だとか青の26番だとかという番号が当日の受験番号になる。
Wの新田先生が言うには、教室は6人で一列、全部で5列という配置になり、お話の記憶のテープの位置や、黒板などは前にある関係から、一番前の真ん中辺りにあたる各色の7番、13番、19番は若干有利なのではないかということだった。
娘は白の7番であった。この点からいってもなんかいい感じだ。

「それとね、クイズ大会の始まる前にね、“これから試験を始めますが、誰か始めのあいさつが言える人はいますか?”って先生が言うからね」
何っ!? 始めのあいさつだと!? そんな話はWでも聞いたことないねっ!

「それで誰も手を挙げなかったので、私が手を挙げたのね」
えっ!? そうなの?
「で、どうなったの?」
あまりに意外な展開に思わず声がうわずる私。

「“はい、白の7番さんどうぞ”って言われたから、私あいさつしたの」
「ど、どんな?」
「“皆さん、今日はとってもいいお天気ですね。今日のこのいいお天気に負けないように晴れやかな気持ちで、今日のクイズ大会をがんばりましょう”ってあいさつしたんだよ」
「!!!」

「クイズ大会」かいっ! まあそうやって教えてきたのだから仕方がない。
それにしてもだ。「晴れやかな気持ち」だなんて、いつの間にそんな難しい言葉を覚えたんだ? 娘よ。
マジか? すばらしすぎるぞ。そのあいさつ。

「先生はそのあとなんて言ったの?」
「“皆さん、白の7番さんのあいさつはどうでしたか? すばらしかったですね。じゃあ拍手!”って拍手をいっぱいもらったよ」
ふっむっ! あまりの誇らしさに鼻の穴が膨らむ私。

「でね、終わったあとにね、“では終わりのあいさつができる人がいますか?”って言われたんだけど、そうしたら白の23番さんが“私が今度はやります”って手を挙げて・・・」
「ちょっと待った! そのときにAちゃん(←娘)は手を挙げなかったの?」
「うん。だって私、一度あいさつしてるんだもん」
エライ! あんまりやりすぎると単なるでしゃばりだもんね。

「で、白の23番さんはなんてあいさつしたの? あと他に手を挙げている子はいなかったの?」
「白の23番さんだけだったよ。白の23番さんはね、“今日は皆さん、全力を尽くしてがんばりました。本当にお疲れ様でした”だって」
すごい。「全力を尽くして」だって! やるなあ~。白の23番さん。
「先生はなんて言ってた?」
「“白の23番さんもすばらしいですね。じゃあ皆さん、拍手!”って拍手してもらってたよ」
おお~。娘と白の23番さんはかなり有望ではないかっ!
いいぞ~。いいぞ~。これはかなりいい線をいくのではないか?

「赤のお部屋はあいさつしなかったって」
「なんでそんなことがわかるの?」
「だってお部屋を移動するときに、赤のお部屋にいたお兄さんお姉さんに聞いてみたんだもん」
なんと娘なりに独自調査をしたというのか?
そうかあ~。部屋によるんだな。

「本当にそんなすばらしいあいさつしたの?」
 できすぎていてちょっと半信半疑な私。
「うん。そうだよ。褒められると気持ちいいね」
君の笑顔も今日の天気に負けないぐらい晴れやかだよ。

白の部屋は娘と23番さんで決まりだな。
すばらしいっ! 期待に胸高鳴る私であった。

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