前の会社の後輩山木(仮名)と先輩森重さん(仮名)が遊びに来た。山木は去年結婚してグアムで式を挙げたので、そのときの写真とか持ってきてもらったのだった。
青い空と白い砂浜で幸せそうに微笑むウェディングドレス姿の山木はバッチリ決まっていて、とてもきれいだった。
そのときの話などを肴にお酒を飲む私たち。
「どうよ。新婚生活は?」
「楽しいですよ♪」
「そりゃそうだって! 今楽しくなかったらいつ楽しいのよ!」
森重さんも既婚者なので、彼女も私も結婚生活においても山木より先輩にあたるわけだ。
「そうそう、山木も銀座の先生に彼とのこと占ってもらったのよねえ。その通りになってる?」
「う~ん。微妙かも。私はアンチ・銀座の先生ですからねえ」
「まあ計算間違いはないよなあ~」
前にも書いたが私の紹介で銀座の先生のところで診てもらった山木は、計算間違いをされてしまった。
銀座の先生の鑑定法のひとつが生年月日のひとつひとつの数字を足していって、逆ピラミッドの3角形を作る。3角形の角に来た数字を元に占う人の資質とか運勢とかを診ていくのだけど、山木の場合はこの3角形の足し算を間違えられていたのだ。
しかし間違えるか? この足し算って一桁の足し算だから小1レベルですよ。
2万円も払ってそれはないでしょう。
電話をかけて計算ミスの件を伝えた山木だったが、たった7分だけ間違えた分を電話鑑定されてそれで終わってしまったらしい。
7分かよっ! 計算するとたった2333円分ですよ! それは納得いかないよなあ~。
銀座の先生を紹介してあげた人は皆、先生のファンというか信者になり、その後も何度も鑑定してもらうようになってるが、そうした理由から唯一「あんなんは認めませんっ!」と山木はアンチ・銀座の先生になってしまったのだ。
「そうそうお姉さん(←私のこと)に伝えなきゃ。先週、私と森重さんと美野里(←同じく前の会社の後輩)の3人で占いに行ってきたんですよ」
「なぬ? 占い?」
「そうそう、うちの会社(←前の会社。森重さんと美野里はまだ働いている)で流行っていてみんな行ってるのよ。すごっく当たるって評判で、山木ちゃんに話したら行くって言うから行ってきたんだ」
「おもしろかったですよぉ~。私は絶対こっちのほうが銀座の先生よりおススメ。お姉さん、知ってます? 渋谷の父って言うんだけど」
「渋谷の父ぃ!?」
「六星占術って言うんですかねえ~。聞かれるのは生年月日だけなんですよ。名前とか手相とか霊感とかは一切なし。私たち3人まとめて診てもらって、イチイチ当たってておもしろかったですよぉ。ふつう人が占ってもらうの聞く機会ってないですもんね」
「そうそう。3人で結局3時間診てもらったんだよね~」
「3時間も! それでおいくら万円?」
「ひとり7000円でいいですよって」
「それは安いっ! しかし3時間も聞くことがある?」
「ずっと占ってもらってるわけじゃないんだよ。“お時間ありますか?”って聞かれて“ある”って答えたら、陰陽五行って言うの? 暦の読み方とか六星占術の基本をレクチャーされるんだよね。それが勉強になるというか、ほぉ~って感じで、そのレクチャーだけでも1時間半!」
「何それ! 占い教室か!?」
「その話がおもしろいんですって! すっごくためになりましたよぉ」
「で、何言われたの?」
「えーと、それぞれの性格とか向いてる仕事とか、パートナーとの相性とか・・・」
「それは当たってたのかい?」
「それはもう。最高におかしかったのは美野里とダンナさん、超腐れ縁なんですって!」
美野里とそのダンナは確かに15年ぐらい前から周りに猛烈に反対されながら、くっついたり別れたり揉めたり騒いだりしながら、ようやくめでたくゴールインしたところだった。
それは確かに腐れ縁だろう。
「へえ~、私も行きたいっ! どうしたらいいの?」
「やっぱり清永ちゃんならそう言うと思ってたよ~。そこは紹介制だから私たちのうち誰かの名前を出せば予約取れるよ」
「わりと予約もすぐ取れますから。お姉さん、行ったらまた教えてくださいね」
ということで、さっそく渋谷の父に連絡してみることにしたのであった。
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