GWに行われるピアノの発表会も無事に終わり、晴れて私はピアノを辞め、代わりに息子が泰子(仮名)のピアノ教室に通うことになった。
銀座の先生からは息子はピアノに向いているのでぜひやらせるべきだというアドバイスをもらっていたが、肝心の泰子が「Lくんにはまだ早いよ」と息子を教えることを渋っていたのだ。
しかし当初の予定通り、GW明けから息子もピアノを習うことに。
初日。真新しいピアノバックを持って、前もって指定されていた楽譜を息子に持たせる。
泰子が選んだのは、「ぴあのどりーむ」という幼児向けのシリーズ。
娘はオーソドックスに「バイエル」だったのだが、泰子いわく息子が「バイエル」を耳で聞いているはずなので、兄弟の場合は違うシリーズを選んだほうがいいそうなのだ。
しかも息子が始めるのは、娘のときより遥かに易しいやつなのだという。
「たぶんLくんはこれぐらいから始めたほうが良さそうだよ。そうだ。Lくんって鉛筆持ったことあったっけ?」
あるに決まってるっちゅうの! 泰子はハナっから息子のことをアホだと思っている。失敬な。
「ぼく、ピアノ嫌だ。だったら大人になってからやるよ」とわけのわからんゴネ方をする息子。だいじょうぶかいな。
「あ、Lくん。いらっしゃい。ちゃんとやるんだよ」
息子が新たな生徒として加わることに不安そうな顔を見せる泰子。
「&#&‘〈〉’‘“huuy’’(#)(‘!!」
泰子の問いかけに奇声で返す息子。バレエ代も相当授業料をドブに捨てているようなものだが、ピアノもその二の舞になるのだろうか。不安。
30分のレッスンが終わるころ、泰子のところに息子を迎えに行く。すでにレッス
ンは終了していたらしく、息子は泰子の娘の真美ちゃん(仮名)のディズニープリ
ンセスシリーズのスクーターで室内を猛スピードで飛ばし、泰子と真美ちゃんに
「もうやめてよぉ! いいかげんにしなさい!」と叱られていた。
しかしまったく人の話を聞いていない息子。とにかく息子は自分がやりたいと
思ったことをやりたいと思ったときにやらないと気がすまないのだ。まったく自由
奔放。
「どう? ピアノの調子は?」おそるおそる泰子に尋ねると、意外や意外。
「Lくん、すっごくいいよ。物覚えもいいし、ちゃんと楽譜も読めるし、なんだ。こんなんだったら、もう少し難しい本から始めてもよかったかな」
というではないか!
もしや銀座の先生の言うことは当たってる?
そして翌週。
「やっぱりLくん、いいよ。指がぺたーってなるのは残念だけど、ちゃんと楽譜見て弾いてるし、指の番号も守ってるし、ドレミもちゃんとわかってるから、ピアノ向いてるよ。もしかしたらAちゃん(娘)より進みが速いかもよ」
と、泰子ベタ褒めである。おお~、ようやく息子に向いているものを探してあげられた感じだ。
家での練習も思ったより嫌がらずにやるし、楽譜のワークもスムースだ。娘のときはドレミを教えるのにずいぶんと苦労したっけ。まあその甲斐あって娘は1年半ほどで「バイエル6」に突入し、すでに私が教えられるレベルはすぎてしまったのだが。
ちょうど息子がピアノを習い始めた日に、オカンもピアノを始めた。オカンは私たちの発表会で同世代のオバサンたちが頑張っているのを見て、すっかり触発されてしまったのだ。有限実行。東京から帰って速攻で先生を見つけたらしい。奇しくも息子と同じレッスン曜日だ。
「暇やで毎日2時間ぐらい練習しとるよ」と張り切るオカン。
元来、マジメで負けず嫌いな人である。
「Lには負けんでね。今度、あんたら帰ってきたときに勝負するでね」
果たして67歳のオバサンと5歳児のピアノ対決の勝負の行方はいかに!?
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