2010年4月28日水曜日

T大附属T小 志願票配布日

 翌日はT大附属T小の志願票配布日だった。
 朝の9時から受付スタートだったので、また例によってバスに揺られてT小に向かう。
 T大附属T小に行くのは初めてだ。

このバスに乗る時間帯はちょうどG大附属とO女附属の幼稚園生がお母さんと登園するタイミングにあたり、毎回思うのはお母さんたちもちゃんとしてそうだし、子どもたちもきちんとしつけられていることだ。
 どちらの附属の子どもたちもバスを降りるときに必ず運転手さんに向かって、「ありがとうございました」と大きな声でお礼を言う。
 きっと毎朝の習慣になっているのだろう。こういうのは見ていて気持ちいいし、そういう子どもたちには有望な未来が待っているだろう。
 最近読んだお受験本によると、小学校の志望理由には具体的な事柄を述べたほうがいいと書いてあったので、もしこのふたつの附属小学校で志望理由を聞かれたら、そのうちのひとつにこの朝のエピソードを入れようと目論んでいる。

 T大附属T小はバス停から“教育の森”(←ネーミングもナイス!)と呼ばれる緑地を突き抜けて5~6分の場所にあり、都会のど真ん中だというのに自然豊かな絶好な教育環境にある。
 さすがは天下のT大附属T小!
 
教育の森のあたりからすでに学校に向かうとおぼしき保護者たちの姿が見えてくる。
 この時点で9時10分前なのだが、なんですかっ! この長蛇の列は!!
 志願票もらうだけでしょ? なんでこんな朝っぱらから並んでいるのだ?(←まあ、そういう私もなっ!)
 しかも気のせいか、お父さん率が異様に高い。

 とりあえず列の最後に並ぶと、雨後の竹の子のようにぞろぞろと人が集まってくる。
 しかし9時過ぎるとドンドン列が進んでいき、あっという間に校門の前に。
何やら志願票だけでなく、パンフレット販売のブースができていて、その前に人が集まっている。
 パンフレット代、千円也。
なんのパンフレットかと思ったら、なんのことはない。「学校説明会は行いませんから、代わりにパンフレットを買ってください」ということなのだ。
天下のT大附属T小さまに言われりゃ、買わんわけにはいかんだろう。
しかしボロくないか!? 5000人受けに来て、受験料以外にパンフレット代、500万円也。なんか悔しいぞ。
しかし悔しがっていたら、小学校の情報は得られないのだ。
ええええ、わかりましたとも。買いますよ。まったくっ。

しかし保護者たちの様子が他の国立以上にピリピリしているように感じるのは、気のせいだろうか?
なんか親たちの必死さが怖い。絶対にうちの子だけは出し抜いてやる的な闘志をヒシヒシと感じるのだ。
他の国立小学校はクジ運が大きく作用するのに対して、この小学校は半数が一次のクジは通る。その後のペーパーテストが大きくものを言うので、「運試し」というより「取りに行く」というスタンスの違いがこの気迫を生むのだろう。

 駅方面に向かって歩くと、あれあれ、いつの間にか業者がパンフレットを配り始めている。
 教育の森から駅まで続く業者の数はこれまでの学校の比ではない。
 いちいちパンフレットを全部もらっていたら、なんと厚さ30センチほどになってしまった! 業者も稼ぎ時なんだろうなあ~。

 信号待ちをしていると、あらあら見知った顔のお母さんを発見。
 娘と同じ幼児教室(←お受験塾ではない)に通っている澪ちゃん(仮名)ママだ。彼女もこちらに気づき小さく手を振っている。志願票を取りに来るだけなのにバッチリお受験スーツ姿だ。

 ちなみにお受験スーツをまだ買っていない私は(←早く買えよな)、ちょっとだけ改まった普段着だ。
 だってこれから会社行くんだもん。いちいちあんなん着てられないって。
 とりあえずスケジュールをこなすだけでも必死な私なのであった。

2010年4月25日日曜日

これは偶然なのか?②

 「次の土曜日だもんね。クジ」
と土田さんはすっかり立ち話モードに入っている。
 私は観念して自転車から降りてスタンドを立てると、
 「あら、ごめんね。呼び止めたみたいで」
と彼女はぺろりと舌を出した。
 「Aちゃん、どっか塾とか行ってるの?」
と聞く土田さんに、ついに銀座の先生の話をする私。

 「へえ~。占いねえ~」
 土田さんは感心していいのやら、疑っていいのやら、どう反応したらいいのか決めあぐねている表情を浮かべている。

 「でもそういえばね」と土田さんは何かを思い出すように話を切り出す。
 なんでも今日子ちゃんが幼稚園受験をする前に、すでに附属幼稚園に通っているお母さんにバッタリ会ったときに、今日子ちゃんが同じ幼稚園に入る夢を見たから絶対に受かるからぜひ受験してみてと強く勧められたのが、受験するきっかけになったと言うのだ。
 「だからきっと占い師に言われたのもありえない話じゃないかもしれないよ」
と自分自身を納得させるかのように「うん、そうだよ。きっと」と繰り返す土田さん。

 「じゃあ、土田さんもAが今日子ちゃんといっしょの小学校に入る夢でも見てよ」
と我ながら切実な言い方をしている自分に驚く私。土田さんも私の勢いに押されているのか、「そうだね。うん、夢にきっと出てくるよ」とたじろいでいる。
 “あちゃ~、やっちまったよ”と思う瞬間だ。

 このころになるとすっかりもう近所の区立小学校に行くことなど考えられなくなっていた。
 占ってもらうまではお受験することなんてまったく考えたことすらなかったのに。
 半信半疑だったのに学校に何度も足を運んだり、情報を集めたり、受験の日程が近づいてくるたびに、“何が何でも絶対に国立!”と鼻息が荒くなってきている。
 そう思うなら受験準備ちゃんとしろよっ!
と自分に突っ込みを入れるのだが、それはそれ。「記念でだいじょうぶ」という先生の言葉に従えば自然にしていていいはずだからだ。
 
 「きっと今日、ここでバッタリ会ったのも偶然じゃないんだよ。何かの縁があってのことだから。土曜日のクジの結果、絶対に教えてね。きっとだいじょうぶだよ」
と言い残して去っていった土田さん。
 ちょっと詮索好きな人だけど、子どもたちがいっしょの学校に通うようになったらきっと頼りにするだろうし、もっと仲良くなってもいいかなって思った瞬間でもあった。

 彼女が言う通り、このバッタリが単なる偶然じゃないといいんだけど・・・。

これは偶然なのか?①

 保美さんや奈美子さんたちとのランチのあと、一度家に戻り再び買い物のためひとり自転車で外出した私。
 そこでバッタリ出くわしたのが土田さん(仮名)と今日子ちゃん(仮名)親子だ。
 自転車に乗ったまま「こんにちは」とあいさつをして走り抜けようとしたら、
 「(G大附属)T小の説明会にいたんだって!?」
と声をかけられ、思わず立ち止まる。

 まったく~。誰に何を言われているのか、わかったもんじゃない。
 「Aちゃんママを見たよっていう人が何人もいてね。何々、T小受験するの?」
と土田さんは好奇心を隠さない。

 この親子、結構うちから近いマンションに住んでいて、育休のときに毎日のように通った児童館でよくいっしょになったものだ。
 ちなみに「Aちゃんっていつも可愛いお洋服着てるよね? やっぱり外国製?」と聞いたママとはこの人のことだ。

 さらに言えば今日子ちゃんはG大附属T幼稚園に通っていて、エスカレーター式にT小学校に上がることが確定している。
 もし銀座の先生の言うことが正しければ、娘と同じ小学校に通うことになるのだ。
 正直言って先生から「兄弟そろってG大附属T小学校に入る」と占われたときに、どんな学校なのか土田さんに相談してみようかと考えたこともあったが、すでに通っている人にそういう話をするのもなんとなくはばかられ、するなら抽選が通るなりなんらかの結果が出てからでもいいかと思いあぐねていたところであった。

 たまたま1ヶ月ぐらい前にもバッタリ出くわし、
 「Aちゃん、小学校どうするの? やっぱりインターナショナル・スクール?」
とむき出しの好奇心で尋ねられた。そのときは、
 「国立は一応受けてみるけど、クジ運が悪いからこればっかりはね」
と答えると、土田さんはいかに今日子ちゃんが強運の持ち主で幼稚園受験のときにもその運の強さが発揮され、実はO女も3次まで進んでいて、けど結果的には今のところが向いていてこれで中学までは安泰だということをいっきにまくし立てていた。

 「うちも今日子ちゃんみたいに運があればいいんだけど」
という思いっきりな私の社交辞令に、
「ぜひAちゃんには入ってきてもらいたいわ。うちのところはね、自己主張がハッキリしている子じゃないとやっていけないの。Aちゃんならしっかりしているから、途中からでもみんなにちゃんとついてこれると思うよ」
と驚くほど無邪気な調子で彼女は応じた。
それって内部進学生の特権意識丸出しの上から目線だよな。本人はそんなつもりはないんだろうけど、ハッキリいってムカつく。
このとき数億分の1ミクロンぐらいだけ、お受験殺人事件の加害者である母親の苛立ちが理解できたような気がしたものだった。

2010年4月24日土曜日

恵一くんの変貌②

なんと自営業を営むご主人と店舗兼自宅の一戸建てを購入したのだが、不況の煽りで収入が激減し、ローンが払えなくなってしまったのだという。
何度か遊びに行ったことがあるという保美さんは、
「でもあの家は立地がいいから、いい値段で売れるよ」
と太鼓判を押している。
「じゃあ引っ越すの?」
「近くで安い賃貸が借りられればいいんだけど。保育園もあと半年だけだから今のところを卒園させてあげたいし」
とため息をつく千鶴さん。気のせいか白髪が目立ってきているような。きっと気苦労が多いんだろうな。

「だから小学校も引っ越し先次第だから、どこになるのかわからないんだよね」
「もう来年みんな小学生なんだね~」
「あっという間だねえ~」
「AちゃんはやっぱりM小学校なの?」
と奈美子さん。そう、恵一くんと娘は学区が同じなので、ふつうに区立に行けば同じ小学校に入ることになる。

「限りなくM小だけど、一応クジ引きする(←=国立受験)つもり」
「ほんと? うちもクジ引くよ。美央さん、どっか塾行かせてる?」
気のせいか奈美子さんの目が爛々と輝き始める。
「いや、もうぶっつけ本番。実は超当たるという評判の占い師の先生に国立受かるって言われてさ。しかも記念でいいって言われたから、何も準備してないんだ~」
「へえ~(←あきらかにアホを見る目つき)。どこ受かるって言われたの?(←とりあえず聞いてやったって感じ)」
「G大附属T小だって」
「今週の土曜日クジだもんね。うちも受けるよ。美央さんのところはここだけ?」
「一応、4校全部受けるけど」
「うちはあとT大附属T小だけ。こっちが本命なのよね。O小は遠いし、O女は途中から女子校になっちゃうし、G大附属T小は確率が低いから、ペーパーで勝負のT大附属T小でがんばらないとね」
そう前にも書いたがT大附属T小の場合、絶対に記念では受からない。ここを狙う親たちは2年以上塾通いをさせて、準備するのだ。

店内は空いていて貸切状態のようになっていることもあって、子供たちは走り回ったりふざけて遊んでいる。
ただ恵一くんを除いて。
彼はきちんとテーブルに座り、ニコニコしながら大人たちの会話を聞いている。

「奈美子さん、恵一くんを塾に通わせてるでしょ!」
「うん、年中から行ってるよ」
なんでそんなこと聞くんだという表情を浮かべる奈美子さん。
「Wでしょ!」
「うわぁ、美央さん、正解。なんでわかったの?」

Wというのは国立にめっぽう強いといわれている大手のお受験塾で、学校説明会等で業者が配る広告などにも必ず入っている。
東京の国立小学校のうち4校が池袋駅をターミナルにしていることもあってか、Wの本部は池袋駅の西口にある。
さっちゃん(仮名)や由美子さん(仮名)が通わせているS会ほど月謝は高額ではないが、それでも月に軽く3万円は超えるだろう。
それを年中から通わせるとなるとかなりな出費になるだろう。

「それなのに抽選で落ちたらバカみたいだけどね」
と微笑む奈美子さん。
そうだよなあ~。私もそれがあるから塾通いって、踏み切れないんだよなあ~。

それにしてもそれだけ不確実なものにお金がかけられる人がいる一方で、せっかく手に入れたマイホームを競売にかけられてしまう人もいる。
つくづく世の中は格差社会だ。

 「もしかして恵一くん、すっごく落ち着いたのはWのおかげ?」
 「うん。そうかもね。試験を受ける態度とか、行動観察とかもやってくれてるから」
 「それはすごい!」
 「けど相変わらず幼稚園ではお友だちを殴ってるみたいよ」

 しかし目の前におとなしく座っている恵一くんと、以前の凶暴な恵一くんはまるで別人のようだ。
 お受験塾、恐るべし。子どもをここまで劇的に変えてしまうとは・・・。

 娘はともかく、気まぐれな息子もWに入れるとしっかりしてくれるのかしら?
 家に帰って夫に恵一くんの話をして、ついでに息子もWに入れてみる?と提案してみると、首を横に振り、
「でもじっと座っておとなしくしているなんてL(息子)らしくないよ。そんなの不自然だよ」
といかにもなコメントをする夫。

 さしずめ「時計じかけのオレンジ」の“ルドヴィコ療法”でも思い出したのだろう。
 かくいう私も恵一くんと、映画のラストで回復し以前の邪悪な顔を再び見せるマルコム・マクダウェル演じるアレックスの姿がなんとなくダブったのであった。

恵一くんの変貌①

 恵一くん(仮名)ママの奈美子さん(仮名)は清楚でおっとりとしたきれいな人だが、赤ちゃんのころから恵一くんは癇癪持ちで手がかかる子だった。
 ハイハイを始めるころには娘や勇人くんの髪を引っ張ったり、ママの乳首を噛んだりやりたい放題。

 歩くころになると一瞬でも目が離せない。
 ただ知能は高いらしく文字を覚えるのも早かったし、言葉も達者だ。
 幼稚園に入ると悪童ぶりに磨きがかかり、奈美子さんは毎日“今日はだれそれを殴った”だの“蹴った”だの“噛んだ”などと先生から報告を受けるはめになる。
 毎年娘や息子のお誕生日パーティーに奈美子さんも招待しているのだが、幼稚園に入った年から“他の人の迷惑になるから”という理由で来てくれなくなった。
 なんでも別のお友だちのお誕生日パーティーで恵一くんが4人ほど殴り倒し、楽しいパーティーが子供たちの泣き喚く阿鼻叫喚の地獄絵図と化したのだとか。

 「本当に困っちゃう」
奈美子さんはため息をつく。
感情に任せて叱りつける私と大違いで、奈美子さんはいつも優しく諭すように恵一くんに接しているのだが、本人はもちろん聞いちゃいない。

いつもならこういう待ち合わせのとき、走り回ってどこかにいなくなるはずの恵一くんがきちんと両手を膝の上にそろえ、ニコニコしながらおとなしく座っているじゃないか!
しかも「こんにちは」というあいさつも素晴らしい!
どうした!? 恵一!?
しかし私はこの時点では、まあ久しぶりだし、しばらく見ないうちにきっと落ち着いたんだろうなぁ~という感想を持つのにとどまったのであった。

イタリアン・レストランに入り、昼間っからワインでも飲もうということになり、さっそくボトルを頼んだのだが、イケる口の奈美子さんが「今、ちょっと飲めないの」と言う。
おお~、まさかまさか!

「うふふ、そうなの。今、5ヶ月になったの。予定日は3月末だから卒園式とか入学式に出られるかどうか微妙なんだけどね」
とのこと。いやあ~。良かった。良かった。

奈美子さん夫婦はずっと二人目を望んでいたんだけど、なかなか恵まれず挙句何度か流産を繰り返していた。いわゆる二人目不妊というやつだ。深刻に悩んでいたからさぞかしうれしいことだろう。
恵一くんが落ち着いたのも、もしかしたらお兄ちゃんになる自覚ができたからかもしれない。

「保美さん(仮名)はどうなの? 二人目は?」
「あるわけないじゃないっ! もう48歳だよっ! 生理もあがっちゃたわよっ!」
「え? マジっ?」
「そういう美央さんこそ、どうなのよっ? 3人目!」
「ありえないっしょっ!」
「そうだ、千鶴さん(仮名)はどうなの? 二人目の予定は?」
「・・・ありえないよ。お金ないから」
 ポツリと呟く千鶴さん。
「そうだよね。子どもお金かかるよねぇ~」
「っていうか、うち競売にかけられるから・・・」
「競売!?」

2010年4月21日水曜日

初めてのママ友

 娘が生まれたばかりのころ、里帰り出産から東京に帰ったきた私にはひとりもママ友がいなかった。
 家の周りはオフィス街で自宅にやってきた保健士さんからも、「うちの区でもちょうどこのあたりはお子さんのいない地域なのよね」と言われ(←ところがそれがガセだったことが後日判明。3軒隣のタワーマンションには泰子のところを含め同世代の子どもがけっこういたのだった)、友だちはみんな平日の日中は働いてるし、とっても孤独だったのだ。

 人一倍寂しがりやで家でじっとしていることができない私は、早く夫が帰ってきてくれないかと毎日時計を眺めて過ごし、いっそのこと育休を切り上げて早く仕事に戻りたいと思ったほどだ。
 またそう思う自分を母性本能に乏しいダメな母親だと責め、すっかり鬱々していたのであった。

 そんな状態で迎えた3ヶ月健診。そこで知り合ったのが勇人くん(仮名)ママである保美さん(仮名)と恵一くん(仮名)ママである奈美子さん(仮名)。
 保美さんは私より年上で勇人くんを42歳のときに出産した。ダンナは16歳年下でいわゆる出来ちゃった婚。介護士とシャンソン歌手の2つの顔を持つ。
 一方の奈美子さんは当時30歳ですらっとして清楚な感じのきれいな人だ。こちらは専業主婦。

 私たちは年齢もバックグランドも全然違ったが、なぜか意気投合した。
保美さんも奈美子さんも飲めるタイプだったので、ホームパーティーをしたり、誕生日が近い子供たちの合同バースデーパーティを開いたり、お買い物にいっしょに出かけたり、なんだかんだと理由をつけてはつるみ、私と保美さんが育休明けで職場復帰するまで、しょっちゅう会っていた。
 会う頻度こそ減ったが、職場復帰しても定期的にランチしたりして付き合いは続いていた。

 しかし子供たちがそろって年中さんになったころ、勇人くんの喘息が悪化して、空気のきれいなところに住まないと治療がむつかしいと診断された保美さん一家は多摩地区へ引っ越すことになった。
 駅からずいぶんと遠いところらしいが、目の前には大きな公園があり、勇人くんの喘息はメキメキ良くなっていたのだという。
 
 保美さんたちが引っ越してからさすがに定期的に会ったりはできなくなったが、年賀状のやり取りは続いているし、娘のお誕生会には必ず声をかけている。

 そんな中、保美さんたちが久しぶりに東京に出てくるので、みんなでランチをしようということになり集まった。
 この日は私と奈美子さんのほかに、千鶴さん(仮名)と千春ちゃん(仮名)親子も来ていた。
 千春ちゃんは勇人くんが前に通っていた保育園のお友だちで、千鶴さんはその時代の保美さんのママ友だ。
 この親子とは勇人くんのお誕生日会で2回ほど会ったことがあった。
 千春ちゃんはいつもクラスで一番大きいらしく、元々保美さんから“うちの保育園にもAちゃん(うちの娘)並みにタテにもヨコにも大きい女の子がいるよ”と言われていた本人だが、実際並んでみたらうちの娘のほうがタテにもヨコにもデカかった(トホホ)。
 とはいえ千春ちゃんも貫禄たっぷりの女の子(←ってそんな言い方されてもうれしくないか!?)で、お互いデカい女の子を持つ身であることと、年が近いこともあってか、千鶴さんも親しみやすく話しやすい人である。

 この4組の親子でランチである。
 待ち合わせ場所に着くとすでにもうみんな集まっていた。
 「久しぶりっ!」ときゃあきゃあ言いながら再会を喜ぶものの、何か変だ。
 着いて早々、違和感を抱く私。
 勇人くんと千春ちゃんも久しぶりの再会だったらしく、大騒ぎして喜んでいる。
 うちの子供たちは勇人くんや恵一くんのことを覚えていないみたいで、私の背中に隠れたりして戸惑っている。
 そこまではいたって普通のことだ。
 
 じゃあこの変な感じの正体は何?

 わかった! 恵一くんの様子がいつもと違うからだ。
 いったいどうしたんだ!?

2010年4月18日日曜日

G大附属O小学校学校説明会③

 とはいえ、気になることが4点。

 まずはイベントの多さだ。運動会とか文化祭級の大イベントが年に13回!もあり、1年のほとんどをその準備や練習に追われている。
 そうした準備に親も駆り出されるし、第一子供たちはいつ勉強するんだね?

 次は親が駆り出されることに関連して、保護者会の多さ。なんと年に9回もあり、副校長先生いわく、「本校では働いていらっしゃるお母様も多いですが、出席率は100%です」。
 マジですか!? 役員とかやってなくても9回の保護者会プラス13回のイベントプラスアルファでお手伝い。
 遠い学校なのにフルタイムで働いてる親には負担が多すぎないか?

3つ目は系列中学への進学率。同系列のT小は100%、T大附属T小は80%、O女大附属小は女子100%近く(ただし男子は高校以上はないため50%ぐらいだという)のに比べてO小は50%。約半分しか上にはあがれないのだ。
ただ中学以降は中高一貫なのでその後は6年間安泰だ。

4つ目は自由な校風の学校のくせに、女子の髪型の規制が厳しいこと。基本おかっぱで前髪は切りそろえ、髪を結ぶことも禁止だというのだ。
ええ~、そりゃないよぉ~。

私は子供のときにいつも髪を男の子みたいに短く切られていて、髪を伸ばしてりぼんとかつけている女の子がうらやましくて仕方がなかった。
色黒で洋服も男の子みたいな格好をさせられていたので、いつも「健康そうなお坊ちゃんやねえ~」などと、それ褒めてねぇっ!という言われ方しかしてこなかった。
自分の意思で髪型も洋服も決められるようになると、その反動だろう。今日に至るまで「私は女ですっ!」オーラ全開である。

当然娘は私がなりたかった姿を投影させている。色黒なのがコンプレックスだった私はマイケル・ジャクソンが自らの肌を漂白(←たぶんなっ)した気持ちがちょっとはわかる。
幸い半分イギリス人の娘は生まれたときから普通のハーフの子以上に色白で(←しかしなぜだか息子は地黒だ)、よくお人形さんのようだと言われる。
より可愛らしく見せるためにいつも髪は伸ばし、髪形も日替わりだ。
洋服だって女の子らしい可愛いものを選んでいる(←西松屋のものだけどなっ)。

この私の娘に向かって髪を切れだと!? 
それに娘はクセ毛で髪が多いので伸ばして結んでいないと収集がつかないという物理的な問題もある。
バレエもやっているので、ちびまる子ちゃんみたいな髪型は勘弁してほしい。
おかっぱ規制には「国際理解」も「共生」もあったもんじゃない。

もうひとつ驚いたのは、「遠泳」なるものがあること。
遠泳といえばT大附属T小の遠泳が有名(←2kmも泳ぐんだって!)だが、どっこいO小にも遠泳があったのだ。
こちらは距離ではなく40分とか50分とかの時間だとか。
そんな炎天下に長時間いたら、せっかくの娘の白い肌が焼けちゃうじゃないのよぉ。

あとはなんといっても学校までの距離だよなあ~。
ああ、悩ましい。
まあ受かってから悩めという話だが。

 

G大附属O小学校学校説明会②

 定刻になったところで学校説明会スタート。まずは校長先生の挨拶に始まり、副校長先生が中心になって映像を交えながら学校説明会が進行していく。
 ここでもT小と同様に「実験校であり教育実習の場である」ということを強調しているが、T小のように排他的なムードはない。

 教育方針として「国際理解」と「共生」をともに挙げており、国際学級があったり、上級学校にあたる中学以降は何年か前に中高一貫の国際中等教育学校として生まれ変わったのだという。
 このあたりを指してみっちゃん(仮名)はうちに向いていると言ってたのだろう。
 確かにそんな感じだ。

 特に「国際的に通用する子供を育てる」という理念には大いに共感するところがあり、そのために必要な力は「コミュニケーション能力」と「自分の頭で考え抜く力」であり、体験活動を通してそのような力を育んでいくという姿勢には、まさに我意を得たりという気持ちにさせられる。

 ビデオを通してみる学校生活もイベントばっかりでなんだかとっても楽しそうだ。
 どこの学校でも最近は縦割り活動を行っているが、O小の縦割りでの活動は徹底していて、多くの行動を縦割り班で行うため、卒業式も全校そろって行い(←普通は在校生代表で5年生しか出ないよね?)、お世話になったお兄さんお姉さんが卒業するのが寂しくて1年生の子たちが号泣するというのだ。
 ええ話やないか~。

 前の会社の先輩かつ何かいっしょにできないかとこのところ何かと相談している早紀ちゃん(♂ 仮名)の娘はこんなにいい小学校に通ってるんだな。
 ちっ、うらやましいぜ。
 そういえば朝、早紀ちゃんから「今日、学校説明会だろっ」というメールが来てたっけ。

 ビデオを通して見るO小の子供たちの顔は楽しそうでキラキラと輝いていて、なんだかとっても私好みの小学校だ。
 うちから遠いので受けるかどうか迷っていてあまり期待していなかったが、なかなかどうしてとっても良さそうだし、娘よりむしろ自由奔放で気ままな息子に向いてそうな学校だなと思う。
 生徒を画一化して管理するというより、のびのびとひとりひとりの個性を重視して、ユニークな子に育て上げている印象を受けたのだ。
 何かを強制してやらせるのがむつかしい息子にはなんだかピッタリそうだぞ。

G大附属O小学校学校説明会①

 T小の1次書類提出日から2日後の午後、O小学校の学校説明会が行われた。
 午前中は男子だったので、みっちゃん(仮名)から説明会の感想メールが届く。

 「O小行ってきました。説明会は丁寧で好感が持てました。教育方針も共感できる部分が多く、Aちゃん(うちの娘)にはピッタリなところだと思います。また美央さんの感想も聞かせてください」

とのことだ。
 そうか、期待できそうじゃないか!
 
 午後から会社を早退して郊外に向かう私鉄に乗り換える。O小学校に行くのは初めてだ。ググってゲットした地図を片手に小学校を目指す。
 けど駅に着いた途端、あれまあ、ここにも過去問やお受験塾の業者がしっかりとテーブルを出してるじゃん!
 学校までのまっすぐな一本道のところどころに業者がビラを配っている。その数は同じG大附属系列でもT小の比ではない。
 T小の2次は行動観察なので事前準備がむつかしい(←それでも専用のお受験塾がある!)が、O小の2次はペーパーなので塾や模擬試験や過去問なんかの業者がつけ入る隙間はたくさんある。
 ひととおりパンフレットをもらい、お受験スーツに身を包んだお母様たちのあとについていって、学校に到着。

 しかし駅から結構遠いぞ。駅から徒歩8分とあるが、子供の足で歩くとどれぐらいかかるんだろう。
 うちからO小まで電車で一本で行けるが、駅まで子供の足で12~3分、小学校の最寄り駅は準急が停まるのでそれだと15分、駅まで10分としても、バスで行ける他の国立3校に比べて時間もかかるし、第一遠いよなあ~。
 急行は停まらないから子供が間違って急行に乗った場合、降りられなくなって埼玉の奥地まで行ってしまったらシャレにならない。
 しかも都心から離れるので、会社ともまったく逆方向だ。
 この距離はやっぱり気になるよなあ。

 学校に到着すると、すざましい銀杏臭がする。ちょうど銀杏の木が黄金色に染まり、太陽光に照らされるとキラキラとまばゆいばかりに輝いている。
 学校もそこそこ新しく敷地も広めで環境はよさそうなんだけど、なんといっても臭いのよぉ~。なんとかならんのかね? この銀杏臭。

 受付をすませたあとは説明会の行われる体育館へ。
 T小と違い、きちんと椅子が用意されている。すでにぎっちりと前列から保護者たちが並んで座っていて、スーツの色のせいか黒々としている。
 お母様だけではなくお父様おじい様おばあ様もいて、こういうとき実家が近い人はうらやましいよなあと思う。
 とはいえ、仮に実家が近くてもうちのオヤジやオカンでは安心して説明会とか任せられるわけではないが・・・。

2010年4月15日木曜日

G大附属T小学校抽選番号

 10月に入ると早々にG大附属T小学校の一次書類の提出日が来た。女子は朝9時から11時半までが提出期限。
 例によって朝、バスに揺られてT小学校に向かう。
 私の会社は9時半スタートなので、9時に行って混雑していなければ、場合によれば始業時間に間に合うはず。

 T小学校の一次書類は名前と連絡先と検定料(国立小の受験料は私立の10分の1ぐらい。1次は1000円前後、2次で2000円前後ぐらい)の支払い証明ぐらいしかなく、提出した日に、受験番号をもらう仕組みになっている。
 この日にもらう受験番号が一次抽選のための番号になるわけだ。
 当然早く行けば早い番号がもらえるし、遅く行けば遅い番号になる。

 お受験エクスパートの泰子(仮名)はいつも“1ケタを狙え”と口酸っぱく言う。
 なんでも1ケタ台の合格率が高いというのが泰子の経験則らしく、ことあるごとに“朝から行って並べ”と言うのだ。

 しかし行列嫌いの私は朝早くから行って並ぶ根性はあいにく持ち合わせていない。
 9時ちょっと前に学校に到着すると、長蛇の列を想像していたが予想が外れて誰も並んでいなかった。
 しかも雨が降っていることもあって、9時前から受付を早々に始めたらしいので、まったく待つことなく書類を提出し、番号をもらう。

 運命の番号は56番だ。

 しかし9時前でも56番目だったんだね。1ケタ台の人っていったいいつから来てたんだろう。
 まあT小学校に関しては抽選で56番を引くのみだ!

 頼んだよ! 56番!!

イオン(ジャスコ)、恐るべし!②

 うちのオカンは物を粗末にする。
よく親から物を粗末にするな、大切に使えと育てられたという人の話を聞くが、うちの親は逆だ。
 うちのオカンはむしろ物を捨てろ捨てろとうるさい。1回か2回しか着ていない洋服もあっさりと捨ててしまう。

 以前、一度着た洋服は二度と着ないという成金の女性美容整形外科医がマスコミにもてはやされていたが、うちのオカンもタイプが似ている。
 違うのは美貌の差だけではなく、女医が捨てるのがブランド物の超高い洋服なのに対して、オカンのはその辺で買った激安品だということだ。
「安かったから」という理由だけで山のように物を買っては捨てるという、安物買いの銭失いで、資本家が泣いて喜ぶようなアメリカ型の大量消費をオカンはモットーとしている。もちろんエコには1ミクロンも関心がない。

 「あんた、何か買いたいものないんかね?」
というのがオカンの口癖で、散財したいモードに当たればポンとお金を出してくれるし、当たらなくても「買い物でも行くかね?」と即お出かけモードに切り替わる。
お受験関係のものを見に行きたいと言うと、では西松屋とジャスコに行こうとさっそく車でゴー!
 
 「西松屋」というのは子供のいる人なら誰でも知っている全国に700店舗以上あるベビー、マタニティ、子供用品を扱うチェーン店で、何せ安い。
 Tシャツが290円で買え、1000円以上するものをここで買った記憶はあまりない。
 保育園で着る洋服はここのもので十分なので、実家に帰ったときは西松屋で1万円以上は毎回遣う。
 今回も1万5千円ほど買い込み、オカンが払ってくれたが、お受験に良さそうなものは何も置いていなかった。

 ちなみに育休中に児童館通いしていたときにある日専業主婦のお母様軍団から、
「Aちゃん(←娘)っていっつも可愛いお洋服着てるよね? やっぱりヨーロッパとかのぉ~、外国製?」
と突然聞かれたことがある。
「同じ外国製でもメイド・イン・チャイナなっ!」と心の中で自分に突っ込んでると、
 「そうだよね、だってSにもTにも(←両方百貨店。でもなぜかSの方が高級だと思われている)売ってないもんねぇ。特にSのは私全部チェック済みだから」
と別のママ。
 売ってるわけないだろっ! 百貨店で買ってないんだから。
「やっぱりイギリスのブランドとかなの? オーダーとか?」
とこれまた別のママ。
「いや、実家に帰ったときに“しまむら”とか“西松屋”でまとめ買いよ」
と正直に答えたら、ママたちは顔を見合わせて困ったような顔をしたと思ったら、
「いやあねぇ~、美央さんったら! まったく冗談がお好きなんだからぁん」
という想定外のリアクションを返してきた。
 だからといってそのお母様軍団の子供たちがいかにも高そうな洋服を着ていたかとか、センスが良かったかといえば、そうでもなく、要はその子供の雰囲気とか、色使いとかじゃない? 

 話が大きくズレたが、さて西松屋の次はジャスコだ。
 子供服売り場に行くと、あら素敵。ちゃ~んとあるじゃないの。
 国立小学校の場合、女の子は白いシンプルなブラウスとベストかカーディガン、そしてキュロットというのが定番お受験スタイルらしい。ブラウス以外の色は紺かグレー。
 すべて無地のシンプルなものが望ましいが、どういうわけか安い子供服を売っているところはそういったシンプルなものはまず扱っていない。
 素人考えではキャラクターがいっぱい付いていたり、色がたくさん使われているもののほうが原価はかかりそうな気がするが、棲み分けができているのか、シンプルなもののほうが高いし、そういうものは百貨店以外であまり見ない。

 ところがよ、我がジャスコはやってくれるぜ。
 紺色のシンプルなキュロットが1980円!(似たようなものが某MHでは1万3千円!) ブラウスも890円、ベストは値下げになっていて980円、カーディガンも1480円だった。
 安いっ! あまりにも安いのでベストとカーディガンは紺とグレーをそれぞれゲット。ブラウスも2サイズ買って、それでも合計8680円! 
 百貨店ではブラウスがやっと一枚買えるぐらいの金額だ。

 よし、この勢いでお受験時によさそうな白いソックスもまとめて5足ほど購入。
 これでお受験の準備はけっこう整ったぜ! あとは抽選だ。

2010年4月13日火曜日

イオン(ジャスコ)、恐るべし!①

 私と夫は8月忙しいので、毎年9月に夏休みを取っている。2009年も例外ではなく、9月に1週間ほど休みを取り、今年は実家に帰るついでに伊勢志摩に行くことにした。
 実家から伊勢志摩はそれほど遠くないのに(←と行く前は思っていたが、実際は遠かった)、なぜか行ったことがなくて、日本人なら伊勢神宮ぐらい行っとかないとあかんだろうということと、伊勢志摩というからには伊勢海老とかあわびとか牡蠣とか食べまくるということで、決めたのであった。

 実際は牡蠣も伊勢海老も季節外れでガックリではあったが、魚介類はさすがにおいしく、旅館もまずまずで、このころかなり話題になっていた給付金(←こんなお金をもらっていたこと、もうすっかり忘れているでしょ?)記念サービスとかのセット料金だったので、かなりお得感もあった。
 スペイン村でフラメンコを見たりという2泊3日の旅行後、実家へ。

 リフォーム以後(リフォームの話は2009年月参照)2回目の実家だ。
 うちの実家のあたりはいわゆる車がないとどこにも行けない不毛地帯で、コンビニすら歩いていけないというスットコドッコイな場所だ。
 こういう町の住民はいったいどこで買い物をするのか?

 はい、もうおわかりですよね。近所の商店街などとっくに死滅し(←というよりこの町は最初から商店街など存在していなかった!)、バスで行ける市最大のというより県で最大の繁華街は6つの百貨店およびファッションビルが撤退し、往時を知る者には見るも無残な巨大なシャッター通りが出現した。
 地元出身の政治家でこの繁華街の復活を公約に謳わない者はいない。昭和40年代にはこの繁華街を舞台にした歌や映画もヒットしたが、それも遠い昔のことだ。

 その代わりに台頭してきたのが駐車スペースが何千台分もある郊外の大型ショッピングセンターで、イオンあり専門店あり映画館ありアミューズメントパークありなどの複合施設だ。
 なんでもあるからここで1日中過ごしていられる。老若男女こぞってショッピングセンターに押しかける。
 でもそんな光景は何も私の故郷だけではなく、日本中の地方都市で当たり前の光景だろう。

 大型ショッピングセンターといえば、もうイコール・イオンだ(←私の中では)。
個人的にはイオンではなくジャスコと呼んだほうがしっくりくるので、ここではジャスコと呼ぼう。
 実家からも車で15分ぐらいのところにジャスコを中心としたショッピングセンターがふたつあり、オカンは気分に応じて使い分けている。
 その他、しまむらあり、西松屋あり、マンモスセンターありなど様々な大型店が郊外にひしめき合っている。

 都心に住む私たちは車を持っていない。歩いていける範囲になんでもあるので、車がなくても生きていける。
 その代わり歩いていけるところは百貨店やファッションビルはたくさんあっても、こうした郊外型の店はない。

 だから実家に帰ると私は途端にショッピング・モードに突入する。
 家族の下着、カバー類、布団関係、キッチン用品などなど、こんなものはいちいち百貨店で買ってられないだろう。
 特に私の中で百貨店でいちいち買ってられないランキング第1位は、すぐに着られなくなってしまう子供服だ。
 
そして今回は普段使いの子供服にプラスして、お受験用のグッズも見てみようという思惑があったのだ。
 果たして郊外型のショッピングチェーンの実力はいかほどなのか?

お受験準備って・・・

 9月も過ぎるとそろそろ、百貨店に行くたびにお受験用のお洋服のディスプレイがやたら目につくようになる。
 近所の百貨店でも「○○百貨店のお受験セレクション」という手のひらサイズの小冊子みたいなものが作られていて、参考までに見てみると、ガーン! なんだよ、この金額!? 舐めてんのか?としかいいようのない商品ラインナップである。
 
 たとえばお母様用のお受験スーツ。18万円也。
 しかし毎回思うけど、このお母様のスーツってどうして判を押したようにどれも同じなの? 何か決まりでもあるのかね?
 紺のスーツでジャケットに襟が付いていて、スカートは膝が隠れるくらいの丈、ジャケットはウェストとかあまり絞っていなくて腰骨が隠れるぐらいまでの丈の野暮ったいスタイル。お受験の面接以外では着る機会がまったくなさそうな、着回しのまったく効かない用が済めばタンスの肥やしにもならなさそうな使い道のなさ500%のスーツ。
 
 この百貨店でお受験スーツ用に商品を展開しているのが、かの英国有名百貨店の名を冠したハロッズ、ツゥー・ビー・シックの2ブランド。

 スーツだけならまだしもお受験スリッパ、お受験バック、お受験セカンドバッグと続き、お受験スリッパなどはスリッパのくせして5000円近くもするのだ。
しかもお母様の足元を美しく見せるスリッパなる珍妙なスリッパもあって、底が目立たないように斜面のついた厚底になっているので、ヒールと同じ効果があるそうな。
 
そして書類入れなどに使うお受験セカンドバッグ。紺色の布製やナイロン製のもので地味にリボンがついていたり、縁取りがついていたりして上品な作りではあるものの、しょせんセカンドバッグである。どうしてこんなものに2万9800円という強気の値段がつけられるのか?

 さらに大人用は5万歩ぐらい譲ってまあいいとして(←よかないが)、問題は子ども用の商品だ。
 スーツはある程度仕方がないにしても、キュロットに1万3千円という値付けをするのってなんなわけ? あとブラウス8千円とかさ、紺のカーディガンとかが2万円するって、いったい何様?
 あと子ども用の小さなハンカチが800円とかさ。

 とまあ、百貨店に出かける度にお受験グッズ並びに洋服をチェックしては毒を吐く私。
 こういうのって気になりだすともうだめなんだよね。
 「臭い」ってわかっているものをわざわざ何度も嗅いでみる感覚に近いのかしら?

 国立は一次が抽選なので、抽選が通らない限りこういったグッズは不要だ。
けどお受験エキスパートである私と娘のピアノの先生・泰子(仮名)は、4校受ければ確率的に必ず1校は抽選に通ると断言している。
それが正しければいずれはある程度の準備が必要になるのか?

9月半ばになると各校大雑把な選考試験のスケジュールが出てくる。
しかも各校、手続きがそれぞれバラバラで、書類の提出だの、配布だの試験以外でもかなり頻繁に学校に足を運ばなければいけない。もう複雑なことこの上なし。
いつ何を用意すればいいのか、整理するためにも4校のスケジュールをエクセルで作成。
9月から12月までのカレンダー形式にしたので、ひとめでわかる優れものだ(←自画自賛!)。

心優しい私はお受験仲間のみっちゃん、由美子さん、洋子(全員仮名)の分もプリントアウトして、「役立ててね♪」とメッセージを付けて、保育園のそれぞれのロッカーの中に入れておいた。

この時点ではまだまだ私はお気楽能天気だったのだ。