掲示板の前に行列を作る保護者たち。もうドキドキものだ。うん十年前に遡るが、自分の受験のときだってこんなにドキドキしただろうか?
黙っていると緊張でおかしくなってしまいそうなので、私はひっきりなしにしゃべっている。
もしひとりだったらどうしていただろうか。
こんなときにいっしょに受験する仲間がいるのは、とても心強い。
行列が動き始める。どうやら女子の部の抽選結果が貼り出されるようだ。3人一列で順番に進むように指示され、何十秒か1分ぐらいずつなのか前から順番に3人ずつ掲示板を見て、抽選に当たった人は2次試験の受付に、はずれた人はそのままさようならというわけだ。
掲示される番号は全部の番号が掲載されるわけではなく、下二桁が掲載される。
なので、たとえば10番という数字だったら、10番、110番、210番、310番・・・の数字の人が合格というわけだ。
ここの抽選で当たれば2次試験は11月の下旬で、行動観察を突破できれば、最後の抽選で、最終結果は11月末に決まる。
2次試験は同じ系列のO小と重なり、その後の日程もほぼ同じはずだが、地理的にも占い的にももしどちらも一次抽選に通ってしまったら、G大附属T小に決まりだろう。
緊張しながらものんきなことを考えている私。
いよいよ私たちの番だ。由美子さん(仮名)もタケル(仮名)も掲示板を写メで撮っている。私は掲示された番号に目をこらす。
52番、52番、52番・・・・・。
昨年度の女子の応募者数は1400人とちょっとで、そのうち一次抽選に通ったのは400人ちょっと。2次を通過したのが44人とかで、最終合格者は24名だという。
考えれば考えるほどすごい倍率だよなと思う。
だけど銀座の先生はあそこまで断言したのだ。今年も昨年度並みの倍率だろうから、この掲示板には52番が必ず入っているはず。
だったのだが・・・・って、ないじゃん!?
嘘でしょ!! 52番ないじゃんっ!!!
「あ~あ、はずれだよ」とタケル。
「うちも。でもいいんだよ。初っ端だもん」と由美子さん。
嘘! 嘘! 嘘! マジっ!? あんたたちがはずれてるのは当然だって!
でもどうして私の番号がないの? ねえ、なんで?
目の前が真っ暗になる私。だってこのあと2次のための受付をするんじゃなかったの?
ガーンっ!!!
「美央さん!?」
「姐さん、どうしたっすか!?」
お、終わったよ。私のお受験は・・・。
正門に待ち構えている試験問題集やお受験塾のビラを配る業者が憎らしい。
あまりのショックで口もきけない私。
タイミング良くバスがやってきたので、3人でバスに乗り込む。
「姐さん、何固まってるんすっか?」
「そうよ。美央さん、どうしたの? 顔色悪いよ。あれ? もしかしたら落ち込んでる?」
当たり前だっつうの!
「あ~あ、終わったよ・・・・」
もうほとんど涙目の私。もうバカバカバカ。銀座の先生のバカ。どうせ私なんてクジ運が悪いのよ。そんなアホみたいな倍率のところなんて通るわけないじゃない。
あんなに期待させてひどすぎる。
「でもまだ3つ残ってるじゃない」
「ダメに決まってるよ。もういい。他の3つも受けない。うち本当に記念で何もやってないもん。O女は(G大附属)T小より高倍率だし、あとはペーパーがあるから無理だよ。もう遅すぎる・・・」
そう。ここを逃せばもう芽はないのだ。あ~あ、もうだめ。号泣したい。
「あきらめるのはまだ早いっ!!」
絶望の淵に沈んだ私に、カツを入れたのは、いつもはおっとりしている由美子さんだった。
「ここであきらめてどうするんだぁ~!!」
由美子さんの声がバス中にこだまする。お受験スーツに身を包んだ保護者たちがギョッとした顔で私たちを眺めていた。
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