O女大附属小学校の説明会が終わると、午後からはいよいよG大附属T小学校の一次抽選だ。私の手元にある受験票の番号は52番。
どういう根拠でなのか理解できないが、うちのオカンはその番号を聞いて、「いい番号やないの。縁起良さそうやん」と言っていた。ホンマかいな。
由美子さん(仮名)とタケル(仮名)の3人で大通りに出ると、由美子さんが「あら、陽太くん(仮名)ママからメール来てるよ」と言った。
自分の携帯もチェックしてみるとみっちゃん(仮名)がちょうど3人に一斉メールを送ってくれていて、内容は抽選結果だった。
G大附属T小の男子の抽選は午前中に行われていて、陽太は残念ながらハズれていたということだった。「けどみんなのところは受かっているといいね」とメールの文は結ばれている。
G大附属T小の抽選はだいたい25~6%ぐらいの合格率だ。だいたい4人受ければ1人ぐらいが抽選に通る計算になる。
抽選方法は体育館でみんなが見ているところで定員分のクジを引いて、その当選番号を表に貼り出すということだ。クジを引くときに立ち会う必要はないので、結果が貼り出されたころに見に行けばいいということになり、時間がしばらくあるのでランチを食べようということになった。
夜は居酒屋になるという店に入り、各自食べたいものをオーダーする。
「そういえばG大附属T小の学校説明会のあと、まっ昼間から飲んだっすよね」
とタケル。
なんでもないときならこんなとき、このメンバーならビールでも頼んでるだろう。けど今はまったくそんな気になれない。
お店に入ったあとぐらいからなんだか胃がキリキリと痛み出し、心臓もバクバク動き出している。
まったくなんて小心者なんだ! この私はっ!
「うちはここハズしたら、もっと難しいO女っすからね。ドキドキするなあ」とタケル。
「クジばっかりはもう運だから仕方ないよね。うちはここに関してはダメもとで臨んでるから」と由美子さん。
そう、クジばっかりは運だ。しかも私のクジ運は相当悪い。
けど銀座の先生がうちの子どもたちは揃ってG大附属T小に入るって言うんだもの。その通りになるのなら、今日の一次抽選はほんのその入り口にすぎない。
52番という番号が貼り出されている光景が目に浮かぶ。残念ながらタケルのところも由美子さんのところもハズれている。
ふたりの手前、思いっきり「やったあ~!!」と叫びたい衝動をこらえる。
次は2次だ。行動観察だ。行動観察ならまったく受験準備をしていないうちの娘、しかも優等生タイプなら楽勝かも。
一次当選者は2次試験のための受付を済ませなければならない。
「これから受付に行くから、ここで失礼するね」と二人に申し訳なさそうに別れを告げる私。
「あとで御会式で会おうね」と二人に微笑む私。ガックリ肩を落としている二人。
うれしいんだけど、一人だけ出し抜いてしまったという罪悪感もちょっぴり。けどやっぱり素直にうれしい。
お祭りのときにも二人の心情を考えてあまりはしゃがないように自制せねば。
昨日から御会式という秋祭りが始まっていて、地元の町は祭り一色に染まっている。私たちが住んでいるところはなぜか祭りが多くて、しかも盛り上がっているのだが、その中でも御会式は特別だ。
講ごとに万燈(まんどう)と纏(まとい)を揺らし、講ごとに掛け声を上げながら練り歩く姿は、激しく日本人としてのDNAに訴えかけてくるものがある。
なんだかんだといっても、しょせん私は祭りでガス抜きをさせられるイエロー・モンキーの下々の者だぜっ!と身の程を知る瞬間でもある。
今夜の祭りで飲む酒はうまいはずっ!とひとり妄想に浸っていると、
「姐さんはなんか余裕の表情っすね!」とタケル。
「いや、緊張してるよ」
「姐さんでも緊張することあるんっすか?」
「まあね」
とか言っているうちに時間がやってきた。
3人で歩いてG大附属T小に向かう。O女大附属小学校から徒歩でほぼ10分ほどのところだ。
すっかりおなじみになったこの校門。あと何十回、いや何百回通うことになるのだろうか。
ワラワラと振って沸いたように集うお受験スーツ姿の保護者たち。自然と背筋が伸びる。
いよいよ一次抽選の結果発表だ。
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