「今、賃貸のマンションですよね?」
そうです。その通り!
「あなたが日本で不動産を買うことはないでしょう」
うん。可能性大だ。なぜなら住宅ローンに縛られるのもいやだし、日本の住宅の値段は土地代に占める割合が高く建物に価値を置かないから、年数が経つと不動産価値が暴落してしまう。土地の値段が右肩上がりに上昇していた時代ならともかく、バブル崩壊後は土地の値段そのものも下がってしまっている。他にもいろいろ理由はあるが、私も夫も日本で不動産を持つ意味が見出せない。
「あなたが50歳すぎてから海外で住む家は大きめな一戸建てですよ」
おお! 一戸建て!
「ど、どんな家ですか?」
思わず前のめりになり私。どこに住むにしろ不動産なんて一生無縁だと思っていた。しかも海外で一戸建てなんてちょっと素敵ではないか!
「レンガ造りの家です。周りにも似たような家が立ち並んでいて、なかなかきれいな町並みが見えます。田舎過ぎず都会過ぎず、でも雲が多くお天気がとっても悪いところです」
なんと!! それってイギリスっぽいじゃん!! 実は私の夫はイギリス人なのだ。田舎でもなく都会でもなく、レンガ造りの似たような家が並んでいるきれいな町と聞けば、思わず夫の姉の住むウィンブルドンを思い出してしまう。
これまでひとことも夫はイギリス人だとは言っていない。うーん、先生、さすがだ。恐るべし。
「お天気が悪いってイギリスっぽいですよね」
探りを入れる私。
「あ、イギリスってお天気が悪いんですか? 私、海外ってハワイしか行ったことがないから、それ以外のところって知らないんです。その町は空も暗くてどう考えてもハワイには見えませんけどね」
にっこり微笑む先生。
うーん、海外なら将来的にイギリスに住む可能性は確かにゼロじゃないぞ。
ただこのころはイギリスは空前の金融バブルでポンドはおよそ1ポンド=250円前後。マルボロが5ポンドだからタバコ1箱が1250円、マックだってセットでそれぐらいするし、地下鉄の初乗りだって1200円ぐらいで、不動産も高騰し、世界で1,2位を争うぐらいロンドンは物価の高い都市になっている。
ウィンブルドンの義姉の家だって10年ぐらい前に6000万円ほどて買ったらしいが、今は2億円まで値上がりしているという。
ちょっと前まで世界で一番家賃が高いといわれた東京だって、今やロンドンよりずっとリーズナブルで住みやすい。
イギリスに住むこと自体は可能性のない話ではないけど、一戸建てを買うのは今の時点では宝くじでも当たらない限り無理! しかも宝くじは当たらないって言われたばかりだし。どう考えたってその資金は逆立ちしても出てこない。
私たちが買えるほど将来、イギリスの貨幣価値や不動産は暴落するということなのだろうか。
「その家であなたは孫たちとも一緒に暮らすことになるでしょう。お子さんたちもちゃんと結婚でき、それぞれに子どもも生まれますから、孫も見られますよ」
孫! またずいぶん先の話だわ!
0 件のコメント:
コメントを投稿