浅井さん(仮名)の銀座の報告からさかのぼること1ヶ月前。HANAちゃんから「私もついに銀座予約しましたよ!」との電話があった。
HANAちゃんの予約日は8月3日。リアルタイムで報告を聞こうと、我が家で浅田さんも呼んでHANAちゃんの占い結果を聞くことに。
この日は前の週から子どもたちが揃って新型インフルエンザにやられてしまい、だからといって会社を休めない私たちに代わって、実家からオカンがピンチヒッターとしてやってきていた。
オカンも交えて聞くHANAちゃんの銀座報告。
彼女たちのためにあれこれ作り、アルコールもふんだんに用意し、テーブルの上はすっかりパーティー仕様だ。
「行ってきましたよ!!」
我が家で響き渡るHANAちゃんのデカイ声。
「どうやった? どうやった?」
浅井さんもすっかり関西弁モードに突入。
「いやあ、もうビックリですわっ!」
「何がやねん!」
「全部がですわっ! もうあんなことやら、こんなことやらなんや、えらいことになってますわっ!」
「おいっ! ちゃんと順を追って話さんかいっ!」
「あんたら、そこの占いって本当に当たるんかね?」
チャキチャキとしたテンポのいい関西弁の会話の流れを、いきなりお国訛りで止めるうちのオカン。
「まずね、仕事のことでもっとわがままになったほうがいいって言われて、確かにずっとみんなの言い分ばっか聞いてて、わけわからんところで責められたりとめっちゃストレスやったんですよぉ~。でね、9月になったら仕事内容は変わらへんけど、環境が変わるって」
「そんなん、ありえるんかい?」
「うーん、微妙やなあ~」
4月から彼女はうちの会社が自治体から委託されている施設の職員として働き始めていて、その自治体の施設は3箇所あり、そのうちのひとつでHANAちゃんは企画とか運営の仕事をしている。
「別の施設に異動になれば、確かに仕事内容は変わらず環境だけ変わるってことになるんですけどね。可能性としてはなくはないけど」
「音楽とかはどうなん?」
「なんか歌詞のこととか、すごい言われたことと、日本よりアメリカでやったほうが成功するんですってぇ!」
「ほう~、海外進出!」
「そうなんですよ。めっちゃビックリ!」
「せやけどHANAちゃん、アメリカのほうが合ってると思うよ」
と浅井さん。
「私もそう思いますわっ。だからこのまま続けてていいって」
「良かったなあ~」
「で、ラブはどうやねん?」
「それがね! 結婚するらしい、私」
「誰と?」
「もしかしたら幼なじみかもしれへんって!」
「えええええっ???」
HANAちゃんにはトッチー(仮名)という幼なじみがいて、彼のツテを頼って上京してきたという経緯がある。
彼は和食屋さんを都内で何軒か友人たちと共同経営をしていて、私も浅井さんも何度かお店に行ったことがあるので、トッチーのことは知っている。
HANAちゃんには、アイルランド系アメリカ人の彼やミュージシャンの彼がいたらしいが、ここ数年は男っ気がまるでない。
あったとしても変なインド人からしつこく誘われて辟易していたことぐらいだ。
「でもトッチーってさ、絶対にHANAちゃんに気ぃあるよ」
断言する浅井さん。
「うん。私もそう思う」
同意する私。だってトッチーのHANAちゃんを見る目は限りなく優しく温かく、お父さんとかお兄ちゃんとか、ほとんど身内的な愛情に溢れているから。
「やっぱ、そう思います?」
「思う。思う」
「いやあ、実はね、自分で言うのもなんやけど、私もトッチー、もしかしたら私のこと好きなんちゃうか、って思ってたんですよ。これね、みんなから言われるんですよ。誰が見ても私に気ぃがあるように見えるって。やっぱそうですかねえ?」
「うん。見える見える」
「先生が言うには、12月に何か進展があるって。もしかしたらトッチーかもしれへんし、新しい出会いもあるかもしれへんって」
「HANAちゃんはどっちがいいの? トッチーとどうにかなるか、新しい出会いがあるのとでは」
「うーん。微妙やな。トッチーは元々単なる友だちやけど、あんまりにもみんなから言われるから私もなんとなく気になってきてるし、けど他にもっとええ人がおるんやったら、そんでええし」
「どっちにしろ、12月が勝負やな」
「そうですよぉ。私、頑張りますから!」
「そういえば清永さんのお母さんがせっかくいはるから、リフォームした家のことも聞かんと」
HANAちゃんが銀座の先生のところに行った報告をだいたい終えたころに、うちのオカンに話を振ってきた。
「ああ、うちのリフォームね」
こうして話題は実家のリフォーム話に移ったのだった。
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