街歩きをするたびに不動産チェックをする夫。
私もそういうチェックは嫌いじゃないので、ついつい付き合っては「高い」だの「安い」だの好き勝手なことを言い合っている。
結論から言えば、ヘレン姉さんは相当いいタイミングでニースにアパートを買ったようで、今ではさすがに旧市街の便利な場所に60平米のアパートが600万円という具合にはいかない。
「美央はニース好き?」
とサリア広場近くのレストランやカフェがつならる通りに面したシーフードレストランで、キンキンに冷えたシャブリと生牡蠣やロブスターやタニシみたいなものが盛りあわされたフィルドメール(海の幸の盛り合わせ)を食べているときに、夫が聞く。
あたぼ~だろうかよぉ。しつこいようだが、私は生牡蠣に目がない。
そんな至福の時間を過ごしているときに、そいつは愚問だぜ。
「子どもたちもニースが好き?」
夫がそう子どもたちに質問したのは、娘がクリーム・ド・ブリュレの特大のヤツを、息子がラズベリーやクランベリーのアソートにクリームが添えられているこれまた大盛りのデザートと格闘しているときだった。
「うんっ!!」
子どもたちは飛び切りの笑顔で答える。そりゃそうだって! こんな状況なら子どもたちは何にだって「うんっ!」って答えるぞ。
それにつけてもふたりとも未就学児のくせにニースで正月を過ごすとは、生意気なヤツだ。
私がこれぐらいの年のときには熱海にすら行ったことがなかったぞ(←初熱海は10歳のとき)。
「ニースにアパートを買うってのはどう?」
想像していた通りのことを言い出す夫。
「ニースのどこによ?」
「ヘレンのアパートの近くで、100平米ぐらいのやつ。1500万から2000万ぐらいだったらいいな」
「買ってどうすんのよ?」
「子どもたちの学校の問題があるから、住むなら子どもたちが高校を卒業した以降だよ。それまでは人に貸せばいい。ローンは賃貸料で賄えばいいし、ローン返済後の老後はニースに住む」
老後をニース!
何やら良さげではないかっ! けど銀座の先生の言う「レンガ造りの似たような家が立ち並ぶ田舎でもなければ都会でもないどんよりと曇ったところ」というのから大きく逸脱するぞ? しかも先生からは一軒屋だと言われていたのに。
しかしそれにしても夫の提案は魅力的だ。イギリスは街並みも家も素敵で一番大きな利点は英語の国だということだけど、天気は悪いし、何より食べ物がまずい。
元々私はイギリスよりも遥かにフランスのほうが好きで、大西洋側のラロシエル(←という街。フランス産の牡蠣の7割がここで獲れる。ここの牡蠣は身がでかくて超美味)ほどではないが、ニースもシーフードがふんだんにあって、食べ物は最高においしいし、気候もいい。
ニースからイタリアも近いし、地中海を挟んだ海の向こうはチュニジアだ。
ナイスすぎるぞ!
一番大きいのは私たちの東京の住処はしょせん賃貸だ。今住んでいるマンションは相場から見ても破格に安いので、不動産を買うモチベーションが持てない。
それ以前に不動産を買うことでその土地に縛り付けられてしまうことにも抵抗があるし、不動産を買うことは資産を持つことと同時に負債を抱えることだとも思う。
しかも来る来ると言われている大地震で家が潰れたらローンしか残んないし、とかいろいろ不動産を買わない理由はあるけど、一番大きな理由はそんな大きな買い物を思い切る度胸がないからだ(←二番目は先立つものがないからさっ《涙》)。
ちっっ、我ながら小者だぜ。
じゃあニースでならそんな蛮勇は発揮できるのか?
東京より安いといってもデパートのバーゲンじゃないのだ。いったいどうする?
とりあえずしょっちゅう来ている夫の両親やヘレン姉さんに常に不動産情報をチェックしてもらい、よさげな物件があったらすぐに連絡をもらうということにして、ニースをあとにしたのであった。
さて私たちが幸せな老後を過ごすためのマーベラスっ!な物件は見つかるのかしら?
果たして銀座の先生の言う、海外の家との関連は?
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