ドキドキしながら電話をかけると女性アシスタントが、即座に銀座の先生につないでくれる。
「お久しぶりですね。お元気でしたか?」
相手を包み込むような柔らかな口調は電話を通しても、相変わらずだ。
「実は娘の小学校受験の件なんですけど」
時間ももったいないので単刀直入に切り出す私。
「ああ、G大附属T小でしたよね。いかがでしたか?」
おおっ! 前回訪れてから10ヶ月ほど経っているのに内容を覚えているぞ、先生。
「実は落ちたんです。本当は一次抽選に落ちた日に電話しようと思ってたんですけど、国立小は全部受けるようにということだったので、結果が全部出る今日まで待ってたんです。G大附属T小とO小、O女附属小学校は一次抽選で落ちて、唯一抽選が通ったのがT大附属T小で・・」
「あっ、たぶん前にも言ったと思うんですけど、T大附属T小はダメです」
みなまで言い終わらないうちに私の言葉を遮る先生。
「けどそこしか抽選が通らなかったんです」
「G大附属T小がダメでしたか? 信じられない。ものすごくショックです」
ええ??? ショックを受けてるのはこっちやっちゅうねんっ!
「ああ~、全部逆に出てしまったんですねぇ。T大附属T小というのは娘さんには合わないんです。娘さんのいいところを発揮できないというか、ここじゃあもったいないんですよねぇ。けどいいセンまでいってたと思います。選考過程で揉めてますね。どうやら保守的な先生が多くて落とされてしまったみたいですけど、進歩的な先生の力が強ければ通ってましたよ」
と、あんた、その場におって見たんかっ!?と突っ込みたくなるようなことを言い始める先生。
「娘さんの場合はものすご~くハッキリとG大附属T小って出てたんですよ。むしろあんなにハッキリとOKと出るのは珍しいぐらいなんです。だいたいはもっとボヤ~とした感じで出るもんなんですけど、私の言い方も悪かったかもしれません。私も普段はあそこまで断言しないんですけどね。あとたまにですけど、15件中1件、2件は大ハズしすることもあるんです。そういうのに限ってハッキリ見えていることだったりするんですけどね。たまたまそれに当たってしまったというか・・・」
おいっ! ハズしたのはたまたまかよっ! クジ運が悪いから抽選も全然当たらなかったけど、こんなめったにないというハズレクジだけ当てるというのも納得いかないぞっ!
なんだかハズしっぱなしの人生みたいじゃんかよぉ~(号泣)。
「私、相当ショックを受けています。本当にG大附属T小、ダメだったんですか? それにしても娘さんにはまだG大附属T小の制服が見えてるんですよ。4月から行かれる公立校に制服とかあったりするんですか?」
「まさか。普通の公立なんで私服ですよ」
「おかしいなあ~。じゃあなんでずーっと制服が見え続けてるんだろう?」(←知らねぇ~よ。こっちが聞きたいぜ)
「中学の制服とかでは?」
「いや。小学校の制服です。G大附属T小って編入とかないんですか?」
「普通ないでしょっ! あるとすれば空きがあるときに他県の国立小からの転籍でしょ? 公立小から国立小に入ったなんて話聞いたことないですよ」
「そうでしょうねえ。けど見え続けているので何かあるんだと思います。今後もG大附属T小の動向には注目していてください。あと娘さんは公立小でも十分うまくやっていきますよ。小さなトラブルは出てくるかもしれませんが、大事になるようなことはなさそうです。優等生で勉強もできるし、心配はないでしょう」
「これだけハズされるというのは何かあるんでしょうか。たとえばどこかで運命が変わってしまったとか?」
「そうですね。これだけハズれると何か影響しているかもしれません。今度いらっしゃるときには本人をつれてくるか、写真を持ってきてもらえますか。もう一度娘さんを鑑定し直す必要があります」
「私、結構いろんな人に娘はG大附属T小に入るって占いで言われたってベラベラしゃべってたんですけど、そういうのって影響しますかねぇ?」
「それはないです。それにしても本当になんでハズしたんか私にもわかりません。まだ見え続けてますからねえ」
先生自体も不思議だ不思議だと連発するのだが、そんなこと言われてもな、である。
「それより弟さんです。お姉ちゃんのほうは公立でもやっていけますが、弟さんはマズいです」
といきなり息子が出てきた。
「この人は公立だとダメです。ヤバいです。けどお姉ちゃんと同じ学校って出てますから、このままだと公立になってしまいます。そこはなんとか阻止しないと」
阻止するっていったいどうするんだよっ! けど理由は聞かないまでも、なんとなく息子の場合だと公立じゃダメな感じは確かにするんだよなあ~。
あれこれ私も突っ込んで約束の15分はとっくに過ぎ、かれこれ30分経とうとしている。
さすがにそろそろということになり、では次回ということになり電話を切った。
30分といえば1万円分。ちょっと得した気分だと一瞬思ったが、これだけハズしたんだから3ヶ月先といわずすぐに診てくれとか、今度は鑑定料まけろとかゴネてもよかったのかな。
しかし所詮、占いは当たるも八卦、当たらぬも八卦。野暮は禁物というやつか。
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