T大附属T小への合格を見事に勝ち取った雪美ちゃん&由美子さん(仮名)親子と、同校を第一志望にしていたが本人の強い希望で私立の超難関校G小学校に進学が決まった陽太&みっちゃん(仮名)親子。
由緒正しい人気お嬢様学校S女学院に決まった詩音ちゃん&里美さん(仮名)。S女学園に決まった泰子のお友だち。
こうして結果が出揃ってみると、順当にというか、やはり努力した親子に勝利の女神は微笑んでいる。
少なくても私の周りではまぐれだとか、たまたまなんてことは起こらなかったわけで、やっぱりちゃんとやらないと小学校受験は成功しないんだなというサルにもわかるごく当たり前の真実を今さらながら実感したのであった。
「おうぅ。受験終わったかい? いつからロンドンに行くんだったっけか?」
お昼を食べてゆっくりしているところに早紀ちゃん(仮名)から電話がかかってきた。
早紀ちゃんは前の会社の先輩で、一緒に何かエンターテインメントと教育を絡めたおもしろいことはできないかと常にコンタクトを取っている。早紀ちゃんの娘さんがG大附属O小学校に通っていることもあり、意外と国立小受験にはくわしかったりする。
「あかんかったよ。ちょっと聞いてくれる? T大附属T小のときにさあ」
と2次試験のときの話をする。「誰か始めのあいさつをできる子はいませんか?」と言われた話に及ぶと、
「おいおいおい。まさかお前の娘、そこでのこのこ手なんて挙げてないよなぁ?」
と話の腰を折る早紀ちゃん。
「えっ? 挙げたよ」
「あちゃぁ~! それ絶対にダメだぜぇ。で、どうしたんだよぉ」
「“皆さん、今日はいいお天気ですね。この晴れやかなお天気に負けないように晴れやかな気持ちでクイズ大会をがんばりましょう”って言って、先生からほめられてみんなから拍手してもらったって」
「おいおいおいおい。そりゃあ落ちるぜぇ」
「な、なんでよっ!?」
「あのなあ。国立ってのは子どもたちは実験台なんだよ。同じぐらいのレベルの子どもたちを揃えたいんだよ。だからできないヤツもダメだし、できすぎるヤツもダメなんだよ。話を聞いてりゃあ、お前の娘は突出しすぎてるんだよ。そんな子は実験台に使えないだろ。私立だったらいいけどよぉ、そこんとこ考えないとな」
「終わりのあいさつをした子もいたよ」
「そいつもダメだったろ?」
「うん」
そうなのだ。白の23番さんも落ちていた。なんだよっ! できすぎるとダメってそんなことあるのかよっ!
ブー垂れる私に、
「まあ、中学受験でリベンジだな。でもダメで落ちるよりできすぎて落ちるほうがいいだろぉがよぉ」
となだめにかかる早紀ちゃん。
できすぎたから落ちたかどうかは本当のところはわからない。実はペーパーも本人はできたつもりでも答えが違っていた可能性もあるので、事実は定かではない。
けどそう思うことで自分の気持ちが楽になるのなら、そう思わせてもらおうかな。
早紀ちゃんよ。ありがとよっ!である。
そしてこの日は黒百合姉妹のライブであった。いそいそと準備をしているところにまたもや電話が鳴る。電話の相手はみっちゃんだ。
「雪美ちゃんのところはおめでとうだったけど、Aちゃん、本当に残念だったね。もしよかったら山ちゃん(←名古屋の激安居酒屋・世界の山ちゃん。うちとみっちゃんちの間になんと2店舗もある)にでも行って飲んじゃう?」
ときた。
みっちゃんと山ちゃんで痛飲かあ~。それもいいなあ。しかしこれから私たちはライブに行くのである。
また今度ねということで、ライブ会場にゴーっ!
4年ぶりぐらいに見た黒百合姉妹のライブはやっぱり素敵だった。
会場には姉妹のママ・ゆうさんもいて、なんとこの人、娘のライブそっちのけでひたすらマイケル・ジャクソンのドキュメンタリー「This is it.」がよかったという話をしている。もうマイケルの話をしているか、うちの娘と遊んでいるかのどちらかで、ゆうさんパワー全開である。
「そや、JURIからAちゃん、お受験してるって話聞いたけど、どうなったん?」
「あきませんでしたよっ!!!」
「まあ、しゃあないな。ええやん。どこでも学校なんて。うちなんかはまあピアノでもやらせばええやんって気楽に考えとったよ」
・・・そうか、そうなると娘たちは黒百合姉妹になるのだな。
ライブ後にはJURIがやってきて、
「そうそう、結局お受験どうだった?」
と聞くので、ダメだったことを伝えると、
「ふう~ん。まあねえ、確かにダメそうなオーラは見えてたけどね」
ときた。それならそんときにそう言ったってくれよっ! プンプン!
そしてライブの帰り道。娘が私にぽそりと呟いた。
「私、知ってるんだ。本当は私、クイズ大会に負けたんだよね」
そう言われて胸がギューッッと締め付けられた。なんてせつないことを言うんだ。
「いいんだよ。そんなことは。負けてなんていないよ。だってその証拠にM小学校からお手紙が来て、ぜひ4月から来てくださいだって」
私は握っていた手にグッと力を入れる。
M小学校とはうちから徒歩30秒以下のところにある近所の公立小学校である。必然的にM小学校に行くしかない。
「わーい。よかった~。お友だちはみんなM小学校なんだよね?」
「そうだよ。カリンちゃん(←洋子とタケルの娘。一番の仲良し)も亮太くん(←娘の片思いの相手。実は近所の地主のひ孫。クラスの女の子たちは全員亮太ラブ。けど神童・朔美ちゃんと両想いという噂)もM小学校だよ」
「よかった~。朔美ちゃんはMG小学校(←隣接する公立小学校。超高級住宅街にあり中学受験率100%の区内ナンバーワン人気校)に行っちゃうから、亮太に近づけるビッグ・チャ~ンス♪」
そう娘は無邪気に喜んでいる。
娘は心の優しい子だ。めいっぱい気を遣ってくれているのだろう。私は目頭を熱くしながら、娘をぎゅっと抱きしめる。
「そうだよ。小学校に行ったら楽しいことがいっぱいあるよ」
「わーい。私、M小学校に行くの、とっても楽しみ♪」
「そうだね。マミィも楽しみにしているよ。イギリスから帰ってきたら可愛いランドセル買いに行こうよ」
「本当? だったら私、赤いのがいいかな」
こうして私のお受験は終わりを告げた。もはやこんな経験をさせてもらうことは二度とないだろう。
息子もM小学校で決まりだっ! 文句あるかっ!
0 件のコメント:
コメントを投稿