娘が小学校に入学すると、毎日学校に持っていくものの点検や宿題、連絡ノートの確認など、親が関与しなければいけないことが保育園のときより倍増する。
これでPTAの役員をやったり、学校の送り迎えがあったり、お弁当を作らなければいけなかったりすると、その手間は膨大なものになるのだが、幸い今年はPTAの役も送迎もお弁当もない。
それでも毎日慌しく過ぎていく。娘はしっかりしているようで、意外と先生の話を聞いていなかったり、持ち物にまで気が回らなかったりするので、あれこれと口出しすることが多くなってくる。
特に4月過ぎから私の帰りも遅くなっているので、帰宅後の慌しさといったらもう怒涛のごとくである。
そんな忙しいときに限って息子が「抱っこ抱っこ」とうるさい。保育園に迎えに行くと、まず「抱っこ」で、家まで「抱っこ」で帰ってほしいとグズるのだ。
いくらなんでも20kg近い息子を抱っこして帰宅するのは無理である。
で、家に帰っても「抱っこ」である。ご飯を作っているときも「抱っこ」、娘の宿題をチェックするときも「抱っこ」、ご飯を食べているときも「抱っこ」して食べさせてと、おかげでただでさえ太い二の腕がとんでもないことになってきた!
そして「抱っこ」の次は「おっぱい」である。
さすがにもう母乳は出ないのだが、息子はおっぱいを飲むフリをする。本当の赤ちゃんのようにあやしてあげて背中をトントン叩いてあげると、「ウゲッ」とゲップを出すフリまでする。
背中をトントン叩かないときは、「ほらっ、ちゃんとゲップさせて」とうるさいので、「本当の赤ちゃんは自分でそんなことは言いません」と切り返すと、「いやっ!」と言って私の胸に顔をうずめてくる。
「抱っこ!」と言う息子を振り切ってキッチンで夕食の準備をしていると、「ハイハイ」をしながら追いかけてくる。
おい、息子よ。いったいどうしたのだ?
息子についつい甘い私でもさすがにドン引きである。ましてや自立自主を重んじるアングロサクソンの夫にはこういった息子の姿は耐え難いらしい。
早生まれでただでさえ同い年の子どもたちの間でも幼い息子が赤ちゃん返りをしてしまったら、ますます他の子たちと差がついてしまうではないかっ。
もともとボキャブラリーの乏しい息子の幼い言語能力がますます「ぼくぅ~、バブちゃん」と、なんでも「バブぅ~」としか表現しなくなったので、退化する一方だ。
これではお受験どころではない。息子よ。せめてふつうになっておくれ。
どうやら親の関心が小学校に入った娘に向いていることがおもしろくないらしく、自分のことも構ってほしいという懸命なアピールのようなのだが、物事には限度がある。
息子の赤ちゃん返りはひどくなるばかりだ。
そんなある日、ママ友のひとりと息子の赤ちゃん返りの話が出て、
「それってお母さんが妊娠してから、赤ちゃん返りする2~3歳の子みたいだね」
と言われ、もしやと思う。
息子は私のお腹に赤ちゃんがいるとでも勘違いしているんじゃないか?
そう考えれば息子の赤ちゃん返りの激しさの説明がつく。
息子は意外とヤキモチ焼きで、以前から私がよその小さい子を抱っこすると息子は泣いて怒って、抱き上げた子を引きずりおろそうとする。
「抱っこだめ! ぼくだけっ!」と自分以外の子どもを私や夫が抱っこするのは、許せないらしい。娘を抱っこしていても「ぼくも!」と言って割り込んでくるので、娘も慣れたものでそこでいったん弟に譲って、抱っこしてほしいときは息子がいないときを狙ってやってくる。
2~3歳の子みたいというのも、ちょうど息子の精神年齢もそれぐらいだから納得である。
それからいつものように息子を抱っこしているときに、
「Lくん(←息子)って、もしかしてマミィに赤ちゃんできたって思ってない?」
と聞いてみると、「うんっ!」と思いっきり肯定するではないか。
やはり。ママ友の推測どおりではないか。でもなぜ? 周りのお友だちのママで妊娠している人もいないし。
「なんでマミィのお腹に赤ちゃんがいると思うの?」
素直に疑問を息子に向けると、
「だってお腹大きいじゃんっ!」
と私のお腹のお肉を掴む息子。
「はっ!?」
「こんなにお腹が太っちょだったら赤ちゃんいるよねっ!」
・・・・・。何? 私がデブってことですか?
「赤ちゃん、いないよ」
「うそっ! こんなにお腹が大きいのに赤ちゃんいないわけないよっ! マミィのお腹は太っちょ! ぼくぅ、弟も妹もいらないよぉ~。ぼくだけ赤ちゃんがいいよぉ~。ぼくだけ抱っこしてぇ~」
むぎゅっと再び私の胸に顔をうずめ、シクシク泣き出す息子。
マジかよ。私はそんなにデブなのか? 泣きたいのはこっちだよっ。
とりあえず息子の赤ちゃん返りの原因が解明されたのではあるが・・・。
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