2010年11月28日日曜日

早紀ちゃん(仮名)よ、お前もかっ!?

 早紀ちゃんのお休みは月曜日だ。早紀ちゃんはこの日は自分のためだけに使うと決めているらしく、夜は新宿か池袋の行きつけのバーで締めるというのが日課らしい。
 何軒かある早紀ちゃんの行きつけのバーのうちひとつがうちから徒歩5分のところにあり、月に1回か2回の割合で子どもたちを寝かしつけてから2時間ぐらいそこで飲むということがここしばらく続いている。
 
 そのバーは昭和レトロな雰囲気を残す横丁の一角にあり、私はいつもママチャリをバーに横付けする。
 カウンターしかないバーは5,6人も座れば満席になるようなこじんまりとしたところで、カウンターの中には蝶ネクタイと黒のチョッキというバーデンの正装をきっちりと着こなしたマスターが穏やかな微笑を浮かべながらカクテルを作ってくれる。
 私は基本的にビールとかワインとかスコッチが好きなのだが、こういう場所だとカクテルを飲まないともったいないよなあと思ってしまう。 
 ここではたいていフレッシュミントを使ったモヒートかマルガリータかジントニックを頼むのだが、マルガリータは夫が作ってくれたもののほうがおいしく、モヒートはここのマスターが作ってくれたもののほうが断然おいしい。
 早紀ちゃんはたいていマリブだとかアマレットなど甘いリキュールをロックで飲んでいる。

 その日も横丁のバーで私たちはカクテルを飲んでいた。
 「そういやあよぉ、この前、お前から生年月日聞かれたけどよぉ、誕生日にプレゼントでもくれんのかよぉ」
と唐突に早紀ちゃんが話を切り出す。生年月日を聞いたのは銀座の先生のところに行く前で、早紀ちゃんとのプロジェクトがどうなっていくか聞くために必要だと思ったからだ。
 「その件に関しては実はね・・・」
と銀座にすごく当たると私たちの間で有名な占い師の先生がいて・・・と話し始めると、
 「おいおい。マジかよぉ!?」
と素っ頓狂な声を上げる早紀ちゃん。
 「実はよぉ、俺も行きつけの占い師がいてよぉ。お前とのプロジェクトを診てもらったことがあるんだぜぇ」
 「え!? マジ?」
 そんなの初耳である。しかし45歳超えたおっちゃんに行きつけの占い師がいるというのもトホホな話である。
 人のことは全然言えんが。

 「俺、なんかあると必ずそこに行くんだけどよぉ(←えっ!?)。池袋のパルコによぉ、週1で来ているタロットのお姉さんなんだよぉ。この人がさあ、すげえ当たるんだぜぇ」
 池袋のパルコの占い師かあ~。池袋のパルコと言えば若者のブランドしか全館入っていない。場所だけでもこの男は相当浮くぞ。しかもタロット占い・・・。
 いったいどんな面してこの男は占ってもらってるんだ?

 「そこでなんって言われたわけ?」
 「お前がどうこうってわけじゃないらしいんだけどよぉ。物事は進まないって言われたんだよなぁ。どうやら俺が止めているらしいんだけどよぉ。で、お前はなんって言われたんだよぉ?」
 「早紀ちゃんが女性で対等な立場だったらいいらしんだけど、男だからダメなんだって。早紀ちゃんが女性だったら何がしら話は進んでたって言われたよ」
 正直に答えるべきかどうか一瞬迷ったものの、結局正直に答えた。ただ早紀ちゃんから紹介される女性は吉だと言われたことは伏せておいた。 
「なるほどなあ~。俺が言われたことと似てるじゃん。そっかぁ~、俺らって一緒に仕事していい相性というか、そんなんじゃなさそうだなあ」
 「けど言っておくけど、その占い、うちの子のお受験思いっきりはずしてるから、当てになんないからね」
 「まあそうだよな。当たるも八卦当たらぬも八卦って言うからな。お互い占いではいいこと言われてないけどよぉ、これからもよろしくな」
 「そうだね」

 別に仕事関係が進まなくたって、私たちは飲み友だちである。別にいいじゃん、飲みながら何かおもしろいことでもできないかなって、あーだこーだとぐだぐだやるだけでも。私にとってはそれだけでもいい刺激になっているのだから。

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