面接から1週間後の土曜日の午後、美佳先生がやってきた。ついにうちの子どもたちの英語のリテラシー教育が始まるのだ。
美佳先生がやってくる時間は1時半から2時半まで。土曜日は1時半まで私がフラメンコのレッスンがあるので、帰宅するとすでに美佳先生の授業は始まっている。
娘のアルゴクラブが3時半から始まり3時には家を出ないといけないし、息子の幼児教室が3時50分から始まるので、息子も3時にいっしょに娘と家を出るか、または3時半には家を出ないといけないので、ただでさえ慌しい土曜日が、より慌しくなってしまった。
初日はGWだったため、他の習い事はすべてお休みだったので最初から最後まで美佳先生のレッスンの様子を見ることができた。
夫がオクスフォードの教材を用意していたので、そのプリントに沿ってレッスンが始まった。
とりあえずはふたり揃ってレッスンを受けさせ、様子を見てひとりずつにするのか、ふたりいっぺんにやるのか決めることに。
リビングのテーブルをレッスンの場所にし、私たちはダイニングでそれぞれパソコンを見たり、本を読んだりしているのが、レッスンの様子はよく見える。
美佳先生は落ち着いたトーンの英語で子どもたちに話しかける。まずはアルファベットの練習だ。
しかし傍で聞いていてなんとも違和感を抱いてしまう。ちょっと専門的な話だけど、美佳先生のアプローチはストラクチャー・ベースと呼ばれるもので、たとえば「I have~」という構文を教えて、次に続く語は「a pen」「an apple」「some money」でも何でもいいのだが、構文を中心にして語彙を増やしていくというもの。
私が日ごろ接しているアプローチ法がコミュニケーション・ベースとかシチュエーション・ベースと呼ばれる場面設定に応じたもので、たとえば「買い物」という場面では、買い物に必要な言い回しを文法などの説明抜きに紹介するものだ。
要は私たちが学校でずっと習ってきたのが美佳先生のアプローチで、今の小学生が習うのが望ましいとされているのがコミュニケーション英語なのだ。
この両者の違いはとてつもなく大きい。
肝心な子どもたちはといえば、10分もしないうちに息子は美佳先生の膝の上に座っていて指しゃぶりを始めているではないかっ!
しかもちらっとプリントを見ると、すでに意味不明の落書きでぐちゃぐちゃになっている!
娘はちゃんとレッスンについていっているようだが、美佳先生の注意が息子に向けられている間は、娘も所在なさそうに絵を描き始めている。
おい、だいじょうぶなのか?
「ふたりともすごっくいい感性をしていますね」
レッスン終了後、美佳先生が言う。
ええ~? そうですかあぁ?
「Lくん(息子)もすごくわかってますよ。彼、頭いいですよ」
本当か? 膝の上に座って指しゃぶってただけなんですけど。
「ではまた来週」
と夫からレッスン料と交通費を受け取って軽やかに帰っていく美佳先生。
「あのストラクチャー・ベースでいいわけ?」
夫に直球で疑問をぶつける私。
「リテラシーだからね。ユーの言いたいことはわかるよ。ミーの会社(←夫の会社は企業研修をやっている)のアプローチも違うからね。けどこれはミーの言語学上の実験でもあるからミーの好きなようにやらせてほしい。これがうまくいけばミーの組み立てた理論が正しいことが証明されるのだ」
えっ? これって夫の学究的な実験だったんですかぁ?
聞いてないぞ、そんな話。あの~、もしその理論が間違ってたらどうなるの?
「最終的にはイギリスに送り込んじゃえばいいね。いやでもバイリンガルになるね」
だそうだ。子どもたちよ。
君たちの検討を祈る!
2010年11月29日月曜日
2010年11月28日日曜日
早紀ちゃん(仮名)よ、お前もかっ!?
早紀ちゃんのお休みは月曜日だ。早紀ちゃんはこの日は自分のためだけに使うと決めているらしく、夜は新宿か池袋の行きつけのバーで締めるというのが日課らしい。
何軒かある早紀ちゃんの行きつけのバーのうちひとつがうちから徒歩5分のところにあり、月に1回か2回の割合で子どもたちを寝かしつけてから2時間ぐらいそこで飲むということがここしばらく続いている。
そのバーは昭和レトロな雰囲気を残す横丁の一角にあり、私はいつもママチャリをバーに横付けする。
カウンターしかないバーは5,6人も座れば満席になるようなこじんまりとしたところで、カウンターの中には蝶ネクタイと黒のチョッキというバーデンの正装をきっちりと着こなしたマスターが穏やかな微笑を浮かべながらカクテルを作ってくれる。
私は基本的にビールとかワインとかスコッチが好きなのだが、こういう場所だとカクテルを飲まないともったいないよなあと思ってしまう。
ここではたいていフレッシュミントを使ったモヒートかマルガリータかジントニックを頼むのだが、マルガリータは夫が作ってくれたもののほうがおいしく、モヒートはここのマスターが作ってくれたもののほうが断然おいしい。
早紀ちゃんはたいていマリブだとかアマレットなど甘いリキュールをロックで飲んでいる。
その日も横丁のバーで私たちはカクテルを飲んでいた。
「そういやあよぉ、この前、お前から生年月日聞かれたけどよぉ、誕生日にプレゼントでもくれんのかよぉ」
と唐突に早紀ちゃんが話を切り出す。生年月日を聞いたのは銀座の先生のところに行く前で、早紀ちゃんとのプロジェクトがどうなっていくか聞くために必要だと思ったからだ。
「その件に関しては実はね・・・」
と銀座にすごく当たると私たちの間で有名な占い師の先生がいて・・・と話し始めると、
「おいおい。マジかよぉ!?」
と素っ頓狂な声を上げる早紀ちゃん。
「実はよぉ、俺も行きつけの占い師がいてよぉ。お前とのプロジェクトを診てもらったことがあるんだぜぇ」
「え!? マジ?」
そんなの初耳である。しかし45歳超えたおっちゃんに行きつけの占い師がいるというのもトホホな話である。
人のことは全然言えんが。
「俺、なんかあると必ずそこに行くんだけどよぉ(←えっ!?)。池袋のパルコによぉ、週1で来ているタロットのお姉さんなんだよぉ。この人がさあ、すげえ当たるんだぜぇ」
池袋のパルコの占い師かあ~。池袋のパルコと言えば若者のブランドしか全館入っていない。場所だけでもこの男は相当浮くぞ。しかもタロット占い・・・。
いったいどんな面してこの男は占ってもらってるんだ?
「そこでなんって言われたわけ?」
「お前がどうこうってわけじゃないらしいんだけどよぉ。物事は進まないって言われたんだよなぁ。どうやら俺が止めているらしいんだけどよぉ。で、お前はなんって言われたんだよぉ?」
「早紀ちゃんが女性で対等な立場だったらいいらしんだけど、男だからダメなんだって。早紀ちゃんが女性だったら何がしら話は進んでたって言われたよ」
正直に答えるべきかどうか一瞬迷ったものの、結局正直に答えた。ただ早紀ちゃんから紹介される女性は吉だと言われたことは伏せておいた。
「なるほどなあ~。俺が言われたことと似てるじゃん。そっかぁ~、俺らって一緒に仕事していい相性というか、そんなんじゃなさそうだなあ」
「けど言っておくけど、その占い、うちの子のお受験思いっきりはずしてるから、当てになんないからね」
「まあそうだよな。当たるも八卦当たらぬも八卦って言うからな。お互い占いではいいこと言われてないけどよぉ、これからもよろしくな」
「そうだね」
別に仕事関係が進まなくたって、私たちは飲み友だちである。別にいいじゃん、飲みながら何かおもしろいことでもできないかなって、あーだこーだとぐだぐだやるだけでも。私にとってはそれだけでもいい刺激になっているのだから。
何軒かある早紀ちゃんの行きつけのバーのうちひとつがうちから徒歩5分のところにあり、月に1回か2回の割合で子どもたちを寝かしつけてから2時間ぐらいそこで飲むということがここしばらく続いている。
そのバーは昭和レトロな雰囲気を残す横丁の一角にあり、私はいつもママチャリをバーに横付けする。
カウンターしかないバーは5,6人も座れば満席になるようなこじんまりとしたところで、カウンターの中には蝶ネクタイと黒のチョッキというバーデンの正装をきっちりと着こなしたマスターが穏やかな微笑を浮かべながらカクテルを作ってくれる。
私は基本的にビールとかワインとかスコッチが好きなのだが、こういう場所だとカクテルを飲まないともったいないよなあと思ってしまう。
ここではたいていフレッシュミントを使ったモヒートかマルガリータかジントニックを頼むのだが、マルガリータは夫が作ってくれたもののほうがおいしく、モヒートはここのマスターが作ってくれたもののほうが断然おいしい。
早紀ちゃんはたいていマリブだとかアマレットなど甘いリキュールをロックで飲んでいる。
その日も横丁のバーで私たちはカクテルを飲んでいた。
「そういやあよぉ、この前、お前から生年月日聞かれたけどよぉ、誕生日にプレゼントでもくれんのかよぉ」
と唐突に早紀ちゃんが話を切り出す。生年月日を聞いたのは銀座の先生のところに行く前で、早紀ちゃんとのプロジェクトがどうなっていくか聞くために必要だと思ったからだ。
「その件に関しては実はね・・・」
と銀座にすごく当たると私たちの間で有名な占い師の先生がいて・・・と話し始めると、
「おいおい。マジかよぉ!?」
と素っ頓狂な声を上げる早紀ちゃん。
「実はよぉ、俺も行きつけの占い師がいてよぉ。お前とのプロジェクトを診てもらったことがあるんだぜぇ」
「え!? マジ?」
そんなの初耳である。しかし45歳超えたおっちゃんに行きつけの占い師がいるというのもトホホな話である。
人のことは全然言えんが。
「俺、なんかあると必ずそこに行くんだけどよぉ(←えっ!?)。池袋のパルコによぉ、週1で来ているタロットのお姉さんなんだよぉ。この人がさあ、すげえ当たるんだぜぇ」
池袋のパルコの占い師かあ~。池袋のパルコと言えば若者のブランドしか全館入っていない。場所だけでもこの男は相当浮くぞ。しかもタロット占い・・・。
いったいどんな面してこの男は占ってもらってるんだ?
「そこでなんって言われたわけ?」
「お前がどうこうってわけじゃないらしいんだけどよぉ。物事は進まないって言われたんだよなぁ。どうやら俺が止めているらしいんだけどよぉ。で、お前はなんって言われたんだよぉ?」
「早紀ちゃんが女性で対等な立場だったらいいらしんだけど、男だからダメなんだって。早紀ちゃんが女性だったら何がしら話は進んでたって言われたよ」
正直に答えるべきかどうか一瞬迷ったものの、結局正直に答えた。ただ早紀ちゃんから紹介される女性は吉だと言われたことは伏せておいた。
「なるほどなあ~。俺が言われたことと似てるじゃん。そっかぁ~、俺らって一緒に仕事していい相性というか、そんなんじゃなさそうだなあ」
「けど言っておくけど、その占い、うちの子のお受験思いっきりはずしてるから、当てになんないからね」
「まあそうだよな。当たるも八卦当たらぬも八卦って言うからな。お互い占いではいいこと言われてないけどよぉ、これからもよろしくな」
「そうだね」
別に仕事関係が進まなくたって、私たちは飲み友だちである。別にいいじゃん、飲みながら何かおもしろいことでもできないかなって、あーだこーだとぐだぐだやるだけでも。私にとってはそれだけでもいい刺激になっているのだから。
2010年11月27日土曜日
美佳先生(仮名)登場
「明日ふたり面接にうちに来るから」
と夕食のときに突然言い放った夫。
「面接って何よ?」
「ユーは全然人の話聞いてないね! 英語の家庭教師だよ」
「英語の家庭教師ぃ?」
「うちの子どもたちは英語全然だめね。特に読み書きがどうしようもないね。英語の読み書きができないとだめね。だからそれ用の家庭教師つけるね」
「そんなのユーが教えればいいじゃん」
「自分の子どもはムリね。こういうのはプロを雇ってお金で解決ね」
「英語もいいけど、その前にお受験でしょ! 英語はL(息子)のお受験が終わってからでいいじゃん!」
「お受験より英語ね。これグローバル・スタンダードね」
「っていうか、Lのお受験もやれって言ったのユーじゃんっ!」
「でも英語もやるね。家庭教師はミーがインターネット上で募集したら、履歴書が50通も送られてきたよ。そのうちのふたりが、明日うちに来るからよろしくっ!」
「料金設定はどうしたのよ?」
「子どもふたり1時間で4000円ね」
「4000円!! 高くない?」
「それぐらい出さないといい人はこないね。これ投資ね」
1時間4000円かあ~。しかし夫はこの手のビジネスのプロである。夫がこの値段が相場だというのならそうなのだろう。
さらに言うなら夫が働いている会社にも私が働いている会社にも、プロの英語の先生が揃っている。ちょっと声をかければすぐに先生は職場で見つかる環境なのだが、夫は仕事のしがらみのないところで先生を確保したいのだという。
まあ、わからんでもない話よね。
こうして翌日美佳先生がうちにやってきた。もうひとりの候補だったアメリカ人女性からはドタキャンされたので、結局美佳先生だけが面接にやってきたのだ。
30歳そこそこの美佳先生は背が高く、ものすごく整った顔をしたきれいな人だった。派手さはないけど、頭が良さそうできちんとした印象の人だ。
中学高校とアメリカで過ごし、慶応大学を卒業した後はまたアメリカに戻り、アップルで働いていたと英語で書かれた履歴書にはある。去年日本に帰ってきてWeb関係の仕事をしながら時折英語を教えているという。
経歴もすばらしいっ! 夫はずっと英語で面接をしていて(←さすが人事部)、当たり前だけど美佳先生も英語で答えている。
美佳先生の英語は西海岸特有のべっちょりとした話し方(←どんなん?)ではなく、もっとフラットでさらっとしたものだった。スピードも早くもなく遅くもなくいたってノーマル。彼女の穏やかで安定した人柄をしのばせる英語だ。
夫はいつの間にか、使ってほしいテキストや来てもらいたい日時などを指定している。採用する気満々なのだろう。子どもたちも美佳先生に興味津々でこちらをうかがっていたが、ついに息子が近づいてきて気がついたら美佳先生の膝の上に座っている。
基本的に息子は抱っこしてもらえれば誰でも(←きれいな女の人ならなおさら!)いいのである。美佳先生は突然息子が自分の膝の上に座っているので一瞬ぎょっとした表情を見せたが、「お名前なんていうの?」など英語で子どもたちに話しかける。
しかしである。
「え? 日本人でしょ? え? なんで英語なの? 英語人(←子どもたちは外国人のことをこう呼ぶ)じゃないよね?」
と子どもたちははなっから日本人相手に英語を話す気がない。
まったくもってトホホなことだ。
それでも美佳先生には翌週から来てもらうことになった。
「どう思う?」
美佳先生が帰ったあと夫が私に聞く。
「良さそうな人だと思うけど、イギリス英語を話す人じゃなくていいの?」
「読み書きだからね。読み書きならむしろ日本人の方がいいよ。あと英語にもクセがないし、履歴書なんかの英語も完璧だったから」
「ふうん。じゃあいいんじゃない。お金もユーが全部出すなら」
ということで子どもたちの習い事がまたひとつ増えたのであった。
と夕食のときに突然言い放った夫。
「面接って何よ?」
「ユーは全然人の話聞いてないね! 英語の家庭教師だよ」
「英語の家庭教師ぃ?」
「うちの子どもたちは英語全然だめね。特に読み書きがどうしようもないね。英語の読み書きができないとだめね。だからそれ用の家庭教師つけるね」
「そんなのユーが教えればいいじゃん」
「自分の子どもはムリね。こういうのはプロを雇ってお金で解決ね」
「英語もいいけど、その前にお受験でしょ! 英語はL(息子)のお受験が終わってからでいいじゃん!」
「お受験より英語ね。これグローバル・スタンダードね」
「っていうか、Lのお受験もやれって言ったのユーじゃんっ!」
「でも英語もやるね。家庭教師はミーがインターネット上で募集したら、履歴書が50通も送られてきたよ。そのうちのふたりが、明日うちに来るからよろしくっ!」
「料金設定はどうしたのよ?」
「子どもふたり1時間で4000円ね」
「4000円!! 高くない?」
「それぐらい出さないといい人はこないね。これ投資ね」
1時間4000円かあ~。しかし夫はこの手のビジネスのプロである。夫がこの値段が相場だというのならそうなのだろう。
さらに言うなら夫が働いている会社にも私が働いている会社にも、プロの英語の先生が揃っている。ちょっと声をかければすぐに先生は職場で見つかる環境なのだが、夫は仕事のしがらみのないところで先生を確保したいのだという。
まあ、わからんでもない話よね。
こうして翌日美佳先生がうちにやってきた。もうひとりの候補だったアメリカ人女性からはドタキャンされたので、結局美佳先生だけが面接にやってきたのだ。
30歳そこそこの美佳先生は背が高く、ものすごく整った顔をしたきれいな人だった。派手さはないけど、頭が良さそうできちんとした印象の人だ。
中学高校とアメリカで過ごし、慶応大学を卒業した後はまたアメリカに戻り、アップルで働いていたと英語で書かれた履歴書にはある。去年日本に帰ってきてWeb関係の仕事をしながら時折英語を教えているという。
経歴もすばらしいっ! 夫はずっと英語で面接をしていて(←さすが人事部)、当たり前だけど美佳先生も英語で答えている。
美佳先生の英語は西海岸特有のべっちょりとした話し方(←どんなん?)ではなく、もっとフラットでさらっとしたものだった。スピードも早くもなく遅くもなくいたってノーマル。彼女の穏やかで安定した人柄をしのばせる英語だ。
夫はいつの間にか、使ってほしいテキストや来てもらいたい日時などを指定している。採用する気満々なのだろう。子どもたちも美佳先生に興味津々でこちらをうかがっていたが、ついに息子が近づいてきて気がついたら美佳先生の膝の上に座っている。
基本的に息子は抱っこしてもらえれば誰でも(←きれいな女の人ならなおさら!)いいのである。美佳先生は突然息子が自分の膝の上に座っているので一瞬ぎょっとした表情を見せたが、「お名前なんていうの?」など英語で子どもたちに話しかける。
しかしである。
「え? 日本人でしょ? え? なんで英語なの? 英語人(←子どもたちは外国人のことをこう呼ぶ)じゃないよね?」
と子どもたちははなっから日本人相手に英語を話す気がない。
まったくもってトホホなことだ。
それでも美佳先生には翌週から来てもらうことになった。
「どう思う?」
美佳先生が帰ったあと夫が私に聞く。
「良さそうな人だと思うけど、イギリス英語を話す人じゃなくていいの?」
「読み書きだからね。読み書きならむしろ日本人の方がいいよ。あと英語にもクセがないし、履歴書なんかの英語も完璧だったから」
「ふうん。じゃあいいんじゃない。お金もユーが全部出すなら」
ということで子どもたちの習い事がまたひとつ増えたのであった。
2010年11月25日木曜日
息子の赤ちゃん返り
娘が小学校に入学すると、毎日学校に持っていくものの点検や宿題、連絡ノートの確認など、親が関与しなければいけないことが保育園のときより倍増する。
これでPTAの役員をやったり、学校の送り迎えがあったり、お弁当を作らなければいけなかったりすると、その手間は膨大なものになるのだが、幸い今年はPTAの役も送迎もお弁当もない。
それでも毎日慌しく過ぎていく。娘はしっかりしているようで、意外と先生の話を聞いていなかったり、持ち物にまで気が回らなかったりするので、あれこれと口出しすることが多くなってくる。
特に4月過ぎから私の帰りも遅くなっているので、帰宅後の慌しさといったらもう怒涛のごとくである。
そんな忙しいときに限って息子が「抱っこ抱っこ」とうるさい。保育園に迎えに行くと、まず「抱っこ」で、家まで「抱っこ」で帰ってほしいとグズるのだ。
いくらなんでも20kg近い息子を抱っこして帰宅するのは無理である。
で、家に帰っても「抱っこ」である。ご飯を作っているときも「抱っこ」、娘の宿題をチェックするときも「抱っこ」、ご飯を食べているときも「抱っこ」して食べさせてと、おかげでただでさえ太い二の腕がとんでもないことになってきた!
そして「抱っこ」の次は「おっぱい」である。
さすがにもう母乳は出ないのだが、息子はおっぱいを飲むフリをする。本当の赤ちゃんのようにあやしてあげて背中をトントン叩いてあげると、「ウゲッ」とゲップを出すフリまでする。
背中をトントン叩かないときは、「ほらっ、ちゃんとゲップさせて」とうるさいので、「本当の赤ちゃんは自分でそんなことは言いません」と切り返すと、「いやっ!」と言って私の胸に顔をうずめてくる。
「抱っこ!」と言う息子を振り切ってキッチンで夕食の準備をしていると、「ハイハイ」をしながら追いかけてくる。
おい、息子よ。いったいどうしたのだ?
息子についつい甘い私でもさすがにドン引きである。ましてや自立自主を重んじるアングロサクソンの夫にはこういった息子の姿は耐え難いらしい。
早生まれでただでさえ同い年の子どもたちの間でも幼い息子が赤ちゃん返りをしてしまったら、ますます他の子たちと差がついてしまうではないかっ。
もともとボキャブラリーの乏しい息子の幼い言語能力がますます「ぼくぅ~、バブちゃん」と、なんでも「バブぅ~」としか表現しなくなったので、退化する一方だ。
これではお受験どころではない。息子よ。せめてふつうになっておくれ。
どうやら親の関心が小学校に入った娘に向いていることがおもしろくないらしく、自分のことも構ってほしいという懸命なアピールのようなのだが、物事には限度がある。
息子の赤ちゃん返りはひどくなるばかりだ。
そんなある日、ママ友のひとりと息子の赤ちゃん返りの話が出て、
「それってお母さんが妊娠してから、赤ちゃん返りする2~3歳の子みたいだね」
と言われ、もしやと思う。
息子は私のお腹に赤ちゃんがいるとでも勘違いしているんじゃないか?
そう考えれば息子の赤ちゃん返りの激しさの説明がつく。
息子は意外とヤキモチ焼きで、以前から私がよその小さい子を抱っこすると息子は泣いて怒って、抱き上げた子を引きずりおろそうとする。
「抱っこだめ! ぼくだけっ!」と自分以外の子どもを私や夫が抱っこするのは、許せないらしい。娘を抱っこしていても「ぼくも!」と言って割り込んでくるので、娘も慣れたものでそこでいったん弟に譲って、抱っこしてほしいときは息子がいないときを狙ってやってくる。
2~3歳の子みたいというのも、ちょうど息子の精神年齢もそれぐらいだから納得である。
それからいつものように息子を抱っこしているときに、
「Lくん(←息子)って、もしかしてマミィに赤ちゃんできたって思ってない?」
と聞いてみると、「うんっ!」と思いっきり肯定するではないか。
やはり。ママ友の推測どおりではないか。でもなぜ? 周りのお友だちのママで妊娠している人もいないし。
「なんでマミィのお腹に赤ちゃんがいると思うの?」
素直に疑問を息子に向けると、
「だってお腹大きいじゃんっ!」
と私のお腹のお肉を掴む息子。
「はっ!?」
「こんなにお腹が太っちょだったら赤ちゃんいるよねっ!」
・・・・・。何? 私がデブってことですか?
「赤ちゃん、いないよ」
「うそっ! こんなにお腹が大きいのに赤ちゃんいないわけないよっ! マミィのお腹は太っちょ! ぼくぅ、弟も妹もいらないよぉ~。ぼくだけ赤ちゃんがいいよぉ~。ぼくだけ抱っこしてぇ~」
むぎゅっと再び私の胸に顔をうずめ、シクシク泣き出す息子。
マジかよ。私はそんなにデブなのか? 泣きたいのはこっちだよっ。
とりあえず息子の赤ちゃん返りの原因が解明されたのではあるが・・・。
これでPTAの役員をやったり、学校の送り迎えがあったり、お弁当を作らなければいけなかったりすると、その手間は膨大なものになるのだが、幸い今年はPTAの役も送迎もお弁当もない。
それでも毎日慌しく過ぎていく。娘はしっかりしているようで、意外と先生の話を聞いていなかったり、持ち物にまで気が回らなかったりするので、あれこれと口出しすることが多くなってくる。
特に4月過ぎから私の帰りも遅くなっているので、帰宅後の慌しさといったらもう怒涛のごとくである。
そんな忙しいときに限って息子が「抱っこ抱っこ」とうるさい。保育園に迎えに行くと、まず「抱っこ」で、家まで「抱っこ」で帰ってほしいとグズるのだ。
いくらなんでも20kg近い息子を抱っこして帰宅するのは無理である。
で、家に帰っても「抱っこ」である。ご飯を作っているときも「抱っこ」、娘の宿題をチェックするときも「抱っこ」、ご飯を食べているときも「抱っこ」して食べさせてと、おかげでただでさえ太い二の腕がとんでもないことになってきた!
そして「抱っこ」の次は「おっぱい」である。
さすがにもう母乳は出ないのだが、息子はおっぱいを飲むフリをする。本当の赤ちゃんのようにあやしてあげて背中をトントン叩いてあげると、「ウゲッ」とゲップを出すフリまでする。
背中をトントン叩かないときは、「ほらっ、ちゃんとゲップさせて」とうるさいので、「本当の赤ちゃんは自分でそんなことは言いません」と切り返すと、「いやっ!」と言って私の胸に顔をうずめてくる。
「抱っこ!」と言う息子を振り切ってキッチンで夕食の準備をしていると、「ハイハイ」をしながら追いかけてくる。
おい、息子よ。いったいどうしたのだ?
息子についつい甘い私でもさすがにドン引きである。ましてや自立自主を重んじるアングロサクソンの夫にはこういった息子の姿は耐え難いらしい。
早生まれでただでさえ同い年の子どもたちの間でも幼い息子が赤ちゃん返りをしてしまったら、ますます他の子たちと差がついてしまうではないかっ。
もともとボキャブラリーの乏しい息子の幼い言語能力がますます「ぼくぅ~、バブちゃん」と、なんでも「バブぅ~」としか表現しなくなったので、退化する一方だ。
これではお受験どころではない。息子よ。せめてふつうになっておくれ。
どうやら親の関心が小学校に入った娘に向いていることがおもしろくないらしく、自分のことも構ってほしいという懸命なアピールのようなのだが、物事には限度がある。
息子の赤ちゃん返りはひどくなるばかりだ。
そんなある日、ママ友のひとりと息子の赤ちゃん返りの話が出て、
「それってお母さんが妊娠してから、赤ちゃん返りする2~3歳の子みたいだね」
と言われ、もしやと思う。
息子は私のお腹に赤ちゃんがいるとでも勘違いしているんじゃないか?
そう考えれば息子の赤ちゃん返りの激しさの説明がつく。
息子は意外とヤキモチ焼きで、以前から私がよその小さい子を抱っこすると息子は泣いて怒って、抱き上げた子を引きずりおろそうとする。
「抱っこだめ! ぼくだけっ!」と自分以外の子どもを私や夫が抱っこするのは、許せないらしい。娘を抱っこしていても「ぼくも!」と言って割り込んでくるので、娘も慣れたものでそこでいったん弟に譲って、抱っこしてほしいときは息子がいないときを狙ってやってくる。
2~3歳の子みたいというのも、ちょうど息子の精神年齢もそれぐらいだから納得である。
それからいつものように息子を抱っこしているときに、
「Lくん(←息子)って、もしかしてマミィに赤ちゃんできたって思ってない?」
と聞いてみると、「うんっ!」と思いっきり肯定するではないか。
やはり。ママ友の推測どおりではないか。でもなぜ? 周りのお友だちのママで妊娠している人もいないし。
「なんでマミィのお腹に赤ちゃんがいると思うの?」
素直に疑問を息子に向けると、
「だってお腹大きいじゃんっ!」
と私のお腹のお肉を掴む息子。
「はっ!?」
「こんなにお腹が太っちょだったら赤ちゃんいるよねっ!」
・・・・・。何? 私がデブってことですか?
「赤ちゃん、いないよ」
「うそっ! こんなにお腹が大きいのに赤ちゃんいないわけないよっ! マミィのお腹は太っちょ! ぼくぅ、弟も妹もいらないよぉ~。ぼくだけ赤ちゃんがいいよぉ~。ぼくだけ抱っこしてぇ~」
むぎゅっと再び私の胸に顔をうずめ、シクシク泣き出す息子。
マジかよ。私はそんなにデブなのか? 泣きたいのはこっちだよっ。
とりあえず息子の赤ちゃん返りの原因が解明されたのではあるが・・・。
2010年11月22日月曜日
娘の小学校入学
4月1日からは毎朝今まで通いなれていた保育園ではなく、娘は学童に通うことになった。
ちなみに保育園から学童までの距離はわずか100メートルほど。これから娘は学童で夕方6時まで過ごすことになるのだが、私はその時間までお迎えに行くことができない。
その後の時間についていろいろな角度から検討し、結果保育園の園長先生の好意に甘えることにして、夕方6時過ぎたらお迎えに行ける時間まで保育園で過ごさせてもらうことになった。
娘だけでなく他にも卒園生たちが何名か、学童後に保育園で過ごしている。双方の実家が遠方のため当てにできない私たちのような家族には本当にありがたい措置だ。
保育園のときは当たり前のように毎日給食が出ていたが、小学校になるとそれが当たり前ではなくなる。
4月1日の時点ではまだ小学校に入学していないので、1日中学童で過ごすことになるのだが、こういう場合はお弁当持参なのである。
入学して給食が始まるまで、お弁当作りの日々を過ごさなければいけない。ちなみに私は昨今雑誌なんかでよく取り上げられている「キャラ弁」とか「デコ弁」といわれるものが、だいっきらいだ。
こっちとら、働いてるんだよぉ。そんなチマチマと細かい作業してる時間なんてないっ!ちゅうの。たかがお弁当でそんなに子どもを甘やかすなっ!
「可愛すぎて食べるのがもったいない~♪」
アホか。お弁当は食べるためにあるんだろが。そういう「私っていいママ♪」みたいな偽善が大嫌いだ。
まあ基本的に細かい作業が嫌いだという個人の資質の問題が私にはあるわけだが。
さて毎朝のお弁当作りも慣れてきた4月6日に、入学式が行われた。
娘が入学したのは我が家から歩いて20秒の区立M小学校である。銀座の先生から国立受験を勧められその気になってしゃかりきにお受験をやったのだが、結局どの学校からもご縁をいただけず、まあ予定通りといえば予定通りなのだが、とにかく激近のM小学校だ。
この小学校、なんと我が家の窓から正門が見えるので家にいながら娘がちゃんと校門をくぐったかどうか確認できるのだ。
この日、私も夫も有給をとり入学式に出た。家から近いのでギリギリの時間に家を出たって十分間に合うのが大きなメリットだ。
モノトーンのチェックのワンピースを着て、その上に紺色のカーディガンを羽織り、髪の毛はアップにまとめて、赤いシャーリーテンプルのランドセルを背負えば、誰がどう見てもピカピカの1年生である。
子どもが小学校にあがるというのは子育てのひとつの区切りでもある。娘が生まれてから今までのことが走馬灯のようにグルグルと頭の中を駆け巡る。
赤ちゃんだったこの子がもう小学生かぁ~、大きくなったなあと思わず目頭も熱くなるが、夫も同じ気持ちらしく目がウルウルしている。
小学校の体育館で行われた入学式では、その前の保護者会などでもわかっていたことではあるが、同じ学年の半数の保護者は知り合いなので、あっちこっちで見慣れた顔を見た。
娘はなんと憧れの亮太くん(仮名)と手をつないで、行進している。
私はといえば、この日のためにちょっと前にReflectというブランドの黒と紺色の中間ぐらいの色のジャケットと揃いのワンピースを買っておいた。これだけだと地味というか、これってお受験スーツっぽいじゃんっというもの(←だから買った。息子のお受験ではバリバリ着るよ~)なので、大ぶりのパールのネックレスやコサージュを合わせて、我ながらいかにも入学式のお母さんっていう感じ。
娘は2組で担任の先生はなんと私と名前が同じで美緒先生(仮名)という。まだ20歳代半ばの華奢で可愛らしい先生だ。保護者席からボソボソと「おお~、先生、可愛いじゃんっ」と不謹慎な声があっちこっちから聞こえてくる。
頼みますよっ。お父さん方!
どっさりと教科書やらお道具箱などを受け取り、すべてのものに名前を書いてくるようにと言い渡される。
ちなみに国語の教科書を見てみると、新6年生の甥っ子が1年生だったときの国語の教科書を見せてもらったことがあるのだが、採択されている教科書会社の違いがあるとはいえ内容がまるで違う。
甥っ子のときは最初のページから何ページかは教科書にも関わらず文字が1文字も書かれていなくて絵だけだったので、ひどくビックリした思い出がある。
それに引き換え娘の教科書は、私たちが子どものときの教科書のように1ページ目からちゃんと文字が書かれている。
今から思えば甥っ子のときは悪名高き「ゆとり教育」の真っ只中だったんだなあ~。
2011年から新学習指導要領が施行され、現在は移行措置の時期だ。ギリギリでうちの子どもたちは「ゆとり教育」を受けずにすむことになる。
本来の「ゆとり教育」の精神はすばらしいものだったとは思うが、実際の運用には無理があったのだと思う。
教科書ひとつとっても、今が公立の学校教育の変換期であることがヒシヒシと伝わってくる。
その日の夜はこれから6年も続く娘の小学校生活に幸あれと、私たちは家族で記念写真を撮りに行き、夜は東京の夜景が見渡せるラブリーなシーフードレストランで入学祝のディナーを食べたのであった。
ちなみに保育園から学童までの距離はわずか100メートルほど。これから娘は学童で夕方6時まで過ごすことになるのだが、私はその時間までお迎えに行くことができない。
その後の時間についていろいろな角度から検討し、結果保育園の園長先生の好意に甘えることにして、夕方6時過ぎたらお迎えに行ける時間まで保育園で過ごさせてもらうことになった。
娘だけでなく他にも卒園生たちが何名か、学童後に保育園で過ごしている。双方の実家が遠方のため当てにできない私たちのような家族には本当にありがたい措置だ。
保育園のときは当たり前のように毎日給食が出ていたが、小学校になるとそれが当たり前ではなくなる。
4月1日の時点ではまだ小学校に入学していないので、1日中学童で過ごすことになるのだが、こういう場合はお弁当持参なのである。
入学して給食が始まるまで、お弁当作りの日々を過ごさなければいけない。ちなみに私は昨今雑誌なんかでよく取り上げられている「キャラ弁」とか「デコ弁」といわれるものが、だいっきらいだ。
こっちとら、働いてるんだよぉ。そんなチマチマと細かい作業してる時間なんてないっ!ちゅうの。たかがお弁当でそんなに子どもを甘やかすなっ!
「可愛すぎて食べるのがもったいない~♪」
アホか。お弁当は食べるためにあるんだろが。そういう「私っていいママ♪」みたいな偽善が大嫌いだ。
まあ基本的に細かい作業が嫌いだという個人の資質の問題が私にはあるわけだが。
さて毎朝のお弁当作りも慣れてきた4月6日に、入学式が行われた。
娘が入学したのは我が家から歩いて20秒の区立M小学校である。銀座の先生から国立受験を勧められその気になってしゃかりきにお受験をやったのだが、結局どの学校からもご縁をいただけず、まあ予定通りといえば予定通りなのだが、とにかく激近のM小学校だ。
この小学校、なんと我が家の窓から正門が見えるので家にいながら娘がちゃんと校門をくぐったかどうか確認できるのだ。
この日、私も夫も有給をとり入学式に出た。家から近いのでギリギリの時間に家を出たって十分間に合うのが大きなメリットだ。
モノトーンのチェックのワンピースを着て、その上に紺色のカーディガンを羽織り、髪の毛はアップにまとめて、赤いシャーリーテンプルのランドセルを背負えば、誰がどう見てもピカピカの1年生である。
子どもが小学校にあがるというのは子育てのひとつの区切りでもある。娘が生まれてから今までのことが走馬灯のようにグルグルと頭の中を駆け巡る。
赤ちゃんだったこの子がもう小学生かぁ~、大きくなったなあと思わず目頭も熱くなるが、夫も同じ気持ちらしく目がウルウルしている。
小学校の体育館で行われた入学式では、その前の保護者会などでもわかっていたことではあるが、同じ学年の半数の保護者は知り合いなので、あっちこっちで見慣れた顔を見た。
娘はなんと憧れの亮太くん(仮名)と手をつないで、行進している。
私はといえば、この日のためにちょっと前にReflectというブランドの黒と紺色の中間ぐらいの色のジャケットと揃いのワンピースを買っておいた。これだけだと地味というか、これってお受験スーツっぽいじゃんっというもの(←だから買った。息子のお受験ではバリバリ着るよ~)なので、大ぶりのパールのネックレスやコサージュを合わせて、我ながらいかにも入学式のお母さんっていう感じ。
娘は2組で担任の先生はなんと私と名前が同じで美緒先生(仮名)という。まだ20歳代半ばの華奢で可愛らしい先生だ。保護者席からボソボソと「おお~、先生、可愛いじゃんっ」と不謹慎な声があっちこっちから聞こえてくる。
頼みますよっ。お父さん方!
どっさりと教科書やらお道具箱などを受け取り、すべてのものに名前を書いてくるようにと言い渡される。
ちなみに国語の教科書を見てみると、新6年生の甥っ子が1年生だったときの国語の教科書を見せてもらったことがあるのだが、採択されている教科書会社の違いがあるとはいえ内容がまるで違う。
甥っ子のときは最初のページから何ページかは教科書にも関わらず文字が1文字も書かれていなくて絵だけだったので、ひどくビックリした思い出がある。
それに引き換え娘の教科書は、私たちが子どものときの教科書のように1ページ目からちゃんと文字が書かれている。
今から思えば甥っ子のときは悪名高き「ゆとり教育」の真っ只中だったんだなあ~。
2011年から新学習指導要領が施行され、現在は移行措置の時期だ。ギリギリでうちの子どもたちは「ゆとり教育」を受けずにすむことになる。
本来の「ゆとり教育」の精神はすばらしいものだったとは思うが、実際の運用には無理があったのだと思う。
教科書ひとつとっても、今が公立の学校教育の変換期であることがヒシヒシと伝わってくる。
その日の夜はこれから6年も続く娘の小学校生活に幸あれと、私たちは家族で記念写真を撮りに行き、夜は東京の夜景が見渡せるラブリーなシーフードレストランで入学祝のディナーを食べたのであった。
2010年11月20日土曜日
夫、早々に息子の勉強を諦める
毎日少しずつではあるものの息子の勉強を見てくれていた夫が、開始1ヶ月も経たないうちに音をあげた。
毎日5~10分程度しか勉強といってもやってこなかったわけだが、挫折の最大の理由は「お話の記憶」である。
G大附属O小やT大附属T小で必須の「お話の記憶」なのだが、当たり前の話だがストーリーは日本語である。そのストーリーを読んで聞かせて子どもがどこまで覚えているかということなのだが、そのストーリーを読んで聞かせることが夫にはできないのだ。
うちの夫は日本語を話すことはまずまずなのだけど、読み書きがいまいちだ。特に子ども向けの話といえ、大人が読んで聞かせることが前提に問題が作られているため、漢字もふつうに使われている。
これを機会にぜひ日本語の読み書きを学んでもらいたいところではあるが、夫にそこまでのモチベーションはない。
また言語学の修士号を持ち、特に専門が「バイリンガルと第二言語の習得」である夫の強固なポリシーは、「両親はいかなる場合でも自分の母語を子どもに対しては使うべし」だ。
たとえば私が英語を超堪能でネイティブ顔負けに話せたとしても(←残念ながらそれはないけどねっ。てへっ)、ネイティブでない以上英語を子どもに対して使ってはいけないという。
私の場合なら当然日本語で話しかけるべしということなのだが、その場合も英語とチャンポンで話しかけるなんてのは論外で、我が家のように母親は日本語と父親は英語と両親の母語が違う場合は、この人は「日本語を使う人」、この人は「英語を使う人」と明確に区別させるのが子どもたちをバイリンガルに育てる鉄則なのだそうだ。
その鉄則に従ってそれまで夫は図形の問題なら、英語で問題を出して息子に答えさせていたのだが、問題によっては日本語に言い換えないと息子がどうしても理解できないものが出てきたことがひとつ。
はなっから「お話の記憶」では日本語でストーリーを読まなければいけないのがひとつ。いずれにしても日本語とのチャンポンにならざるえないので、自分の言語学上のポリシーに反するのだと夫は主張する。
「だからミーはもうやらないね。もしお受験が全部英語で出題されるならミーがやるけど(←そんなこと日本の小学校で一生あるわけないだろっ!)、あとは美央よろしくね」
と夫は頑として聞かない。マジかよ。あんたが息子にも国立受験させろって言い出したんだろうが。
「L。これからはマミィが勉強見てくれるからね」と夫。
「え? いやだよっ! ダディがいいっ!!」とここで号泣する息子。
息子は超パパっ子なのだ。
ちなみにうちでは夫が子どもたちに英語で話しかけるのに対して、子どもたちは全部日本語で返している。
上記の会話も夫は英語で「これからはマミィが勉強を見てくれるからね」と息子に語りかけ、息子は日本語で「いやだよっ! ダディがいいっ!」と返しているのだ。
それでも双方理解しあっているし会話もちゃんと通じているのだが、傍からみるとすごく変だとよく言われる。
こうして息子の勉強を私が見ることになったのだが、なんだかんだといっても娘のときは2ヶ月だけだった。
それでもあんなに辛かったのに、今回は試験本番まであと何ヶ月あるんだよっ。
先行きの長さにゲンナリするのであった。
しかし本当にゲンナリするのは息子との勉強が始まってからである。
(この手の話、今後延々と続く)
毎日5~10分程度しか勉強といってもやってこなかったわけだが、挫折の最大の理由は「お話の記憶」である。
G大附属O小やT大附属T小で必須の「お話の記憶」なのだが、当たり前の話だがストーリーは日本語である。そのストーリーを読んで聞かせて子どもがどこまで覚えているかということなのだが、そのストーリーを読んで聞かせることが夫にはできないのだ。
うちの夫は日本語を話すことはまずまずなのだけど、読み書きがいまいちだ。特に子ども向けの話といえ、大人が読んで聞かせることが前提に問題が作られているため、漢字もふつうに使われている。
これを機会にぜひ日本語の読み書きを学んでもらいたいところではあるが、夫にそこまでのモチベーションはない。
また言語学の修士号を持ち、特に専門が「バイリンガルと第二言語の習得」である夫の強固なポリシーは、「両親はいかなる場合でも自分の母語を子どもに対しては使うべし」だ。
たとえば私が英語を超堪能でネイティブ顔負けに話せたとしても(←残念ながらそれはないけどねっ。てへっ)、ネイティブでない以上英語を子どもに対して使ってはいけないという。
私の場合なら当然日本語で話しかけるべしということなのだが、その場合も英語とチャンポンで話しかけるなんてのは論外で、我が家のように母親は日本語と父親は英語と両親の母語が違う場合は、この人は「日本語を使う人」、この人は「英語を使う人」と明確に区別させるのが子どもたちをバイリンガルに育てる鉄則なのだそうだ。
その鉄則に従ってそれまで夫は図形の問題なら、英語で問題を出して息子に答えさせていたのだが、問題によっては日本語に言い換えないと息子がどうしても理解できないものが出てきたことがひとつ。
はなっから「お話の記憶」では日本語でストーリーを読まなければいけないのがひとつ。いずれにしても日本語とのチャンポンにならざるえないので、自分の言語学上のポリシーに反するのだと夫は主張する。
「だからミーはもうやらないね。もしお受験が全部英語で出題されるならミーがやるけど(←そんなこと日本の小学校で一生あるわけないだろっ!)、あとは美央よろしくね」
と夫は頑として聞かない。マジかよ。あんたが息子にも国立受験させろって言い出したんだろうが。
「L。これからはマミィが勉強見てくれるからね」と夫。
「え? いやだよっ! ダディがいいっ!!」とここで号泣する息子。
息子は超パパっ子なのだ。
ちなみにうちでは夫が子どもたちに英語で話しかけるのに対して、子どもたちは全部日本語で返している。
上記の会話も夫は英語で「これからはマミィが勉強を見てくれるからね」と息子に語りかけ、息子は日本語で「いやだよっ! ダディがいいっ!」と返しているのだ。
それでも双方理解しあっているし会話もちゃんと通じているのだが、傍からみるとすごく変だとよく言われる。
こうして息子の勉強を私が見ることになったのだが、なんだかんだといっても娘のときは2ヶ月だけだった。
それでもあんなに辛かったのに、今回は試験本番まであと何ヶ月あるんだよっ。
先行きの長さにゲンナリするのであった。
しかし本当にゲンナリするのは息子との勉強が始まってからである。
(この手の話、今後延々と続く)
2010年11月17日水曜日
銀座の先生の事務所をあとにして
事務所を出るとさっそくHANAちゃんに電話する。HANAちゃんが働く事務所と銀座の先生の事務所は歩いていける距離にある。前から占いが終わり次第、お茶しようと約束していたのだ。
HANAちゃんはすぐにつかまり、近くのカフェでお茶しているという。「じゃあ、そっちに行くね」と指定されたカフェに向かう。
なんだかスッキリしない気持ちを抱えながら、すっかり日の暮れた銀座の街を歩く。
これまで占ってもらった過去の2回は勇気をもらったり、ワクワクしたり、希望に満ちた心で事務所をあとにすることができたが、今回は決定的に違う。
言われた話もどうも時系列で考えた場合に矛盾があっちこっちであるし、何よりもまったく「ハズされた」という事実がトラウマになって、はなっから信用できなくなっているのだ。
まあ所詮占いなのだから、そこまで期待するなよという話なのだが。金額が金額だけあってどうも納得いかんのだ。
HANAちゃんの待つカフェはすぐに見つかった。私に気付くといつものようにひまわりを連想させる明るい笑顔で迎えてくれる。
「どないでした?」
この日は飲み会が入っていてあまり時間がないと言っていたHANAちゃん。そのためかいきなり直球だ。
言われた内容を順を追って説明する私。その都度「うむうむ」と声に出してうなずくHANAちゃん。
つくづく終わったあと待ち合わせしてよかったと思う。
こんなモヤモヤした気持ちを抱えて地下鉄に乗って家に帰って、夫からそんなことで2万円も使ったのかとイヤミのひとつでも言われようなら余計にモヤモヤするではないか。
「なんかすっきりしないですねぇ。どないやねんって感じですもんね」
とHANAちゃん。
「うん。最初が一番インパクトもあったし、良かったかな。なんかだんだんトーンダウンしていく感じというか、もしかしたら先生もパワーダウンしてんのかな?」
「だって1日に何人も診てるんでしょ? 中には死ぬほど悩んでいる人とか、すっごいマイナスのオーラを出す人とかいるやろうから、そりゃあ消耗しますってっ!」
「そうやなあ~。2回目のときやったかいな、私の前に診てもらっていた人ってめっちゃ陰のある感じっていうのか、不幸なオーラが出てる人やったで」
「そうでしょ? そういう人に接していくうちにエネルギーを吸い取られたりすることもあるわけやから、よっぽどタフやないと本物ほど大変やと思う」
「それにしてもどないやねんって感じよ」
「ホンマですねえぇ~」
と堂々巡りの話を続ける私たち。
いずれにしても銀座の先生に4回目を診てもらうことはないなと、この期に及んでようやく悟った私であった。
けど言われたことの検証は続けますよ。
だって「ブログは続けてください」って言われたんですもの。
2010年11月16日火曜日
3度目の銀座の先生④
あ~、娘と息子の件ですでに1時間。アシスタントの女性が時間を終了の催促をするまでに、急いでその他のことを聞かねばっ!
「あの~、これまで会社を辞めて“先生”と呼ばれる仕事をするようになるだとか、クリエイティブな仕事をするだとかって言われてきたんですけど、それってどうなんですか? そういう仕事を始めるのは今年の4月からって言われてたんですけど、もう来月ですよね? 会社を辞めるような感じにはまったくなってないんですけど」
時間がないので質問も直接的だ。
前回見てもらったときに、5月7月9月と「先生」と呼ばれる仕事関連で頼まれごとをするのでボランティアでもいいから受けることと言われていたが、結局それは早紀ちゃん(仮名)とのプロジェクトを指すのか、時期はズレたが黒百合姉妹から頼まれた英訳を指すのか未だに不明だし、それは全然実を結んでいない。それ以外でもましてや来月会社を辞めてまでやるような仕事なんてあるわけでもない。
お受験のみならず、私の仕事に関しても、なんだ当たってないじゃんっ!というのが、今の現状なのだ。
「そうですか。でも今年の4月から仕事運は上昇するんですけどねえ。やはり個人で仕事をして成功するって出てますよ」
のんびりとした口調で話し続ける先生。前までは個人で何かできることがあればと思っていたものの、このところはむしろ「寄らば大樹」というか、昨今の不況を考えればしがみつけるならば会社にいつまでもしがみついていたいものだと考えるに至っている。
要は個人でどうこうしたいだなんて、最近では望んでいないのだ。
「43~45歳の間が勝負ですね」と先生。
43歳って今年じゃんっ! いったいどうやって勝負するのだ?
「やっぱりね、3~4人で集まって話をしているのが見えるんですよね。うん、内容も“教えること”、“伝えること”、“クリエイティブなこと”で変わりなし」
今の仕事だって3~4人で集まって結構話してますよ。
「だから今の仕事ではないです」
ああ、だからそれっていったいなんなの? 以前先生は自然にしていればそういう仕事を周りから押される形でやっていくって言ってたけど、全然そんなふうになってないじゃんっ!
「そうそう、前に先生に勧められてブログもやってますよ」
えへへ、内容は先生の占い結果が当たるかどうか検証するブログだなんて、本人を目の前にしては言えないけどね。
「ブログはいいですよぉ。ぜひ続けてください」
マジですか。先生の占い結果は当たってないぞぉって書きますよ。正直に。
「そうだ。あとこの人がビジネスパートナーなのかなって人が、ひとりいるんですけど」
来る前に教えてもらっておいた早紀ちゃんの生年月日を書き込む。
ささっと計算して数字を見ながら、
「対等なパートナーだったらものすごくいい相性ですよ。けどこの人の下につくと良くないな」
と言う先生。そうかあ~。早紀ちゃんは先輩だけど今のところ、どっちが上ってこともないから、今の感じだったらいいのかな?
「この人って女性ですよね?」
念を押す先生。いえいえ。男性ですよ。れっきとした。名前は女性っぽいけど。うん!? でも名前は教えてないし。生年月日だけで女っぽい名前だって出るのかしらん。
「え? 男性なんですか? ああ~、じゃあだめですね。この人はあなたが今後組んでいく人ではないです。彼がこれから紹介してくれる女性は吉ですけどね。この人自身ではないです。この人が女性だったら話は進んでいたし、これまでにも細かい仕事がちょこちょこ入ってきたはずです。基本的にはあなたの仕事に関して前お話したことと、変わりはありませんよ」
そうなんだ~。確かに早紀ちゃんとのプロジェクトは全然進んでないもんなあ~。
納得と言えば納得だ。
おっ! ここでアシスタントの人がドアをノックした! もう時間だという催促だな。
けど1回2万円なのである。セコい私は粘れるとことまで粘っちゃうぞ~。
お受験で大きくハズされてるしな(←一生言ってやるっ!)。
「夫はどうですか? 相変わらず会社辞めたがってるんですけど」
「今年来年、出世運がありますよ。会社にもっと認められます。転職はもう少し待ってください。だんだん収入は増えていくので心配ないですよ」
実際は結婚以来、年々収入が減ってるんですけどね(←切実)。
「この人はマイペースですよね(←その通り!)。然るべきときにいい条件の仕事の話がありますからだいじょうぶ。これも前に言った通りです」
だったらいいけどね。
「あと不動産とか、将来住む場所は?」
「3年は動かないでください。日本でも海外でもいずれにしろ将来の拠点という形で不動産を買うことになります」
「あれ? でも前に先生は日本では私たちは不動産を買わないって言ってましたよね?」
「それは子どもたちと住むための、つまりは家族全員で住むための通常の不動産の買い方ではないということです。日本における子どもたちの拠点という贅沢な買い方をすることになります。将来的に住むならヨーロッパでしょう(←そりゃあいいよね)。時期は娘さんが中学生になるときか、大学を卒業するかのタイミングでしょう(←10年のタイムラグだぜっ)。息子さんにとっては中途半端な時期の移住(←だからうちは年子だっちゅうの。1年ぐらいでそんなに変わるかぁ?)になりますが、彼を個人プレイヤーとしてしっかりさせるためには、早く海外に出したほうがいいです」
え? 娘が中学生になるか、大学を卒業するタイミング?
だって先生はさっき、中学はG大附属系がいいって言ってたじゃん。大学だってG大って言ってたんだから、それならそんな時期に海外に移住なんてありえないじゃん。
どうなわけ? そこのところは?
再度ドアがノックされる。今回のノックは「はよせい。ええかげんにせいよっ」という苛立ちがこめられているノックだ。
「あ。もうお時間ですかね」
さすがの先生も2度のノックは無視できないらしく、終わりを告げる。
ドアを開けるとアシスタントの女性が、「すみませんね。あとが詰まっていて」とちっともすまなさそうに事務的に言う。
私は釈然としない気持ちのまま、2万円払って事務所をあとにした。
「あの~、これまで会社を辞めて“先生”と呼ばれる仕事をするようになるだとか、クリエイティブな仕事をするだとかって言われてきたんですけど、それってどうなんですか? そういう仕事を始めるのは今年の4月からって言われてたんですけど、もう来月ですよね? 会社を辞めるような感じにはまったくなってないんですけど」
時間がないので質問も直接的だ。
前回見てもらったときに、5月7月9月と「先生」と呼ばれる仕事関連で頼まれごとをするのでボランティアでもいいから受けることと言われていたが、結局それは早紀ちゃん(仮名)とのプロジェクトを指すのか、時期はズレたが黒百合姉妹から頼まれた英訳を指すのか未だに不明だし、それは全然実を結んでいない。それ以外でもましてや来月会社を辞めてまでやるような仕事なんてあるわけでもない。
お受験のみならず、私の仕事に関しても、なんだ当たってないじゃんっ!というのが、今の現状なのだ。
「そうですか。でも今年の4月から仕事運は上昇するんですけどねえ。やはり個人で仕事をして成功するって出てますよ」
のんびりとした口調で話し続ける先生。前までは個人で何かできることがあればと思っていたものの、このところはむしろ「寄らば大樹」というか、昨今の不況を考えればしがみつけるならば会社にいつまでもしがみついていたいものだと考えるに至っている。
要は個人でどうこうしたいだなんて、最近では望んでいないのだ。
「43~45歳の間が勝負ですね」と先生。
43歳って今年じゃんっ! いったいどうやって勝負するのだ?
「やっぱりね、3~4人で集まって話をしているのが見えるんですよね。うん、内容も“教えること”、“伝えること”、“クリエイティブなこと”で変わりなし」
今の仕事だって3~4人で集まって結構話してますよ。
「だから今の仕事ではないです」
ああ、だからそれっていったいなんなの? 以前先生は自然にしていればそういう仕事を周りから押される形でやっていくって言ってたけど、全然そんなふうになってないじゃんっ!
「そうそう、前に先生に勧められてブログもやってますよ」
えへへ、内容は先生の占い結果が当たるかどうか検証するブログだなんて、本人を目の前にしては言えないけどね。
「ブログはいいですよぉ。ぜひ続けてください」
マジですか。先生の占い結果は当たってないぞぉって書きますよ。正直に。
「そうだ。あとこの人がビジネスパートナーなのかなって人が、ひとりいるんですけど」
来る前に教えてもらっておいた早紀ちゃんの生年月日を書き込む。
ささっと計算して数字を見ながら、
「対等なパートナーだったらものすごくいい相性ですよ。けどこの人の下につくと良くないな」
と言う先生。そうかあ~。早紀ちゃんは先輩だけど今のところ、どっちが上ってこともないから、今の感じだったらいいのかな?
「この人って女性ですよね?」
念を押す先生。いえいえ。男性ですよ。れっきとした。名前は女性っぽいけど。うん!? でも名前は教えてないし。生年月日だけで女っぽい名前だって出るのかしらん。
「え? 男性なんですか? ああ~、じゃあだめですね。この人はあなたが今後組んでいく人ではないです。彼がこれから紹介してくれる女性は吉ですけどね。この人自身ではないです。この人が女性だったら話は進んでいたし、これまでにも細かい仕事がちょこちょこ入ってきたはずです。基本的にはあなたの仕事に関して前お話したことと、変わりはありませんよ」
そうなんだ~。確かに早紀ちゃんとのプロジェクトは全然進んでないもんなあ~。
納得と言えば納得だ。
おっ! ここでアシスタントの人がドアをノックした! もう時間だという催促だな。
けど1回2万円なのである。セコい私は粘れるとことまで粘っちゃうぞ~。
お受験で大きくハズされてるしな(←一生言ってやるっ!)。
「夫はどうですか? 相変わらず会社辞めたがってるんですけど」
「今年来年、出世運がありますよ。会社にもっと認められます。転職はもう少し待ってください。だんだん収入は増えていくので心配ないですよ」
実際は結婚以来、年々収入が減ってるんですけどね(←切実)。
「この人はマイペースですよね(←その通り!)。然るべきときにいい条件の仕事の話がありますからだいじょうぶ。これも前に言った通りです」
だったらいいけどね。
「あと不動産とか、将来住む場所は?」
「3年は動かないでください。日本でも海外でもいずれにしろ将来の拠点という形で不動産を買うことになります」
「あれ? でも前に先生は日本では私たちは不動産を買わないって言ってましたよね?」
「それは子どもたちと住むための、つまりは家族全員で住むための通常の不動産の買い方ではないということです。日本における子どもたちの拠点という贅沢な買い方をすることになります。将来的に住むならヨーロッパでしょう(←そりゃあいいよね)。時期は娘さんが中学生になるときか、大学を卒業するかのタイミングでしょう(←10年のタイムラグだぜっ)。息子さんにとっては中途半端な時期の移住(←だからうちは年子だっちゅうの。1年ぐらいでそんなに変わるかぁ?)になりますが、彼を個人プレイヤーとしてしっかりさせるためには、早く海外に出したほうがいいです」
え? 娘が中学生になるか、大学を卒業するタイミング?
だって先生はさっき、中学はG大附属系がいいって言ってたじゃん。大学だってG大って言ってたんだから、それならそんな時期に海外に移住なんてありえないじゃん。
どうなわけ? そこのところは?
再度ドアがノックされる。今回のノックは「はよせい。ええかげんにせいよっ」という苛立ちがこめられているノックだ。
「あ。もうお時間ですかね」
さすがの先生も2度のノックは無視できないらしく、終わりを告げる。
ドアを開けるとアシスタントの女性が、「すみませんね。あとが詰まっていて」とちっともすまなさそうに事務的に言う。
私は釈然としない気持ちのまま、2万円払って事務所をあとにした。
2010年11月15日月曜日
3度目の銀座の先生③
「あの~、うちもうひとり子どもがいるんですけどぉ」
と息子の写真を見せる私。
「ああ、男の子のほうもかわいいですねえ~。3歳ぐらいですか?」
と写真を見たあとにっこりと笑いかける先生。
そんなあ~。いくら幼稚だとはいえこう見えて息子は5歳で、来月からは年長さんになるのだ。その旨を先生に伝えると、
「え~!? そうなんですか? じゃあ体が小さいんですかね?」ときた。
いえいえ、早生まれながらも息子はクラスでも大きいほうだ。たぶん4月とか5月生まれだったら保育園でも1、2位を争うぐらいデカかっただろう。
「へえ~。意外ですねえ~。なんだか小さい子みたいな感じがしたんですけどねえ」
先生はいつまでも意外そうな表情を浮かべていたが、たぶん息子の精神年齢が3歳ぐらいだからそう思われたのだろう。
っていうか、過去2回も診てもらってるじゃんっ!
「お姉ちゃんほど勉強はできないですね(←キッッパリっ!)」
おいっ、いきなりそれかっ!
「小学1年とか2年のときは学校の勉強も良くないですね」
あの~、息子は確か天才だったのでは?
「でも大きくなれば段々良くなっていきます」
そうでないと困るのよん。
「モデルとか芸能関係には向かないですね」
そうでしょうとも。それは先日のDVDの撮影でいやというほど実感しましたよ。
「小学校受験ですけど、制服はぼんやりとなら見えるのですが、お姉ちゃんのときほどはハッキリとは見えません(←そんなこといってお姉ちゃんのときはずしたじゃんっ!)。白い襟がついた制服がぼんやりと見えるんですけどねえ。微妙です。でも前回のこともありますから(←おっ、認めたな)、これぐらい微妙なほうが受かる確率は高いかもしれませんけどね」
う~ん。本当に微妙だなあ。
ここで前にみっちゃん(仮名)がくれた「首都圏国立私立小学校一覧」という本を取り出し、この本にすべての小学校の制服のイラストが載っているので見てほしいと先生に手渡す。
「あ、こんなに便利なものがあるんですか。いいですねえ。これ。この子も私立は見えないからやっぱり国立ですよねえ~。あ、これかなあ。これが近いですかねえ~」
先生が指差したのは、G大附属T小とG大附属O小の制服だった。確かに両校とも男子の制服には白い襟がついている。
「受かるとしたらこのふたつですかね。どっちかといったらO小のほうがいいですけどね。T大附属T小はお姉ちゃんは向いてませんでしたけど、彼はとっても向いてます。受かればすごっくラッキーですけどね。ただ制服が違うんですよねえ~」
「じゃあ可能性があるのはG大附属T小とG大附属O小だけなら、この2校だけ受ければいいんですか?」
「いや、受けられる学校はすべて受けてください」
「あとうちからならO女附属小学校も受けられるんですけど、そこの可能性は?」
「O女附属小学校も見えないです。けどとにかく4校すべて受けてください」
先生に言われるまでもなく4校すべて受けるつもりだけど、不思議なのは、どうして先生から見て受かる可能性がなさそうな学校まで受験を勧めるのだろうか? やっぱり受験したら受かったのにも関わらず、真に受けてトライもしないでみすみすチャンスを棒に振ってしまったといった例が今までにもあったのかしらん。そういうものの予防線のために「とりあえず全部受けろ」と言うのかしらん。
「彼はお姉ちゃんと違って環境に大きく左右されるタイプなので、周りに流されちゃうんですよね。だから公立は向かないんです。それより周りがみんな勉強しているような環境にいたほうがいいんですよね。そういう環境を整えてあげないといけないタイプなんです。まあ度胸はあって本番には強いタイプなので抽選が通ればいいですよね。けど本番に強いのはお姉ちゃんもいっしょですけどね(←じゃあなんでT大附属T小の試験に落ちるんだよっ!)」
「お姉ちゃんのときは塾とか行かなくてもいいって言われてたんですけど、この子は塾とか行ったほうがいいですか?」
「それは絶対です。4月になったら通い始めたほうがいいです」
「え? マジですかぁ?」
「う~ん。じゃあ夏からでもいいです(←なんだよ。それ。ゴネれば塾に入る時期がずれてもいいのか?)」
「一応、パパが家で勉強を見てるんですけど、それだけじゃだめですか?(←再度ゴネてみる。ってなんのためだよ!?)」
「あ、パパが勉強をみてるんですか。ママがみるよりそっちのほうがいいですね。けど塾は行ったほうがいいです。この子は家庭学習だけだと無理です。夏までに入らなければ単発の講習とか模擬試験は受けたほうがいいです」
そうですかあ~。塾通いが必要なんですね。と言われてもやはり抽選が通らなければ塾通いは無駄ではないかと、ついつい思ってしまう私。
「とにかく運動に力を入れてあげてください。サッカーなんかとってもいいですよ。運動は絶対にさせてください」
ということで息子に関する占いは終わった。
過去2回は天才だの、世界で活躍するだの、将来大成するだの輝かしい未来をさんざん予言されていた息子だったが、今回はその手の話はいっさいなかった。
「神童、二十歳になったら普通の人」
という有名な言い回しがあるが、過去2回の先生の占い結果でうちの息子はこの逆を行くものだと思い込んでいたが、どうやらそれもなさそうだ。
「ぼんやりくん。二十歳になってもぼんやりくん」
そんな言葉がふと脳裏に思い浮かび、やめてくれよっと自分に突っ込む私である。
と息子の写真を見せる私。
「ああ、男の子のほうもかわいいですねえ~。3歳ぐらいですか?」
と写真を見たあとにっこりと笑いかける先生。
そんなあ~。いくら幼稚だとはいえこう見えて息子は5歳で、来月からは年長さんになるのだ。その旨を先生に伝えると、
「え~!? そうなんですか? じゃあ体が小さいんですかね?」ときた。
いえいえ、早生まれながらも息子はクラスでも大きいほうだ。たぶん4月とか5月生まれだったら保育園でも1、2位を争うぐらいデカかっただろう。
「へえ~。意外ですねえ~。なんだか小さい子みたいな感じがしたんですけどねえ」
先生はいつまでも意外そうな表情を浮かべていたが、たぶん息子の精神年齢が3歳ぐらいだからそう思われたのだろう。
っていうか、過去2回も診てもらってるじゃんっ!
「お姉ちゃんほど勉強はできないですね(←キッッパリっ!)」
おいっ、いきなりそれかっ!
「小学1年とか2年のときは学校の勉強も良くないですね」
あの~、息子は確か天才だったのでは?
「でも大きくなれば段々良くなっていきます」
そうでないと困るのよん。
「モデルとか芸能関係には向かないですね」
そうでしょうとも。それは先日のDVDの撮影でいやというほど実感しましたよ。
「小学校受験ですけど、制服はぼんやりとなら見えるのですが、お姉ちゃんのときほどはハッキリとは見えません(←そんなこといってお姉ちゃんのときはずしたじゃんっ!)。白い襟がついた制服がぼんやりと見えるんですけどねえ。微妙です。でも前回のこともありますから(←おっ、認めたな)、これぐらい微妙なほうが受かる確率は高いかもしれませんけどね」
う~ん。本当に微妙だなあ。
ここで前にみっちゃん(仮名)がくれた「首都圏国立私立小学校一覧」という本を取り出し、この本にすべての小学校の制服のイラストが載っているので見てほしいと先生に手渡す。
「あ、こんなに便利なものがあるんですか。いいですねえ。これ。この子も私立は見えないからやっぱり国立ですよねえ~。あ、これかなあ。これが近いですかねえ~」
先生が指差したのは、G大附属T小とG大附属O小の制服だった。確かに両校とも男子の制服には白い襟がついている。
「受かるとしたらこのふたつですかね。どっちかといったらO小のほうがいいですけどね。T大附属T小はお姉ちゃんは向いてませんでしたけど、彼はとっても向いてます。受かればすごっくラッキーですけどね。ただ制服が違うんですよねえ~」
「じゃあ可能性があるのはG大附属T小とG大附属O小だけなら、この2校だけ受ければいいんですか?」
「いや、受けられる学校はすべて受けてください」
「あとうちからならO女附属小学校も受けられるんですけど、そこの可能性は?」
「O女附属小学校も見えないです。けどとにかく4校すべて受けてください」
先生に言われるまでもなく4校すべて受けるつもりだけど、不思議なのは、どうして先生から見て受かる可能性がなさそうな学校まで受験を勧めるのだろうか? やっぱり受験したら受かったのにも関わらず、真に受けてトライもしないでみすみすチャンスを棒に振ってしまったといった例が今までにもあったのかしらん。そういうものの予防線のために「とりあえず全部受けろ」と言うのかしらん。
「彼はお姉ちゃんと違って環境に大きく左右されるタイプなので、周りに流されちゃうんですよね。だから公立は向かないんです。それより周りがみんな勉強しているような環境にいたほうがいいんですよね。そういう環境を整えてあげないといけないタイプなんです。まあ度胸はあって本番には強いタイプなので抽選が通ればいいですよね。けど本番に強いのはお姉ちゃんもいっしょですけどね(←じゃあなんでT大附属T小の試験に落ちるんだよっ!)」
「お姉ちゃんのときは塾とか行かなくてもいいって言われてたんですけど、この子は塾とか行ったほうがいいですか?」
「それは絶対です。4月になったら通い始めたほうがいいです」
「え? マジですかぁ?」
「う~ん。じゃあ夏からでもいいです(←なんだよ。それ。ゴネれば塾に入る時期がずれてもいいのか?)」
「一応、パパが家で勉強を見てるんですけど、それだけじゃだめですか?(←再度ゴネてみる。ってなんのためだよ!?)」
「あ、パパが勉強をみてるんですか。ママがみるよりそっちのほうがいいですね。けど塾は行ったほうがいいです。この子は家庭学習だけだと無理です。夏までに入らなければ単発の講習とか模擬試験は受けたほうがいいです」
そうですかあ~。塾通いが必要なんですね。と言われてもやはり抽選が通らなければ塾通いは無駄ではないかと、ついつい思ってしまう私。
「とにかく運動に力を入れてあげてください。サッカーなんかとってもいいですよ。運動は絶対にさせてください」
ということで息子に関する占いは終わった。
過去2回は天才だの、世界で活躍するだの、将来大成するだの輝かしい未来をさんざん予言されていた息子だったが、今回はその手の話はいっさいなかった。
「神童、二十歳になったら普通の人」
という有名な言い回しがあるが、過去2回の先生の占い結果でうちの息子はこの逆を行くものだと思い込んでいたが、どうやらそれもなさそうだ。
「ぼんやりくん。二十歳になってもぼんやりくん」
そんな言葉がふと脳裏に思い浮かび、やめてくれよっと自分に突っ込む私である。
2010年11月12日金曜日
3度目の銀座の先生②
「娘さんは大きなトラブルが特に起こるわけではないのですが、お友だち関係で悩んでいないですか? このお友だちとは小学校に行っても関係が続きます。ショートのボブの女の子が見えるんですけど、心当たりはありませんか?」
と銀座の先生。
ショートのボブの女の子ねえ~。
・・・・むむむ、あるぞあるぞ心当たり。
うちの娘は口が立つので保育園での出来事もよく話す。将来、絶対に関西弁で言うところの「文句言いぃ」になると思うのだが、何せグズグズとあーでもない、こーでもないと言うタイプなのだ。
そんな文句言いぃの娘の文句の中でも頻度が高いのが、“晴美ちゃん”(仮名)というお友だちで彼女はズバリ、ショートのボブなのだ。
晴美ちゃんは小柄なのだか、気が強くしっかりしているので、みんなを仕切っている。保育園の行事なんかではよく「始めのあいさつ」だの「終わりのあいさつ」などを任されるタイプだ。
いっしょに遊んでいてもあれこれ仕切られることや、持っているものや着ているものをやたらとほしがられることや、面と向かって「Aちゃんって太ってるよね」と言われることが娘にとっていやなことなのだそうだが、人懐っこい子で会えば「Aちゃんママ~」と必ず向こうから話かけてくる。
娘が今お友だち関係で悩んでいるとすれば、今の時点では晴美ちゃんしかいないだろう。
「この子は悪気があるわけではないんですよねえ。芯は悪い子じゃないし。たぶん娘さんのことがものすごく好きでやきもちを焼いている節もあるんですよねえ」
うん、それだったらわかるかも。娘の持ち物や着ているものをやたらとほしがったり、私のところに来て甘えてみたり、やきもちだと言われると晴美ちゃんの言動はすっきりする。挙句に娘が好きな亮太くん(仮名)のことを晴美ちゃんも好きらしいし、恋のライバルでもあるのだ。
「小学校でも同じクラスになる可能性は高いですね。とにかく縁のある子です。」
なるほどねえ~。けど娘が4月から通うM小学校の新1年生は2クラスしかないのよねえ。晴美ちゃんと同じクラスになるかどうか、4月になったら確かめてやろうじゃないの。
「あとはやっぱり中学受験ですかねえ~。制服も見えるし受かるって出てますよ。中高一貫で共学がいいですね。女子校は向いてません」
「制服ってどんな制服なんですか?」
「いやあ~、ちょっとボヤけているんで、よくは見えないんですけど」
「実は今、ちょっといいなあと思っている中高一貫校はG大附属T中ではなくて、G大附属O中なんですよね。そもそもT中は高校と一貫校ではないですけど、O中は国際教育に力を入れてますから、うちには向いているんです」
「ああ、G大附属系は特に向いてますよ。T中じゃなくてもG大附属系ならいいと思います。もしかしたらG大まで進む可能性もありますからね」
「でね、先生。O中は制服がなくて私服なんですよ。中高とも。なのになんで制服が見えるんですか? ってことはO中ではないってことですか?」
淡々と理屈をこねる私。
「へえ~、O中って制服がないんですか? でも受験する場合には制服が見えるんですよ。ふつう区立でも制服がありますよね? けど中学受験しないで区立に行く場合には制服が見えないんです。だから受験すれば制服がないところでも制服が見えるんですよ」
先生も微笑を絶やさず淡々と先生なりの理屈を言う。
でもなんか釈然としないよなあ~。
「中学から高校に行くときは一応テストを受ける形は取りますけど受験ではないです。大学受験もしますけどやっぱり系列の大学って出ているからG大ってことになりますかね。同じ国立でもT大附属系はやっぱりダメです。娘さんには向いてません。あと塾はあまり早くから行かなくてもいいです。娘さんのピークは5年生ですから受験時にピークに近づけるためには塾通いは5年生または4年生からでもだいじょうぶです」
中学受験塾ねえ~。やっぱり話が先すぎて全然ピンとこない。
「あと海外と縁が深いですねえ。交換留学生に選ばれる可能性も中学生ぐらいのときに出てきます。あとは海外の大学に行く可能性もありますね」
「え!? でも大学はG大に行く可能性が高いんですよね? それってG大を卒業してから海外の大学に行くってことなんですか?」
「・・・うーん、そこまではちょっと」
途端に歯切れの悪くなる先生。おいおい、だいじょうぶかよ。
「あと本人がモデルとかアイドルに憧れているみたいなんですけど、どうなんですか?」
うちの会社の宣伝用のDVDに出演して以来、何かあるたびに「芸能事務所に入れろ」とうるさいうちの娘。芸能人なんて国立小学校に入るよりもよっぽど倍率が高いんだぞ。抽選はないかもしれないけど。
「ああ、いいんじゃないですか。お母さんがステージママになってがんばりすぎなければだいじょうぶですよ。芸能界で大成はしませんけど、趣味程度だったらOKですよ」
なるほど。青春の思い出程度ならという意味なのね。それにしてもステージママだなんて。こういうときに本人以上張り切ってプレッシャーをかけかねない自分の性格を言い当てられているようで、いやな感じ。
おっと、この時点ですでに50分経過。このままいくと娘の話だけで2万円かかってしまうではないか!
いけないいけない、早々に次に話題を移さねば!
と銀座の先生。
ショートのボブの女の子ねえ~。
・・・・むむむ、あるぞあるぞ心当たり。
うちの娘は口が立つので保育園での出来事もよく話す。将来、絶対に関西弁で言うところの「文句言いぃ」になると思うのだが、何せグズグズとあーでもない、こーでもないと言うタイプなのだ。
そんな文句言いぃの娘の文句の中でも頻度が高いのが、“晴美ちゃん”(仮名)というお友だちで彼女はズバリ、ショートのボブなのだ。
晴美ちゃんは小柄なのだか、気が強くしっかりしているので、みんなを仕切っている。保育園の行事なんかではよく「始めのあいさつ」だの「終わりのあいさつ」などを任されるタイプだ。
いっしょに遊んでいてもあれこれ仕切られることや、持っているものや着ているものをやたらとほしがられることや、面と向かって「Aちゃんって太ってるよね」と言われることが娘にとっていやなことなのだそうだが、人懐っこい子で会えば「Aちゃんママ~」と必ず向こうから話かけてくる。
娘が今お友だち関係で悩んでいるとすれば、今の時点では晴美ちゃんしかいないだろう。
「この子は悪気があるわけではないんですよねえ。芯は悪い子じゃないし。たぶん娘さんのことがものすごく好きでやきもちを焼いている節もあるんですよねえ」
うん、それだったらわかるかも。娘の持ち物や着ているものをやたらとほしがったり、私のところに来て甘えてみたり、やきもちだと言われると晴美ちゃんの言動はすっきりする。挙句に娘が好きな亮太くん(仮名)のことを晴美ちゃんも好きらしいし、恋のライバルでもあるのだ。
「小学校でも同じクラスになる可能性は高いですね。とにかく縁のある子です。」
なるほどねえ~。けど娘が4月から通うM小学校の新1年生は2クラスしかないのよねえ。晴美ちゃんと同じクラスになるかどうか、4月になったら確かめてやろうじゃないの。
「あとはやっぱり中学受験ですかねえ~。制服も見えるし受かるって出てますよ。中高一貫で共学がいいですね。女子校は向いてません」
「制服ってどんな制服なんですか?」
「いやあ~、ちょっとボヤけているんで、よくは見えないんですけど」
「実は今、ちょっといいなあと思っている中高一貫校はG大附属T中ではなくて、G大附属O中なんですよね。そもそもT中は高校と一貫校ではないですけど、O中は国際教育に力を入れてますから、うちには向いているんです」
「ああ、G大附属系は特に向いてますよ。T中じゃなくてもG大附属系ならいいと思います。もしかしたらG大まで進む可能性もありますからね」
「でね、先生。O中は制服がなくて私服なんですよ。中高とも。なのになんで制服が見えるんですか? ってことはO中ではないってことですか?」
淡々と理屈をこねる私。
「へえ~、O中って制服がないんですか? でも受験する場合には制服が見えるんですよ。ふつう区立でも制服がありますよね? けど中学受験しないで区立に行く場合には制服が見えないんです。だから受験すれば制服がないところでも制服が見えるんですよ」
先生も微笑を絶やさず淡々と先生なりの理屈を言う。
でもなんか釈然としないよなあ~。
「中学から高校に行くときは一応テストを受ける形は取りますけど受験ではないです。大学受験もしますけどやっぱり系列の大学って出ているからG大ってことになりますかね。同じ国立でもT大附属系はやっぱりダメです。娘さんには向いてません。あと塾はあまり早くから行かなくてもいいです。娘さんのピークは5年生ですから受験時にピークに近づけるためには塾通いは5年生または4年生からでもだいじょうぶです」
中学受験塾ねえ~。やっぱり話が先すぎて全然ピンとこない。
「あと海外と縁が深いですねえ。交換留学生に選ばれる可能性も中学生ぐらいのときに出てきます。あとは海外の大学に行く可能性もありますね」
「え!? でも大学はG大に行く可能性が高いんですよね? それってG大を卒業してから海外の大学に行くってことなんですか?」
「・・・うーん、そこまではちょっと」
途端に歯切れの悪くなる先生。おいおい、だいじょうぶかよ。
「あと本人がモデルとかアイドルに憧れているみたいなんですけど、どうなんですか?」
うちの会社の宣伝用のDVDに出演して以来、何かあるたびに「芸能事務所に入れろ」とうるさいうちの娘。芸能人なんて国立小学校に入るよりもよっぽど倍率が高いんだぞ。抽選はないかもしれないけど。
「ああ、いいんじゃないですか。お母さんがステージママになってがんばりすぎなければだいじょうぶですよ。芸能界で大成はしませんけど、趣味程度だったらOKですよ」
なるほど。青春の思い出程度ならという意味なのね。それにしてもステージママだなんて。こういうときに本人以上張り切ってプレッシャーをかけかねない自分の性格を言い当てられているようで、いやな感じ。
おっと、この時点ですでに50分経過。このままいくと娘の話だけで2万円かかってしまうではないか!
いけないいけない、早々に次に話題を移さねば!
2010年11月11日木曜日
3度目の銀座の先生①
いよいよ3ヶ月待った銀座の先生に占ってもらう日がやってきた。
見事に娘の小学校受験結果をはずされたので、結構どうでもいいやという気分になっている。
1回2万円もするのに、あれだけはずされてまたノコノコ行って支払うのもシャクではあったが、そこは小心者の私。ドタキャンする勇気もなかったので、時間通りに例のマンションに向かった。
ちなみに先生に3回目診てもらうことを夫に話したら、心底驚かれた。「あれだけはずされてなぜ?」というのが一番大きいのだろう。
私だって驚くよ、自分自身を! まったくネギを背負った鴨かいっ。私は!
10分ほど待たされたあとに先生がいる部屋に通される。
部屋を暗くしてろうそくの炎で背後を見られる儀式も今までどおり。
上半身だけの人型の書かれた用紙にいつものようにさらさらと先生はボールペンを走らせ、「今回も何も悪いものは憑いていませんね」とにっこり微笑む。
前髪を短くしているので、印象が違って見える。前髪が短いとより素朴な感じになり、これはこれで可愛らしいんだけど、前髪が長くて横に流していた前の感じのほうが私の好みだ。
「お久しぶりですね」と先生が微笑みかけてきて、「ご主人のご家族がまた揉めていますね」と切り出してきた。
最初はここからかい。確かにクリスマスのときにも姉妹たちが2グループに分かれてしまい、対立をしていた。揉めていることは確かだ。でも離れている私たちにはどうすることもできない。
そんな気持ちを見透かすように、
「いったんは解決したみたいですけどね。まあ気にせずに。関わらないことです」
と先生は淡々と言う。だったら言わなくてもいいのにっ!
「さてっと」と先生はこれからが本題だという調子で、
「お嬢さんのG大附属T小をはずしたこと、いまだによくわからないのですよ」
と切り出してきた。
って言われてもさっ! よくわからないのはこっちなのさっ!
「写真持ってきていらしゃってますか?」と聞かれたので、写メールで写した娘の写真を何枚か先生に見せる。
「わぁ、やっぱり可愛いですね~」と褒めてくれるのはいいんだけど、どうなのよ? そことのところは?
「やっぱり写真見てもG大附属T小の制服が未だに見えるんですよねえ。お電話でもお話した通り、編入とかありえるのかなあ。ああ、でも公立から国立の編入って帰国子女でもない限りふつうないですよねえ。う~ん、やっぱりわからないなあ。G大附属T小に縁がとっても強いんですけどね」
と考え込む先生。そんなに縁が強いところがなんで一次抽選であっけなく落ちるのよ?
「中学は確実に行くと思うんですけどねえ」
なぬ中学だと! そんな先すぎる話、まったくピンとこないねっ! だって1年以内の小学校受験をあれだけはずされて、今から6年も先の中学受験の話なんてもっと当てにならないじゃないかっ!
「G大附属T中学を受験するという前提で常にこの学校のチェックはしてください。ただ仮に編入があるとしてもたまたまそういう情報が入って知るというパターンになりそうです」
はあ~。
「でもこの子は公立小学校でも全然問題ないですよ。ちゃんと勉強もやるし、優等生です。お友だちにも恵まれるし、大きなトラブルは見えないです。私立もインターナショナルスクールも見えないですからね。今、精神的にも安定してるし、ちょっと前は少し不安定だったこともあったみたいですね」
あのね~。仮に娘が不安定だった時期があったとしたら、お受験のころでしょ? 確かに私もずいぶんガミガミ言って娘を追い詰めた側面もあったかもしれない。
けどね、元々近所の公立でいいと思っていた私に、絶対に国立が受かるから絶対にお受験させろとアドバイスをしたのは誰なのよ? あなたでしょうが!
そう言い出したい気持ちをぐぐぅーっと抑える。
そうは言っても先生の予言を鵜呑みにして、実際その通りに動いたのは他ならぬ私自身だからだ。
見事に娘の小学校受験結果をはずされたので、結構どうでもいいやという気分になっている。
1回2万円もするのに、あれだけはずされてまたノコノコ行って支払うのもシャクではあったが、そこは小心者の私。ドタキャンする勇気もなかったので、時間通りに例のマンションに向かった。
ちなみに先生に3回目診てもらうことを夫に話したら、心底驚かれた。「あれだけはずされてなぜ?」というのが一番大きいのだろう。
私だって驚くよ、自分自身を! まったくネギを背負った鴨かいっ。私は!
10分ほど待たされたあとに先生がいる部屋に通される。
部屋を暗くしてろうそくの炎で背後を見られる儀式も今までどおり。
上半身だけの人型の書かれた用紙にいつものようにさらさらと先生はボールペンを走らせ、「今回も何も悪いものは憑いていませんね」とにっこり微笑む。
前髪を短くしているので、印象が違って見える。前髪が短いとより素朴な感じになり、これはこれで可愛らしいんだけど、前髪が長くて横に流していた前の感じのほうが私の好みだ。
「お久しぶりですね」と先生が微笑みかけてきて、「ご主人のご家族がまた揉めていますね」と切り出してきた。
最初はここからかい。確かにクリスマスのときにも姉妹たちが2グループに分かれてしまい、対立をしていた。揉めていることは確かだ。でも離れている私たちにはどうすることもできない。
そんな気持ちを見透かすように、
「いったんは解決したみたいですけどね。まあ気にせずに。関わらないことです」
と先生は淡々と言う。だったら言わなくてもいいのにっ!
「さてっと」と先生はこれからが本題だという調子で、
「お嬢さんのG大附属T小をはずしたこと、いまだによくわからないのですよ」
と切り出してきた。
って言われてもさっ! よくわからないのはこっちなのさっ!
「写真持ってきていらしゃってますか?」と聞かれたので、写メールで写した娘の写真を何枚か先生に見せる。
「わぁ、やっぱり可愛いですね~」と褒めてくれるのはいいんだけど、どうなのよ? そことのところは?
「やっぱり写真見てもG大附属T小の制服が未だに見えるんですよねえ。お電話でもお話した通り、編入とかありえるのかなあ。ああ、でも公立から国立の編入って帰国子女でもない限りふつうないですよねえ。う~ん、やっぱりわからないなあ。G大附属T小に縁がとっても強いんですけどね」
と考え込む先生。そんなに縁が強いところがなんで一次抽選であっけなく落ちるのよ?
「中学は確実に行くと思うんですけどねえ」
なぬ中学だと! そんな先すぎる話、まったくピンとこないねっ! だって1年以内の小学校受験をあれだけはずされて、今から6年も先の中学受験の話なんてもっと当てにならないじゃないかっ!
「G大附属T中学を受験するという前提で常にこの学校のチェックはしてください。ただ仮に編入があるとしてもたまたまそういう情報が入って知るというパターンになりそうです」
はあ~。
「でもこの子は公立小学校でも全然問題ないですよ。ちゃんと勉強もやるし、優等生です。お友だちにも恵まれるし、大きなトラブルは見えないです。私立もインターナショナルスクールも見えないですからね。今、精神的にも安定してるし、ちょっと前は少し不安定だったこともあったみたいですね」
あのね~。仮に娘が不安定だった時期があったとしたら、お受験のころでしょ? 確かに私もずいぶんガミガミ言って娘を追い詰めた側面もあったかもしれない。
けどね、元々近所の公立でいいと思っていた私に、絶対に国立が受かるから絶対にお受験させろとアドバイスをしたのは誰なのよ? あなたでしょうが!
そう言い出したい気持ちをぐぐぅーっと抑える。
そうは言っても先生の予言を鵜呑みにして、実際その通りに動いたのは他ならぬ私自身だからだ。
2010年11月10日水曜日
子どもたちのDVDデビュー②
撮影場所は高級住宅街の中にあるハウススタジオだった。中には会社の担当者たち以外に、制作会社の人たちや出演するタレントの事務所のスタッフやヘアメイクやスタイリストもいる。気のせいかやたらとスタッフが多い。
元々エンターテインメント系の仕事をしていた私にとっては懐かしい雰囲気だ。しかし今日の私の役割は子役モデルの付き添い、つまりはステージママ!
気分はりえママか、はたまた美空ひばりのおっかぁさんか。(←安達祐美の子役時代のママ説もあるよなあ~)
登場する子役モデルはうちの子どもたちを入れると全部で4人。当たり前だが4人のうち2人はうちの子どもたち! 重責だなあ~。
スタッフの一人がうちの子どもたちを見て、「おっ、やっぱりハーフってかわいいな」と言う。
そういわれるたびにゲンナリする。もちろん悪気があるわけじゃないことはよくわかっている。けど言われる親にしてみればハーフだからうちの子はかわいいんじゃなくて、私たちの子どもだからかわいいのだ。
「ハーフだから」という前置きには、なんかズルしているイメージというのか、「だからかわいくて当たり前だ」という前置きもいっしょについている感じがして、どうも素直にかわいいと言われている気になれないのだ。
私だけが被害妄想でそんなふうに思っているのかと思いきや、同じくハーフの子を持つ友人たちとその手の話をすると、「そうそうそう!!!」と激しく盛り上がる。
そんなこともあり、ついついそんなことを言ってしまいがちな人にこの場をお借りしてお願いしたいのは、冠の「ハーフだから~」という言葉はできたら呑み込んでほしい。ただ単に「かわいいね」とだけ言ってもらえればうれしいな。
さて撮影に関する手順が説明される。子どもたちに特にヘアメイクだとかスタイリストはつかないので、手遊びとかジェスチャーを練習して覚えたらそのまま撮影開始となる。
お姉さん役のアイドルの卵はなんと14歳だという。顔が小さくて細くて確かにかわいいけど、あまり華がない。
歌だとか踊りだとか何か特別に秀でているものがあれば別だが、ただのアイドルだとかただの女優だかの道を歩むなら厳しいかなとエンターテインメント業界人の目で思わず観察してしまう。
それでも彼女の顔の大きさは、並んでいる子どもたちとほとんど同じだ。うちの娘と並ぶと下手したらうちの娘のほうがデカイかも。誰よりも顔のデカイ私なぞは、絶対にこういう人といっしょに写真は撮られまいと固く心に誓う。
はい。ここでさっそく問題発生。撮影前の練習ですでに息子は「やらないっ!」の一点張り。おい、頼むよ。まったく。
子どもモデルの残りのふたりはそれぞれ3歳と4歳の男の子だったのだが、ちゃんと自分の役割がわかっているらしく健気に練習している。ふたりともどこかの事務所に所属しているわけではない素人さんなのだという。
娘は元々やる気満々なので張り切って練習している。子どもたちの中では6歳と最年長で体もデカイのでみんなを引っ張っている感じだ。
それに比べて我が息子よ。「ねえ抱っこしてえ~」と私にしがみついて離れない。
ねえ、この中で君は2番目に大きいんだよ。
「さあLくんもせっかくハンサムなんだからがんばってやってみようか」
スタッフ全員で息子をおだてたりなだめたり持ち上げたりするが、息子は「出ないっ!」の一点張りなのだ。困ったのぉ~。
私も「ここでがんばったら、あとでアイスクリーム食べさせてあげる」と食べ物で釣る。
それでも息子は「いやっ!」の一点張りだ。
ついに監督さんが「じゃあ、Lくんは抜き! 子どもは3人で行こう」と号令をかけると「イエーイ」と答えるうちのバカ息子。どうやら出なくてもいいということがわかって喜んでいる様子。せっかくのいいチャンスを棒に振ったことをわかってるのか? 息子よ。
子どもたちが一生懸命練習しているところで、ふと気付くとニヤニヤしながらTさんの胸を揉んでいる息子。お前はセクハラおやじかっ! Tさんは我が社でも巨乳で有名なのだが、されるがままにされているTさん。
「ちょっとあんた、何やってるの! ごねんね~」と息子の手をはたき、Tさんに平謝りに謝ると、「いいっすよ。だってLくん、ハンサムだし」ときた。
まじかよ。そんな問題か!? それにいい気になってずっとTさんの胸を触り続ける息子。ああ、誰かこの坊主をなんとかしてくれよ。(←それって親の役目だろうがっ!)
そして撮影開始。そこでまたまた問題発生。なんとカメラが回っている本番中に、何を思ったが息子が乱入したのだ!
「カットぉおおお!」と監督さん。
「何? Lくん出るの?」
「やだよ」と舌を出す息子。
本番が始まると、何度も乱入を試みてスタッフたちから取り押さえられるのだけど、その手を振り切っては撮影を中断させる息子。
あんた、いったい何者?
ついに監督さんもキレ、「外につまみ出せ!」との命令が。
うちの会社の若手男子がおどおどと「ぼくが散歩に連れ出します」と息子の手を引き、スタジオから出て行った。
いったいなんなの? なんでこうなるの?
我が息子ながら?マークがいっぱい。
「赤すぐ」編集部からはたまたま声がかからなかっただけだが、こんな調子じゃあ子役モデルとかとんでもないよな。
対する娘はカメラが回ると絶好調で、練習のときより弾けている。なんと途中からはアイドルの卵を押しのけてひとりで目立っているではないかっ!
たくさんのスタッフに囲まれてスタッフたちも「いいねえ~」とか「Aちゃん、かわいいよ~」とかおだててくれるので、すっかりその気になっている!
すべてのシーンを撮り終わり、「お疲れ様でしたっ! もういいよ」と監督さんから声をかけられると、「ええ~!? もう終わり? もっと出てもいいよ」と名残惜しそうだ。
「あ~、楽しかったぁ~。またやりたいなあ。ねえ、マミィ、アイドルとかモデルってどうしたらなれるの?」
帰り道にハイな調子で聞く娘。
「う~ん、芸能事務所とか入るんじゃない?」
適当に答える私。
「じゃあ、事務所に入れてよ。どこにあるの? なんて名前のとこなの? それってジャニーズ事務所みたいなの?」
ジャニーズは男子しかおらんだろうが。
それにしても我が家では地上波のテレビをほとんどといっていいぐらい子どもたちに見せていないのにも関わらず、事務所=ジャニーズ事務所と結びつけるとは恐るべし未就学児だ。
「マミィ、アイスクリームは?」
それに対する息子の反応だ。
「だめだよ。だって撮影でがんばってないもん」
「イヤア~!!! アイスクリーム!!! マミィ、“あとでアイスクリーム食べさせてあげる”って言った!! 嘘つきっ!!!」
泣き叫ぶ息子。
あのね、その前に“ここでがんばったら”っていう前置きがあったの! だからアイスクリームはなしっ!
「アイスクリーム!!!!」
「事務所入りたいっ!! アイドルになるっ!」
子どもたちの要求の二重奏を聞きながら、「ハイハイハイ」と適当に答える私であった。
元々エンターテインメント系の仕事をしていた私にとっては懐かしい雰囲気だ。しかし今日の私の役割は子役モデルの付き添い、つまりはステージママ!
気分はりえママか、はたまた美空ひばりのおっかぁさんか。(←安達祐美の子役時代のママ説もあるよなあ~)
登場する子役モデルはうちの子どもたちを入れると全部で4人。当たり前だが4人のうち2人はうちの子どもたち! 重責だなあ~。
スタッフの一人がうちの子どもたちを見て、「おっ、やっぱりハーフってかわいいな」と言う。
そういわれるたびにゲンナリする。もちろん悪気があるわけじゃないことはよくわかっている。けど言われる親にしてみればハーフだからうちの子はかわいいんじゃなくて、私たちの子どもだからかわいいのだ。
「ハーフだから」という前置きには、なんかズルしているイメージというのか、「だからかわいくて当たり前だ」という前置きもいっしょについている感じがして、どうも素直にかわいいと言われている気になれないのだ。
私だけが被害妄想でそんなふうに思っているのかと思いきや、同じくハーフの子を持つ友人たちとその手の話をすると、「そうそうそう!!!」と激しく盛り上がる。
そんなこともあり、ついついそんなことを言ってしまいがちな人にこの場をお借りしてお願いしたいのは、冠の「ハーフだから~」という言葉はできたら呑み込んでほしい。ただ単に「かわいいね」とだけ言ってもらえればうれしいな。
さて撮影に関する手順が説明される。子どもたちに特にヘアメイクだとかスタイリストはつかないので、手遊びとかジェスチャーを練習して覚えたらそのまま撮影開始となる。
お姉さん役のアイドルの卵はなんと14歳だという。顔が小さくて細くて確かにかわいいけど、あまり華がない。
歌だとか踊りだとか何か特別に秀でているものがあれば別だが、ただのアイドルだとかただの女優だかの道を歩むなら厳しいかなとエンターテインメント業界人の目で思わず観察してしまう。
それでも彼女の顔の大きさは、並んでいる子どもたちとほとんど同じだ。うちの娘と並ぶと下手したらうちの娘のほうがデカイかも。誰よりも顔のデカイ私なぞは、絶対にこういう人といっしょに写真は撮られまいと固く心に誓う。
はい。ここでさっそく問題発生。撮影前の練習ですでに息子は「やらないっ!」の一点張り。おい、頼むよ。まったく。
子どもモデルの残りのふたりはそれぞれ3歳と4歳の男の子だったのだが、ちゃんと自分の役割がわかっているらしく健気に練習している。ふたりともどこかの事務所に所属しているわけではない素人さんなのだという。
娘は元々やる気満々なので張り切って練習している。子どもたちの中では6歳と最年長で体もデカイのでみんなを引っ張っている感じだ。
それに比べて我が息子よ。「ねえ抱っこしてえ~」と私にしがみついて離れない。
ねえ、この中で君は2番目に大きいんだよ。
「さあLくんもせっかくハンサムなんだからがんばってやってみようか」
スタッフ全員で息子をおだてたりなだめたり持ち上げたりするが、息子は「出ないっ!」の一点張りなのだ。困ったのぉ~。
私も「ここでがんばったら、あとでアイスクリーム食べさせてあげる」と食べ物で釣る。
それでも息子は「いやっ!」の一点張りだ。
ついに監督さんが「じゃあ、Lくんは抜き! 子どもは3人で行こう」と号令をかけると「イエーイ」と答えるうちのバカ息子。どうやら出なくてもいいということがわかって喜んでいる様子。せっかくのいいチャンスを棒に振ったことをわかってるのか? 息子よ。
子どもたちが一生懸命練習しているところで、ふと気付くとニヤニヤしながらTさんの胸を揉んでいる息子。お前はセクハラおやじかっ! Tさんは我が社でも巨乳で有名なのだが、されるがままにされているTさん。
「ちょっとあんた、何やってるの! ごねんね~」と息子の手をはたき、Tさんに平謝りに謝ると、「いいっすよ。だってLくん、ハンサムだし」ときた。
まじかよ。そんな問題か!? それにいい気になってずっとTさんの胸を触り続ける息子。ああ、誰かこの坊主をなんとかしてくれよ。(←それって親の役目だろうがっ!)
そして撮影開始。そこでまたまた問題発生。なんとカメラが回っている本番中に、何を思ったが息子が乱入したのだ!
「カットぉおおお!」と監督さん。
「何? Lくん出るの?」
「やだよ」と舌を出す息子。
本番が始まると、何度も乱入を試みてスタッフたちから取り押さえられるのだけど、その手を振り切っては撮影を中断させる息子。
あんた、いったい何者?
ついに監督さんもキレ、「外につまみ出せ!」との命令が。
うちの会社の若手男子がおどおどと「ぼくが散歩に連れ出します」と息子の手を引き、スタジオから出て行った。
いったいなんなの? なんでこうなるの?
我が息子ながら?マークがいっぱい。
「赤すぐ」編集部からはたまたま声がかからなかっただけだが、こんな調子じゃあ子役モデルとかとんでもないよな。
対する娘はカメラが回ると絶好調で、練習のときより弾けている。なんと途中からはアイドルの卵を押しのけてひとりで目立っているではないかっ!
たくさんのスタッフに囲まれてスタッフたちも「いいねえ~」とか「Aちゃん、かわいいよ~」とかおだててくれるので、すっかりその気になっている!
すべてのシーンを撮り終わり、「お疲れ様でしたっ! もういいよ」と監督さんから声をかけられると、「ええ~!? もう終わり? もっと出てもいいよ」と名残惜しそうだ。
「あ~、楽しかったぁ~。またやりたいなあ。ねえ、マミィ、アイドルとかモデルってどうしたらなれるの?」
帰り道にハイな調子で聞く娘。
「う~ん、芸能事務所とか入るんじゃない?」
適当に答える私。
「じゃあ、事務所に入れてよ。どこにあるの? なんて名前のとこなの? それってジャニーズ事務所みたいなの?」
ジャニーズは男子しかおらんだろうが。
それにしても我が家では地上波のテレビをほとんどといっていいぐらい子どもたちに見せていないのにも関わらず、事務所=ジャニーズ事務所と結びつけるとは恐るべし未就学児だ。
「マミィ、アイスクリームは?」
それに対する息子の反応だ。
「だめだよ。だって撮影でがんばってないもん」
「イヤア~!!! アイスクリーム!!! マミィ、“あとでアイスクリーム食べさせてあげる”って言った!! 嘘つきっ!!!」
泣き叫ぶ息子。
あのね、その前に“ここでがんばったら”っていう前置きがあったの! だからアイスクリームはなしっ!
「アイスクリーム!!!!」
「事務所入りたいっ!! アイドルになるっ!」
子どもたちの要求の二重奏を聞きながら、「ハイハイハイ」と適当に答える私であった。
2010年11月9日火曜日
子どもたちのDVDデビュー①
ある冬の寒い1日。この日は我が社の通信教育コースの宣伝用DVDの撮影日であった。担当のTさんからぜひうちの娘をモデルにしたいと言われ、ふたつ返事でお受けした。
うちの娘はこのコースを年中のときからやっていたので、宣伝用のパンフレットに何回か利用者のコメントとして顔写真を載せたこともあり、「Aちゃんは可愛いのでぜひ♪」ということで白羽の矢が当たったのだ。
他にも制作会社のスタッフのお子さんもモデルに出るということだったので、「なんだったらうちの息子もぜひ!」とTさんにねじ込んで、無理やり息子も出してもらうことに。
ちなみに息子はひとりでコツコツやるような通信教育には向いていないと思い、このコースは取らしていない。
今から思えば、お受験対策用に息子にもやらせればよかったと悔やむことしきり。
うちの通信教育は小学校で学ぶ先取りが基本だから、お受験自体には内容はリンクしないけど(←お受験のペーパーと小学校で習うことはまったく別物)、机に向かってコツコツ勉強する習慣作りにはなったはずだ。
Tさんによると撮影する内容はアイドルの卵の女の子がお姉さん役となって、子どもたちと歌ったり、手遊びしたり、踊ったりするのだという。2~3分の歌や手遊びを全部で6パターン撮影するということで、これと使用キャラクターの着ぐるみのシーンを合わせたものが今回、宣伝用のDVDの内容になるそうだ。
DVDは資料請求してきたユーザーに資料と一緒に送られたり、イベント時にはモニターで流したり、場合によっては会社のHPにも流したりするらしい。
そのプレス数はなんと8万枚!
昔、私が作ったモロッコ音楽のCDより遥かに多いプレス数ではないかっ!
この話を娘はずいぶんと喜び、「撮影だなんて、アイドルとかモデルさんみたい♪」とはしゃいでいた。
対する息子は「絶対に出ないっ!」の一点張り。
ちなみに子どもたちが赤ちゃんだったときに、登場する読者モデルの8割以上がハーフだという説のリクルート刊「赤ちゃんができたらすぐに読む本」こと略して「赤すぐ」にモデル登録をした。
娘のときには結構頻繁に声がかかり、何度か出させてもらったし、そのうちの何回かは私もいっしょに撮影された。
その当時、まさか30代半ば過ぎになって読者モデルとして雑誌に出られるなんて夢にも思っていなかった。これも子どもがいるといろんなことを経験させてもらえる一例だ。
対する息子にはなぜか一度も編集部から声がかからず。
多分いかにもハーフといったルックスの娘に対して、息子はあまりバタ臭くない。赤ちゃんのときは特に今より日本人色が強く出ていたので、ハーフ好きの編集部の好みには合わなかったのかもしれない。
代わりにといってはなんだが、息子が1歳のときに街で芸能プロダクションのスカウトの女性から声をかけられたことがあり、あまりの誇らしさに鼻の穴を全開にしてあっちこっちで自慢しまくったら、うちの近所の子どもたちにとって一度や二度スカウトから声がかかることって全然珍しいことじゃないことが判明して、がっくりきたことがある。
さすが都会の子どもは違うねえ~。
うちの実家のほうならたとえ田舎者相手の詐欺だったとしても、スカウトなんて事態は末代まで話題になるぞ。
うちの娘はこのコースを年中のときからやっていたので、宣伝用のパンフレットに何回か利用者のコメントとして顔写真を載せたこともあり、「Aちゃんは可愛いのでぜひ♪」ということで白羽の矢が当たったのだ。
他にも制作会社のスタッフのお子さんもモデルに出るということだったので、「なんだったらうちの息子もぜひ!」とTさんにねじ込んで、無理やり息子も出してもらうことに。
ちなみに息子はひとりでコツコツやるような通信教育には向いていないと思い、このコースは取らしていない。
今から思えば、お受験対策用に息子にもやらせればよかったと悔やむことしきり。
うちの通信教育は小学校で学ぶ先取りが基本だから、お受験自体には内容はリンクしないけど(←お受験のペーパーと小学校で習うことはまったく別物)、机に向かってコツコツ勉強する習慣作りにはなったはずだ。
Tさんによると撮影する内容はアイドルの卵の女の子がお姉さん役となって、子どもたちと歌ったり、手遊びしたり、踊ったりするのだという。2~3分の歌や手遊びを全部で6パターン撮影するということで、これと使用キャラクターの着ぐるみのシーンを合わせたものが今回、宣伝用のDVDの内容になるそうだ。
DVDは資料請求してきたユーザーに資料と一緒に送られたり、イベント時にはモニターで流したり、場合によっては会社のHPにも流したりするらしい。
そのプレス数はなんと8万枚!
昔、私が作ったモロッコ音楽のCDより遥かに多いプレス数ではないかっ!
この話を娘はずいぶんと喜び、「撮影だなんて、アイドルとかモデルさんみたい♪」とはしゃいでいた。
対する息子は「絶対に出ないっ!」の一点張り。
ちなみに子どもたちが赤ちゃんだったときに、登場する読者モデルの8割以上がハーフだという説のリクルート刊「赤ちゃんができたらすぐに読む本」こと略して「赤すぐ」にモデル登録をした。
娘のときには結構頻繁に声がかかり、何度か出させてもらったし、そのうちの何回かは私もいっしょに撮影された。
その当時、まさか30代半ば過ぎになって読者モデルとして雑誌に出られるなんて夢にも思っていなかった。これも子どもがいるといろんなことを経験させてもらえる一例だ。
対する息子にはなぜか一度も編集部から声がかからず。
多分いかにもハーフといったルックスの娘に対して、息子はあまりバタ臭くない。赤ちゃんのときは特に今より日本人色が強く出ていたので、ハーフ好きの編集部の好みには合わなかったのかもしれない。
代わりにといってはなんだが、息子が1歳のときに街で芸能プロダクションのスカウトの女性から声をかけられたことがあり、あまりの誇らしさに鼻の穴を全開にしてあっちこっちで自慢しまくったら、うちの近所の子どもたちにとって一度や二度スカウトから声がかかることって全然珍しいことじゃないことが判明して、がっくりきたことがある。
さすが都会の子どもは違うねえ~。
うちの実家のほうならたとえ田舎者相手の詐欺だったとしても、スカウトなんて事態は末代まで話題になるぞ。
2010年11月4日木曜日
HANAちゃんとのど自慢大会②
番組が始まる前にオカン(←オカンはHANAちゃんに会っている)やら、沙織(仮名)やら高校時代からの友人の真美ちゃん(仮名・彼女もHANAちゃんに会っている)や我が家でのホームパーティーで何度か顔をあわせているカリンママこと洋子(仮名)にも、「HANAちゃんが出るからヨロシクっ!」と連絡をする。
そして番組オープニング。出たあ~!! さっそくHANAちゃんが出ているぅ~。
画面に映るHANAちゃんはやっぱりひまわりのような明るい笑顔を浮かべている。しかしテレビというのはよく1.5倍増に映るというが、その通りだ。
HANAちゃんはずいぶん以前と比べると痩せたんだけど、それでも実物より太って映っている。今回コンビを組んだRKさんもとっても痩せている人なのに、テレビでは痩せているようには見えない。
テレビで痩せている人って相当痩せてるんだろうなあ~。私なんて映ったらエライことになりそうだ。
彼女たちの出番は11番目。画面にいつふたりが映りこむがわからないので、目が離せない。
生まれて初めてじっくりとこの番組を見たわけなのだが、出場者のレベルがいまいちというのは完全に私の思い込みだということがわかった。
昔ちらっと見た出場者の中には、よぼよぼのおばあさんが出てきて歌のクオリティーよりもその年齢でチャレンジをしたことに対して評価されていたり、あがりまくって完全に音程を外している人もいたので、そういうイメージを引きずっていたのだが、今はさすがにそんなことはなさそうだ。
HANAちゃんの歌もRKさんの歌も何度も聞いていたので、当然優勝でしょうと思っていたのだが、ライバルたちは手ごわい。
またNHKなので選曲も考慮に入れられそうだ。単なる想像だがポップスやロックを歌う人よりも演歌や浪曲を歌う人のほうがポイントが高いんじゃないか?
スポーツでもそうだが、漠然と見ているよりこっちのチームに勝ってほしいと思いながら見るほうが断然盛り上がる。
当然、HANAちゃんたちに勝ってほしいと思うので、自然と他の出場者のレベルがどれぐらいなのかということが気になり、目が離せなくなってしまう。ライバルたちが歌い始めると、「やばいっ! この人、上手いっ!」と、その都度ハラハラする。
「のど自慢大会」がこんなにもハラハラ・ドキドキするものだとは40歳過ぎるまでわたしゃあ、知らなかったねっ!
そしてやってきたHANAちゃんたちの出番。
「HANAちゃん、頑張れっ!!」
テレビに向かって声援を送る私たち。うちの息子なぞ、「HANAちゃん、ここにいるよ」とテレビ画面を直に触りながら、「あれ? HANAちゃん、気づいてくれないよぉ~」とほざいている。まったく“おいっ、しっかりしてくれよっ”状態である。まったくもって“お受験”どころではない感じ。トホホ。
まずはRKさんから歌い出す。曲はjujuの曲だとあとから聞いた。
RKさんは透明感のある声でさらっとしたやさしい歌い方をする。対するHANAちゃんはパワフルで歌い上げるタイプのボーカリストだ。
最初にAIをテレビで見たときに、「あれ!? なんでHANAちゃん、テレビに映ってるの? うん!? どうやら別人!?」と家族全員で驚いたものだった。
HANAちゃんとAIは見た目もそっくりなのだ。けど歌に関してHANAちゃんの力はAIと比べても(←ってか、勝手に比べるなよっ!って話だよね?)、遜色ないと私は思っている(←大いに贔屓目もあるけどなっ)。
HANAちゃんが歌い始めると、家族揃って「おぉ~!」と歓声を上げる。曲に合わせて歌い方を変えているのか、いつもより抑制の効いた感じだ。
ちなみにどれぐらいいつもと違ったのか名作「ドリーム・ガールズ」に無理やりたとえてみると、前のHANAちゃんのスタイルがジェニファー・ハドソンのような感じだったとすると、今回のHANAちゃんはビヨンセのような感じなのだ。
もっともこの映画ではビヨンセ自体、忠実に役柄のモデルとなったダイアナ・ロスとジェニファー・ハドゾンが演じたフローレンス・バラードの基になったエフィ役との対比を再現するために、普段と比べて相当抑えた歌い方をしていたのだという。
HANAちゃんもRKさんと組むことで全体のバランスを考えたのかもしれない。
そして全員が歌い終わって結果発表!
ジャジャーン♪
見事、HANAちゃん&RKさんの優勝! おめでとう!!!
そして渋谷のNHKホールでおこなわれる全国大会へ!
知らなかったんだけど、何人か「のど自慢」で優勝した人が歌手デビューとかしてるんだよねえ。例)ジェロとか
あとは全国大会も征してなんらかのチャンスが巡ってくればいいのだけど。
それと驚いたのはこの日ゲストで出ていた伍代夏子の美しかったこと!
素人さんたちに囲まれた伍代さんの美しさは際立っていた。
やっぱバリバリの芸能人ってふつうじゃないんだね。
その後のHANAちゃんの活躍にも乞うご期待!
そして番組オープニング。出たあ~!! さっそくHANAちゃんが出ているぅ~。
画面に映るHANAちゃんはやっぱりひまわりのような明るい笑顔を浮かべている。しかしテレビというのはよく1.5倍増に映るというが、その通りだ。
HANAちゃんはずいぶん以前と比べると痩せたんだけど、それでも実物より太って映っている。今回コンビを組んだRKさんもとっても痩せている人なのに、テレビでは痩せているようには見えない。
テレビで痩せている人って相当痩せてるんだろうなあ~。私なんて映ったらエライことになりそうだ。
彼女たちの出番は11番目。画面にいつふたりが映りこむがわからないので、目が離せない。
生まれて初めてじっくりとこの番組を見たわけなのだが、出場者のレベルがいまいちというのは完全に私の思い込みだということがわかった。
昔ちらっと見た出場者の中には、よぼよぼのおばあさんが出てきて歌のクオリティーよりもその年齢でチャレンジをしたことに対して評価されていたり、あがりまくって完全に音程を外している人もいたので、そういうイメージを引きずっていたのだが、今はさすがにそんなことはなさそうだ。
HANAちゃんの歌もRKさんの歌も何度も聞いていたので、当然優勝でしょうと思っていたのだが、ライバルたちは手ごわい。
またNHKなので選曲も考慮に入れられそうだ。単なる想像だがポップスやロックを歌う人よりも演歌や浪曲を歌う人のほうがポイントが高いんじゃないか?
スポーツでもそうだが、漠然と見ているよりこっちのチームに勝ってほしいと思いながら見るほうが断然盛り上がる。
当然、HANAちゃんたちに勝ってほしいと思うので、自然と他の出場者のレベルがどれぐらいなのかということが気になり、目が離せなくなってしまう。ライバルたちが歌い始めると、「やばいっ! この人、上手いっ!」と、その都度ハラハラする。
「のど自慢大会」がこんなにもハラハラ・ドキドキするものだとは40歳過ぎるまでわたしゃあ、知らなかったねっ!
そしてやってきたHANAちゃんたちの出番。
「HANAちゃん、頑張れっ!!」
テレビに向かって声援を送る私たち。うちの息子なぞ、「HANAちゃん、ここにいるよ」とテレビ画面を直に触りながら、「あれ? HANAちゃん、気づいてくれないよぉ~」とほざいている。まったく“おいっ、しっかりしてくれよっ”状態である。まったくもって“お受験”どころではない感じ。トホホ。
まずはRKさんから歌い出す。曲はjujuの曲だとあとから聞いた。
RKさんは透明感のある声でさらっとしたやさしい歌い方をする。対するHANAちゃんはパワフルで歌い上げるタイプのボーカリストだ。
最初にAIをテレビで見たときに、「あれ!? なんでHANAちゃん、テレビに映ってるの? うん!? どうやら別人!?」と家族全員で驚いたものだった。
HANAちゃんとAIは見た目もそっくりなのだ。けど歌に関してHANAちゃんの力はAIと比べても(←ってか、勝手に比べるなよっ!って話だよね?)、遜色ないと私は思っている(←大いに贔屓目もあるけどなっ)。
HANAちゃんが歌い始めると、家族揃って「おぉ~!」と歓声を上げる。曲に合わせて歌い方を変えているのか、いつもより抑制の効いた感じだ。
ちなみにどれぐらいいつもと違ったのか名作「ドリーム・ガールズ」に無理やりたとえてみると、前のHANAちゃんのスタイルがジェニファー・ハドソンのような感じだったとすると、今回のHANAちゃんはビヨンセのような感じなのだ。
もっともこの映画ではビヨンセ自体、忠実に役柄のモデルとなったダイアナ・ロスとジェニファー・ハドゾンが演じたフローレンス・バラードの基になったエフィ役との対比を再現するために、普段と比べて相当抑えた歌い方をしていたのだという。
HANAちゃんもRKさんと組むことで全体のバランスを考えたのかもしれない。
そして全員が歌い終わって結果発表!
ジャジャーン♪
見事、HANAちゃん&RKさんの優勝! おめでとう!!!
そして渋谷のNHKホールでおこなわれる全国大会へ!
知らなかったんだけど、何人か「のど自慢」で優勝した人が歌手デビューとかしてるんだよねえ。例)ジェロとか
あとは全国大会も征してなんらかのチャンスが巡ってくればいいのだけど。
それと驚いたのはこの日ゲストで出ていた伍代夏子の美しかったこと!
素人さんたちに囲まれた伍代さんの美しさは際立っていた。
やっぱバリバリの芸能人ってふつうじゃないんだね。
その後のHANAちゃんの活躍にも乞うご期待!
HANAちゃんとのど自慢大会①
その日、私たち家族はテレビの前で全員きちんと正座して画面を見守った。
その様子は傍から見ればきっと、高度成長期の日本で初めてテレビを購入した家庭で(←しかも町内初!)で力道山とブラッド・プラッシーの戦いを固唾を呑んで見守る人々の姿を彷彿させたことであろう(←適当)。
私たちが待ちわびたテレビ番組とは、毎週日曜日放送のNHKの「のど自慢大会」。
この番組は1946年から続いているのだという。
これだけの超長寿番組なので当然何度か見たことはあるのだが、初めから最後まで通して見たことはこれまでなかった。
NHKの「のど自慢大会」といえば、演歌か浪曲というイメージが染み付いている。今のアラフォー世代以下で演歌や浪曲が大好きという人は圧倒的少数派だろう。
子どものころ、母方の祖父母の家に行くとおじいちゃんが好きでよく見ていたが、番組が始まると同時に私はテレビのある部屋を離れたし、うちの両親も昔は演歌とか浪曲を嫌っていたので(←今ではジャパネット高田で買ったホームカラオケで演歌ばかり歌ってるけどなっ)、実家でも「のど自慢」が始まると誰かが有無をいわさずチャンネルを替えるというのが習い性になっていた。
もちろん最近では演歌や浪曲ばかりじゃなくて、歌謡曲やロックなど歌われる曲の幅が増えてきていることも知っていたけど、いかんせん所詮素人である。
素人でもある水準以上の人を時間もかけて見せる「アメリカン・アイドル」みたいな番組だと見ごたえもあるが、1フレーズ、2フレーズで鐘が鳴った段階でおしまいみたいな感じはなんとあわただしく、また出る人の水準も相当いまいちで野暮ったいというのが「のど自慢大会」に対するイメージだった。
それなのにである。
どうして私たち家族が正座までして「のど自慢大会」の始まるのを待っているかというと、なんとHANAちゃんが出演することになったからだ。
HANAちゃんはうちの会社が運営委託されている施設の職員として働きながら、歌を歌っている。
もちろんプロとしてデビューできて歌1本で食べていければそれに越したことはないけど、現実はなかなか厳しい。
同じようなことを考えている人がゴマンといるのに、音楽はダウンロードするものという風潮の中で肝心な市場は収縮している。
それでもHANAちゃんが歌うのをやめないのは歌わずにはいられないからだろうし、何よりも好きだからだろう。
この場合の「好き」というのも、歌を歌っているときが楽しいからだとかそういったレベルのものではなく、歌のためなら徹夜が続こうがどんな労力があっても構わない、これをやっていないと死んでしまうというレベルのものだと思う(←HANAちゃん、違ってたらごめんねっ)。
当然ゴマンといるライバルたちから頭ひとつ抜きん出るために、虎視眈々とチャンスを窺うことになる。
そこでやってきたのがNHKの「のど自慢大会」への出場というビッグチャンスである。
果たしてHANAちゃんはチャンスをモノにすることができるのか!?
その様子は傍から見ればきっと、高度成長期の日本で初めてテレビを購入した家庭で(←しかも町内初!)で力道山とブラッド・プラッシーの戦いを固唾を呑んで見守る人々の姿を彷彿させたことであろう(←適当)。
私たちが待ちわびたテレビ番組とは、毎週日曜日放送のNHKの「のど自慢大会」。
この番組は1946年から続いているのだという。
これだけの超長寿番組なので当然何度か見たことはあるのだが、初めから最後まで通して見たことはこれまでなかった。
NHKの「のど自慢大会」といえば、演歌か浪曲というイメージが染み付いている。今のアラフォー世代以下で演歌や浪曲が大好きという人は圧倒的少数派だろう。
子どものころ、母方の祖父母の家に行くとおじいちゃんが好きでよく見ていたが、番組が始まると同時に私はテレビのある部屋を離れたし、うちの両親も昔は演歌とか浪曲を嫌っていたので(←今ではジャパネット高田で買ったホームカラオケで演歌ばかり歌ってるけどなっ)、実家でも「のど自慢」が始まると誰かが有無をいわさずチャンネルを替えるというのが習い性になっていた。
もちろん最近では演歌や浪曲ばかりじゃなくて、歌謡曲やロックなど歌われる曲の幅が増えてきていることも知っていたけど、いかんせん所詮素人である。
素人でもある水準以上の人を時間もかけて見せる「アメリカン・アイドル」みたいな番組だと見ごたえもあるが、1フレーズ、2フレーズで鐘が鳴った段階でおしまいみたいな感じはなんとあわただしく、また出る人の水準も相当いまいちで野暮ったいというのが「のど自慢大会」に対するイメージだった。
それなのにである。
どうして私たち家族が正座までして「のど自慢大会」の始まるのを待っているかというと、なんとHANAちゃんが出演することになったからだ。
HANAちゃんはうちの会社が運営委託されている施設の職員として働きながら、歌を歌っている。
もちろんプロとしてデビューできて歌1本で食べていければそれに越したことはないけど、現実はなかなか厳しい。
同じようなことを考えている人がゴマンといるのに、音楽はダウンロードするものという風潮の中で肝心な市場は収縮している。
それでもHANAちゃんが歌うのをやめないのは歌わずにはいられないからだろうし、何よりも好きだからだろう。
この場合の「好き」というのも、歌を歌っているときが楽しいからだとかそういったレベルのものではなく、歌のためなら徹夜が続こうがどんな労力があっても構わない、これをやっていないと死んでしまうというレベルのものだと思う(←HANAちゃん、違ってたらごめんねっ)。
当然ゴマンといるライバルたちから頭ひとつ抜きん出るために、虎視眈々とチャンスを窺うことになる。
そこでやってきたのがNHKの「のど自慢大会」への出場というビッグチャンスである。
果たしてHANAちゃんはチャンスをモノにすることができるのか!?
2010年11月1日月曜日
公立不信②
「誰じゃぁ、うちのY介をボコボコにした罰当たりモンはっ!?」
可愛い甥っ子がやられたと聞いて、むかっ腹を立てる私。
「やったのはね、同じクラスの女の子の3年生になるお兄ちゃんなんやて。女の子がお兄ちゃんをそそのかしてやらせたんやがね」
「どういうこっちゃ? 1年生のくせにどういうあばずれなんじゃぁ!? そいつはよぉ~」
「教室でね、Y介が通ろうと思っとった通路にその子がおって邪魔やったらしいんやわ。で、“どいて”って言っても知らん顔されたもんで、“どけよっ!”って強く言ったらしいんやわ。で、その言い方が気に入らんかったらしくて自分のお兄ちゃんに“あいつ、しめたって”って頼んで、お兄ちゃんもひとりやと心細かったんかしらんけど、もうひとり悪いヤツ連れてきてそいつとふたりでY介をボコボコにして、影でその女の子が笑いながら見とったらしいんやて」
「なんちゅう話や! まあそのお兄ちゃんとその友だちは単なるアホやけど、その女の子、末恐ろしいなっ! で、どうしたん?」
「もちろん学校に行って担任の先生に話をして、その子らの親にも話してもらったんやけど、ウンともスンとも言ってこん。知らん顔されとる」
「なんちゅう~、あきれた親じゃ。知り合いなん?」
「元々顔は知っとるよ。母親はまだ20代前半で男と遊び狂っとるで、子どもほったらかしらしいわ。いわゆるネグレストってやつやね。どうしようもないあばずれなんやけど、最近赤ちゃんができたから家にはおるらしいわ」
「絵に描いたような下流家族やなあ~。小3の子がおってまだ20代前半とは! で、赤ん坊の父親は誰なん?」
「なんや彼氏らしいけど、彼氏も家に転がり込んどるみたいやよ」
「延々と続く不幸の再生産ちゅう感じやねえ~。で、ウンともスンとも謝りにこんの、学校側はどうなわけ?」
「完全に及び腰やて。その下流家族はそんな程度やん。やけどY介がボコボコにされたんは、学校内やから完全に学校の監督下でのできごとやろ。やけどあかん、学校側は私らに“すいませんでした”って言うだけで、なんもせん」
「T(←私の弟)はなんって言ってるの?」
「めっちゃ怒っとるよ。“うちのY介はお前んとこの薄汚いガキとは出来が違うんじゃ。バカタレが、この激安一家のくせによぉ”って」
「お、本人に言った?」
「陰で言っとるだけやって。あの人、そんな根性ない」
「確かに。でもそれじゃあ収まらんやろ?」
「そうや。学校は当てにできん。そういやあ千恵子ちゃん(仮名)覚えとる?」
千恵子ちゃんとはRちゃんのママ友のひとりで、長男のS太朗の友だち朝也くん(仮名)のお母さんだ。
ふたりは中学受験の同志で、お互い切磋琢磨し励ましあって受験に臨んでいる。
私たちが帰省したときにうちでホームパーティーを開き、朝也くん一家と飲んだことがある。
千恵子ちゃんは一見、元ヤンだ。何がすごいって目つきが鋭い。愛想もない。けどものすごく教育ママで、朝也くんの塾代の費用を捻出するためにスーパーのお惣菜売り場で毎日お惣菜を作っている。勉強もいっしょに子どもたちとやり、S太朗の勉強も見てくれて弱点なんかも教えてくれたりする。
塾でいっしょだったことがきっかけになってふたりは仲良くなった。ふたりのタイプはまったく違うが、千恵子ちゃんは仲良くなればとことん面倒見のいい姉御肌なのだ。
「千恵子ちゃんにもY介がボコボコにされた話をしたらえらい怒ってくれて、“よっしゃ、これから学校に行ってその小1のあばずれ、しめたろか”って言って、いっしょに学校に行ってきた」
「ちょっと待て! まさか大の大人ふたりで小1の子になんかしたんか?」
「うふふふ。お義姉さん、この顔見て」
「うわぁ! なんや、これっ!」
携帯に送られてきた写メール。
Rちゃんは顔の筋肉をある程度自由自在に動かせる変な特技を持っている。私に送ってきたのは、なんとも壮絶な恐喝顔というか、ちんぴら顔というか、これ普通、子どもうなされるでぇ~というまったく本人の顔の原型を留めていない怖い顔の写真だった。
「“あんた、よぉ、うちのY介におもろいことしてくれたなあ? 今度しょうもないことやったら、あんたもあんたのお兄ちゃんもわかってるやろなあ?”ってその子にこんな顔して言うたった。で、隣にはめっちゃメンチ切った千恵子ちゃん」
「う~ん。そりゃあ怖いなあ~」
「そのあばずれ、心底恐怖に歪んだ顔して震えとったわ。ま、しばらくY介も無事やろ。学校がなんもせんで、こっちも自衛せんと」
なんということだ。私の母校はどうなってるのだ?
とっても救いのない話を聞いて、かなり気が滅入った。
これは公立云々は関係のない話かもしれないが、少なくても国立や私立にはそういった家庭の子どもはいないだろう。
今後、同じようなことがうちの子どもたちの身の上で起こった場合、私にはRちゃんみたいに顔の筋肉を自由に動かせる特技もなければ、頼れる千恵子ちゃんみたいな人もいない。
娘の小学校入学を控えて神経質になる私であった。
可愛い甥っ子がやられたと聞いて、むかっ腹を立てる私。
「やったのはね、同じクラスの女の子の3年生になるお兄ちゃんなんやて。女の子がお兄ちゃんをそそのかしてやらせたんやがね」
「どういうこっちゃ? 1年生のくせにどういうあばずれなんじゃぁ!? そいつはよぉ~」
「教室でね、Y介が通ろうと思っとった通路にその子がおって邪魔やったらしいんやわ。で、“どいて”って言っても知らん顔されたもんで、“どけよっ!”って強く言ったらしいんやわ。で、その言い方が気に入らんかったらしくて自分のお兄ちゃんに“あいつ、しめたって”って頼んで、お兄ちゃんもひとりやと心細かったんかしらんけど、もうひとり悪いヤツ連れてきてそいつとふたりでY介をボコボコにして、影でその女の子が笑いながら見とったらしいんやて」
「なんちゅう話や! まあそのお兄ちゃんとその友だちは単なるアホやけど、その女の子、末恐ろしいなっ! で、どうしたん?」
「もちろん学校に行って担任の先生に話をして、その子らの親にも話してもらったんやけど、ウンともスンとも言ってこん。知らん顔されとる」
「なんちゅう~、あきれた親じゃ。知り合いなん?」
「元々顔は知っとるよ。母親はまだ20代前半で男と遊び狂っとるで、子どもほったらかしらしいわ。いわゆるネグレストってやつやね。どうしようもないあばずれなんやけど、最近赤ちゃんができたから家にはおるらしいわ」
「絵に描いたような下流家族やなあ~。小3の子がおってまだ20代前半とは! で、赤ん坊の父親は誰なん?」
「なんや彼氏らしいけど、彼氏も家に転がり込んどるみたいやよ」
「延々と続く不幸の再生産ちゅう感じやねえ~。で、ウンともスンとも謝りにこんの、学校側はどうなわけ?」
「完全に及び腰やて。その下流家族はそんな程度やん。やけどY介がボコボコにされたんは、学校内やから完全に学校の監督下でのできごとやろ。やけどあかん、学校側は私らに“すいませんでした”って言うだけで、なんもせん」
「T(←私の弟)はなんって言ってるの?」
「めっちゃ怒っとるよ。“うちのY介はお前んとこの薄汚いガキとは出来が違うんじゃ。バカタレが、この激安一家のくせによぉ”って」
「お、本人に言った?」
「陰で言っとるだけやって。あの人、そんな根性ない」
「確かに。でもそれじゃあ収まらんやろ?」
「そうや。学校は当てにできん。そういやあ千恵子ちゃん(仮名)覚えとる?」
千恵子ちゃんとはRちゃんのママ友のひとりで、長男のS太朗の友だち朝也くん(仮名)のお母さんだ。
ふたりは中学受験の同志で、お互い切磋琢磨し励ましあって受験に臨んでいる。
私たちが帰省したときにうちでホームパーティーを開き、朝也くん一家と飲んだことがある。
千恵子ちゃんは一見、元ヤンだ。何がすごいって目つきが鋭い。愛想もない。けどものすごく教育ママで、朝也くんの塾代の費用を捻出するためにスーパーのお惣菜売り場で毎日お惣菜を作っている。勉強もいっしょに子どもたちとやり、S太朗の勉強も見てくれて弱点なんかも教えてくれたりする。
塾でいっしょだったことがきっかけになってふたりは仲良くなった。ふたりのタイプはまったく違うが、千恵子ちゃんは仲良くなればとことん面倒見のいい姉御肌なのだ。
「千恵子ちゃんにもY介がボコボコにされた話をしたらえらい怒ってくれて、“よっしゃ、これから学校に行ってその小1のあばずれ、しめたろか”って言って、いっしょに学校に行ってきた」
「ちょっと待て! まさか大の大人ふたりで小1の子になんかしたんか?」
「うふふふ。お義姉さん、この顔見て」
「うわぁ! なんや、これっ!」
携帯に送られてきた写メール。
Rちゃんは顔の筋肉をある程度自由自在に動かせる変な特技を持っている。私に送ってきたのは、なんとも壮絶な恐喝顔というか、ちんぴら顔というか、これ普通、子どもうなされるでぇ~というまったく本人の顔の原型を留めていない怖い顔の写真だった。
「“あんた、よぉ、うちのY介におもろいことしてくれたなあ? 今度しょうもないことやったら、あんたもあんたのお兄ちゃんもわかってるやろなあ?”ってその子にこんな顔して言うたった。で、隣にはめっちゃメンチ切った千恵子ちゃん」
「う~ん。そりゃあ怖いなあ~」
「そのあばずれ、心底恐怖に歪んだ顔して震えとったわ。ま、しばらくY介も無事やろ。学校がなんもせんで、こっちも自衛せんと」
なんということだ。私の母校はどうなってるのだ?
とっても救いのない話を聞いて、かなり気が滅入った。
これは公立云々は関係のない話かもしれないが、少なくても国立や私立にはそういった家庭の子どもはいないだろう。
今後、同じようなことがうちの子どもたちの身の上で起こった場合、私にはRちゃんみたいに顔の筋肉を自由に動かせる特技もなければ、頼れる千恵子ちゃんみたいな人もいない。
娘の小学校入学を控えて神経質になる私であった。
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