2009年4月24日金曜日

里美さん(仮名)の場合②

「うふ、行ってきましたよ♪ 銀座へ」
 ある日曜日の朝、詩音ちゃん(仮名)ママこと里美さんがニコニコしながら切り出した。
 「おお~、どうだった、どうだった?」
 どよめくバレエママたち。実はこの時点で何人か先生のところに予約を入れていたママたちがいたのだが、里美さんが一番手で先生に実際診てもらったというわけだ。
「うーん、なんて言ったらいいんだろう? よくわからなかったっていうか・・・」
 みんな里美さんを凝視している。
 「いきなりね、引越しなんて言われちゃったんですよ」
 「引っ越す予定あるの?」
 「まさか、うち家買ったばかりなんですよ」
 「おお~、家持ちなんだ~」
 「しかもね、うち2軒目なんですよ」 
 「家が2軒! もしかして詩音ちゃんママのうちってお金持ち?」
 「すごいねえ、資産家だねえ~」
 占い結果よりもついつい里美さんが2軒も家を持っているほうにみんなの関心が流れてしまう。
 「そんなあ、たまたまですよ」
 「たまたまで2軒も家なんて買えないわよ!」
 「ほんとほんと」
 「まあそれはさておいてですね、さすがに3軒目になると銀行も貸してくれないだろうから、それはないと思うんですけどね、先生は3年後ぐらいにそういうのが見えているって言うの」
「へえ~、でもどうして引っ越すかって理由聞いた?」
「え? 理由?」
里美さんはきょとんと小首を傾げている。
「ああ~、私、引越しって聞いて動揺しちゃって理由なんて聞かなかった!」
「だめだよ、そういうのはちゃんと突っ込んで聞かなきゃ!」
ついつい説教する私。
「そうだよ、2万円でしょ。元を取らなきゃ」
莉奈ちゃん(仮名)ママこと佑子さん(仮名)も突っ込みを入れる。佑子さんはあと4日後に銀座の先生に診てもらっていることになっているので、里美さんの話に興味津々だ。
「あとは何を言われたの?」
「あとは子どものこととかダンナのこととか。うちの子、マイペースすぎてちょっとだいじょうぶかなあって心配なんだけど、まあ趣味とかで発散させればだいじょうぶでしょうって言われたこととか・・・、あとはダンナに関しては女々しいって言われちゃった」
「ダンナさん、女々しいの?」
「うーん、微妙。女々しいというか“俺さま”的というか。あ、離婚線とかは全然出てないって。どっちにしても離婚はオススメできませんって言われちゃった」
「ほかには何言われたの?」
「私の守護霊は男性だってことかな」
「ほかには?」
「ええ~、何言われたっけ? 忘れちゃったよ」
ポリポリと長いストレートの髪を掻きながら、えへっと笑う里美さん。
「ええ~!! 2万円も払ってせっかく占ってもらうこと忘れるかぁ?」
そんな里美さんの天然ボケ具合に驚愕するバレエママたち。
「だめだよ、帰ったらすぐに言われたことをメモしなきゃ。あと言われたことはその場で詳しく突っ込む!」
「そうだよ~、もったいない!」
「そうだね。今度からそうするわ。でもね、この数字はおもしろいと思って・・・」
と里美さんは先生に書いてもらったメモの写しを取り出した。

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