年が明け2008年になった。銀座の先生は2008年の1月から4月にかけて興味が起こるものが私の将来の教えるほうの仕事になるといった。
けど年が明けたからといって急に興味の持てる対象がうまれるわけではない。
以前から書き始めていた小説だがおおよそ8000字ほど書いたあたりで、急に自分自身の文体に飽きてしまい、3人称で書いていたのを1人称に直し、もっと砕けた文章に変えてみた。
ただひとりでずっと書いていると煮詰まるので、8000字ほどまとまったところで、3人称で硬いバージョンと1人称で柔らかいバージョンのふたつをHANAちゃんに読んでもらった。
元はといえば誰に見せるつもりでもなく、なんとなく自分の中のクリエイティビティを発揮したいがために書き出したものだった。完成するかどうかすらわからなかった。
けどひょんなことからT書店の本田君(仮名)からまとまったら読みたいと言われて、せっかく読んでくれる人がいるんだったら、ちゃんと書いてみよう。完成するまで書き上げようと思うに至った。
本田君(仮名)は後輩とはいえ、編集のプロだ。手探りで書いているものをさすがにいきなりは見せられない。
その点、HANAちゃんだったら気楽だ。HANAちゃんが読んでおもしろいか、おもしろくないかだからだ。しかもHANAちゃんは歌を歌っている人だから、表現者としての何かも分かち合えるような気がしていた。
小説のタイトルも決まっていた。
「エッサウィラ」というものだ。エッサウィラとはモロッコの町の名前で私が例のベルベル人の彼と出会い、別れた思い出の場所だ。
今でも「エッサウィラ」という言葉の響きだけで、せつなくってホロっとくる。
HANAちゃんに見せるときはドキドキした。彼女は仕事で知り合ったとはいえ、今ではいい友人だ。けど私小説といっていいものを読ませるというのは、何やら手の内を全部さらけ出すというのか、それよりもどちらかといえばお尻まで見せてしまうようなこそばゆさがある。
決してHANAちゃんは「おもろなかった」とバッサリ切って捨てるようなことは彼女の人柄からしないだろうけど、あからさまに反応に困る表情を見せられたり、「ええんちゃいますかねえ」などとあしらわれたら、激しく傷つくだろう。
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