2009年4月12日日曜日

マスコミOB会①

私の出身大学にマスコミOB会というのがある。
地方の大学を出た私たちは東京の大学を卒業した人々とは違い、東京在住者同士は異国の地でともに戦う有志といった感覚がある。
それゆえに結束が強い。
最初に入った会社が音楽業界だったこともあって、ずっとこの会には出入りしていて、今の仕事はマスコミの仕事とはいえないが、今でも何かあれば呼んでもらっている。
毎年2月の初めに新年会をやるというしきたりがあり、その場には錚々たる立場にある先輩方、同期、後輩たちが一堂に集まる。
 新聞社、出版社、広告代理店、レコード会社、その他エンターテインメント業界で活躍される華やかな面々が、その場では「同じ大学の出身者」というだけのベタなくくりで、利害関係を忘れて集う。
 社会人になってから利害関係の絡まない人間関係を築くのはむつかしい。
この集いのいいところは、利害関係を絡ませようと思ったらいくらでも絡ませられるメンバーが揃っているのに、あえてそれをせず、まあ何かあればと鷹揚に構えているところだ。
 特にこの会ではタブーがあるわけではないが、強いていえばその場を楽しく過ごせて、使える人脈はないかとギラギラとしないということか。
 私はこの会に顔を出して以来、20年近い歳月が流れようとしていた。
 私自身、前の会社でも今の会社でも何の実績もなく、ずーっとペーペーで、とてもこの会のお歴々にとっておいしい使える人脈にはなっていないが、女性が少ないということもあってかそれなりにこの会の重鎮たちから大切にはされている。
 T書店の本田君(仮名)もこの会のメンバーだ。
 程よく酔っ払ったころに本田君(仮名)がグラスを持って私の席近くにやって来る。
「清永さん、前言ってた旅行記どうなったんですか? 待ってるのに、ちっとも送ってこないんだから」
「書いてるよ。けどもうちょっと進めてからのほうがいいかなって思って」
「だからあんまり深くそういうのは考えちゃだめなんですよ。10行もあれば俺やったら使える文章かどうかぐらい判断つくから」
「自分らなんの話してんねん?」
 そこへ割り込んできたのが森田(仮名)だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿